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祖母の死因
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アーサーとルイの顔色からそれが事実であることを理解した。
私は自分の手を見た。この手で祖母を殺したのだと思った。
しかし、母と魔法陣を書いて遊んだ記憶はない。幼かったため覚えていないのだろう。
漫画でもそんな描写はなかった。主人公視点であったため、他のキャラクターの深いところまで掘り下げていない。もしかしたら番外編に載っていたかもしれない。
私が前世の記憶を取り戻してからこの世界は変化しているがそれ以前は漫画と同じはずである。だた、番外編は全て読んでいないのだ。ルカには興味がなかったから彼の事はよく知らない。ルイに至っても同様である。推しのトーマス騎士団長の番外編はしっかり読んだがあまり王族に関係する話はなかった。彼が騎士になる前の物語だ。
他の話を考えてみると一つ思い当たるものがあった、アルバートだ。祖母の弟であるアルバート殿下の番外編は友人から借りたのだった。しかし、あいまいでよく覚えていないが彼はルカを憎んでいたことだけは印象に残っている。しっかり読んでおくだった。
もしかしたらアルバートがルカを憎む理由は魔法陣発動で彼の姉を殺しているからそれを怒っているのかもしれない。
つまり、サラの護衛は……。
「そうか。また同じ悲劇が生まれないためにサラを側においたとか……」
「ルカ」
ルイに名前を呼ばれて顔あげた。ルイは青い顔をしている具合が悪そうだ。アーサーも困惑した顔している。
私は二人に顔を交互に見る。
「それは想像かい」
事実を知らないのだから推測であるのは当たり前だ。アーサーの言っている意図が理解できなかったが頷いた。
「そうか。ルカはその事実を受け止められるのだね。もっと動揺するかと思っていたよ」
なるほど。私の精神的負担を配慮して二人は不毛な戦いをしていたようだ。多少ショックではあったが受け入れなれば前に進めない。そもそも祖母に対して思い入れがないというのも関係していた。血縁者であるが、記憶にもない人間に愛着はない。
「アーサー殿はイザベラ女王の死ついて知っているのですか」
ルイはアーサーが全て知っている前提で話をしているが私は不安であったため確認した。
朝、ルイが“祖母の死”について触れたとき叔父は焦っていた。ルイが祖母の死の真実を知っていることに焦ったと判断した。しかしアーサーは固まっていた様子から彼は知らないのかと思った。実際は、叔父と同じ理由で固まっていたのかもしれない。
私の確認事項にアーサーが頷いたため、私が想像した話をした。
「おそらくですが、私の母であるルナ王妃殿下と魔法陣を書いて遊んでいるときに発動してしまいそれをイザベラ女王陛下ようとして、犠牲になってしまった。だからアーサー殿は私に魔力制御の魔法をかけたのではないでしょうか」
私の話にアーサーは頷いて「そうだよ」と答えた。しかし、補足説明はない。アーサーはあくまでも自分から説明させない気である。
「今後は私に魔法をかけることはないですよね」
これは一番確認しておきたいことだ。そうすれば変な発作に悩ませることもない。
アーサーは眉を寄せて考えこんでしまった。
「うーん、それはね。まぁ確かに発作を起こすのは問題だけど、女王陛下の事件からずっと使っているのになぜ今発作がおきたのかな」
どうやらアーサーが私にかけている魔法中止を迷っているようだ。
「私にかけているのは魔力制御ですよね。掛けないと暴走していまうでしょうか」
記憶にはないが幼い頃のように暴走して誰の命を奪ってしまうのならば発作くらい受け入れようと思った。誰が犠牲になるのであれば発作くらいたいしたことはない。
「分からないから制御しているのだよ」
アーサーは困った顔している。この“分からない”は本当のようだ。やはり、魔力制御は続けてもらおうと言おうとした時ルイが口を開いた。
「しかし、ルカは既に魔法陣発動しているから制御できていないみたいですよね。成長と共に魔力が増えたのでしょうか。だからアーサー殿の魔法を拒絶できのかもしれません」
私は頷いた。アーサーは「かもね」と一言いった。確かにまだ“かもね”の段階である。
そこまで話していてふと思いついた。
「サラは私の魔力が暴走しないためにいるってことですよね。もし暴走したら彼が盾になるってことですか。私を守っているのではなく私から守っているのですか」
私の言葉にアーサーは目を細めた。ルイは「あぁ」と声を上げて私とアーサーの方を見た。何かを思いついたようである。
「サラのエプロンの魔法陣使って別の魔法陣を送れるということは逆もできるでしょうか。ルカが暴走したときその魔法陣の効果が転送されるというような……」
アーサーは細い目を更に細めた。それはもう見えないのではないかと思うほどである。そしてゆっくりと頷いた。
「だだ、ルカの力が未知だからなんとも言えないかな」
アーサーの言うことに納得した。私自身も私の力を把握していない。魔法陣を使うと眠くなるから最近の発動はほとんどルイに任せてしまっている。
制御されていてあの眠さなら解除したら一週間くらい起きられないかもしれない。
そこまで考えてあることに気づいた。どんな魔法陣だか分からないが幼い私の力で魔力を持つイザベラ女王が亡くなった。今の私は恐らくそれよりも強くなっている。その時サラは近くにいて平気なのだろうか。
そんなわけはない。
チラリとアーサーを見た。彼は相変わらず細い目をして微笑んでいる。ルイもアーサーの話に頷いている。彼らはきっとその時がきたらサラが亡くなる可能性がある事を知っている。知っていて出した任務だろう。
『当たり前だよ。ルカは王族で僕の弟だ。サラは騎士だよ。しかも平民出身だ』
