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第六章

Aランク冒険者パーティ

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 そして翌日。そろそろメタルドラゴンサーペントが森を抜けてくる頃合いとなった。一番区画を南下していて多少のずれがあったとしても、軍が担当している五番区画以降に行くことはない。そういうこともあり、迎撃は冒険者ギルドが担当するエリアで行われることになっている。

 俺たちに参加の要請は来ていないが、気になったので莉緒と二人で冒険者ギルドの本陣へとやってきた。本陣の前には気合の入った冒険者たちが集まっており、集団のリーダーらしき数人とギルドマスターが何やら話し込んでいる。

「君たちも来たのかネ」

 話がひと段落したようで、こちらに気が付いたギルドマスターが振り返る。

「まぁちょっと、気になったもので」

 蛇の味がとは言わないが、気になったことには違いはないのでそう答えておく。

「ふん。残念だがSランク冒険者様の出番はないぜ?」

 ギルドマスターの隣で得意そうに胸を張っているのは、腰から長さの異なる二本の剣を佩いた、銀の髪をツンツンにした男だ。剣の反りや細さを見るに、刀っぽく見える。

「おいおい、いくら何でもSランク冒険者に失礼だろう。我々のバックアップに付いてもらえるというのであれば安心できるじゃないか」

 その隣で男を窘めているのは、ワインレッドの長い髪をポニーテールにした女だ。背中に身長を超えるような巨大な杖を背負っている。魔法使いだとは思うが、物理で殴っても驚かないぞ。

「だけどシュウさんの手は借りずに討伐は進めたいかな」

 最後に肩をすくめたのはまだら模様の髪をしたリキョウだ。

「そうネ。サタニスガーデン支部の冒険者ギルドとしても意地を見せないとネ」

 同調するようにギルドマスターが笑みを浮かべると、集まっていた他の冒険者たちからもヤジが飛んでくる。

「やっと回ってきた活躍の場だ」
「へっ、いいとこばっか持って行きやがって」
「手ぇ出すんじゃねーぞ」

 そこに悪意はなく、自身を鼓舞するような気合が込められている。
 ここにいるのは、大物を討伐すべく集められたAランク冒険者の三つのパーティだ。もうすぐ戦闘開始だというのに気負った様子を見せず自然体だ。

「そこまで言うなら高みの見物とさせてもらうよ」

「それじゃあ仕留めたらお肉わけてちょうだい。お金は払うから」

 肩をすくめていると、横から莉緒がしっかりと要求を告げる。俺たちが手出ししないまま終わってしまえばあの蛇を手に入れられないので、事前に伝えておくことは大事だ。

「は? 肉?」

「……皮じゃなくてか?」

「何に使うんだ?」

 反発でもされるかと思ったけど予想外の反応が返ってくる。見ただけで硬そうだとわかる金属質の皮は防具に使えそうだと誰でも思うが、もしかして肉に需要はないんだろうか?

「もちろん食うんだけど」

「えええ?」

「あれって食えんの?」

「クソ硬くて食えたもんじゃねぇって聞いたぞ?」

 正直に答えると、ひそひそと会話を交わす冒険者たち。

「あー、肉なら捨てるだろうから、タダでやるネ」

 物好きを見る目でギルドマスターが言葉にすると、周囲の冒険者たちも戸惑いながら頷いている。

「そんなに不味いのか。……それはそれでちょっと楽しみだな」

「あはは、そーね」

 怖いもの見たさよりも興味がかなりの割合を占めている。不味いと言われようと自分で体験してみないと本当に不味いかはわからない。莉緒も半笑いだけどやっぱり興味はあるようで、いらないとは言わなかった。

「そろそろ来るネ?」

 もうすぐかと思い森方面へと視線を向けると、気が付いたギルドマスターが声を上げて場の雰囲気が引き締まる。

「ああ。あと一時間もすれば見えてくるんじゃないか。このままだと一番区画と二番区画のちょうど境目あたりに出てきそうだ」

「わかったネ」

 ギルドマスターが頷くと、集まっていた冒険者たちも腰を上げる。

「蛇は任せたネ」

 激励を受けた冒険者たちが、蛇を迎え撃つべく本陣からぞろぞろと出ていく。見送った俺たちとギルドマスターは、戦いの様子を見るべく第二外壁の上へと上がった。

「……んん?」

 森へと続く道は俺たちの先制攻撃に晒されて荒れたままだ。蛇の討伐部隊が森へと向かう様子を眺めていると、森へと入る手前に何やら集団がいるのが見えた。

「あいつら……、本当に邪魔しにきたネ……」

 同じものを見つけたギルドマスターが苦虫を噛み潰したような表情になっている。よくみれば統一された装備を身に着けており、もしかしなくても昨日バカが共闘と言って派遣してきた軍隊だろうか。
 二番区画と三番区画の間に陣取っているが、蛇と接触予定の一番区画と二番区画の境目はお互いから目視できるので、冒険者が集まってきたら移動するだろう。

「はぁ……。ちょっと行ってくるネ」

 大きくため息を吐くと踵を返して第二外壁から降りていくギルドマスター。

「ああ、もし危なくなったら合図を出すから、そのときはよろしくお願いするネ」

 姿が完全に見えなくなる前に振り返ると、それだけ告げて憂鬱そうに最前線へと向かった。

「何があったか知らないけど、ギルドマスターも大変ねぇ」

 莉緒が他人事のように呟いているけど、そういえばあの役立たずの大男と面識はなかったんだったか。さすがに本人はここまで来てないだろうけど、派遣されてきた奴らが話の分かる相手ならいいんだけどなぁ。

「そうだなぁ」

 とはいえ俺にとっても今は当事者じゃないので他人事だ。心の中でギルドマスターを応援しつつ、蛇がやってくる森の奥へと目を向けた。
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