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46.アイスクリームショップ

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「ありがとうございましたー」


笑顔でお客様を見送る。


「坂本くん、慣れてきたね」

一緒に入ってるバイトの女のコに褒められる。


「あ、はい。 おかげさまで」

彼女は大学2年生の、田村タムラさん。 ショートボブがよく似合う、元気な感じの女のコだ。

ここのバイトは1年生の頃からしているらしく、オレにいろいろ教えてくれている。


「笑顔も素敵だよ」

そう褒めてくれるのは、エリナちゃん。

今日はシフトが一緒なんだ。

「ありがと。 ひきつってないか、不安だけど」

「全然大丈夫。 いいよー」

エリナちゃんはにこって笑う。

笑顔もかわいい。


「2人って、仲良いよねー」

田村さんがオレたちを見て笑う。


「つき合ってるの?」


思いがけない言葉を投げかけられて、オレは焦ってしまう。


「え、ええっ?」


つ、き合ってる、なんて。


「ち、違いますよ! なあ?」

慌てて否定して、エリナちゃんを見る。

エリナちゃんは、少しカオを赤くしてた。

「え? あ、う、うん。 違いますよー」

そう言って、少し頬を染めたまま笑う。


「ふうん? 2人、お似合いだと思うなあ」

「そんなことないですって」

オレなんかとお似合いとか言われても、うれしくないし、困るだろう。



「あ、チョコが少なくなったね。 私取ってくるね」

そう言って、田村さんは倉庫にチョコアイスの補充に行った。


「エリナちゃん、なんかゴメン」

「え?」

「あんなこと言われても、困るよなあ」

へらって笑うとエリナちゃんは首を振った。

「え、そ、そんなことないよ」

「エリナちゃん、優しい」

そう言うと、エリナちゃんは少しカオを赤くした。



「ねえ、レイキくん」

「ん?」

「今度の土曜日・・・・ シフト、入ってなかったよね?」


土曜日・・・・

ああ、亮介たちとの約束がある日だ。


「うん」

「私も、入ってないんだ。 ・・・・・・良かったら、どこか、遊びに行かない・・・・・?」


少しうつむき加減で聞いてくるエリナちゃん。


「あー・・・ その日、高校の同級生と会う約束してるんだ。 だからシフト外してもらったんだけど」





「いらっしゃいましたー」

元気な声とともに、自動ドアが開く。


「ユージ!」


やってきたのは、ユージ、マコト、美沙ちゃん、咲良ちゃんの4人だった。


「今日シフト一緒だって聞いたからさー。 みんなで遊びに来たよ」

「わあ、ありがとう」

ユージに笑顔を見せる、エリナちゃん。


ユージが来て嬉しそうだし、やっぱ好きなんだよなあ。


「制服、かわいいね」


ここの女のコの制服は、ミニスカートにフリルのついたエプロンで、結構かわいい。

・・・・・男のは、いたってシンプルだけど。


「そう?」

「うん。 エリナちゃん似合ってる」


ああいうことをさらっと言えちゃうユージって、すごいよなー・・・・・


感心してると、ユージがオレを見た。


「レイキのは、ふつーだな」

「まあ、そりゃあ、な」

「エリナちゃんとおそろいの制服も、似合いそうなのにな」

「はあ?」


何言ってんだ、ユージ。


「レイキくんなら、イケるかも。 かわいいもん」

咲良ちゃんも、ユージに悪ノリして言ってくる。


「似合うわけねーだろ」

「いや、結構イケると思うぜー」


ユージ・・・・ カオが笑ってる・・・・


「イケるわけねーだろ。 ミニスカートだぞ? フリルだぞ!?」


ぎゃあぎゃあ騒いでるところに、田村さんがアイスを持って戻ってきた。


「あれ、坂本くんたちの友達?」

「あ、ああ。 はい」

「少しサービスしてあげたら?」

にっこり笑って言ってくれたから、せっかく来てくれたみんなにサービスしてあげることになった。


「じゃあ私、ストロベリーとキャラメルリボン!」

シングルの料金でダブルにしてあげたら、女のコたちはうきうきしてアイスを選んだ。


ちょうどオレとエリナちゃんのシフトの時間も終わりだったから、みんなの分を作った後、着替えて店を出る。

