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10.デートをして視えたもの

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夏休みに空野くんとデートをした時。

手を触れると、やっぱり空野くんの前世が視えた。

2回目のデートの時は、占いの場面。



リーファの家の前で感じたお香の香り。 あの香りが漂う星空の元、10人前後の人が集まっていた。

リーファともう一人の女性が、星を読み、水晶や石、お香の煙を使って、占いをしているようだった。

もう一人の女性はリーファによく似た年配の女性で、同じような宝石の装飾品を身に着けていた。

たぶん・・・リーファのお母さん、かな。 リーファによく似ていて、美しい人だった。

占いをしている2人以外は全員男性で、若い人から年配の人までいた。

その中にルーカスもいて。

みんな、一様に真剣な表情。 神聖な空気に包まれていた。


『・・・お告げです』

リーファの母の声が響く。

そこにいる人たちは、みんな一斉に首を垂れた。


『今年は自然の災害もなく、作物は豊かに育ち、収穫も見込まれます。 狩猟も問題なく、食糧の心配はありません。
・・・・ただ』

一旦言葉を切り、眉根を寄せて、悲しげな表情。

『・・・・今後、隣国との戦争は激化します。 徴兵も行われ、若い命が失われるでしょう』

長老と思しき人が、顔を上げる。

『それは・・・この村からも、若い者が戦争に行くということですかな?』

リーファの母はゆっくりとうなずいた。 その後ろで、リーファも悲しそうな表情をしている。


・・・・私は、この間夢で見たことを思い出した。

戦争・・・・ その場にいたルーカス・・・・

あれは、この後に起こったこと・・・・・?





その次・・・・3回目のデートの時に視えたのは、その占いの場面の続きだった。



占いが終わった後も、戦争の話にみんな浮かない表情をしている。

『・・・みなさん』

リーファの母がみんなに呼びかけ、リーファを近くに呼び寄せた。

『娘のリーファも、16になりました。これも皆様のおかげです』

その言葉に、みんなの雰囲気が、少し明るくなる。

『そうか、もう16か。早いものだな』

『そろそろ、結婚も考えないとな』


えっ、16歳、なんだ!?

正直、驚いてしまった。

すごい美人だし、雰囲気からしてもっと年上かと思ってたけど・・・・ 私と同じくらい、なんだー・・・

っていう事は、ルーカスも、同じくらいの年なのかな?

