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18.陽人の悩み
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・・・キス、したい。
そう思ってから数日が経つ。
LINEのやりとりはしてるけど、キスしたいってなんだか言い出せなくて。
それに平日だし、桐谷と2人になるタイミングとかなくて。
なんだか悶々としたまま過ごしてしまってる。
「・・・はあ」
オレ、こんなにキス好きだったっけ。
それに・・・したいんなら、強引にでもタイミング作ればいいのに。
でも桐谷が友達と過ごしてたり、委員長の仕事で忙しそうにしてたりすると、なんか声もかけづらくて。
声かけられないくせに、目で追ってたりするんだよな・・・
「瑞樹、きいてる?」
女のコと話してたのに上の空になってしまっていた。
他のクラスのそのコと、オレたちは廊下で話をしている。
オレはハッとして、視線をそのコに戻した。
「ああ、ごめん。 なんだっけ」
瞳が大きくて、ふっくらした唇。 胸も大きくて、色気たっぷりだな。
そのコはちょっと頬を膨らませて、
「今度、遊びに行こって話! 瑞樹、ちゃんと聞いてよー」
そう言って、オレの腕に抱き着いてきた。
さり気なく、胸を腕に押し付けてくる。
・・・柔らかな感触。
こんな風にアピールされたら、ちょっとくらい遊んでもいいかなー・・・・って、ほんの少し、よぎるけど。
桐谷のつらそうな表情が浮かんできて。
オレの目はまた、自然と桐谷を追っていた。
・・・・やっぱ、キス、してーなー・・・・
「ね、瑞樹は今度の週末大丈夫?」
こんなかわいいコにアピールされてるのに、オレ、もったいなさすぎだろ。
ていうかさ、キスしたいだけなら、別に桐谷にこだわらなくてもよくね?
自分の思考が行ったり来たりで、よくわからなくなってくる。
「あ」
教室のドアのところ。 すごい美人が立ってるのに気が付いた。
オレたちの教室の中を覗いている。
「・・・あずみ先輩」
思わず名前を声に出すと、あずみ先輩が振り返った。
黒髪のストレートロング、色白で、背はそんなに高くなくて。
黒い大きな濡れたような瞳に見つめられて、思わず固まってしまった。
あずみ先輩はオレを見て、少し首を傾げた。
・・・・そうだよな。 思わず名前を呼んでしまったけど、直接話したことなんてないし。
「あ、あの、陽人に用ですか?」
尋ねると、表情が明るくなって、うなずいた。
オレの腕に抱き着いているコの手をほどき、自分の教室をドアのところから覗き込む。
陽人は・・・・あ、居た。 和真や美香たちと話してる。
「陽人ーーっ!」
大きな声で呼ぶと、陽人はオレの方を振り返り、オレの隣にいるあずみ先輩に気が付いた。
すぐにオレたちの方に来る。
「あずみ先輩、来てくれたんすね」
先輩に柔らかい笑顔を見せる陽人。
へえ、陽人ってこんなカオもするんだなって、ちょっと驚いた。
あずみ先輩はそんな陽人を見て嬉しそうで。 ああ、陽人のこと好きなんだなーって思った。
陽人はオレに『ありがとな』って言ってちょっと笑って、あずみ先輩を連れて教室を出て行った。
「陽人、すごいねーっ。 あずみ先輩とつき合ってるの?」
さっき話してた女のコが、またオレの腕に抱き着いてくる。
「んー。 まだつき合ってはないらしいけど・・・ま、そのうちつき合うんじゃね?」
あずみ先輩・・・ほんとに美人だなー。
でもやっぱ、少し清楚なイメージで、見た目は陽人とはちょっと違うかも、って気もする。
陽人はイケメンだけど、見た目からチャラいからなあ・・・・
「ね、瑞樹は今つき合ってる人、いないよね?」
訊かれて、一瞬言葉に詰まる。
「あ、ああ。 いねーよ?」
「じゃあいいよねっ。 遊び行こ?」
・・・・このコとキスして、気を紛らわすのもアリなのか・・・?
