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45.※ 今までと違う日常

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「よしっ・・・と」

テーブルに朝ゴハンを並べて、ちらっと時計を見る。


・・・・もう8時過ぎてる。

あきら、珍しく朝ゆっくりだなあ。


まだ寝ているあきらを起こしに、オレの部屋へ行く。


あきらはまだ眠っていた。

オレはベッドの横に座り込んで、あきらのカオを覗き込む。


・・・・寝顔も、カッコいいな・・・・


あきらに声をかけず、暫く寝顔を堪能していると、

不意にぱちってその瞳が開いた。


急に開いたから、びっくりしてしまう。

「お、おはよ、あきら」


あきらは眉根をきゅって寄せて、

「・・・・キスして起こしてくれるの、待ってたのに」


え、そう、なのか?

・・・っていうか、もう、目が覚めてたってことか?


「ほら、レイキ」

あきらはもう一度瞳を閉じて、キスを催促してくる。


オレは少し恥ずかしいなと思いながら、あきらにカオを寄せてキスをした。





「ん、んっ・・・・!」


後頭部にあきらの手が回って、深く口づけられる。


「ふ、ぅ・・・んんっ・・・・・」


舌を絡ませると、腰に甘いしびれが走った。


「・・・レイキ、来て」


ぐいって引っ張られて、ベッドの上にあげられる。

するって、あきらの手が、オレの腰に触れた。


「ね・・・・・レイキ・・・・」


あきらの醸し出す色気のある雰囲気を打ち消すように、オレは笑ってあきらに言った。


「あきら、朝飯出来てるよ。 食おうぜ?」


あきらは少し残念そうな顔になる。


オレはそんなあきらに気づかないフリをして、ベッドから降りた。

そのまま部屋を出て、リビングに向かう。




・・・・・みんなと旅行に行ってから、もう1週間。


帰ってきた日は、実際疲れてるのもあったけど、夜はそういう雰囲気になるのを避けて、オレはさっさと寝てしまった。

好きって言われてうれしかったけど、どうしてもそういう気持ちになれなくて。


それからも、オレはあきらを避け続けている。

翌日からはお互いバイトが入ってたし、友達と遊んだりしてたから。

夜は疲れてるふりをして、あきらが風呂に入ってる間にわざと眠ってしまったり、あきらが眠るまでいろいろ理由をつけて起きてたりしてた。


気付いたらもう1週間。


キスはしてるけど、あきらとカラダを重ねていない。


・・・・・一緒に暮らし始めてから、初めてだ。 ・・・・・・こんなに、カラダを重ねていないのって。



・・・そう考えるだけで、カラダが、うずく。


・・・・本当は、あきらの温もりを、求めてる。



でも、一度避け始めてしまってから、どうしていいのか自分でもわからなくなってきていた。

あの後も、あきらは桜庭さんを交えた医学部のメンバーと会ったりしていたみたいだし。

誰と会ってたなんて、詳しくは聞いていないけど、桜庭さんもいたんじゃないかって思うだけで、胸が苦しくなって。


オレは自分の服の胸元を握りしめた。


「レイキ、ありがと」

洗面所から戻ってきたあきらに声をかけられて、びくって体が跳ねてしまった。


「あ、ああ。 食おうぜ」

へらって笑って、一緒にテーブルにつく。




「あきら、今日もバイトだよな?」

「ああ。 レイキもだろ?」

「うん」


夏休みに入ってから、オレはバイトを始めた。

あきらも、夏の試合が終わってから、短期のバイトをしている。


オレはアイスクリームショップ。

甘いの好きだし、夏だし、やっぱりアイスかなーって思って。


あきらは塾で、学生たちの学習指導。

夏休みは短期講習を受けたりで生徒の数が増えるから、夏休み限定のスタッフとして入ってる。

生徒たちの質問に答えたり、その他もろもろ雑用係りみたいだけど。



「そういえば、今週の土曜は実家に泊まるよな?」

「ああ、そうだな」

今週の土曜日、久しぶりにみんなで会おうって、亮介から招集がかけられたんだ。

亮介と小山さん、河原、紺野。

「みんな元気かなー。 会うの久しぶりだし、楽しみだな」

「ああ」

笑って言ったら、あきらも少し口角を持ち上げた。



「レイキ、バイト楽しい?」

不意にあきらがそんなことを聞いてきた。


「え? ああ、楽しいよ?」

オレは甘いものが好きだから、ケーキとかアイスクリームとか、そういう店でバイトしたいなーって思って探して。


「水野さんとは、シフト、被ったりするのか?」

「ああ・・・ まあ、時々な」

そういうスイーツ系の店って、バイトも女のコが多くて。

知らずに面接に行ったら、なんとエリナちゃんが一緒だったんだ。


「ふーん・・・ そっか」

それっきり、あきらは口をつぐむ。


・・・・?

あきら、どうしたんだ・・・・?

まさか、やきもち・・・・とか・・・・・


いや、んなわけ、ねーよな。

だいたい、エリナちゃんはユージのこと好きなんだし。


「あきらは、バイト楽しい?」

オレもあきらに聞いてみると、あきらはうなずいた。


「ああ、楽しいぜ。 高校生とかほとんど年変わんねーのに、『先生』とか言われると、なんかくすぐったいけどな」

「あきらは教えるの上手いから、みんな喜ぶんじゃねー? オレもすげー助かってたし」

中学高校と、試験前はずいぶんあきらにお世話になったもんな。

「そうか?」

「ああ。 オレ、あきらのことすげー頼ってたもん」


以前のことを思い出しながら言うと、あきらは嬉しそうに微笑んだ。



どきっ。


あきらの微笑みを見て、オレの心臓が跳ねた。



・・・・あきらのこんなカオ、見たの、久しぶり・・・・・・


旅行から帰ってきて、オレはあきらのことをなるべく避けてて。

よく考えたら、ちゃんとカオをみて話とか、ほとんどしてなかった・・・かも・・・・


あきらの微笑みにどきどきしてしまって、オレは視線を泳がせた。

その目が、ふと時計に留まる。



「あ、オレ、そろそろ準備しねーと」

オレは立ち上がった。

今日はオレの方がバイトの時間が早い。


「片づけとくから、置いとけよ」

「そ、うか? わりぃな」


「レイキ」

洗面所のほうへ行こうとしたオレを、あきらが呼び止める。

足を止めると、立ち上がったあきらに抱きしめられた。


「あ、きら?」

「・・・・レイキを、充電させて?」


あきらの体温を感じる。



・・・・・うれしい。 あきらに、抱きしめられて。



でも、あきらを避け続けてたオレは、どう対応したらいいのかわからなくて。


カラダに力が入ったままだった。



「・・・・レイキ・・・・ オレにこうされるの、イヤ、か・・・・・?」


力が入ってたのは無意識だったけど、あきらは気づいたみたいだ・・・・・


「・・・・そ、んなこと、ねー・・・・・」


オレはそっと、あきらの背中に手を回して、自分からも抱き付いた。


でも、その動きも、なんだかぎこちなくて。



・・・・イヤなわけ、ない。 すげー、うれしいのに。

・・・・・・オレの態度のせいで、あきらには、伝わってない、よな・・・・・・



あきらは小さく息を吐いてオレを離した。


「・・・・・ゴメン、レイキ。 準備するんだよな」

そう言って、少し、口角を持ち上げる。

でも、瞳には寂しそうな光。



・・・・オレ、あきらにこんなカオさせて・・・・・

こんな態度しか取れなくて・・・・ホント、ゴメンな・・・・・



オレはなにも言えないまま、洗面所に向かった。




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