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122限目 春の反省
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桜花会室に入ると、数名のメンバーが仕事をしていた。
レイラが入ると全員が立ち上がり挨拶をした。レイラは彼らに軽く返事をすると会長席に座り、引き出しからパソコンを取り出した。
すると、机の上に人影が見え頭を上げると、そこにいたのは春であった。
「あの、少しお時間よろしいでしょうか」
「ええ」
深刻な顔している春にレイラが返事をすると、春は礼を言って話始めた。
「今回はありがとうございます。元を辿れば春にも非がありました」
「勘違いは誰にでもありますわ」
「それで、横山君の桜花会復帰を早めていただけないでしょうか」
「それは無理ですわ。規則ですから」
その瞬間、目を大きくしてわかりやすく落ち込んだ。
「そうですか」
「要件がそれだけでしたら、仕事に戻って下さい。会計の大道寺リョウから仕事を聞いてますわよね」
「は、はい。申し訳ありません」
春は頭を下げると、元の席に戻りリョウにもらった仕事を始めた。その目には涙を浮かべていたが、他メンバーは見守るだけで声をかけなかった。
しばらくすると、春は席を立ちリョウの元へ行った。
「あの、リョウ様」
「なんですか?」
「できました。確認お願いします」
「サーバーにあげたのですか? ちょっと確認しますね」
「はい」
リョウは、データを開くとマウスを動かして数分で確認した。
「さすがですね。優秀ですね。お疲れ様です」
「ありがとうございます」
礼を言う春の声は元気がなかった。その時「どれどれ」と圭吾がパソコンを覗きこんだ。リョウを無理矢理退けると、マウスを奪い書類を確認すると感心した声を上げた。
「すごいね。この短時間やったの?」
ニコニコとして、褒めると「はい」っと小さいな声で答えた。すると、圭吾はパソコンから離れて腕を組んだ。
「どうしたの? 元気ない? 君は積極的に動くタイプじゃなかったの?」
「あ、いえ。その……」
「具合い悪い?」
「いえ、そうでなくて……」
二人の会話を横目に、リョウはパソコンに目を向けると対面にいる亜理紗が目に入った。
彼女は圭吾と春の会話を気にしているようであった。だから、“仕事して下さい。終わらないと帰しませんよ”とメッセージを送った。それを見た亜理紗は、パソコンの隙間からチラリとリョウをみた。彼はそんな亜理紗を無視して仕事をすると、彼女は“はーい”と言うメッセージを送ると指を動かし始めた。
「何かなぁ?」
暗い顔をする春に、軽い調子で圭吾言った。
「いえ、その事で皆さんに迷惑をかけてしまいました。だから……。春は自分の事ばかりでした。大晴の気持ちを考えず……」
「いいんじゃない。迷惑かけて。どう頑張っても迷惑はかけるし、相手に気持ちなんかわかんないよ」
「……そうですが……。そのせいで横山君が黒服に」
春は、視線を落として口を固く結んだ。
「あれは、自業自得でしょ。嫌な事があったからって相手の否定するもんじゃないよ。他にやり方があるじゃん。大体、彼が否定していたのは君だけじゃないしね。傲慢だったか、黒服になったら誰もちかずかないんじゃない?」
「……」
春はどう答えていいか迷っていた。
「何? もしかして、すぐに桜花会に横山君を戻して彼に恩を売ろうとしてるの?」
「そんな事はありません。少しでも横山君のためになればと思ったです」
「ためになれば、自分に気持ちが向くとか?」
「違います。春はもう、自分の気持ちを押し付けるようなことはしません」
春は勢いよく顔を上げると、強く抗議した。それを圭吾はニヤリと笑った。
「そう。ならいいじゃん。頑張って。今日はお疲れ」
「そうします」
春は怒って、桜花会の部屋を出て行った。
レイラが入ると全員が立ち上がり挨拶をした。レイラは彼らに軽く返事をすると会長席に座り、引き出しからパソコンを取り出した。
すると、机の上に人影が見え頭を上げると、そこにいたのは春であった。
「あの、少しお時間よろしいでしょうか」
「ええ」
深刻な顔している春にレイラが返事をすると、春は礼を言って話始めた。
「今回はありがとうございます。元を辿れば春にも非がありました」
「勘違いは誰にでもありますわ」
「それで、横山君の桜花会復帰を早めていただけないでしょうか」
「それは無理ですわ。規則ですから」
その瞬間、目を大きくしてわかりやすく落ち込んだ。
「そうですか」
「要件がそれだけでしたら、仕事に戻って下さい。会計の大道寺リョウから仕事を聞いてますわよね」
「は、はい。申し訳ありません」
春は頭を下げると、元の席に戻りリョウにもらった仕事を始めた。その目には涙を浮かべていたが、他メンバーは見守るだけで声をかけなかった。
しばらくすると、春は席を立ちリョウの元へ行った。
「あの、リョウ様」
「なんですか?」
「できました。確認お願いします」
「サーバーにあげたのですか? ちょっと確認しますね」
「はい」
リョウは、データを開くとマウスを動かして数分で確認した。
「さすがですね。優秀ですね。お疲れ様です」
「ありがとうございます」
礼を言う春の声は元気がなかった。その時「どれどれ」と圭吾がパソコンを覗きこんだ。リョウを無理矢理退けると、マウスを奪い書類を確認すると感心した声を上げた。
「すごいね。この短時間やったの?」
ニコニコとして、褒めると「はい」っと小さいな声で答えた。すると、圭吾はパソコンから離れて腕を組んだ。
「どうしたの? 元気ない? 君は積極的に動くタイプじゃなかったの?」
「あ、いえ。その……」
「具合い悪い?」
「いえ、そうでなくて……」
二人の会話を横目に、リョウはパソコンに目を向けると対面にいる亜理紗が目に入った。
彼女は圭吾と春の会話を気にしているようであった。だから、“仕事して下さい。終わらないと帰しませんよ”とメッセージを送った。それを見た亜理紗は、パソコンの隙間からチラリとリョウをみた。彼はそんな亜理紗を無視して仕事をすると、彼女は“はーい”と言うメッセージを送ると指を動かし始めた。
「何かなぁ?」
暗い顔をする春に、軽い調子で圭吾言った。
「いえ、その事で皆さんに迷惑をかけてしまいました。だから……。春は自分の事ばかりでした。大晴の気持ちを考えず……」
「いいんじゃない。迷惑かけて。どう頑張っても迷惑はかけるし、相手に気持ちなんかわかんないよ」
「……そうですが……。そのせいで横山君が黒服に」
春は、視線を落として口を固く結んだ。
「あれは、自業自得でしょ。嫌な事があったからって相手の否定するもんじゃないよ。他にやり方があるじゃん。大体、彼が否定していたのは君だけじゃないしね。傲慢だったか、黒服になったら誰もちかずかないんじゃない?」
「……」
春はどう答えていいか迷っていた。
「何? もしかして、すぐに桜花会に横山君を戻して彼に恩を売ろうとしてるの?」
「そんな事はありません。少しでも横山君のためになればと思ったです」
「ためになれば、自分に気持ちが向くとか?」
「違います。春はもう、自分の気持ちを押し付けるようなことはしません」
春は勢いよく顔を上げると、強く抗議した。それを圭吾はニヤリと笑った。
「そう。ならいいじゃん。頑張って。今日はお疲れ」
「そうします」
春は怒って、桜花会の部屋を出て行った。
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