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第六章
タブレットでできること
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警戒レベルが2に引き上げられた。
魔物の群れが街を襲ってくる可能性がある状態から、ほぼ確定に変わったということだ。迎撃準備が本格的に街を挙げて行われ、国にも軍の派遣が要請されるとのこと。
冒険者ギルドでは、魔の森の奥に長期で出かける必要のある依頼はすべて取り下げられるらしい。代わりに街の防衛依頼が出て、こちらは強制依頼になるとのこと。Dランク以上の冒険者は受ける必要があるらしい。
ほぼDランク以上の冒険者しかいないこの街なので、ほとんどの冒険者はこの強制依頼を受けることになるという。
「そんなことになるのか」
執務室を出てギルドのカウンターホールへ戻ると、イヴァンが戻っていたので今日あったことを話す。
「まだ依頼は受けられそうだけど、これからどうなるかわからんってことか……」
腕を組んで考え込むイヴァンだったが、何か思い出したのかふと顔を上げる。
「そういや今朝の騎士たちはどうなったんだ?」
「知らない」
「はぁっ?」
即答する俺に怪訝な表情を浮かべるが、知らないものは知らないし興味もない。
「はは、まあいいか。偉そうにしてて気に入らなかったし、なんなら魔の森でくたばっててくれたらいいんだけどな」
「うーん。そこそこ実力あったからなぁ、どうだろう。まぁとにかく帰って飯にしよう」
「ごはんごはん!」
「わふ!」
ご飯という言葉にフォニアとニルが食いついてきた。
「おかえりなさいませ」
家に帰るとエルが不機嫌そうに侍女モードで出迎えてくれる。
「何かあったのか?」
「審議官付きの騎士という方がこれを置いていきました」
差し出されたのは御大層な封蝋が押された手紙だ。なんかどこかで見たことあるシチュエーションだな。
「もしかして犯罪者認定されたのかな」
予想を口にしながら手紙を受け取ると開封して読み進める。
「あっはっはっは!」
「ちょっと、何が書いてあったのよ」
予想通り過ぎて笑いしか出ない。そのまま莉緒にも手紙を渡すと、イヴァンたちに書いてあった内容を伝えていく。
手紙によると、騎士たちの見極めにより俺の罪が確定したとのことらしい。付いてこれなかったのに何を見たんだろうな。というか付いてこれなかった逆恨みにしか思えん。
「罪状は何なのよ」
莉緒も不機嫌になりながらも続きを促してくる。
「えーっと、不敬罪と強盗と、殺人未遂らしいぞ」
「「はあ?」」
罪状を読み上げたところで莉緒とイヴァンの声が重なる。
「不敬罪と強盗はともかく、殺人未遂ってなんなのよ」
「最初の二つは心当たりあんのかよ!?」
二つを否定しなかった莉緒にイヴァンがいつもの反応をしている。寄こせと言われた商品をそのままかっさらうようにして買っていったから、無理やり強盗をこじつけたんだろう。
「殺人未遂ってのは俺にもさっぱりわからん」
「……適当にでっちあげておけば金を搾り取れるからとか考えてんじゃねーかな」
「確かにそうね……。ホント腹立つけど、そんなやつらに煩わされるのももったいないわね」
「そうだな……。よし、次に会ったらぶっ飛ばすということでもう忘れよう。早く飯にしようぜ」
こうして不快なことは飯を食って忘れることにした。
「で、それがダンジョンのお宝ってわけか?」
飯を食い終わった後、エルも含めた全員で例のタブレットを囲んでいる。
「ニホンで見たタブレットとそっくりですね」
「何ができるの?」
エルとフォニアは好奇心いっぱいだが、イヴァンだけは胡散臭いものを見る目でタブレットを眺めている。なまじ日本のハイテクなタブレットを先に見たせいか、こっちの世界では大したことはできないと思ってるのかもしれない。
「いろいろやってみようか」
「うん!」
尻尾を振り振りさせるフォニアを愛でながらタブレットの電源を入れる。異空間ボックスから取り出したときは画面が黒くなっていたが、側面のボタンを押せば問題なく画面が映った。
「マシーナレイズ?」
エルが莉緒と同じところで首をかしげている。どうやらエルも聞いたことはないようだ。次に出てきたメニューの「マップ」を押して地図を表示させる。
「うおお、なんだこれ」
「これは……、ダンジョンの地図ですか?」
「どうやらそうらしい。今日は俺たちもダンジョンを回ってみたけど、自分の地図スキルでマッピングした場所に間違いはないみたいなんだ」
「罠は凶悪だったけど、急に親切になった気がするわよね」
莉緒が肩をすくめながら何気に口にするが、確かにそうかもしれない。
3Dの地図は拡大縮小や回転までできて便利になっている。他の階層を見てみようと二階層をタップしてみるが、何やら警告文が書かれたボックスが上に表示され、地図が切り替わらなかった。
「なんだ?」
「『表示する権限がありません』って書いてあるわね」
「なんだそりゃ」
「えー、見れないの?」
不満そうに口をとがらせるフォニア。
もちろん三階層以降のメニューもタップしてみたが結果は同じだった。
「私も触っていいかしら」
「ああ、もちろん」
莉緒にタブレットを渡しても結果は同じく、一階層の地図しか見れなかった。
ひとまず地図のメニューはわかったということで、次は魔物をタップしていく。こっちは問題なく画面が切り替わったが、どうやらダンジョンに出現する魔物が一覧で見られるようだ。ただ、ほとんどの魔物が「????」となっていて情報を閲覧することができない。見ることができるのは見覚えのあるロボットの魔物だけだ。遭遇したやつしか表示されないんだろうか?
