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123限目 年度初めは激務

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 春がいなくなったのを確認すると、圭吾はレイラが座る会長席に寄りかかった。

「今年の会長は人使いが荒いですね」
「優秀な副会長に感謝しますわ」

 レイラはキーボードを動かす手を止めずに答えた。

 周囲の会話が気になって仕方ない亜理紗はチョイチョイ、手を止めて聞き耳をたていた。そのたびにリョウのため息が聞こえ、慌てて手を動かすと言うのを繰り返していた。

「4月からハードですよ」

 圭吾はニコニコとしながら、メモリーカードを机の上においた。

「コレ、お返しますね。それにしても、すごいですね。これがなければ中村幸宏(あの)の件があったとしても桜花会の人間を黒服にするなんてできなかったじゃないですか」
「最後まで、あの方には感謝してますわ」

 レイラは、最後にキーを押すとパソコンの電源を落として棚にしまいながら、報告書に今回のことの記録を書き終わったことを伝えた。

「最後、制限解除を記録するれば終了ですわ」
「仕事が早いですね」

 レイラは鞄に荷物を入れながら、圭吾に帰ることを伝えた。そして、立ち上がると、リョウと亜理紗の方にいき挨拶をすると桜花会室はでた。

 窓には夕日に光が差し込み、すれ違う生徒はほとんどいなかった。校庭の近くを通った時部活のする生徒の声がした。
 なんとなく、レイラが窓の外を見る陸上部が走っているのが見えた。

「あ、アレは」

 レイラは見覚えのある顔を見つけて、窓から顔を出した。

「生徒会1年の一(にのまえ)美月(みづき)」

 美月は、走り始めるとどんどん周りの生徒を抜かしていきあっという間に1番でゴールした。彼女は嬉しそうに周囲の生徒とハイタッチをしていた。

(文武両道か。すげーな、そういや亜理紗も速いんだけな。でも副会長になったから部活我慢して頑張ってるんだよなぁ)

 レイラは関心しながら、車へ向かった。
 帰宅すると、すぐに自室に着き、着替えをして椅子に座り一息ついた。
 すると扉をノックする音が聞こえ、返事をしながら扉を開けるとそこにはまゆらがいた。

「朝ぶりですね」
「そうですわね。クラスが違いますし、学校ではなかなか会えませんわね」
「だから、会いに来ました」

 にこりと笑いかけてくるまゆらは可愛かった。レイラは彼女が来てくれたことが嬉しくて、部屋に迎え入れた。

「どうぞ、座って下さい。まだ夕食まで時間ありますしお話しましょう」
「はい」

 いい返事をすると、まゆらは「お邪魔します」と言って入り椅子に座った。扉を閉めたレイラが後から来て椅子に座った。

「学校どうですの?」
「まだ、入学して2日目ですから慣れないが多く大変です。それにいきなり事件ですし」
「事件?」
「レイラさんが発端ですよね。桜花会権利停止ですよ」

 まゆらが、人差し指を口に持ってきてじっとレイラを見た。レイラは笑うとまゆらもニコリと笑った。

「でも、生徒会の処理は大変ではなかったはずですわ」
「そうなんですよ。会長がまるでこの事件が起こることを知っていたように迅速に処理してました」

 まゆらは、「うーん」と考えて込んだ。

「会長は、話によると勉強だけの人と聞いていたのですが……」

(あの人が全部整えて卒業してったんだろうけど)

「そうなんですね」
「でも、あのプライドが高い横山様を黒服にするとは思い切りましたね。しかも北沼様をつけて学校を辞めないようにするとは手腕です」
「……? 大晴はプライドが高いというかお子様なだけだと思いますけど、ご存知でしたか?」

 まゆらは、目を大きくしてからレイラから目をそらして口に手をあてた。しばらく考えるとまた、レイラに視線を戻した。

「噂ですよ。初日に友だちと桜花会の紹介ページを見てて、その子に性格とか聞いたんです」
「友だち……?」

 レイラがオウム返しをすると、まゆらはあわてて両手の手のひらをレイラに見せてそれを素早く横にふった。

「いえ、友だちと行っても初日に知り合った人です」
「そうですの」

(友だちかぁ。そう言えば俺(レイラ)にはいないなぁ。藤子と夢乃は俺(レイラ)といるのが仕事だしな。あ、彩花か。そうだ、友だち宣言されたな)

 レイラが頷いていると、まゆらが心配そうに顔を覗き込んでいた。それに、驚いて身体をひいた。

「え、あ、すいません。友だちっていいですよね」
「えっ。レ、レイラさんの友だちって」

 まゆらが目大きくした聞いた。
 レイラは驚かれる理由が分からず、首をかしげ「学校のですわ」と答えると彼女は更に目を大きくした。

(そんなに驚くことか? 普通いるだろ。ゲームの俺(レイラ)もいたんじゃねぇのか? 多分……)

 まゆらはそのまま、しばらく何かを考えるように停止したあとニコリと微笑んだ。

「レイラさんのお友だちなら仲良くしたいですわ」
「生徒会ですから、毎日お会いできると思いますわ。中村彩香さんですわ」
「ーっ」

 その名前を聞いた時、まゆらは言葉を失った。まゆらは目をつぶり必死に何かを耐えているようであった。
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