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「ケイトは公爵家が嫌いなの?」
「優しいお兄もいますし家は好きですよ。公爵様は……、目的はどうあれ、金銭を掛けてくださった事に感謝しています」
「嫌味かい?」リチャードは苦笑した。
「お兄の愛は感じていますよ。だから、公爵家が没落するのは望ましくないと思います」
「没落……。昔から言っているね」
御三家は王家の血がながれているいわゆる分家だ。シドニー家もその一つで、一般貴族とは大きな差がある。没落なんて事は国の貴族制度が廃止かそうとうな問題を起こさない限りありえない。
「それは私が王妃を望んだらの話ですので、大丈夫です」
それも良く聞く話であるが、理解に苦しむ。カトリーナに相当な問題がなければ婚約解消にはならないし、なったとしても家が潰される事はまずない。
「ただ、アリベルトとティナ様だけ黒の国に行くのは……」
さっきまで『自分の旅行』と言っていたのに、アルベルトが行くと断言してしまっている。
迂闊であるが、カトリーナの可愛らしい部分だ。
顎に手を当てると、カトリーナはマルスの方をクルリと向いて頭を下げた。
「マルス様。本日はありがとうございます。本来は、見送りする所ですが兄との急用ができましたので失礼します」
カトリーナはそう言うと、近くにいた使用人に目で合図をした。マルスの返事を聞くと、カトリーナはリチャードの手を引いた。
「ケイト……?」
抵抗することなく、ついて行くと自室に押し込まれように入れられた。
「お兄と腹の探り合いをするつもりはありません。私を愛しいと思うなら腹は割りましょう」
「……」
そうは言っても、カトリーナに余計な情報は与えたくない。
「あぁ……」カトリーナは黙っているリチャードを見て頷いた。「分かりました。私から話します」
そう言ってもらえると助かる。
リチャードは立場もあり多くの事を伝えられず回りくどい言い方になってしまう。しかし、カトリーナが知っているとなれば出どころが自分ではなくなるため話が話しやすくなる。
「ティナ様は緑の国の王子と黒の国の女王の子どもです。我が国の王子様がティナ様と結婚するなら、女王との同盟が組めるはずです」
リチャードの中では緑の瞳が女王の子と言うのは可能性に過ぎなかった。それははっきり断言されるとカトリーナの情報源が気になる。この手の情報は表向きの場所では手に入らない。リチャードはすぐにその疑問を解消しようとせずにカトリーナの話を黙って聞いていた。
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