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文化祭

9.帰りたくない

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放課後。 部活も終わって部室で着替えてるとき。

オレより先に着替え終わったあきらは、カバンを持ってロッカーを閉めた。


「・・・・レイキ。 オレ、ちょっと用事があるから、今日は先帰っててくんねー?」


え。

・・・・帰りに、聞いてみようと思ってたんだけど・・・・


「・・・用事って?」

思わず、探るようにあきらを見てしまう。

「先生と話があるんだ」


・・・・・進路の、ことかな。


「・・・・・そ、か。 うん、わかった」

「ん。 じゃあな。 お疲れ様ー」

「おう、お疲れー」

「お疲れ様ですっ」


あきらが部室を出て行って。 オレも着替え終わったけど、なんか、帰る気になれなくて。

オレはベンチに座って、みんなと話をしていた。


そのうち、だんだんみんな帰って行って。

残ってるのは、オレと亮介と修吾だけになった。


「・・・・レイキ、帰んねーの?」

修吾がオレに聞いてくる。


「んー・・・・ もう少し、いる」

あきらは先に帰ってろって言ったし、待ってるなんて言ってないから、ここに居たってあきらは戻ってこないけど。

なんかまだ、帰りたくなくて。


「でも、もう鍵閉めるぞ」

亮介がオレたちに出るように促す。

・・・・オレが居たら、鍵、閉められないもんな・・・・・

「亮介。 鍵、貸して。 閉めとくからさ」

「・・・・わかった」

亮介から鍵を受け取る。

「・・・・じゃあ、先帰るな・・・ って、修吾は帰らねーのか?」


修吾はオレの隣に腰を下ろした。

「オレももう少し、いる。 じゃあな、亮介」


え、修吾も居るつもりなのか?

「修吾っ・・・ もう、帰れよ」

「いいだろ、別に」

修吾はオレに向かって唇を尖らせたあと、亮介には笑って手を振った。

「わかった。 じゃあ、鍵頼むな」

亮介はオレたちを残して帰ってった。



「修吾、なんで帰らねーんだよ」

「んー? レイキが心配だったから」

「心配って、別に」


修吾は言葉通り、少し心配そうな瞳でオレを見る。


「・・・あきらは、先に帰れって言ってただろ。 部室で待ってるって、ちゃんと連絡してんのか?」


「べっ、つに、待ってるわけじゃ、ないから」


修吾は軽くため息をついて、スマホを取り出した。

そのまま黙ってスマホをいじる。

何も言えなくてオレも黙ったまま。


「・・・・よしっ」

メッセージを送信し終わったのか、修吾はスマホをしまった。


「・・・・レイキ」


修吾の視線がオレに向いて、少し、どきっとしてしまう。




修吾とはもう普通に友達としてやっていけてるけど。


部室でこんな風に2人きりになるなんて、よく考えたら、あの時、以来で。


オレは思わず、修吾から離れるようにベンチの端に寄った。




修吾はふって苦笑した。

「・・・・んな警戒すんなって」

「あ・・・・ ご、ごめん」

「・・・・・謝んなくていい。 ・・・・レイキがそう思うのって、オレのせいだし。
・・・・・でも、ホントそんなつもりじゃなくて。 ただ、心配だったからさ」


修吾もオレから離れるように、ベンチの反対側の端に体を寄せた。


修吾が気を使ってくれてるのが分かって、オレは力の入ってしまっていた肩を少しおろした。



「・・・・そういえば、レイキのクラスってカフェやるんだってな」

「え? あ、ああ・・・」

急に文化祭のことを振られて少し驚いたけど、話題が違うことになってホッとした。

「修吾のクラスは?」

「ホラーハウス」

修吾が言いながらニッて笑う。

「オレ、ゾンビ役するんだ。 来てくれよな」

「え、修吾ゾンビすんのか?」

「そ。 イケメンゾンビ」

修吾の言葉に、思わず笑ってしまう。

「自分で言うなって。 っていうか、ゾンビにイケメンもなにもねーだろ」

「そ? かわいいコが来たら、声かけよっかなーって思って」

「・・・ゾンビに声かけられたら、絶対逃げるだろ」

「わかんねーぜ? ありえない状況に、逆にときめくかも」


いたずらっ子みたいな表情で言う修吾。


・・・・改めて見ると、修吾ってホントにイケメンだよなー・・・・


「レイキは? 何すんの?」

「あー・・・ オレのクラス、執事とメイドカフェなんだ。 その、・・・執事役」

「執事? レイキが?」

修吾は目を少し大きくして、驚いた表情をした。


・・・やっぱなー・・・ みんな、似合わねーって思ってるよなぁ・・・・・


「もー、似合わねーのは分かってんだって。 ちょっと事情があって、やんなきゃいけなくなったんだ」

「いや・・・ でも、かわいい感じの執事ってのも、なかなかいいんじゃねー?
あ、むしろ、メイドの方がいいかもな!」

「はあ?」

「メイドってさ、フリフリのエプロンとかするんだろ? レイキ、似合いそー」

「なに言ってんだよ。 ありえねー」


修吾とそんな話をしてると、人の足音が近づいてきた。

足早なその音は、どんどん近づいてきて。



・・・・バンッ!



勢いよく開いた部室のドアを驚いて振り返ると、あきらが立ってた。



「あき、ら?」


戻ってくるなんて思ってなかったから、驚いてしまう。



走って来たのか、あきらは息を乱したままオレに近づいてきて、腕を掴んだ。


ちらって、修吾を見る。

・・・少し、鋭い視線。



その視線を受け止めて、修吾は少し口角を持ち上げた。


「じゃーオレ、帰ろっかなぁ」

そう言って、立ち上がる。


「え、帰るの、か?」

「ああ。 あきら来たし。 じゃな」

修吾はひらひらと手を振って、ドアに向かう。


「修吾。 ・・・LINE、ありがとな」

あきらが声をかけると、修吾は一瞬振り返って笑う。

そのまま、部室を出て行った。



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