ふいにルイの言葉を思い出した。きっとアーサーも同じ考えなんだろう。確認しなくてはならないと思った。しかし、身分によって命の重さが違うという事実を受け止めるのが怖かった。
私は自分の手を見た。この手で祖母を殺したのだと思った。
しかし、母と魔法陣を書いて遊んだ記憶はない。幼かったため覚えていないのだろう。
漫画でもそんな描写はなかった。主人公視点であったため、他のキャラクターの深いところまで掘り下げていない。もしかしたら番外編に載っていたかもしれない。
私が前世の記憶を取り戻してからこの世界は変化しているがそれ以前は漫画と同じはずである。だた、番外編は全て読んでいないのだ。ルカには興味がなかったから彼の事はよく知らない。ルイに至っても同様である。推しのトーマス騎士団長の番外編はしっかり読んだがあまり王族に関係する話はなかった。彼が騎士になる前の物語だ。
他の話を考えてみると一つ思い当たるものがあった、アルバートだ。祖母の弟であるアルバート殿下の番外編は友人から借りたのだった。しかし、あいまいでよく覚えていないが彼はルカを憎んでいたことだけは印象に残っている。しっかり読んでおくだった。
もしかしたらアルバートがルカを憎む理由は魔法陣発動で彼の姉を殺しているからそれを怒っているのかもしれない。
つまり、サラの護衛は……。
「そうか。また同じ悲劇が生まれないためにサラを側においたとか……」
「ルカ」
ルイに名前を呼ばれて顔あげた。ルイは青い顔をしている具合が悪そうだ。アーサーも困惑した顔している。
私は二人に顔を交互に見る。
「それは想像かい」
事実を知らないのだから推測であるのは当たり前だ。アーサーの言っている意図が理解できなかったが頷いた。
「そうか。ルカはその事実を受け止められるのだね。もっと動揺するかと思っていたよ」
なるほど。私の精神的負担を配慮して二人は不毛な戦いをしていたようだ。多少ショックではあったが受け入れなれば前に進めない。そもそも祖母に対して思い入れがないというのも関係していた。血縁者であるが、記憶にもない人間に愛着はない。
「アーサー殿はイザベラ女王の死ついて知っているのですか」
ルイはアーサーが全て知っている前提で話をしているが私は不安であったため確認した。
朝、ルイが“祖母の死”について触れたとき叔父は焦っていた。ルイが祖母の死の真実を知っていることに焦ったと判断した。しかしアーサーは固まっていた様子から彼は知らないのかと思った。実際は、叔父と同じ理由で固まっていたのかもしれない。
私の確認事項にアーサーが頷いたため、私が想像した話をした。
「おそらくですが、私の母であるルナ王妃殿下と魔法陣を書いて遊んでいるときに発動してしまいそれをイザベラ女王陛下ようとして、犠牲になってしまった。だからアーサー殿は私に魔力制御の魔法をかけたのではないでしょうか」
私の話にアーサーは頷いて「そうだよ」と答えた。しかし、補足説明はない。アーサーはあくまでも自分から説明させない気である。
「今後は私に魔法をかけることはないですよね」
これは一番確認しておきたいことだ。そうすれば変な発作に悩ませることもない。
アーサーは眉を寄せて考えこんでしまった。
「うーん、それはね。まぁ確かに発作を起こすのは問題だけど、女王陛下の事件からずっと使っているのになぜ今発作がおきたのかな」
どうやらアーサーが私にかけている魔法中止を迷っているようだ。
「私にかけているのは魔力制御ですよね。掛けないと暴走していまうでしょうか」
記憶にはないが幼い頃のように暴走して誰の命を奪ってしまうのならば発作くらい受け入れようと思った。誰が犠牲になるのであれば発作くらいたいしたことはない。
「分からないから制御しているのだよ」
アーサーは困った顔している。この“分からない”は本当のようだ。やはり、魔力制御は続けてもらおうと言おうとした時ルイが口を開いた。
「しかし、ルカは既に魔法陣発動しているから制御できていないみたいですよね。成長と共に魔力が増えたのでしょうか。だからアーサー殿の魔法を拒絶できのかもしれません」
私は頷いた。アーサーは「かもね」と一言いった。確かにまだ“かもね”の段階である。
そこまで話していてふと思いついた。
「サラは私の魔力が暴走しないためにいるってことですよね。もし暴走したら彼が盾になるってことですか。私を守っているのではなく私から守っているのですか」
私の言葉にアーサーは目を細めた。ルイは「あぁ」と声を上げて私とアーサーの方を見た。何かを思いついたようである。
「サラのエプロンの魔法陣使って別の魔法陣を送れるということは逆もできるでしょうか。ルカが暴走したときその魔法陣の効果が転送されるというような……」
アーサーは細い目を更に細めた。それはもう見えないのではないかと思うほどである。そしてゆっくりと頷いた。
「だだ、ルカの力が未知だからなんとも言えないかな」
アーサーの言うことに納得した。私自身も私の力を把握していない。魔法陣を使うと眠くなるから最近の発動はほとんどルイに任せてしまっている。
制御されていてあの眠さなら解除したら一週間くらい起きられないかもしれない。
そこまで考えてあることに気づいた。どんな魔法陣だか分からないが幼い私の力で魔力を持つイザベラ女王が亡くなった。今の私は恐らくそれよりも強くなっている。その時サラは近くにいて平気なのだろうか。
そんなわけはない。
チラリとアーサーを見た。彼は相変わらず細い目をして微笑んでいる。ルイもアーサーの話に頷いている。彼らはきっとその時がきたらサラが亡くなる可能性がある事を知っている。知っていて出した任務だろう。
『当たり前だよ。ルカは王族で僕の弟だ。サラは騎士だよ。しかも平民出身だ』
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