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41.止まらない涙

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あきらが降りてきてくれることを願ってたけど、結局それは叶わず。

スマホを見るけど、もちろん連絡はなかった。



ユージとマコトが帰ってきた。

「2人とも、悪かったな」

「いーよ。 レイキ、大丈夫?」

心配そうにオレを見るユージに、へらって笑ってみせる。

「ありがと。 大丈夫」


・・・気持ちは全然、大丈夫なんかじゃないんだけど。


「よっし。 じゃあ、行こーぜ」


みんなでエリナちゃんたちの部屋に移動する。


「おまたせーっ。 周防くんも連れて来たよ」



女のコたちの部屋は、造りがオレたちの部屋より広かった。

和洋室になっていて、ベッドが2つと、和室があった。


「すげー、広いじゃん」

「でしょー。 こういう部屋が1つあると、部屋飲みしやすいからさー。 それに、広い部屋は女のコに使ってもらわないとね」

なるほど。

ユージと木島くん、2人で決めたんだろうな。



「他の人は?」

咲良ちゃんに聞かれて、ユージが説明する。


「そっかー。 二宮さんと木島くん、雰囲気良かったもんね」

「うん。 桜庭さんと城井くんも」

「でも、城井くんって彼女いるんでしょ? ね、レイキくん?」


エリナちゃんに聞かれて、ドキッとしてしまう。


「あ、ああ。 いるよ」


「そうだよね。 彼女いるのにそれはちょっとひどいかも」

「ねー。 彼女がかわいそう」


「っていうかさ、あきらの彼女って、今日のこと知ってるのか?」

今度は周防くんに聞かれる。

今日のこと・・・って、旅行に来てるってことかな。

「え・・・・ 知ってる、だろ」

「女のコも一緒の旅行って?」


あ・・・・ そう、か。

彼女なら、自分の彼氏が大人数とはいえ、他の女のコと旅行なんて、イヤ・・・・ だよ、な。


「さ・・・あ。 どうだろ」

答えようがなく、オレは口ごもる。


「他の女のコが一緒の旅行って、普通許さないか、許したとしても、すげー機嫌悪くなりそうだよなあ」

周防くんの言葉に、激しく同意する女のコたち。


「・・・ってことは、言ってないのか・・・? その上で柚葉と2人っきりってことは、・・・あきら、彼女と別れて、柚葉にするつもりなのかな・・・・・?」

言いながら、少しつらそうな表情になる周防くん。



・・・・・考えないようにしていたことを言葉に出して言われて。


周防くんの言葉は、オレの胸に突き刺さった。




・・・・・あきらは、オレと、別れようとしてる・・・・・・・?




「ま、いーじゃん、城井くんたちのことは。 明日みんなでいじってみよーぜ。
とりあえず、飲も!」

ユージが明るく、みんなに酒を持つよう促す。


とりあえずオレも、渡された缶チューハイを持った。


「じゃあ、カンパーイ!」



カンパイして、酒を飲む。


・・・・・無意識だった。



「レイキくん、いい飲みっぷりー」

「レイキー、大丈夫かよ?」


みんながオレを見てるのに気付かなかった。



「おい、レイキ! やめろって!」


マコトに缶を取り上げられる。


「え、なに?」


オレは驚いてマコトを見た。


なんで急に、取り上げたりするんだ?



「坂本くん。 さっきの今だし、セーブした方が良いよ」

周防くんも、心配そうにオレを見る。


マコトはオレから取り上げた缶を、軽く振る。

「・・・・ほとんど入ってねー」


え?


「さっき体調悪いって言ってたんだし、元々弱いんだから、一気なんてするな、バカ」

マコトは強い口調でオレに言った。



一気って・・・・


オレ、無意識に、一気飲み、してたのか?


「ゴ、ゴメン」


謝ると、マコトはタメ息をついて、ジュースを渡してきた。

「とりあえず、それ飲んどけよ」

「・・・・うん」


「坂本くん、大丈夫?」

心配してくれる周防くん。

「うん、ゴメン。 さっき迷惑かけたのに」

「いや、オレはイイんだけど。 坂本くん、酒弱いの?」

「あー・・・・ うん。 強くは、ない」

「そっか。 じゃあ、ゆっくり飲もうな」

「ありがと」



みんなで飲みだしてからも、話題はあきらと木島くんたちのことで。


女のコたちはあきらのことを、『彼女がいるのにヒドイ』とか、『カッコいいからしょうがない』とか言っていた。


『やっぱり男って、浮気するよね!』

なんて言われて、男ってだけで、オレたちみんな、何故か責められたりしたけど。



でも結局みんなは、あきらは彼女と別れて桜庭さんとつき合うんだろうって、予想してた。


周防くんも、少し寂しそうな表情を見せながらも、多分そうだろうって納得してた。



みんながあきらと桜庭さんの話をしているうちに、オレはいたたまれなくなって、結局酒を飲んでいた。

気付いた時には、結構量も飲んでしまっていた。



「レイキくん、大丈夫?」

オレの隣に座って、ほんのり頬を染めたエリナちゃんに心配される。


「ああ、大丈夫」

そう答えるけど、あんまり気分は良くない。

酒のせいなのか、気分的なものなのかは分からないけど。



「オレ、ちょっとトイレ」

そう言って、立ち上がる。


少しふらつきながら、トイレの方に向かう。




「・・・・っ」


みんなの輪から離れると、とたんに、気持ちが抑えられなくなって。


涙が、出そうになる。




・・・・なあ、あきら。

ホントに、オレと、別れるつもりなのか・・・・・・?