「おつかれさまでしたー」


「あ、2人とも、コレ」

田村さんが、オレたちの分のアイスを作って渡してくれた。

「わ、ありがとうございます」

受け取って、財布を出そうとすると、

「いいよ。 今日は特別♡」


オレとエリナちゃんはカオを見合わせて笑った。

「ありがとうございます!」



店を出ると、みんな食べながら待っててくれた。

「おつかれー」

「みんな、来てくれてありがとう」

「こっちこそ。 サービスしてもらっちゃって、ありがとね」


オレのはチョコチップとバニラのダブルだった。

このバニラ、香りもよくて味も濃厚で、オレ、好きなんだよなー。


上に乗ってるバニラを食べてると、マコトと目が合った。

「ん? なに?」

「いや・・・・ 美味そうに食うな、と思って」

少し口角を持ち上げて、マコトが言う。

「だって美味いもん。 オレ、このバニラ好きなんだ」


マコトがオレに近寄ってきて、耳元に口を寄せた。


「レイキさ・・・・ 食い方がなんか、エロい」


いきなりそんなことを言われて、焦ってしまう。


「な・・・ なに、言ってんだよ!」


慌ててマコトを振り返ると、カオが至近距離にあった。


「しかもさ・・・・ アイス、唇についてるし。 ・・・・・反則だろ、それ」


囁くように言うと、オレの唇についたアイスを、マコトは指で拭った。

その指を自分でぺろって舐めて、

「・・・・ああ。 確かに、美味いな」


思いがけないマコトの行動に、オレは固まってしまって。



い、いきなり変なこと言ってきたと思ったら、何してんだ、マコト・・・・・!



「も少し、くれよ」


固まってるオレにはお構いなしで、マコトはアイスを持ってるオレの手を掴むと、アイスをパクって食べた。


「・・・ん。 やっぱ、美味い」


そう言って、オレの目を見ながら、自分の唇をぺろって舐めた。




マコトの行動に、頭がどうにかなりそうだった。


た、食べ方が、エロいって、何だよ・・・・


それに、唇についてたバニラアイスが、反則・・・・・? それ、も、エロい、話だよな・・・・・


オレのアイス、食べたし・・・・ か、間接キス・・・だろ・・・・・!




「レイキ?」


手に持ったバニラアイスを睨んだまま固まってるオレを、マコトが覗き込む。


「アイス、 溶けるぜ?」


その言葉にはっとする。

コーンを持ってる手が、冷たい。

アイスが、溶けてきてんだ。


「ほら、ここ、溶けてる」


マコトはオレの手を掴んで、溶けだしているアイスを舐めとった。


「っ・・・・!」


オレの、指っ・・・ 舐めてる・・・・!


マコト、わざと、だろ・・・・・・!



ぞくって、腰にしびれが走った。



「マコトっ・・・・! はな、せ!」


マコトはすぐにオレの手を離した。



オレはマコトを睨みつける。


なん、で、こんな事・・・・・



オレの視線の先で、マコトは口角を持ち上げた。



「レイキくん、美味しいね」

エリナちゃんが話しかけてくる。


そうだよ・・・・ みんなが近くにいたのに、マコトのやつ・・・・・


周りに視線を向けると、みんなそれぞれ話してたみたいで、マコトの行動には気付いてないみたいだ。



「あ、ああ。 美味いよな」

もう、さっさと食ってしまおう。


オレはぱくぱくとバニラアイスを食べてしまった。


「ね、レイキくんの、ちょっとちょうだい?」


エリナちゃんが少し首をかしげて聞いてくる。

かわいい仕草・・・・


「あ、ああ。 いいよ」


差し出すと、エリナちゃんはパクってオレのチョコチップアイスを食べた。


「んー。 おいしい♡ レイキくんも、どうぞ?」

そう言って、自分のアイスを差し出してくれる。

エリナちゃんのは、ベリーのアイスだ。


「ありがと」

オレもエリナちゃんのアイスを食べた。

少し酸味が合って、美味しい。


「ん、おいしい。 ありがとな」

へらって笑うと、エリナちゃんも笑顔になった。



マコト・・・・ 急になんであんなことしてきたんだろう。


ちらってマコトを見ると、マコトはオレを見つめていた。


熱を持った視線で。




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