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第六章
異世界最強組織
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「へぇ、そんなことができるのか」
やりたいことと今できていることを十四郎さんに伝えると、感心したあとにしばらく考え込んでしまう。
「あの、難しいんでしょうか?」
「ん? あぁ、ごめんごめん、ちょっと他にできることを考えてたよ」
なかなか反応がないのでこちらから伺うと、十四郎さんの眉間の皺が伸びる。
「柊くんがやりたいことなら簡単だ」
聞けばマンションにはインターネット回線がすでに引かれているとのこと。コンセントを挿すように、LANケーブル端子を挿せるようになっている部屋があるらしい。
「だからあとはWiFiルータを買ってくるだけで使えるようになるよ」
「あ、そうなんですね」
思ったより簡単そうでよかった。追加で契約とかが必要なら、またお願いしないといけないところだ。
「あのマンションは1テラの大容量回線を引いてるからね。ルータを買うなら性能のいいやつにしておくといい」
「あ、はい」
「LANケーブルもカテ12が――」
追加でネットワーク構築に関するうんちくを聞かされたけどさっぱりわからない。熱心に話を聞いていたエルが時折頷いていたのが謎だ。あなたまだ日本語そんなに理解できてませんよね?
「ところで、十四郎さんが考えていた他にできることって何か聞いてもいいですか?」
「ああ、かまわないよ」
莉緒が興味半分なのか尋ねると、十四郎さんが嬉しそうに表情を緩める。俺にはもう何が何だかさっぱりわからなくなっているので、これ以上聞いてもわからない自信がある。
「異世界にまでネット環境ができると、リアルタイムでそちらの情報が得られるようになりそうだからね。ほら、柊くんは動画を上げたりしてるだろう? 生放送なんてものもできるようになるんじゃないかな」
家に監視カメラを設置したりできるし、なんなら家電製品が全部スマホで操作できるようになるそうだ。
なんだか思ったよりできることが増えそうだ。現代日本からすれば、異世界のそこら辺の大通りのライブ映像だけでも需要があるかもしれない。
「監視カメラはいいかもしれませんね。ここのところ家にちょっかいをかけてくる人たちがいるみたいなので」
直接手を出してくる奴らはエルやイヴァンに追い返されてるけど、それ以外にも何か企んでいる奴らがいるかもしれない。
「はは。スマホからでも監視カメラ映像は確認できるだろうけど、パソコンやテレビがあれば大きい画面で複数の映像を同時に確認できたりするね」
「へぇ、そうなんですね」
手元にあるパソコンを十四郎さんが指さすと、エルがますます興味深い視線をパソコンに向けて頷いている。
「さっきから頷いてるけど意味わかってるのかしら……」
莉緒がぼそりと呟くが、もちろん日本語なのでエルには理解できていないはず。
「そういえばエルヴィリノスさん……だったかな。日本語はわからないと聞いていたけど、パソコンに興味津々のようだね」
十四郎さんがパソコンを指さしながらエルに尋ねると、エルも何やら頷いて「ハイ」と拙い日本語で答えた。
『十四郎さんがなんて言ってるかわかるの?』
『いえ、ぜんぜんわかりません』
「ぶふぉ」
莉緒が異世界言語で聞いた答えに、今まで静かに見守っていたイヴァンが反射のように噴き出した。日本語に通訳すると十四郎さんも大爆笑だ。
「日本語は勉強してるみたいですけどね。パソコンにも興味があるみたいで」
「ははは、それは熱心なことだね。でも異世界でパソコンを使えるようになったとしても、そこで印刷したものは結局現地の人は読めないだろう?」
「それはそうですけど」
十四郎さんはパソコンを異世界に導入する構想まであるんだろうか。そこまで考えてふと、メサリアさんたちがパソコンを使いこなして組織を運営すればどうなるんだろうかと考える。
……なんか異世界最強の恐ろしい組織が出来上がる気がするな。WiFiが導入できれば写真や動画までリアルタイムで送れるようになるんだろ?
異世界で俺が作ったスマホの意味がなくなるが、そんなことはどうでもいいくらいに恐ろしいことになりそうだ。
「なんならパソコンをローカライズしてみるかい。異世界の言語をパソコンで入力できるようにするだけならそこまで難しくないよ」
「「へ?」」
十四郎さんの言葉に思わず変な声が漏れる。
パソコンで、異世界の言語を、入力できるようにする? そんなことができるんですか? え、じゃあ世界最強組織は実現可能?