あとはたまに情報が出るロボットを見て、凶悪そうな魔物だとイヴァンがドン引きするくらいだ。
「こっちも権限がないって怒られるわね……」
????となっている魔物をタップすると相変わらずだ。
「うーん。見えるのは倒したやつだけなのかな」
ちなみに残りのメニューである「クリエイト」と「ステータス」も、権限がなく見れなかった。
「ボクも触ってみていいかな?」
タブレットについて唸っていると、触りたくてうずうずしていたのかフォニアがおずおずと切り出してくる。
「ああ、いいぞ」
特に危険もなさそうだし問題ないだろうとフォニアの前にタブレットを差し出すと、瞳を輝かせながら指をタブレットに触れさせた。
「あ、あれ……?」
が、地図のメニューに触れた途端に表示されたのは『表示する権限がありません』の文字だった。一階層の地図はさっきまで見ることができていたのに、なぜか表示されなくなっていた。
魔物の群れが街を襲ってくる可能性がある状態から、ほぼ確定に変わったということだ。迎撃準備が本格的に街を挙げて行われ、国にも軍の派遣が要請されるとのこと。
冒険者ギルドでは、魔の森の奥に長期で出かける必要のある依頼はすべて取り下げられるらしい。代わりに街の防衛依頼が出て、こちらは強制依頼になるとのこと。Dランク以上の冒険者は受ける必要があるらしい。
ほぼDランク以上の冒険者しかいないこの街なので、ほとんどの冒険者はこの強制依頼を受けることになるという。
「そんなことになるのか」
執務室を出てギルドのカウンターホールへ戻ると、イヴァンが戻っていたので今日あったことを話す。
「まだ依頼は受けられそうだけど、これからどうなるかわからんってことか……」
腕を組んで考え込むイヴァンだったが、何か思い出したのかふと顔を上げる。
「そういや今朝の騎士たちはどうなったんだ?」
「知らない」
「はぁっ?」
即答する俺に怪訝な表情を浮かべるが、知らないものは知らないし興味もない。
「はは、まあいいか。偉そうにしてて気に入らなかったし、なんなら魔の森でくたばっててくれたらいいんだけどな」
「うーん。そこそこ実力あったからなぁ、どうだろう。まぁとにかく帰って飯にしよう」
「ごはんごはん!」
「わふ!」
ご飯という言葉にフォニアとニルが食いついてきた。
「おかえりなさいませ」
家に帰るとエルが不機嫌そうに侍女モードで出迎えてくれる。
「何かあったのか?」
「審議官付きの騎士という方がこれを置いていきました」
差し出されたのは御大層な封蝋が押された手紙だ。なんかどこかで見たことあるシチュエーションだな。
「もしかして犯罪者認定されたのかな」
予想を口にしながら手紙を受け取ると開封して読み進める。
「あっはっはっは!」
「ちょっと、何が書いてあったのよ」
予想通り過ぎて笑いしか出ない。そのまま莉緒にも手紙を渡すと、イヴァンたちに書いてあった内容を伝えていく。
手紙によると、騎士たちの見極めにより俺の罪が確定したとのことらしい。付いてこれなかったのに何を見たんだろうな。というか付いてこれなかった逆恨みにしか思えん。
「罪状は何なのよ」
莉緒も不機嫌になりながらも続きを促してくる。
「えーっと、不敬罪と強盗と、殺人未遂らしいぞ」
「「はあ?」」
罪状を読み上げたところで莉緒とイヴァンの声が重なる。
「不敬罪と強盗はともかく、殺人未遂ってなんなのよ」
「最初の二つは心当たりあんのかよ!?」
二つを否定しなかった莉緒にイヴァンがいつもの反応をしている。寄こせと言われた商品をそのままかっさらうようにして買っていったから、無理やり強盗をこじつけたんだろう。
「殺人未遂ってのは俺にもさっぱりわからん」
