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第59話 受験生にクリスマスはない
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ローテーブルで勉強することに慣れ、今まで勉強していた机は棚と化していた。憲貞がいなくなっても、いなかった以前と同じ気持ちではない。しかし、感傷に浸っている暇などなくひたすら勉強した。
憲貞を気にしなくなった分、勉強がはかどっている。それに自分の弱さを感じた
自室の扉を叩く音がして返事をすると、珍しく母が入ってきた。
「入試なんだけど、幕中と快晴中? あと、桜華だよね?」
「はい」
そろそろ聞かれる頃だと思っていた。
ローテーブルに広げていたテキストをどかして、白い紙を置いた。母は座布団に座りその紙を覗き込んだ。
「まず、1月は千葉の幕中と帝東大学帝東を受けます。それから2月1日に快晴中、2日と4日に桜華です。よろしくお願いいたします」と言いながら紙にサラサラと学校名と日付を書いた。
「それだけ?」
「はい。桜華は特待を取りたいので2回チャンスをください」
即答すると、母は不安そうな顔をして唸ったが「そうか」と言って部屋を出て行った。
偏差値の高い学校のみを受ける事に不安がないわけではない。テストで合格確率80%が出ている学校でも確実ではない。20%は落ちるわけなのだから当然だ。
合格率80%を超える桜花も特待Sを狙うなら、安心はできない。
「勉強するしかない」
貴也は鉛筆を強く握った。その時カレンダーが目に入った。12月の2週目の日曜日に赤く丸を付けた。
最後の志望校判定のテストだ。
そこで、偏差値が上がらなくても志望校を変更するつもりはなかった。だからこのテストは志望校の最終確認というより自分の理解できていない分野を炙り出すために受ける。
気合を入れ、再カレンダーを見てため息がでた。もとから派手に印がついている日がある。
小学校低学年までは祖母が自宅に来てお祝いをしてくれたが亡くなってからは平日と変わらなくなった。最初は寂しさを感じたが通塾するようになると気にならなくなった。
学校では話題になっていた。小学校6年になると恋人という関係を築く者もいる。彼らは日中だが一緒に過ごすようだ。
「ねぇ、江本君」
「なに?」
「あのね、クリスマスパーティーやるんだけど来ない?」
よく話しかけ来るツインテールの女子が、甘い声で誘ってきた。
「ちょっと、貴也君は受験あるし無理言っちゃだめよ」おかっぱの女子が割り込んできた。
「なんで、名前で呼んでいるのよ」
「あ、私、男子みんな名前で呼んでいるから、癖で」ペロリと舌を出すと貴也のほうに甘い視線を送った「ねぇ、もう名前で呼んでいいよね」
「なんでもいいよ」にこりと笑顔を向けるとおかっぱの女子は嬉しそうに笑った。
すると、他の女子も呼びたがったので全員に許可を出した。
「それで? クリスマスなんだけど」再度誘うおうとするツインテールをおかっぱが「ダメよ」と言って止めた。彼女はツインテールと話しているはずだが、よく目があう。
アピールであることは痛いほどわかったが面倒くさくて机につっぷした。すると、すぐに入眠することはできた。
憲貞を気にしなくなった分、勉強がはかどっている。それに自分の弱さを感じた
自室の扉を叩く音がして返事をすると、珍しく母が入ってきた。
「入試なんだけど、幕中と快晴中? あと、桜華だよね?」
「はい」
そろそろ聞かれる頃だと思っていた。
ローテーブルに広げていたテキストをどかして、白い紙を置いた。母は座布団に座りその紙を覗き込んだ。
「まず、1月は千葉の幕中と帝東大学帝東を受けます。それから2月1日に快晴中、2日と4日に桜華です。よろしくお願いいたします」と言いながら紙にサラサラと学校名と日付を書いた。
「それだけ?」
「はい。桜華は特待を取りたいので2回チャンスをください」
即答すると、母は不安そうな顔をして唸ったが「そうか」と言って部屋を出て行った。
偏差値の高い学校のみを受ける事に不安がないわけではない。テストで合格確率80%が出ている学校でも確実ではない。20%は落ちるわけなのだから当然だ。
合格率80%を超える桜花も特待Sを狙うなら、安心はできない。
「勉強するしかない」
貴也は鉛筆を強く握った。その時カレンダーが目に入った。12月の2週目の日曜日に赤く丸を付けた。
最後の志望校判定のテストだ。
そこで、偏差値が上がらなくても志望校を変更するつもりはなかった。だからこのテストは志望校の最終確認というより自分の理解できていない分野を炙り出すために受ける。
気合を入れ、再カレンダーを見てため息がでた。もとから派手に印がついている日がある。
小学校低学年までは祖母が自宅に来てお祝いをしてくれたが亡くなってからは平日と変わらなくなった。最初は寂しさを感じたが通塾するようになると気にならなくなった。
学校では話題になっていた。小学校6年になると恋人という関係を築く者もいる。彼らは日中だが一緒に過ごすようだ。
「ねぇ、江本君」
「なに?」
「あのね、クリスマスパーティーやるんだけど来ない?」
よく話しかけ来るツインテールの女子が、甘い声で誘ってきた。
「ちょっと、貴也君は受験あるし無理言っちゃだめよ」おかっぱの女子が割り込んできた。
「なんで、名前で呼んでいるのよ」
「あ、私、男子みんな名前で呼んでいるから、癖で」ペロリと舌を出すと貴也のほうに甘い視線を送った「ねぇ、もう名前で呼んでいいよね」
「なんでもいいよ」にこりと笑顔を向けるとおかっぱの女子は嬉しそうに笑った。
すると、他の女子も呼びたがったので全員に許可を出した。
「それで? クリスマスなんだけど」再度誘うおうとするツインテールをおかっぱが「ダメよ」と言って止めた。彼女はツインテールと話しているはずだが、よく目があう。
アピールであることは痛いほどわかったが面倒くさくて机につっぷした。すると、すぐに入眠することはできた。
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