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カトリーナは顎に手を当てると眉を下げて困った顔をした。
「しかし、ティナ様は王子様に興味がありません」大きくため息をついた。「アルベルトの方に興味があるようで……」
「ん?」予想外の言葉にリチャードは眉を上げた。「そうなの?」
「アルベルトはティナ樣の素性を知ったのだと思います。だから、彼女が自国……。黒の国に戻すつもりです。二人だけで向かうのは危険です。あの国の女王を筆頭に好戦的なですし……」
緑の瞳の素性だけはなく黒の国が好戦的である事は一部の人しか知らない事だ。そもそも、黒の国の情報は遮断されている。刺激的な事柄多すぎるあの国は我が国民には毒だ。
「アルベルトは、緑の瞳について気にしていました。そこからティナ様に興味を持ったのでしょう」
カトリーナは瞳が潤んでいる。アルベルトへの心配もあるのだろが違う感情も含まれているように思えた。
「彼は初めから私とティナ様が話していると不愉快そうにしていましたから一目惚れなんでしょうね」
数日前に出合ったアルベルトにそういった様子はなかった。むしろ、彼の頭の中はカトリーナでいっぱいであったのだろう。だからそこ、今回の依頼を受けた。
「無事に黒の国の女王に会い、許し得られればティナ様が黒の国の女王となる事ができます。それに……」カトリーナ一呼吸置いて、声を小さくした。「アルベルトもティナ様と一緒になれます」
リチャードはカトリーナのために必死なアルベルトに同情した。
カトリーナは幼い頃から頭の中で考え物語を現実だと思うふしがある。だが、今回は本来公爵令嬢が知り得ない情報をカトリーナが持っている事に引っかかった。
すぐにでも情報の出元を確認したかったが、カトリーナ自身に被害が及ぶような事は避けたく慎重になった。
「ケイトはアルベルトが好きだよね。それでいいの?」
「勿論です。使用人から女王の配慮になれるのですよ。これ以上の幸せはありません」
 笑顔で自信満々に言っているが、リチャードはそれが強がりのように感じた。
「なぜ一緒にいくの?」
「勿論、護衛です。ティナ様は勿論のこと、アルベルトも私より弱いのです」
王女(仮)と侍従に護衛をする公爵令嬢なんて聞いた事がない。
「護衛なら優秀な人間をつけるよ。十二歳の令嬢に護衛される侍従なんて恥じでしかないよ」
 リチャードはじっとカトリーナの青い瞳の中を見た。
「それともケイトがいかなければならない理由があるの?」
「……」
カトリーナは黙ると目を泳がせた。
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