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こんなに近くで祠を見るのは初めてね。

祠に近づくほど空気が澄んでる気がする、祠が神聖なものだから勘違いしてるのかもしれないけど

「いつ来てもすごいな。俺たちは森に入る時は毎回、この祠に無事に帰って来れるように祈りを捧げるけど、来る度にここが神聖な場所だって実感するな。旅してると色々な祠や神聖な場所に訪れることがあるけど、ここほど実感できる場所はない」

「えっ!?ここはそんなに他の場所と違うんですか?」

私の勘違いかと思ってたけど、ベルナールさんもそう思ってたなら、ここは本当に他の場所とは違うのかな?

「近くに森がある場所やダンジョンがある町はだいたい祠があるんだよ。だけどここと比べたらそこまで効果が実感できないな。魔物を倒すと多少だけど穢れが体にまとわりつく感じがする、だけど祠に来ると気の所為かもしれないけど、穢れが全て浄化されてる気がするんだ」

「それに魔物と戦う前に祠でお祈りすると、しない時に比べて穢れがまとわりつく量が違ってる気がするね」

穢れ?

汚れってことかしら?

だけど汚れだったら浄化されるとか言わないわよね?

「えっと………、穢れってなんですか?勉強不足ですみません」

「いや、一般市民なら知らなくて当たり前だ。魔物と戦わないものは知らなくて当たり前の知識だからな。穢れとは魔物を倒したら吹き出てくる瘴気だと言われている。何故、魔物からだけ出てくるのかは未だに知られてない。瘴気も何のためにあるかわかってないからな、魔物が生まれもって持ってるものなのか、成長してる過程で貯えてるのか判明してない」

「瘴気がずっと体にまとわりついてるとどうなるんですか?」

祠に行くと穢れが浄化されるってことは、行かないとずっとまとわりついてるってことなんだよね? 

「気が狂って亡くなるものもいたり、徐々に衰弱して亡くなってしまう者もいる。穢れをそのまま放置して無事なものはいないな」

「穢れを浄化するのは祠しか無理なのですか?祠が無いような場所もありますよね?それにさっきの話を聞いてる感じ、他のところの祠はそこまで浄化の力が強くないみたいですけど、危険な状態になる前に浄化は間に合うんですか?」

「それは大丈夫だ。冒険者やここの当主みたいに魔物と戦うものは、教会で浄化をしてもらってる、無料ではないけどとても金額が高いわけではないから気軽に浄化してもらえる。教会は大きさはそれぞれだが、必ずどこの町にもあるからな」

教会ってそんな仕事もしてるんだ

知らなかった

確かに王都でも教会に入って行く冒険者が多いと思ってたけど、命懸けの仕事をしてるから熱心な信仰者が多いのかと思ってたわ

「教会の仕事は神様に御奉仕する事と、年に一度の魔力鑑定だけだと思ってた」

「確かに一般的には、エミリーみたいに教会の仕事を知られてないな、教会の人達がする浄化は人だけではないぞ、スタンピードとか起きて解決した後に、土地の浄化をしたりすることもある」

「伯父様は本当に物知りよね。1つ質問したいんだけど、土地の浄化はスタンピードが起きた時だけなの?」

「いい質問だね。1、2体なら問題ないんだけど、何十体も現れて数時間で大量の魔物の血が土地に流れたら、その土地は穢れてしまうんだよ」

「土地が穢れたらどうなるの?」

「土地が穢れるとその場所では植物が育たなくなる、それと強力な魔物が生まれやすくなるな、だから教会はスタンピードが起きたあとは、無償で土地の浄化を早急に行うんだよ」

確かに自分の住んでる場所の近くで、化け物級の魔物が現れたら困るものね。

それに森で植物が育たなくなったら、森の恵が取れなくなって困るだろうし

「どの町にも教会があるから、穢れた土地が浄化されないで放置されることは無いよね」

「それがそうでもないんだよ。穢れた土地まで足を運ぶのを面倒臭がったりして行かない教会関係者とかが居るんだ。それとミカエル殿は違うけど、世の中には馬鹿な領主は沢山いる。土地を浄化しないのはデメリットばかりだけど、金儲けのためにわざと浄化しないものもいる」

「土地を浄化しないことが何でお金儲けになるんですか?もしも魔物が町まで襲ってきたら、かなりの損失になってお金がかかりますよね?」

「強い魔物は倒すことが出来たらかなりの金額になる。物によっては一生遊んで暮らせるような獲物もいるな。金額が高ければ高いほど危険な魔物って証なんだけど、世の中の領主全てがエミリー嬢みたいに頭が良いといいけど、倒した時の金額しか頭にないんだよ。だから私達みたいな冒険者を臨時で雇って金儲けしている」

「そんな危険な依頼を受ける冒険者が居るんですか?」

冒険者にも依頼を選ぶ権利があるはず、そんな馬鹿なことをしてる人の依頼を、わざわざ選ぶかしら?

どんな危険な魔物が現れるか分からないのに、自分の命を危険に晒してまでわざわざ選ぶとは思えないわよね


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