そんなことを考えながら、曖昧に笑うしかできなかった。
それからも、休み時間にあずみ先輩が陽人に会いに来ることが何度もあった。
学校帰りに、2人で寄り道デートしたりもしてるみたいだし。
「あずみ先輩、陽人のこと相当好きだよなー」
「な。 あんな美人に好かれるなんて、さすが陽人」
休み時間、オレたちは教室の隅で話をしている。
オレと和真の『いいなー』っていう視線を受けて、陽人は肩をすくめた。
和真も彼女はいるけど、『美人に好かれてうらやましい』っていう気持ちは、それとは別だ。
「陽人が先輩の教室に行ったりはしねーの?」
いつも先輩が陽人に会いに来てる気がする。
「そうそう。 彼女に来させるばっかって、悪い男だなーお前」
和真が陽人を肘でつつくと、陽人は少し眉根を寄せた。
「彼女じゃねーって」
まあ、まだつき合ってないらしいけど。
「でもさ、先輩は陽人のこと相当好きそうだし、結構デートしたりしてんだろ? もうつき合えばいいのに」
「うーん・・・」
オレの言葉に陽人が唸る。
和真とオレは、カオを見合わせた。
「なーんかさ・・・ ちょっと違うんだよなあ・・・・」
「違う?」
「んー・・・ 好かれてるのは分かるんだけど・・・・ オレ、そこまで本気になれなそうっていうか。
でも、そんな風に、適当にあしらっていい感じでもねーし」
「ふーん・・・」
陽人がこんな風にちょっと悩んでるって、珍しいかも。
「合わない感じなのか?」
「まー、平たく言えば、そんな感じかな。 ちょっと・・・気持ちが重い、かも」
・・・モテるだろうから、実際はどうなのか分からないけど、見た感じ清楚そうだし、遊んでる感じはしないもんな・・・・
「でも、だったら断るしかないよなあ」
和真の言葉に、オレもうなずく。
「でもさあ・・・ はっきり断ったら、絶対泣くじゃん。 ・・・泣かれるのも、なんか嫌だなって思って」
「なんか・・・陽人がこんな悩んでんのって、珍しいな・・・」
呟く和真を、陽人はにらむ。
「オレだって考えるよ。 あー、でもなんか、もやっとすんだよなー」
陽人はガシガシと頭をかく。
その時、授業開始のチャイムがなった。
オレたちは自分の席に戻ってく。
陽人・・・・すげーモテるし、来るもの拒まずだし、こんな風に悩んだりするなんて、知らなかった・・・
あずみ先輩とは、すぐつき合うと思ってたから、そこも意外だし・・・・
なんか恋愛って・・・難しいんだなー・・・・・・
そう思ってから数日が経つ。
LINEのやりとりはしてるけど、キスしたいってなんだか言い出せなくて。
それに平日だし、桐谷と2人になるタイミングとかなくて。
なんだか悶々としたまま過ごしてしまってる。
「・・・はあ」
オレ、こんなにキス好きだったっけ。
それに・・・したいんなら、強引にでもタイミング作ればいいのに。
でも桐谷が友達と過ごしてたり、委員長の仕事で忙しそうにしてたりすると、なんか声もかけづらくて。
声かけられないくせに、目で追ってたりするんだよな・・・
「瑞樹、きいてる?」
女のコと話してたのに上の空になってしまっていた。
他のクラスのそのコと、オレたちは廊下で話をしている。
オレはハッとして、視線をそのコに戻した。
「ああ、ごめん。 なんだっけ」
瞳が大きくて、ふっくらした唇。 胸も大きくて、色気たっぷりだな。
そのコはちょっと頬を膨らませて、
「今度、遊びに行こって話! 瑞樹、ちゃんと聞いてよー」
そう言って、オレの腕に抱き着いてきた。
さり気なく、胸を腕に押し付けてくる。
・・・柔らかな感触。
こんな風にアピールされたら、ちょっとくらい遊んでもいいかなー・・・・って、ほんの少し、よぎるけど。
桐谷のつらそうな表情が浮かんできて。
オレの目はまた、自然と桐谷を追っていた。
・・・・やっぱ、キス、してーなー・・・・
「ね、瑞樹は今度の週末大丈夫?」
こんなかわいいコにアピールされてるのに、オレ、もったいなさすぎだろ。
ていうかさ、キスしたいだけなら、別に桐谷にこだわらなくてもよくね?
