9 / 31
9
しおりを挟む
イズクの大きな真っ直ぐな瞳で見られると言葉が出なくなる。目の前でサラサラとした金色の髪が揺れている。
彼は戦闘でしか見た事がない真剣な顔をしている。普段、ヘラヘラと緊張感のない顔をしているが、顔に力を入れればそれなりに整った作りをしている。これで身長があればモテたかもしれないが幼く見えてしまうのでいつもいい人で終わっている。
「不満があるなら何でも言って」
イズクが怒鳴ると当時に扉を叩く音がした。イズクがビクリと体を動かして、ゆっくりと扉の方を見た。
更に扉を叩く音がした。
何を戸惑っているか知らないが、出ない訳にはいかない。カズマは立ち上がり扉に向かうとその後ろにイズクがぴったりとくっついた。
身長のせいもあり、甘える幼子にように見えた。
「どなた?」
「呼ぶ遅くにすまない」
扉を開けたが身長が高すぎて顔が見えない。それに気付いたようで彼は腰を少し落とし、顔を見せた。
「アンギさん。どうしたんですか?」
「リリの言ったことだ。少し時間をもらえるか」
アンギは小さな声で申し訳なさそうに言った。カズマはチラリとイズクの方を見た。彼は不満そうな顔をしてたが、さきほどリリが言った件についてなら聞かない訳には行かない。
「どうぞ」
室内に案内すると、テーブルに対面に座った。通常サイズのテーブルであるがアンギが座ると子ども用のように見えた。イズクはカズマの隣に座り下を向いている。
「朝、リリが騒ぐ前に話をしたかったために夜遅くに申し訳ない」
リリが騒ぎ出したら、面倒くさいと思うのは同じなのだと知ると同情できた。
「勇者殿」
「……」
イズクは黙って眉を寄せアンギを睨みつけた。それに、彼は言葉を止めた。しかし、頭を振ると口を開いた。
「先ほど、リリが言った事をどう考えている?」
「……」
イズクは黙っている。確かに勇者メンバーの退団は即答できる案件ではない。じっくりと吟味する必要がある。
「なんのこと?」
イズクは腕組み、足を大きく広げた。さっきまでカズマにすがるような態度をしていたのが嘘のようであった。しかし、これが普段の彼だ。いつもの調子に戻ったようで安心した。
「俺ら寝てたんだよね。迷惑」
「寝てはなかったろ」
リリの話を進めたかったので、アンギを追い出そうとするような発言を止めた。
「俺は寝てたよ。だから、さっさと用件言ってもらえる?」
夜中に来たのは事実であるため、アンギは頭を下げ謝罪しながら返事をした。
「カズマ殿を追い出すってリリが言った件だ」
「……」イズクは心底不愉快そうに眉を寄せた。「カズが嫌なら君らが出てきばいいじゃん」
「えっ……、まぁそうだな」
「そう伝えて」イズクは立ち上がると、アンギの腕を引いた。「言えないなら俺から朝、話すから」
アンギは抵抗したわけではないが、協力的ではない2メートルを超える男を軽々とイズクは引っ張っていた。小さな身体でやってのけるから周りから驚かれ高評価につながる。
「そもそも、自分以外の退団申請は勇者以外に権利がない」
「だから、相談しにきた」
立ち上がったアンギが止まると、腕を引いているイズクも足を止めた。
「何度も同じ事言わせないで」イズクはアンギの腕を掴む手に力を入れると、身体を引き勢いをつけた。「嫌な奴が出ていけばいい。自分の退団申請なら俺の許可は必要ないよ」
アンギが何かを言おうとしたが、イズクは聞く耳を持たずアンギを外に出した。
彼は戦闘でしか見た事がない真剣な顔をしている。普段、ヘラヘラと緊張感のない顔をしているが、顔に力を入れればそれなりに整った作りをしている。これで身長があればモテたかもしれないが幼く見えてしまうのでいつもいい人で終わっている。
「不満があるなら何でも言って」
イズクが怒鳴ると当時に扉を叩く音がした。イズクがビクリと体を動かして、ゆっくりと扉の方を見た。
更に扉を叩く音がした。
何を戸惑っているか知らないが、出ない訳にはいかない。カズマは立ち上がり扉に向かうとその後ろにイズクがぴったりとくっついた。
身長のせいもあり、甘える幼子にように見えた。
「どなた?」
「呼ぶ遅くにすまない」
扉を開けたが身長が高すぎて顔が見えない。それに気付いたようで彼は腰を少し落とし、顔を見せた。