「……適当にでっちあげておけば金を搾り取れるからとか考えてんじゃねーかな」
「確かにそうね……。ホント腹立つけど、そんなやつらに煩わされるのももったいないわね」
「そうだな……。よし、次に会ったらぶっ飛ばすということでもう忘れよう。早く飯にしようぜ」
こうして不快なことは飯を食って忘れることにした。
「で、それがダンジョンのお宝ってわけか?」
飯を食い終わった後、エルも含めた全員で例のタブレットを囲んでいる。
「ニホンで見たタブレットとそっくりですね」
「何ができるの?」
エルとフォニアは好奇心いっぱいだが、イヴァンだけは胡散臭いものを見る目でタブレットを眺めている。なまじ日本のハイテクなタブレットを先に見たせいか、こっちの世界では大したことはできないと思ってるのかもしれない。
「いろいろやってみようか」
「うん!」
尻尾を振り振りさせるフォニアを愛でながらタブレットの電源を入れる。異空間ボックスから取り出したときは画面が黒くなっていたが、側面のボタンを押せば問題なく画面が映った。
「マシーナレイズ?」
エルが莉緒と同じところで首をかしげている。どうやらエルも聞いたことはないようだ。次に出てきたメニューの「マップ」を押して地図を表示させる。
「うおお、なんだこれ」
「これは……、ダンジョンの地図ですか?」
「どうやらそうらしい。今日は俺たちもダンジョンを回ってみたけど、自分の地図スキルでマッピングした場所に間違いはないみたいなんだ」
「罠は凶悪だったけど、急に親切になった気がするわよね」
莉緒が肩をすくめながら何気に口にするが、確かにそうかもしれない。
3Dの地図は拡大縮小や回転までできて便利になっている。他の階層を見てみようと二階層をタップしてみるが、何やら警告文が書かれたボックスが上に表示され、地図が切り替わらなかった。
「なんだ?」
「『表示する権限がありません』って書いてあるわね」
「なんだそりゃ」
「えー、見れないの?」
不満そうに口をとがらせるフォニア。
もちろん三階層以降のメニューもタップしてみたが結果は同じだった。
「私も触っていいかしら」
「ああ、もちろん」
莉緒にタブレットを渡しても結果は同じく、一階層の地図しか見れなかった。
ひとまず地図のメニューはわかったということで、次は魔物をタップしていく。こっちは問題なく画面が切り替わったが、どうやらダンジョンに出現する魔物が一覧で見られるようだ。ただ、ほとんどの魔物が「????」となっていて情報を閲覧することができない。見ることができるのは見覚えのあるロボットの魔物だけだ。遭遇したやつしか表示されないんだろうか?
あとはたまに情報が出るロボットを見て、凶悪そうな魔物だとイヴァンがドン引きするくらいだ。
「こっちも権限がないって怒られるわね……」
????となっている魔物をタップすると相変わらずだ。
「うーん。見えるのは倒したやつだけなのかな」
ちなみに残りのメニューである「クリエイト」と「ステータス」も、権限がなく見れなかった。
「ボクも触ってみていいかな?」
タブレットについて唸っていると、触りたくてうずうずしていたのかフォニアがおずおずと切り出してくる。
「ああ、いいぞ」
特に危険もなさそうだし問題ないだろうとフォニアの前にタブレットを差し出すと、瞳を輝かせながら指をタブレットに触れさせた。
「あ、あれ……?」
が、地図のメニューに触れた途端に表示されたのは『表示する権限がありません』の文字だった。一階層の地図はさっきまで見ることができていたのに、なぜか表示されなくなっていた。
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