上 下
4 / 40
第一章

しおりを挟む

『お前は友梨奈に尽くしてればいい』

『女は2人も要らなかったのよね。男の子が欲しくてもう一人産んだのに、何で貴女だったのかしら。貴女なんかを産んだせいで、私はもう子供が作れなくなったのよ!!』

『零子は愛されなくて可哀想だよね~、零子の名前って要らない子って意味で付けられたのよ~。だから零子の零は0って意味のその漢字を使ってるんだよ~。知ってた?』

『お前は高校に行かせるつもりはない。これからは俺達に恩返しをしてもらうぞ』

『パパ~、零子は見た目は良いんだから、私達のために風俗で働いて貰おうよ~、見た目だけは大人っぽいんだから、18歳って言っても疑われないよ~』

『それは良いな!!友梨奈は頭が良いな~、傷が出来たら価値が下がってしまうから、これからは暴力は駄目だな』

『大金のためなら仕方ないわね。この子を甚振るだけがストレス発散だったんだけど』

 全部思い出した。

 私の人生って本当に不幸しかなかったんだ。

 親から一切愛情が貰えずに、同じ親から生まれたのに、2歳上の姉が溺愛されてるのを見る日々だった。

 このままあの家族に搾取される生活が嫌で、中学を卒業するのと同時にこの家から出て行こうとしてたけど、姉にそのことを気づかれてしまい、姉はそのことを親に知らせてしまう。

 そのことに怒った父親から私は今まで以上の酷い暴力に遭い、そのまま亡くなってしまった。

 本当に碌でもない人生だったんだ。

 あれ?

 ……苦しい?

 息が………

 酸素が薄い!!

『おんぎゃあ!!おんぎゃあ~、んぎゃあ~』

 やっと吸えた~

 んぅ?

 この泣き声は私?

 そう言えば、記憶を解放するのは転生する直前だって言ってたような?

 本当に転生しちゃったんだ。

 あれから100年経ったの?

 本当にあっという間だった………

 うーん、ぼやけててあまり良く見えない。

『あぶぅ~』

 うわぁ~、顔をごしごし拭かれてる。

 痛いから!!

 もっと優しく拭いてよ~

「聖女様、可愛い女の子ですよ。」

「はぁ~、女の子なの?私は男の子が良かったけど仕方ないよね~、もう2人も男の子が居るから良いか~」

 聖女?

 私の母親は聖女なの?

 何か凄い人の娘として誕生したんだ。

 歓迎されてるようには見えないけど大丈夫だよね?

 また冷遇されたりするのは嫌!!

「抱っこされますか?」

「疲れてるからいいかな~。ジェイミーに抱っこさせてあげて、ジェイミーは初めての子供だからね~」

 あれ?

 さっき私には兄が2人居るような話をしてなかった?

 多分だけどジェイミーって人は私の父親だよね?

 私には兄が2人も居るはずなのに、父親は初めて自分の子供が誕生した?

 再婚とか?

 ならあり得るかな?

 複雑な家系とか嫌なんだけど~

 贅沢な暮らしをしたいとか言わないから、一般的な家庭に生まれたい。

 孤独な人生は嫌なんだけど、家庭内がギスギスしてるのも嫌!!

 複雑な気持ちで色々と考えてると、1人の男性が入ってくる。

 うーん、この人が父親?

 何だろう?

 とても好きになれない。

 父親なのに生理的に無理!!

 見た目が悪いとか、不潔とかではないんだけど何か嫌なんだよね。

 女性からは凄くモテるタイプだとは思うんだけど、私はこの人を生理的に受け付けない。

「ジェイミー殿下、可愛い姫が誕生されましたよ。抱っこしてあげてください」

 私を抱っこしてる産婆(?)が男に私を渡そうとする。

『あぶぅ~~、んぎゃぁ~』

「姫様も父親であるジェイミー殿下に抱っこされたいみたいです」

 勝手なことを言うな!!

 私をこの男に渡すなよ!!

 暴れて抵抗するけど、赤ん坊である私が大人に適うわけもなく、父親の腕に私は渡される。

「小さいな。はぁ~、レイラに似てないな。レイラに似ているのなら可愛がれる自信があったんだが」

 母親に似てなくて悪かったわね!!

 イラッとして、思わず男の顔を殴る。

「痛っ!?チッ、俺の顔を殴るなんて良い度胸だな」

 男は腹が立ったみたいで、両手で抱いてたのに片手で私の首を持ち持ち上げる。

 息が苦しい!?

「ジェイミー殿下!?産まれたての赤子をそんな持ち方をしてはいけません!!」

 産婆は慌てて男から私を引き離す。

『ばぁ!!ケホッ!!ゲホッ』

「姫様!?」

 咳き込む私に産婆は背中をさする。

 信じられない!!

 何でこんな男が私の父親なの!!

 てか………、母親はこれを見ても何も言わないのはどうなの?

 出産で疲れてるのかもしれないけど、母親なら夫の問題行動を怒りなさいよ。

 怠い体にムチを打ち母親の方を見ると、呑気に寝ているのが見えた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~

白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。 日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。 ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。 目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ! 大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ! 箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。 【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ
ファンタジー
 ファラルクエトゥナと言う世界にかつて、英雄王と呼ばれる伝説上の存在がいた。彼は精霊王の娘と人間の間に産まれた精霊人で、各地に逸話を残し、精霊界の出入口とされる聖域の山を中心に土地を貰い受け、英雄を慕い付いて来た人達と共に村を起こしたとされる。その村は、出入りが厳しく千年以上を経た今でも場所すら特定されていない。冒険者や腕に自信のある者は勿論、一般の人々ですら憧れる場所。  英雄王の末裔は必ず一度は世界を旅する。これはそんな末裔の一人であるラファール=フォーゼの物語。 ※他の英雄王シリーズとリンクしてます。 ※不定期更新になります。 ※一話が大体2000字前後です。 ※ファンタジー小説大賞で登録してます!投票宜しくお願いします!!

チート勇者も楽じゃない。。

小仲 酔太
ファンタジー
ギミック多めのオリジナル異世界ファンタジーです。人の身に余る運命を仲間とともに乗り越えろ! ――――――――  人類は長らく魔族、そしてその王たる魔王と戦ってきた。勇者を夢見て旅をしていた戦士ロイは、歴代勇者の強大な光の力を引き継ぎ、遂に魔王に挑んだ。  激しい戦闘が繰り広げられた。だが気がつくとロイは見知らぬ土地で魔物に囲まれていた……!?なんと魔王との戦いに敗れ、少年に転生してしまっていたのだ。  少年テオンはもう13歳。絶体絶命のピンチにロイの意識が覚醒し、光の力が暴走を始める……。  一方、ロイを失った元の世界では、彼の上官で想い人でもあるスフィアが次の勇者候補となり、光の力を受け継ぐための厳しい修行に明け暮れていた。  いつしか彼女は王国最強となり、姫騎士の称号を得るに至る。しかし未だに力は継承できない。何故なら、その力は今も転生したロイと共にあるのだから……。  これは勇者を夢見た転生戦士と勇者になれなかった最強少女の、波乱の運命を巡る冒険譚である。 ※この作品は「小説家になろう」でも同名義同タイトルで公開しております。 ※タイトル画(https://28683.mitemin.net/i368864/)は 美風慶伍さん(http://mypage.syosetu.com/33146/)に描いて頂きました。ありがとうございます。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

処理中です...