「アンギさん。どうしたんですか?」
「リリの言ったことだ。少し時間をもらえるか」
アンギは小さな声で申し訳なさそうに言った。カズマはチラリとイズクの方を見た。彼は不満そうな顔をしてたが、さきほどリリが言った件についてなら聞かない訳には行かない。
「どうぞ」
室内に案内すると、テーブルに対面に座った。通常サイズのテーブルであるがアンギが座ると子ども用のように見えた。イズクはカズマの隣に座り下を向いている。
「朝、リリが騒ぐ前に話をしたかったために夜遅くに申し訳ない」
リリが騒ぎ出したら、面倒くさいと思うのは同じなのだと知ると同情できた。
「勇者殿」
「……」
イズクは黙って眉を寄せアンギを睨みつけた。それに、彼は言葉を止めた。しかし、頭を振ると口を開いた。
「先ほど、リリが言った事をどう考えている?」
「……」
イズクは黙っている。確かに勇者メンバーの退団は即答できる案件ではない。じっくりと吟味する必要がある。
「なんのこと?」
イズクは腕組み、足を大きく広げた。さっきまでカズマにすがるような態度をしていたのが嘘のようであった。しかし、これが普段の彼だ。いつもの調子に戻ったようで安心した。
「俺ら寝てたんだよね。迷惑」
「寝てはなかったろ」
リリの話を進めたかったので、アンギを追い出そうとするような発言を止めた。
「俺は寝てたよ。だから、さっさと用件言ってもらえる?」
夜中に来たのは事実であるため、アンギは頭を下げ謝罪しながら返事をした。
「カズマ殿を追い出すってリリが言った件だ」
「……」イズクは心底不愉快そうに眉を寄せた。「カズが嫌なら君らが出てきばいいじゃん」
「えっ……、まぁそうだな」
「そう伝えて」イズクは立ち上がると、アンギの腕を引いた。「言えないなら俺から朝、話すから」
アンギは抵抗したわけではないが、協力的ではない2メートルを超える男を軽々とイズクは引っ張っていた。小さな身体でやってのけるから周りから驚かれ高評価につながる。
「そもそも、自分以外の退団申請は勇者以外に権利がない」
「だから、相談しにきた」
立ち上がったアンギが止まると、腕を引いているイズクも足を止めた。
「何度も同じ事言わせないで」イズクはアンギの腕を掴む手に力を入れると、身体を引き勢いをつけた。「嫌な奴が出ていけばいい。自分の退団申請なら俺の許可は必要ないよ」
アンギが何かを言おうとしたが、イズクは聞く耳を持たずアンギを外に出した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~
海堂金太郎
ファンタジー
現代社会日本にとある男がいた。
その男は優秀ではあったものの向上心がなく、刺激を求めていた。
そんな時、人生最初にして最大の刺激が訪れる。
居眠り暴走トラックという名の刺激が……。
意識を取り戻した男は自分がとある辺境伯の長男アルテュールとして生を受けていることに気が付く。
俗に言う異世界転生である。
何不自由ない生活の中、アルテュールは思った。
「あれ?俺の家族優秀すぎじゃね……?」と……。
―――地球とは異なる世界の超大陸テラに存在する国の一つ、アルトアイゼン王国。
その最前線、ヴァンティエール辺境伯家に生まれたアルテュールは前世にしなかった努力をして異世界を逞しく生きてゆく――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
『Nightm@re』という異世界に召喚された学生達が学校間大戦とLevel上げで学校を発展させていく冒険譚。
なすか地上絵
ファンタジー
■概要
突然、『Nightm@re』という地球にそっくりな異世界に連れてこられた高校生たち。自分達の学校を自由に創り変えながら、生き残りをかけて戦う『学校間大戦』。友情あり恋愛ありのちょっぴり切ないダークファンタジー小説。※物語三章から一気にファンタジー要素が増えます。
*過去にエブリスタで書いた物語です。
*カテゴリーランキング最高3位
*HOT男性向け最高26位
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる