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抵抗

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「よく知っているね。まぁ奴隷売買の基本は競りだからルキア帝国に直接売ったわけではないだけどね。当時は子どもだったから女帝に可愛がられたかもしれないね。だけどその後は分からない」

 部屋の中には静まりかえり誰しもが暗い顔をする中に世間話をするように重い内容を伝えるアーサーは異様思えた。彼はどんな話も軽く話すのでその事柄に対しての関心がないよう感じでしまう。はたして本当に関心がないのだろうか。アンドレーとアーサーの関係はよく知らないからなんとも言えない。
 しかし、アンドレーの話はとても重く耳をふさぎたくなる。ルキア帝国の女帝に買われた後の話など想像したくない。したくないが彼がもし関係しているなら……。

「アルバート殿下」

 ルイがぼそりとつぶやいた。その声は小さい方が全員の耳に届きたようでルイ視線が集まった。それを感じたらしく床見ていたルイが顔を上げた。

「ルカはアンドレーに注目しているようですが、アルバート殿下は今どうしておられるのでしょうか。それとグレース殿下も」

 ルイのアルバート殿下の名前を出してことで彼の存在を思い出した。アルバート殿下は祖母イザベラ女王の弟で元宰相をしていた。彼も王族血縁者だ。図書室の家系図で名前を確認していたはずだがなぜ忘れていたのだろう。
 現存する王族血縁者は父のフィリップ国王、従叔父のアーサー法務大臣、従祖母のグレース殿下、従祖父のアルバート殿下と私たちで六人だ。もしアンドレーが生きていれば七人にいることになる。

「母のグレースは父のジョージ元騎士団と郊外で暮らしているよ。いつもで会うことは可能だよ」

 従祖母のグレース殿下についてはアーサーがすぐに答えた。自分の母のことであるためだろう。そこまで考えたところで突然手が震えだし、身体が強張った。その症状に私は動揺した。今この場に私が緊張する相手はいない。まずいと思った瞬間、ルイの「大丈夫」という優しい声が聞こえた。そしてルイは私と繋いでいる手に力を込めてくれて、次第に気持ちが落ち着いてきた。やっぱりルイの力には癒し効果があると思う。

「まさか、母がハリー・ナイトに魔法陣を教えたと思っている」

 アーサーは馬鹿馬鹿しいと首を振っている。それには国王や叔父の同意の様で頷いている。私もグレース殿下がハリー・ナイトに教えたとは思っていない。
 チラリと横にいるルイの顔みると黒いオーラを感じる。彼は私の手さらに強く握る。ルイがものすごく怒っているようだ。

「ルイ、私もグレース殿下を疑う気持ちはないよ。まぁ、さっきルイが言ったように確認が必要だと思うけど」

 ルイはグレース殿下を疑う理由はわかないがみんなに反対されたので怒ってしまっただろう。何か確証があるのだろうか。彼の名前を呼びながらルイの手を握りかえした。

「そんなに心配なら明日にでも母会えるように手配するよ」

 アーサーの提案にルイは頷いたが顔は怖いままだ。国王も叔父も不思議そうに見ている。私もルイが考えていることが分からない。

「グレース殿下についてはご配慮ありがとうございます。それでは、アルバート殿下の所在を教えてください」

 ルイの言葉で部屋の時間が止まった気がした。空気が凍るのを感じる。身体が強張り心臓の音が早くなった。その瞬間ルイは私の手をひき抱きしめた。そして、耳もとで「ここの来る直前に僕が言った魔法陣を発動して」と囁いた。
 国王たちが何か言っているが全く耳に入って来なかったがルイの声だけは、はっきりと聞こえた。しかし、手が震えて魔法陣を書くことができない。私が焦っていることに気づいたようでルイは「大丈夫、僕がいるよ」と抱きしめる腕を強めた。彼の体温を感じ気持ちが少しずつ落ち着いてきたが手の震えはとまらない。
 手が動かないならと必死に魔法陣を頭の中で浮かべ発動した。すると、私の動悸も震えもすべてがおさまった。 
 さっきまで感じていた身体の違和感が全てなくなり力が抜けた。自分自身の身体を支えることができずにルイに全体重を預けた。ルイ「頑張ったね」と私の頭をなぜてくれた。それがとても心地よく眠くなってきた。
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