上 下
82 / 146

王の規則

しおりを挟む
 王の規則について、叔父が丁寧に説明してくれた。規則とは王が暴走しないように権利を制限するものだ。しかし、いままでは実際に守られない事が多かった。王の権限が強いから当然と言える。
 現国王フィリップが王の規則を守るのは“怒られない”ためらしい。規模を破ればそれを咎める人間がいる。それと関わりたくないと言うのだ。その説明をしている時の国王は頭をかきながら締まりのない顔で笑っていた。

「でも、今回条件を満たしたから」

 嬉しそうに話す国王に対して、叔父は眉を下げる。先程の険しい顔つきはきえ、いつもの無表情になっている。チラリと国王を見ると説明の続きを始めた。今、国王が言った“条件”についてだ。そもそも、“子どもに対して王と接する”と規則の意味は王位継承問題だ。我が国の王位継承者は生まれた瞬間に決まる。
 それが子どもと関わり、王が王位継承権を持たない子どもを国王にしたいと国の規則を覆すことがないようにするためだ。

「それは次期国王と次期摂政が協力関係にある事を証明できればよい」

 要は第二王子である私が王位を狙わなきゃ良いってことだ。王位はいらない。組織を維持するのは大変な仕事だ。ましてや国など絶対に嫌だ。

「その為に二人で協力してハリー・ナイトを裁いてね」

 国王は軽い口調でとんでもない事を言う。楽しそうに笑う国王と無表情に頷く叔父に私は何も言えない。二人も何も言わず私を見ている。すぐに断りたい案件であったが王の言葉を否定するとこができずにじっと叔父を見た。
 時計の針が動く音が室内に響く。沈黙が居心地悪く壊したかった。しかし、言葉がでない。

「王をやめたい」

 国王の言葉はミサイルのようである。しかも予想外の所に撃ち込んでくる。叔父は額に手をやり、ため息をついている。今日の叔父はいつもよりも表情豊かである。

「裁判の件は承諾と解釈してよいか。それならば全てを話す」

 二人とも私が承諾する事を前提に話を進めいる。大体“王が判決を下す”という規則があるかぎり私が裁くことは無理だ。その事を説明すると、私の判断を自分が告げればいいと国王は言ったのだ。
 国王の発言は常に嘘くさく気持ち悪かった。しかし、今の国王は嘘くさくないが違和感がある。

「承知しますが、今回の提案は国王陛下と叔父上の考えですか」

 裁判の件は断っても国王権限で命令されれば断れない。ならば潔く自ら受けようと覚悟をした。しかし、今回の計画は本当に二人の案であるか気になったので確認した。すると国王はすぐに首を振って否定した。

「僕とオリバーだけの考えではないよ。それと国王陛下ではなく父と呼んでほしいな」

「そうですか。では叔父上、承諾しましたので説明をお願い致します」

 国王の呼び方についての願いは無視した。幼い頃から国王陛下と呼ぶように指導されてきているのだ。今更替えることはできない。公の場では“国王陛下”と呼ぶことが基本であるため、この件についてはいくら命令されても変えさせることはできない。

 それよりも“私がハリー・ナイトを裁く”ように提案した者が気になる。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。  これが全ての始まりだった。 声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。  なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。 加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。  平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。 果たして、芳乃の運命は如何に?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...