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第一章

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 信じられない………、

 出産は体力がとても削られるのはわかるけど、娘のピンチの時に呑気に寝てるなんて………

 こんな両親のもとで私は無事に生きていられるの?

 母親は娘の私に興味なくて、父親は赤ん坊に暴力を振るうDV男だなんて不幸過ぎる。

 神様は何でこんな親に私を託したの!?

 もっとマシな親がいたよね?

 何を基準にこの親を選んだの?

 親はランダムしか無理とか?

 それならまだ許せるかな?

 もしも選んでこの親だったなら、1度ぐらいは神様を殴っても良いよね?

 …………まだ自分の親が最悪と決めつけるのは早いかな?

 私は父親を警戒するように、じ~っと目の前に居る父親を監視する。

 父親はもう私に興味ないみたいで、疲れて寝ている母親を愛おしそうに撫でている。

 私には興味ないけど、母親のことは本当に愛してるみたいね。

 ………もしも母親が私を優先するようになったら、私はこの父親に疎まれる流れじゃない?

 ふぅ~、何か眠くなってきた。

『ふぁ~』

「あらあら?姫様は眠いみたいですね~」

「勝手に寝させとけ」

「畏まりました。乳母にお任せしてよろしいですか?」

「あぁ」

 おぉ~、私に乳母が居るんだ。

 流石は聖女の娘。

 乳母が居るなら安心かな?

 親に関心を持たれなくても、乳母がお世話してくれるよね。

 どんな人が乳母なんだろう?

 優しいお姉さんだと良いな~

 お母さんのように甘えさせてくれる人がいい。

 私はわくわくしながら、産婆に抱かれながら乳母に会いに行く。

 乳母に会えるのが楽しみで、私の眠気も何処かに吹き飛んでしまった。

 わくわく!!わくわく!!

「ふふふっ、姫様は楽しそうですね。これから姫様に沢山の幸せで溢れるのを願っております」

 ん?

 何でそんなに悲しそうな顔をしてるのかしら?

 やっぱり私の父親と母親は、色々と問題がある人なのかしら?

 でも母親は聖女なんだよね?

 聖女って清らかな心で、皆に平等に優しいんじゃないの?

 私だけにその優しさが向くかは分からないけど、私だけに冷たいとか無いと思うんだけど、もしかして違うのかな?

 神様に会って、私の親がどんな人達なのか問い詰めたいかも。

 産婆は1つの扉の前に立つと、扉を3回ノックする。

「は~い」

「姫様を連れてまいりました」

「どうぞ~」

「失礼します。姫様、ここが今日から姫様のお部屋になりますよ」

『ぶぅ~、あうあう~』

 赤ん坊に与えるには良い部屋過ぎない?

 姫様って呼ばれるぐらいだから、聖女の娘って凄いのかな?

 聖女の娘だから姫様って呼ばれてるんだよね?

 …………私の名前って何?

 えっ!?

 まだ名前無しじゃない!?

 マジで私の名前って何?

「姫様の乳母のミリーと専属メイドのカヤです。ミリーとカヤは候爵令嬢なんですよ。私は仕事に戻りますので、姫様のことをよろしくお願いします」

「そんな!?畏まらないでください。私は候爵令嬢って言っても、つい最近までは庶民だったんですから」

「自分をそんなに卑下してはいけませんよ。貴女様はこれからは姫様の乳母になるのですから、候爵令嬢として姫様の守りになってくれると信じております」

 この子が私の乳母なの?

 乳母って子供を産んだばかりの人がなるんだよね?

 どう見ても15歳以下に見えるんだけど?

 この世界では出産年齢が早いのかな?

「ミリー心配しないで大丈夫だよ~。貴女はまだ候爵令嬢として未熟かもしれないけど、そんな貴女をフォローする為に姉の私が居るんだから~。貴女はまだ若い母親だけど、孤児院で沢山の赤ちゃんを世話をしてきた経験があるでしょ?誇って良いわ~」

「カヤ様」

「もう!!お姉様って呼んでって言ってるでしょ?」

 姉妹なのかな?

 話を聞いてる感じだと、本妻の子供と妾の子供なのかな?

 本妻の子供が愛人の子供にこんなに気遣ってるなんて珍しい。

 大体は疎んだりしてるのに、姉妹で私に仕えるみたいだからこの姉妹は仲良いよね。

 私を一緒にお世話してくれる人なら、仲良いほうが私も気分的に良いから良かった。

「お2人になら安心して姫様を任せられますね」

「誠心誠意で姫様のお世話をさせて頂きます~」

「姫様に安心してもらえるように努力します。あのお聞きしたいのですが、姫様のお名前をお伺いして宜しいでしょうか?」

 私も知りたい!!

「姫様のお名前はまだ決まっておりません。姫様は聖女様のお子様で王族の血も流れてるので、1度神殿に姫様を連れて行かないと、お名前を決めることが出来ないのです」

 私って王族の子供だったの?

 父親が王族?

 それとも母親が王族で聖女なの?

「初めて聞きました。王族は全員がそうしてるのですか?」

「例外なく全てですね。王族は神の子孫だと言われてるのは知ってますね?」

「はい。小さい頃からお伽噺として聞いたことがあります」

 …………神の子孫?

 えっ………、マジ?

 私に神の血が流れてるの?



    
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