自分の思考が行ったり来たりで、よくわからなくなってくる。
「あ」
教室のドアのところ。 すごい美人が立ってるのに気が付いた。
オレたちの教室の中を覗いている。
「・・・あずみ先輩」
思わず名前を声に出すと、あずみ先輩が振り返った。
黒髪のストレートロング、色白で、背はそんなに高くなくて。
黒い大きな濡れたような瞳に見つめられて、思わず固まってしまった。
あずみ先輩はオレを見て、少し首を傾げた。
・・・・そうだよな。 思わず名前を呼んでしまったけど、直接話したことなんてないし。
「あ、あの、陽人に用ですか?」
尋ねると、表情が明るくなって、うなずいた。
オレの腕に抱き着いているコの手をほどき、自分の教室をドアのところから覗き込む。
陽人は・・・・あ、居た。 和真や美香たちと話してる。
「陽人ーーっ!」
大きな声で呼ぶと、陽人はオレの方を振り返り、オレの隣にいるあずみ先輩に気が付いた。
すぐにオレたちの方に来る。
「あずみ先輩、来てくれたんすね」
先輩に柔らかい笑顔を見せる陽人。
へえ、陽人ってこんなカオもするんだなって、ちょっと驚いた。
あずみ先輩はそんな陽人を見て嬉しそうで。 ああ、陽人のこと好きなんだなーって思った。
陽人はオレに『ありがとな』って言ってちょっと笑って、あずみ先輩を連れて教室を出て行った。
「陽人、すごいねーっ。 あずみ先輩とつき合ってるの?」
さっき話してた女のコが、またオレの腕に抱き着いてくる。
「んー。 まだつき合ってはないらしいけど・・・ま、そのうちつき合うんじゃね?」
あずみ先輩・・・ほんとに美人だなー。
でもやっぱ、少し清楚なイメージで、見た目は陽人とはちょっと違うかも、って気もする。
陽人はイケメンだけど、見た目からチャラいからなあ・・・・
「ね、瑞樹は今つき合ってる人、いないよね?」
訊かれて、一瞬言葉に詰まる。
「あ、ああ。 いねーよ?」
「じゃあいいよねっ。 遊び行こ?」
・・・・このコとキスして、気を紛らわすのもアリなのか・・・?
そんなことを考えながら、曖昧に笑うしかできなかった。
それからも、休み時間にあずみ先輩が陽人に会いに来ることが何度もあった。
学校帰りに、2人で寄り道デートしたりもしてるみたいだし。
「あずみ先輩、陽人のこと相当好きだよなー」
「な。 あんな美人に好かれるなんて、さすが陽人」
休み時間、オレたちは教室の隅で話をしている。
オレと和真の『いいなー』っていう視線を受けて、陽人は肩をすくめた。
和真も彼女はいるけど、『美人に好かれてうらやましい』っていう気持ちは、それとは別だ。
「陽人が先輩の教室に行ったりはしねーの?」
いつも先輩が陽人に会いに来てる気がする。
「そうそう。 彼女に来させるばっかって、悪い男だなーお前」
和真が陽人を肘でつつくと、陽人は少し眉根を寄せた。
「彼女じゃねーって」
まあ、まだつき合ってないらしいけど。
「でもさ、先輩は陽人のこと相当好きそうだし、結構デートしたりしてんだろ? もうつき合えばいいのに」
「うーん・・・」
オレの言葉に陽人が唸る。
和真とオレは、カオを見合わせた。
「なーんかさ・・・ ちょっと違うんだよなあ・・・・」
「違う?」
「んー・・・ 好かれてるのは分かるんだけど・・・・ オレ、そこまで本気になれなそうっていうか。
でも、そんな風に、適当にあしらっていい感じでもねーし」
「ふーん・・・」
陽人がこんな風にちょっと悩んでるって、珍しいかも。
「合わない感じなのか?」
「まー、平たく言えば、そんな感じかな。 ちょっと・・・気持ちが重い、かも」
・・・モテるだろうから、実際はどうなのか分からないけど、見た感じ清楚そうだし、遊んでる感じはしないもんな・・・・
「でも、だったら断るしかないよなあ」
和真の言葉に、オレもうなずく。
「でもさあ・・・ はっきり断ったら、絶対泣くじゃん。 ・・・泣かれるのも、なんか嫌だなって思って」
「なんか・・・陽人がこんな悩んでんのって、珍しいな・・・」
呟く和真を、陽人はにらむ。
「オレだって考えるよ。 あー、でもなんか、もやっとすんだよなー」
陽人はガシガシと頭をかく。
その時、授業開始のチャイムがなった。
オレたちは自分の席に戻ってく。
陽人・・・・すげーモテるし、来るもの拒まずだし、こんな風に悩んだりするなんて、知らなかった・・・
あずみ先輩とは、すぐつき合うと思ってたから、そこも意外だし・・・・
なんか恋愛って・・・難しいんだなー・・・・・・
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