上 下
77 / 131

77限目 桜花会の黒歴史①

しおりを挟む
 憲貞の“中村幸弘”という言葉にレイラは目を大きくした。しかし、“知らない”と首を横に振った。

(ヤツとの関係を知られるのは面倒だ)

 憲貞はレイラの返答に頷いてから説明を始めた。

「そうか。中村製薬会社の嫡男であり先程いた中村彩花の兄である。兄が桜花会であるにも関わら妹が特待をとっている理由については様々な噂があるが真相はわからない」
「妹と仲が良いなら知っているじゃないの?」
「いいえ」

 香織に質問にレイラは即座に否定した。更に聞こうとしたが香織を憲貞がとめたため、口を閉じた。

「香織の言う事は気にしなくて良い。彼らの家庭事情なんてどうでもいい話だ。先に進める」

 憲貞に睨まれて香織は悪びれる事なく「はーい」と軽く返事をすると黙った。

「彼は桜花会の会長だった。歴代で最も不名誉な会長だと言われている。当時は生徒会と言う組織はなかった」
「つまり、彼に誰も逆らえなかったと言う事ですか?」
「そうだ。もともと、桜華学園は生徒の主体性を重んじるから行事だけではなく規則に至るまで桜花会が中心となり行なっていた。だから、今よりも桜花会の権力は強かった」
「それは大変ですね。今は行事の運営は全て生徒会ですわよね。規則も桜花会が提案しても生徒会の賛成を得ないといけませんわ」
「そうなったのがこの時だ」

 憲貞は悲しい顔をしてゆっくりと言った。それから、憲貞は中村幸宏が会長であった時の彼の行動を説明した。
 内容は、意見が合わない人間に対して威圧的な態度をとる事から始まり、桜花会の人間を退会させたり、更には退学に追い込んだ生徒もいた。

 レイラはそれを聞いて顔を青くした。

「それでは生徒がいなくなってしまいますわよね」
「そうだね。だから最終的には学園側が動いた。その前に不満を持った学生が組織を作った。その学生が特待生だった。当時から特待制度があり、待遇も今とそれほど変わらず多額の支援金を出ていた。だから、彼らは桜花会長の横暴で退学になりたくなかった」
「なるほど、それが生徒会も元となったですわね。それで、当時の中村会長が不信任案を出されたのですの」
「そうだ。当時はそういった制度はなかったのだが……全生徒5割以上の署名を集め学園側に提出した。そこで特待生による生徒会ができて、桜花会から権限を奪ったのだがこのままでは桜花会の存在があやうくなってしまうから……」

 そこまでで、憲貞は言葉を止めてニヤリと笑い香織の方を見た。彼女はため息をついた。

「そこまで話したなら、全て自分で話せばいいじゃないか」
「事実だが言いづらい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。

天災
恋愛
 美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。  とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

処理中です...