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19.※ キスしたい

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今日はもう金曜日。

結局、桐谷とはLINEのやりとりだけで、全然直接話したりはしてなくて。

キスしたいっていう、オレの欲求もそのまま。


週末にはきっとまた会ったりできるだろうから、キス・・・するタイミングもあるだろうけど。

なんか、今日、話したくて。


昼休み、オレは意を決して桐谷に話しかけた。

「桐谷っ」

今まで一緒に飯は食ってなかったけど、今日は・・・・ 一緒に居たいなって、思って。


「星野?」

桐谷がオレを振り返る。

と、桐谷と一緒に居た奥山さんも、オレを見た。


「あ、のさ。 今日、昼一緒しねー?」

初めて誘うから、なんか緊張してしまう。

すると桐谷は、すまなさそうなカオをした。

「星野・・・ごめん。 今日放課後に委員の集まりがあるんだ。 その前に少し打ち合わせをしたいから、昼は奥山さんと食べながら話そうと思ってて」

「あ、そー・・・なんだ」

そっか。

桐谷はいろいろ忙しいよな・・・・


オレはちらって奥山さんを見た。


奥山 莉子(オクヤマ リコ)。 桐谷と一緒に、クラス委員をやっている。 背中までの黒髪のストレートで、後ろで一つに結んでいる。 メガネをかけてて、化粧っ気は全然ないけど、結構キレイなカオをしてるなって、オレは思う。


