【R18】僕だけの大切な弟。誰にもわたすつもりはない。〜DomSubユニバース〜

第三十六話 星遥斗③

数時間後。
遥を背負った市川が大量の書類が床に置くと、更にハイローチェアを引きずってきた。
「僕チャンは目の前の部屋に住むから」
遥斗が住むのは大きすぎるほどの一軒家。二階にある自室以外はほぼ使用していない。老婆が掃除をしていたから綺麗ではあるが生活感のないモデルルームの様であった。
「どーぞ」
だから、どの部屋を使われても関心はなかった。
市川は背負っていた遥をハイローチェアに寝かせた。
「遥サンは入浴も済ませたのでもうやることがありません。遥斗サンは夕食どうします？」
「ここで食べますが市川さんが作るのですか？」
「はぁい。老婆サンの方がいいなら彼女に頼みますよ？」
「なんでも構いません」
「そーですか」市川は笑いながら去って行った。
彼がいなくなると部屋が一気に静かになり、遥の寝息だけが聞こえた。
遥はぐっすりと眠っていた。
何をしていても愛らしかった。
遥斗は市川が持ってきた大量に書類に手を掛けた。それは育児書の内容だけはなく、遥の幼稚園や保育園、遥斗自身を含む就学についての情報があった。また、学習資料も揃っていた。
「全部手書きかぁ」
機械が書いたように同じサイズの字が並んでいるのが異様に感じたが、情報には関係ないので読み始めた。
夢中で読んでいると「ふにゃ」という声が遥から聞こえ、慌てて立ち上がりハイローチェアをのぞいた。すると、遥が泣き出した。
「えぇ……なんで？　お腹いっぱいじゃなの？」
泣かれて動揺しながら遥を抱き上げて時計を見た。
「え……？」
思ってよりも時間が進んでおり、窓の外を見ると朝日がのぼっていた。
「そりゃ、お腹すくか」
遥斗は遥と共に部屋を出ると廊下に何かが入ったビニール袋あった。気になったが今は遥が優先だと思い、一階にある台所に行った。冷蔵庫以外を使用したことないため何がどこにあるのか分からなかった。
「おはようございぃ」朝から元気な声が響いた。「流石、赤サン早起きですねぇ」
テンションの高い市川の声は朝から聞くのは辛かった。
「赤ん坊は早起きなんですか？」
「どうでしょうねぇ」相変わらず市川は笑顔を浮かべていた。「そういえば、遥斗サン食事を扉の所に置いておきましたが食べなかったですね」
そう言いながら市川はビニール袋を揺らしながら見せてきた。
「……忘れていました」
「まぁ、いいですけど……。遥サンの離乳食と朝食の用意をしますねぇ」
市川はそう言うと手際よく料理を始めた。
「遥、ちょっと静かにしててね」
遥斗がそう言うと、大きな声で泣いていた遥がピタリと静かになった。それを見て市川は目を大きくしたがすぐに料理の方に視線を戻した。
遥斗は市川の手の動きを一瞬たりとも見逃さないように凝視した。
「そんな、見られるとぉ。照れてしまいますよ？」市川はふざけた調子で言ったが遥斗は真剣表情をして頷くだけだ。「そんなに僕チャンの動き素晴らしいです？」
「素晴らしいです。覚えます」
素直な感想を返すと、市川は気が抜けた顔をして「そうですか」と答えた。
食事が完成すると、遥を座らせてテーブルに並べる手伝いをした。その間、遥はおとなしく待っていた。
遥の前に離乳食を置くと、お腹がすいたようで必死に手を伸ばしていた。遥斗はそれを見ると、後を市川に任せ席に着き遥の食事介助を行った。
口にご飯が入ると遥は嬉しそうに笑った。
次々と食材が口に入り消えていくのが面白かった。
「……なんですか？」
ニヤニヤとしながら遥斗を見る市川に気づき、目を細めた。
「いぃぃえ」市川をオバさんのように手を振った。「遥斗サンは感情がなくすべての事を完璧にこなすロボだと聞いていたので。人間なのだと思ったのですよぅ」
「別に要件のみ伝えてくる大人に笑う必要はないだけですよ」
遥から目を離さずに素っ気なく答えた。
「あぁ～」
遥が声を上げて食事を要求されると遥斗は自然と表情が柔らかくなった