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第一章

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 生まれて半年が経ち、今日の私はすごく豪華な衣装に身を包んでいる。

『あぶぅ?』

「姫様~、とても可愛いです!!」

『あ~~』

「ご機嫌が良いですね。姫様もお洒落できて嬉しいんですね~。今日は姫様にとってとても特別な日なんですよ」

 特別な日?

 たしかに今日は人の出入りが多いような?

 カヤも今日は私の側から離れずに、周りに偉そうに指示を出している。

 周りに人がいると、カヤもミリーに意地悪をしないんだよね。

 外面だけは良いよね。

 ミリーに抱っこされながらご機嫌に過ごしてると、メイド長が部屋に入ってきて、メイド長の後ろに一組の男女が入ってきた。

 誰?

 見たことあるような?

「ミリー、姫様の様子はどうですか?」

「とてもご機嫌です。これなら儀式にも耐えられると思われます」

 儀式?

「それは良かったです。やっと神殿の儀式の準備が整ったので、1日でも早く行いたいですからね。今日から陛下と王太子様もご出席できますから」

「あら?お義兄様とお義父様も今日は参加してくれるの?お義兄様に最後に会ったのはいつだったかしら?聖女である私でもなかなか会えないのよね~」

 今日が神様に挨拶する日なんだ。

 やっと私の名前が決まるんだ!!

 それより王様達をお義兄様やお義父様って呼ぶってことは、この人は私のお母様か………

 私が生まれた時に1度会っただけで、それからは1度も会ってないから顔を忘れてた。

 じゃあお母さんの隣にいる人がお父さんか。

 たしかに第1印象と同じムカつく顔をしている。

「兄貴は忙しいからな。小さい頃から兄貴と会えない日が続くのが当たり前だったからな。俺達が住んでる宮殿は兄貴達が居る宮殿と結構離れてるから、会えなくても仕方ないさ」

「それは分かってはいるけど~、会いに来てくれても良いと思わない?私はこの国では貴重な聖女なんだよ?」

「兄貴は空き時間があったら、自分の嫁と子供に使うだろうから、期待するだけ無駄だと思うぞ。レイラには俺がいるだろ?」

 ん?

 お父さんがお母さんにベタ惚れたのは理解できるけど、お母さんはお父さんのお兄さんに興味があるの?

 恋愛的な意味で興味ある?

 それとも夫の家族として興味がある?

 どっちだろう?

 もしも恋愛的な意味で興味があるなら、面倒臭いことになりそうな予感がする。

 これからお父さんのお兄さんと会うんだよね?

 今日は私のために集まるんだよね?

 それなのに修羅場になったりするの嫌なんだけど………

「私はお義兄様とも仲良くしたいの。家族になったのに余所余所しいのは寂しいじゃない」

 それは純粋に義家族として仲良くなりたいのかな?

 何か下心があるように見えるけど、そう感じるのは私だけ?

「兄貴の1番は奥さんと子供だから難しいと思うぞ。王太子として国民を大切にはしてるけど、深入りはさせないようにしてるからな」

「そんなのおかしいよ。親戚なら仲良くするのが普通でしょ?私はジェイミーの妻なんだよ?」

「そんなに親戚付き合いしたいなら、お義姉さんと仲良くしたらどうだ?女同士だから話が合うだろうし、お義姉さんと仲良くしたほうがレイラも社交の場では助かることも多いだろ」

「お義兄様の奥さんって苦手なんだよね~、私を目の敵にしてる気がするの。多分だけど私の婚約者を選ぶ時に、お義兄様も候補者に居たから、私のことを警戒してるんだよ。近付いたら虐められるかもしれないよ?」

「そんなことないだろ。兄貴が婚約者候補に上がったのは一瞬だし、本人がお義姉さんが居るから辞退するって言ったから、婚約者候補に上がったことなんて気にしてないと思うぞ」

「ジェイミーは分かってないな~、女の嫉妬は恐いんだよ~、自分の恋人を一瞬でも取られそうになっただけで、敵認定するのが女だからね~、もしもお義兄様の奥さんから虐められたら助けてね?」

 うん………、

 私のお母さんって、女性から嫌われるタイプの人だよね。

 か弱いフリして男に依存してるタイプ?

 目当ての男を落とすためなら、周りの女を平気で貶しそう。

 私って碌でもない親の元に生まれた?

 神様に苦情を言っても良いレベルだよね?

 何でこの夫婦を選んだの?

 父親が王族だから?

 私は平民の生まれでも良いから、子供に愛情を持ってる普通の人の子供として生まれたかった。

 この2人は私に会いに来たはずなのに、1回も私の顔を見てないからね?

「今日はお義兄様の奥さんも来るのかな?怖いよ~」

 お母さんは震えながらお父さんに縋り付く。

 そんな2人をカヤが険しい顔で見ている。

 私のミリーは困った様子でお母さん達を見てるけど、声をかける勇気はないみたい。

 ミリーは貴族の血が流れてるみたいだけど、小さい頃から孤児院で育ったみたいだから、王族相手に気軽に声をかけるのは難しいよね。
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