「星野くん、ゴメンね」

奥山さんが、オレに謝ってくる。

「あ、いいよいいよ。 全然、気にすんなって」

オレは慌ててパタパタと手を振った。

「桐谷も奥山さんも、忙しいよな。 邪魔して悪かった」


桐谷の予定も知らなくて誘ってしまったことがなんだか気恥ずかしくて、オレは手を振って2人から離れた。



「瑞樹ー」

和真に声をかけられる。

「昼飯、食おうぜ。 美香たちも一緒にさ」

「あ、ああ」

桐谷に断られたの、見られたかな・・・・

和真はオレを見て、

「桐谷、無理だって?」

って訊いてきた。

・・・・・見られてた。 恥ずいな・・・・

「まあ、また他の日に声かければいーじゃん」

和真は笑ってそう言った。

こういう、無邪気というか、毒がないところが、和真のいいとこだよなー。

陽人だったら、絶対からかってくる。





放課後になって。

オレは仲のいい女のコたちとしゃべったりして、時間を潰していた。

だんだんみんな部活に行ったり帰っていって。

オレは誰もいなくなった教室で、自分の席に座った。


窓際の席だから、校庭が良く見えて。

運動部が練習してるのを眺めてみた。


・・・・なんで帰らないのかっていうと。


桐谷を、待ってるんだ。


今日は放課後に、委員の集まりがあるって言ってたから、終わるまで待っとこうかと思って、時間を潰してた。

桐谷には・・・・待ってるなんて、言ってない、けど。



ガラガラッ

教室のドアの開く音。



振り返ると、桐谷と奥山さんが入ってくるところだった。

「星野!?」

桐谷はオレに気付くと、驚いた様子だった。

オレの席に近づいてくる。

「まだ残ってるなんて・・・何か用事でもあったのか?」

「いや・・・ そういうわけじゃないんだけど」

『待ってた』とは、なんだか恥ずかしくて言いだせない。

オレは少しうつむいた。

「友達としゃべったりしてたら、遅くなって」

「そうか・・・・」


「桐谷くん、帰ろう?」

奥山さんが、カバンを持って桐谷に声をかける。

委員会の後とか、いつも一緒に帰ってるのかな。

なんか、一緒に帰るのが当たり前、みたいな雰囲気だし。

桐谷は奥山さんを振り返って、

「ちょっと待って。
・・・・星野も、もう帰れるのか?」

帰れる。 って言うか、桐谷を待ってたんだし。

これって3人で帰るっていう流れだよな。


でも、オレ・・・・・・

桐谷と、2人が、いいな・・・・・・・


「あ・・・のさ」

「うん?」

恥ずかしくて、桐谷の方は向けない。 それに、奥山さんに聞かれたくなくて、すごく小さい声になってしまう。

「桐谷と2人は・・・・ 無理、かな」


・・・・少し、間が、あって。

桐谷の反応が気になって視線を上げてみる。


「・・・・奥山さん。 オレ、ちょっと用事があって。 申し訳ないんだけど、先に帰ってもらえるかな?」

桐谷は奥山さんの方を向いて、そう言った。

奥山さんは少し残念そうな表情をしたけど。

「・・・・うん、わかった。 じゃあね。 お疲れ様」

そう言って、教室を出て行った。


・・・・桐谷と、2人だけになる。


「・・・・星野はもう、用事はない? 帰れるのか?」

オレはうつむいたまま、こくんって、うなずいた。

「・・・・・奥山さんに、悪いことしたかな。 大丈夫、かな」

・・・・桐谷がオレの言ったことを受け入れてくれて、奥山さんを断ってくれたことが、すごく嬉しかった。

「大丈夫だ。 いつも委員会の後は一緒に帰ってるけど、お互いに用事がある時とかは別々だし」



オレは、立ち上がって桐谷に抱きついた。


・・・もうずっと、キス、したくて。

桐谷に、触れたくて。


桐谷もオレの背中に手を回して、抱きしめてきた。

それだけで、オレのカラダが熱を帯びてくるのが分かる。



「・・・星野、ごめんな。 昼も誘ってくれたのに、一緒に食べれなくて」

オレはふるふると首を振った。

「それに・・・・委員会終わってから会えるなんて思ってなかったから、すごく・・・嬉しい」

言いながら、オレを抱きしめる力が強くなる。


もう・・・・ガマン、できない。


「桐谷・・・・キス、してーよ・・・」


小さい声で言ったけど、桐谷の耳にはちゃんと届いてたみたいで。


桐谷はオレの顎に指をかけて上向かせると、唇を重ねてきた。


ほんの少し、触れるだけで離れた唇。


オレは足りなくて、桐谷の首に腕を回して引き寄せると、深く、口づけた。


「んっ・・・」


舌が、絡み合う。


腰が、ぞくぞくしてしまう。


これ・・・・だ・・・・・

このキスが、欲しかった。


「は、ぁっ・・・んっ」


桐谷の舌が、オレの上顎をなぞる。


「ふ、んんっ・・・・」


桐谷の口内に舌を挿れると、その舌を強く吸われた。


「んんッ・・・・!」


何度も角度を変えて、唇を重ねて。


お互いの唾液が混ざりあって、オレの顎に伝った。


キスの快感が腰に響いて、後孔まで、疼いてしまう。


「んっ・・・ぁ、はぁっ・・・」


この間桐谷に抱かれたことをカラダが思い出す。


オレは我慢できずに、腰を桐谷に押し付けてしまう。


もう、ここが学校だなんてことは忘れて、オレ達はキスに溺れていた。





ガァンッッ!!!




なにかが激しくぶつかった様な音が、教室のドアからした。

キスに浸ってしまっていたオレは、びくっと体を震わせてしまう。

オレも桐谷もドアの方を振り返るけど、ここから見る限り、そこに人影はなかった。


「なんだ・・・・?」

桐谷は怪訝そうに呟き、オレを抱きしめていた腕を解いた。


なんの音だったんだ・・・・?


不思議に思って、オレはドアの方に近づく。

と、いきなりドアが開いて、奥山さんが入って来た。

「あっ・・・星野、くん」

ドアの近くにオレがいたから、奥山さんはびっくりしたようだった。


・・・いや、オレもちょっとびっくりしたけど。


「忘れ物、しちゃって」

そう言うと自分の席に行き、荷物をとってまた教室の出口に向かう。

「じゃあね、桐谷くん、星野くん」

「あ、ああ」

「お疲れ様」

奥山さんは手を振って帰って行った。


オレはため息をついて、自分の席に戻った。

どかっと、イスに座る。

桐谷も、オレの前の席に腰を下ろした。 オレの机を挟んで、向かい合う。


「・・・・びっくりした」

「・・・そうだな」

「・・・・奥山さんに、見られるところだったな」

「・・・・・ああ」

桐谷は眉間にシワを寄せて考え込む。


「・・・・あの音、なんだったんだろう・・・?」


・・・確かに、な。

あの大きな音がしたから、キスを、止めた。

そうじゃなかったら、オレ達がキスしてるところに、奥山さんが入ってきてたはず、だよな。


「・・・奥山さんじゃないだろうし、な」

「・・・たぶんな・・・・」


なんだったのか、よく、わかんないけど。


「・・桐谷・・、ごめん・・・・・・」

オレは桐谷に頭を下げた。

オレが、キスしたいとか、言ったから。


桐谷は首を振って、オレの手に触れた。

「星野のせいじゃない」

「でもさ、場所も考えないで、オレが言ったから」


初めてキスされたのも教室だったから、大丈夫だろって、勝手に思っちゃってたんだよな・・・


また、桐谷が首を降る。

「オレだってしたかったから」

そう言う桐谷の表情は、優しくて。

「・・・・星野からしたいって言ってくれて、嬉しかった」


そう言って、オレの手を自分の口元に引き寄せて、キスをした。


「・・・・帰ろうか」

桐谷の言葉にうなずく。


荷物を持って、立ち上がりながら考える。


あの音はなんだったのか・・・・・

気になるけど、あのおかげで、奥山さんに見られなくて済んだ。


オレはもともとチャラいって思われてるし、相手が男だったからって、みんな呆れるだけのような気もするけど・・・・

桐谷はそうはいかないよな・・・・・

マジメだし、クラス委員長だし、

学校でキスとかするキャラじゃないうえに、相手がオレじゃあな・・・・・・


実際のところ、告白してきて、無理やりキスしてきたのは桐谷の方なんだけど。

でも、さっきの場面を傍から見たら、オレが桐谷を襲ってるように見えるのかもな・・・・


とにかく、見られるのは、桐谷のためにならない。


「・・・・・桐谷、ほんと、ごめん」

階段を下りながら、隣にいる桐谷に謝る。

「星野のせいじゃないって。 気にするな」

オレは首を振った。

「オレってさ、こんなキャラだし、別に見られてもなんてことない。 みんなも、たいして反応とかしないと思う。
でも、桐谷はそうはいかねーだろ。 絶対、見られない方がいい」

「そんなことない」

「だめだって。 オレが・・・・気にする。
だからさ、もう、学校でこんなこと、言わねーから」

「星野」

桐谷がオレの腕を掴む。

でも、オレはそれを振りほどいた。


一瞬、桐谷が傷ついたような表情をしたけど。

「・・・・帰ろうぜ」

オレはそれには気付かないフリをした。




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