涙がこぼれるのを、ガマンできなくて。

オレは、部屋を出た。



そのまま、壁に寄りかかりながら廊下を歩いて、自分の部屋に戻った。



誰もいない部屋に入る。

カーテンが開けっ放しだったから、月明りが入ってきてる。


オレはベッドにダイブした。


「うっ・・・・・・」


枕にカオをうずめて、漏れ出る嗚咽を、抑え込む。




・・・・・・・しかた、ないんだ・・・・


だって、オレは男だから。


いつまでも一緒に居られるわけじゃないって、分かってたはず。



でも・・・・・



オレはさっきみんなでした花火を思い出す。


エリナちゃんとやった、線香花火。


最後まで落ちなかった、火玉。



『あきらと、出来るだけ長く、一緒に、いたい』



その願いが、叶うと思ったのに。


出来るだけ長く、って、思ったのに。


こんなに、早いのかな。



『ずっと一緒に居たい』


正直に、そう願わなかったから・・・・・?


そう願ってたら、こんなことには、ならなかったのか・・・・・・?





ガチャッ。


部屋のドアが開く音。



一瞬期待を込めてドアを振り返るけど。



「レイキ・・・ 大丈夫か?」



そこに居たのは、マコトだった。



・・・・・ そりゃ、そーだよ、な。


あきらが、来るわけない。




「ああ、大丈夫。 少し休むだけだから。 マコトはみんなと飲んで来いよ」


たぶん、泣いたせいで、鼻声になってる。

部屋の電気は点けてないから、カオは見えないと思うけど。

マコトに、気付かれるかな・・・・・



「でも、気分悪いんじゃないのか・・・・・?」


「大丈夫。 休んどくから」




「レイキ・・・・・ 泣いてる・・・・・?」


マコトはそう言って、オレのベッドに近づこうとした。



「大丈夫だから! マコトは、みんなのとこ、戻れよ」


「でも」


マコトは近づく足を止めない。



「いいから! ・・・・・こっち、くんなっ!」


カオを見られたくなくて、オレは強く言った。




・・・・・・ダメ、だ。


涙が、止まらない。




それなのに。



マコトはオレのとこまで来て、ぎゅって抱きしめてきた。




「・・・・・はな、せ!」


「いやだ」


「オレだって、いや、だ!」


こんなとこ、見られたくない。


それに、一人で、居たいのに。



マコトの腕の中でもがくけど、マコトはさらに強い力でオレを抱きしめた。



「・・・・・レイキ。 泣いていいぜ」


「泣いてねーっ。 だから、放せよ!」


「・・・・・好きな人が泣いてんのに、放っとけるわけ、ないだろ」



オレを抱きしめたまま、マコトはオレの頭を撫でる。


「・・・・オレ、ココに居るから。 レイキが落ち着くまで、そばにいるから」



優しく響くマコトの声に、ふって、体の力が抜けるのを感じた。




マコトは、なんでオレが泣いているのか、理由を聞くことはしない。





「ふ・・・・・ぅっ・・・・・・・・」


オレはマコトの腕の中で、涙を流した。


オレの涙と鼻水でマコトの浴衣が濡れてしまっても、マコトはオレの頭や背中を優しくさすってくれてた。






・・・・・明日、オレ、どんなカオで、あきらに会えばいいんだろう・・・・・・・


・・・・別れを、告げられる・・・・・?



「・・・っ・・・・・・」



胸がぎゅって、締め付けられる。



・・・・・怖い。


もう、あきらを失ってしまうんだろうか。




今まで、ずっと、一緒だった。


友達として、ずっと一緒に居て。 つき合いはじめてからは、もっと、近くなって。



あきらが、いなくなる・・・・・・


・・・・・オレ、生きていけるんだろうか・・・・・・



ぞくって、体が震えた。



イヤだ・・・・・


でも、もう、避けられない・・・・・・・・




「レイキ・・・・・・ 寒いのか・・・・・? 震えてる・・・・・・」


マコトが、ぎゅって、オレを抱きしめる力を強くした。


オレは縋りつくように、マコトの浴衣を握った。


「・・・・・ こわ、い・・・・・」



怖い。


怖い。


イヤだ。



行かないで。


捨てないで。



「・・・・やだ・・・・・・・ やだ、よぉ・・・・・・」




「レイキ・・・・・!」



オレは、マコトの腕の中でずっと泣いていた。






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