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第六章

伝言

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 TYPEシリーズたちの戦果は上々だ。強さ4の魔物だが、それでも特化したステータスは一万五千ほどある。その半分にも満たないステータスの魔物など、連携が取れるようになったTYPEシリーズたちの敵ではなかった。

 ただしダンジョンの外での戦闘行為は活動の限界時間があるのか、思ったより長続きしないことが判明したのは収穫だろうか。生物タイプの魔物であれば何か食べればいいんだろうけど、ロボだと純粋に内蔵の魔石から魔力を供給するしかない。自然に吸収する分はあるだろうが、ダンジョンの外は効率が悪いようだった。

 その結果、群れを殲滅できたら死体をダンジョンまで運び、DPに変えつつも魔力を補給する作戦で行くことに決まった。今までは自然とダンジョンに入った魔物しかDPに変えていなかったけど、これでDP効率も上がるんじゃなかろうか。

 とまぁ、しばらくは順調にスタンピードの準備を整えていたのではあるが。

「ふむ……」

 どうやら俺を捕縛する密命を受けた軍が動き始めたようである。付かず離れずに周囲を同じ速度で歩きながら、ちらちらとこちらに意識を飛ばしている人物が三人いるのだ。街に軍隊が集まってきたからか、揃いの軍服を着た人間もちらほら見るようになっているが、三人はその軍服を身に着けている。そういう意味では今のこの街に溶け込んでいるように思える。

 今日も今日とて日課になっているギルドへの顔を出すために向かっているところだ。たぶん俺一人で行動しているところを狙ったんだろうけど、まさか真正面から来るとは思っていなかった。と言っても夜襲をかけようとしても、家の壁は海皇亀の甲羅で覆われてるからビクともしないけど。

 そんなことを思っていると、後ろにいた一人が動き出した。
 背後から無言で襲い掛かってきた男を躱すと、足を引っかけて腕を取って地面に転がす。そのまま腕を踏み抜こうとしたところに飛んできた矢を掴むと、振り下ろした足は止めずにやっぱり転がした男の腕を潰す。

「ぐがああぁぁぁ!!」

 転がった男から漏れる苦悶の呻きとともに、通行人からも悲鳴が上がり俺の周囲から人が遠ざかっていく。遠距離の人間は気づかなかったけど他にもいるのだろうか。
 逃げる時間を与えないようにすかさず振りかぶると、遠距離攻撃を加えてきた奴に掴んだ矢を投げ返してやる。屋根から一人転がり落ちてくるのを遠目にしつつ、残り二人の動向を探る。
 と、一人がこちらに近づいてきて、もう一人は撤退する様子を見せた。逃がさないけどな。

「待て! これ以上暴れるようなら罪状が――」

「ぶぎゃ!」

 出てきた奴のセリフが言い終わるのを待たずに、逃げようとした奴の頭を魔法で作った見えない手で鷲掴みにする。人が捌けた輪の中に引きずり出すと、言葉を遮った男の隣の地面に叩きつける。

「――っ!?」

 言葉を遮られた男は、青い顔をして地面に叩きつけられた男と俺を交互に見るだけだ。男たちを睨みつけながらゆっくりと近づいていくと、へっぴり腰で身構えたまま両手をこちらに突き出してきた。

「ま、待て! 罪状が増えてもいいのか!?」

「罪状?」

 前口上なく襲い掛かってきたので、ただ単に火の粉を払っただけという態度を崩さずに問いかける。

「俺たちは正式な国の軍隊だ! 手を出したら罪状が増えるだけだぞ!?」

「へぇ。軍人がいきなり一般人に襲い掛かってもそっちは罪にならないんだ?」

「そんなわけないだろうが! お前が断罪された犯罪者だからに決まってるだろう!」

 ほほぅ。一応軍にも規律というものは存在しているらしい。しかしまぁ、どこかで貴族の馬車に轢かれた平民がいたように、機能しているのかどうかは別問題かもしれないが。あれこれ問答する気はないので手っ取り早く要求だけ突きつけることにしよう。

「ふーん。じゃあ罪状を増やすついでにちょっと上の人間に伝言を頼めるかな」

 威圧スキルを有効にして言葉をかけると、男の顔がますます青ざめてくる。

「ぐっ……、なん……」

 威圧の効果か、まともに言葉を喋ることもできなくなっているようだ。

「スタンピードが片付いたら、発端になった男爵をはじめ俺を犯罪者にした人物と、それを認めた関係する人物にちょっと話があるから、首を洗って待ってろってね」

 言葉と共に一歩ずつ男に近づいていき、最後の言葉を告げるときには一メートルほどまで距離を縮めて人差し指を突き付ける。

「いいか? しっかり伝えるんだぞ? 真正面から訪ねていくから準備しておけってな?」

 さらに間近で威圧を込めると真っ青になった男がぶんぶんと首を縦に何度も振っている。

「お前もしっかり聞いてたな? わかったなら今すぐ行け」

 もう一人倒れている男にも声をかけると威圧を解く。気が付けば周囲を囲んでいた野次馬は誰一人いなくなっており、大通りが閑散としていた。
 軽くなった空気にキョロキョロ周囲を見回した男二人は、そのまま慌てて走り去っていく。腕を潰した男は放置されたままだがまぁ後から誰かが何とかするだろう。

 逃げた男には空間魔法でマーカーを付けておいたし、数日後にでも念押しの手紙を枕元に届けてやれば間違いなくやってくれるかな。
 さすがにちょっかいをかけてくる奴らはこれで最後だろうと思いながら、そのまま冒険者ギルドへと足を進めるのだった。
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