ルーカスもすごく美形なのもあって、年上だと思ってたけど・・・・


『ルーカス! 結婚式はいつするんだ?』

ルーカスの隣に座った男性が、彼の肩を叩く。

ルーカスは照れたように笑った。


そっか・・・ やっぱり、ルーカスとリーファは、結婚するんだ・・・


『リーファが16になりましたので、今後『星読み』はリーファに行ってもらいます』

リーファの母の言葉に、感嘆の声が漏れる。

『みなさんもご存じの通り、『星読み』としての力は、私よりもリーファの方が強力です。 今後もみなさんのお力になれることでしょう』

リーファは微笑み、一礼した。

『みなさん、よろしくお願いいたします』



空野くんの手に触れて視えたのは、ここまでだった。

『星読み』・・・自然災害とか、収穫、戦争の話をしていたし、占い師のようなもの・・・だよね・・・・

リーファって、力の強い、占い師だったんだ・・・・・

そして、ルーカスと結婚するのかあ・・

村のみんなにも祝福されていたし、本当に良かったなって思った。



そして・・・・空野くんと会った日の夜、私は夢でも空野くんの前世を視た。

2回目のデートの日の夜・・・・


ルーカスとリーファは、一緒に野草を採っていた。

『ルーカス、手伝ってくれてありがとう』

『ああ、大丈夫だよ。 これくらいで足りるかな』

『ええ、じゅうぶん』

2人は野草を採り終わったようで、草むらから出て川辺にやってきた。

『休憩しようか』

そう言って、川原に腰を下ろす。

ルーカスは隣に座るリーファを見た。

『・・・リーファ。 前に、リーファは前世も視えるって言ってたよな?』

リーファは小さくうなずいた。

『・・・ええ』

『普通、『星読み』って、未来のことを視るものだよな。 前世が視えるのって、珍しいんじゃないのか?』

『・・・そうね・・・ お母さんは、前世は視えないって言ってたわ』

ルーカスはニッて笑った。

『やっぱり、リーファはすごいんだな』

『そんなことないけど・・・』

ルーカスは少し前のめりに座りなおして、リーファのことを覗き込んだ。

『オレの前世って、どんなのなんだ? リーファと一緒に居たりしたのかな』

真っすぐに自分を見るルーカスに、リーファは少し頬を染めた。

『・・・ルーカスの前世で・・・私も、一緒に、居たわ』

その言葉に、ルーカスは破顔する。

『そうなんだ! 前世でも一緒だったなんて、嬉しいな』

風が吹いてなびいた髪を、リーファは手で押さえた。

『前世で関わりが深い人は、現世でも関係があることが多いのよ。
・・・・前世で・・・・私たちは、結婚していたの』

ルーカスは驚いた顔をして・・・ リーファのことを引き寄せて抱きしめた。

『ルーカスっ・・・!?』

『リーファ・・・ 前世で結婚してたなんて・・・ほんとに、嬉しい。
現世でも・・・・ ずっと、一緒に居たいな』

ルーカスの、リーファへの熱い気持ちが感じられて、なんだか私の胸まで熱くなった。

ルーカス・・・ほんとにリーファのことが大好きなんだな・・・

ルーカスの熱い言葉に、リーファは彼の背中に手を回して抱きしめた。








そして・・・・3回目のデートの日の夜・・・・

私はまた、空野くんの前世を、夢で視た。



ルーカスとリーファは、2人で湖のほとりに居た。

とても綺麗な湖で、水の透明度は高く、魚が泳いでいるのもよく見えた。

ルーカスはリーファに背を向け、湖の方を向いて立っている。

その背中を見つめ、リーファは泣きそうな表情をしていた。


『ルーカス・・・やっぱり、行くの?』

『・・・ああ』

ルーカスはうなずいて、リーファを振り返る。

『オレの弓の腕、知ってるだろ? お呼びがかかって当然だ』

ルーカスはぐっと力こぶを作る仕草をして、リーファに笑顔を見せた。

『・・・戦争は、まだ続くんだろ?』

リーファは小さくうなずく。

『・・・だったら、オレが行って、早く戦争を終わらせてやる』

『ルーカス・・・』

『・・・リーファと幸せになるために、早く戦争のない世界になってほしいから』

ルーカスはリーファに近づき、その髪に触れた。

『だからさ・・・戦争が終わったら、結婚しよう、リーファ』

リーファは黒い瞳を大きく見開いた。 その瞳が涙に濡れていく。

ぽろぽろとこぼれる涙を、ルーカスは指でぬぐった。

『リーファ・・・オレ、絶対帰ってくるから。 ・・・待っててくれるか?』

リーファは泣きながら何度もうなずいた。

ルーカスはリーファをぎゅっと抱きしめ・・・ キスを、した。

リーファはルーカスの首に腕を回す。

お互いの存在を確かめるように、2人は何度も唇を重ねて。


ほんの少し唇を離して、リーファはルーカスの頬に触れた。

『ルーカス・・・絶対、帰ってきてね?』

『ああ、帰ってくるよ』

ルーカスは、愛おしそうにリーファの髪を撫でる。

リーファは微笑むと、自分の首の後ろに手を回した。 ネックレスを、外す。

『・・・お守り。 ルーカスを、守ってくれるように』

そう言うと、外したネックレスをルーカスの首に着けた。

ペンダントトップの宝石は、ルーカスの瞳のように鮮やかなブルーだった。

リーファはその宝石に触れると、瞳を閉じて願いを込めるような仕草をした。

『・・・リーファ、ありがとう』

ルーカスは自分の左の前腕に巻いていた、赤い布を解いた。

『・・・オレ、こんな物しかないけど。 でも、いつも狩りに行くときに使ってるから』

そう言って、その赤い布をリーファの手首に結び付けた。 少し照れたような表情をしながら。

『こんな物がお守りになるとは思えないけど・・・でも、持っててほしい』

リーファは自分の手首にまかれた布を見て、うれしそうに笑った。

『うれしい。 ありがとう、ルーカス』


前に視た、戦争の場面を思い出す。

前線に立っていたルーカス。

・・・どうか無事に戻ってきて、2人が結婚できますように。 そう願わずにはいられない。


・・・私が視ることが出来たのは、ここまでだった。




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