「各種アプリを異世界言語に対応するのはちょっと時間がかかるけどね」
「いやいや、さすがにそこまでは」
「そうかい? 柊くんのおかげで異世界ブームが巻き起ころうとしているからね。……うん、案外悪くない案かもしれない。今度手伝ってもらうようになると思うけど、その時はお願いしていいかな」
「えーっと、はい、それはかまいませんけど……」
十四郎さんの中で何かが決まったようだけど詳細はわからない。ってか異世界ブームってなんなんだ。もしかしなくてもフォニアの動画のことのような気はするけど、そこまで盛り上がってるんだろうか。
こっちのダンジョンから繋がってる魔人族の世界はそこまで認識されてなさそうだし、異世界ブームって言われたらやっぱり俺たちがいた世界のほうだよなぁ。
「おっと、どうやら顔合わせ相手が到着したみたいだ。別の部屋に案内してるので、私たちも向かうとしようか」
「はい、わかりました」
こうして俺たちは十四郎さんに連れられて、待ち合わせ場所へと向かった。
やりたいことと今できていることを十四郎さんに伝えると、感心したあとにしばらく考え込んでしまう。
「あの、難しいんでしょうか?」
「ん? あぁ、ごめんごめん、ちょっと他にできることを考えてたよ」
なかなか反応がないのでこちらから伺うと、十四郎さんの眉間の皺が伸びる。
「柊くんがやりたいことなら簡単だ」
聞けばマンションにはインターネット回線がすでに引かれているとのこと。コンセントを挿すように、LANケーブル端子を挿せるようになっている部屋があるらしい。
「だからあとはWiFiルータを買ってくるだけで使えるようになるよ」
「あ、そうなんですね」
思ったより簡単そうでよかった。追加で契約とかが必要なら、またお願いしないといけないところだ。
「あのマンションは1テラの大容量回線を引いてるからね。ルータを買うなら性能のいいやつにしておくといい」
「あ、はい」
「LANケーブルもカテ12が――」
追加でネットワーク構築に関するうんちくを聞かされたけどさっぱりわからない。熱心に話を聞いていたエルが時折頷いていたのが謎だ。あなたまだ日本語そんなに理解できてませんよね?
「ところで、十四郎さんが考えていた他にできることって何か聞いてもいいですか?」
「ああ、かまわないよ」
莉緒が興味半分なのか尋ねると、十四郎さんが嬉しそうに表情を緩める。俺にはもう何が何だかさっぱりわからなくなっているので、これ以上聞いてもわからない自信がある。
「異世界にまでネット環境ができると、リアルタイムでそちらの情報が得られるようになりそうだからね。ほら、柊くんは動画を上げたりしてるだろう? 生放送なんてものもできるようになるんじゃないかな」
家に監視カメラを設置したりできるし、なんなら家電製品が全部スマホで操作できるようになるそうだ。
なんだか思ったよりできることが増えそうだ。現代日本からすれば、異世界のそこら辺の大通りのライブ映像だけでも需要があるかもしれない。
「監視カメラはいいかもしれませんね。ここのところ家にちょっかいをかけてくる人たちがいるみたいなので」
直接手を出してくる奴らはエルやイヴァンに追い返されてるけど、それ以外にも何か企んでいる奴らがいるかもしれない。
「はは。スマホからでも監視カメラ映像は確認できるだろうけど、パソコンやテレビがあれば大きい画面で複数の映像を同時に確認できたりするね」
「へぇ、そうなんですね」
手元にあるパソコンを十四郎さんが指さすと、エルがますます興味深い視線をパソコンに向けて頷いている。
「さっきから頷いてるけど意味わかってるのかしら……」
莉緒がぼそりと呟くが、もちろん日本語なのでエルには理解できていないはず。
「そういえばエルヴィリノスさん……だったかな。日本語はわからないと聞いていたけど、パソコンに興味津々のようだね」
十四郎さんがパソコンを指さしながらエルに尋ねると、エルも何やら頷いて「ハイ」と拙い日本語で答えた。
『十四郎さんがなんて言ってるかわかるの?』
『いえ、ぜんぜんわかりません』
「ぶふぉ」
莉緒が異世界言語で聞いた答えに、今まで静かに見守っていたイヴァンが反射のように噴き出した。日本語に通訳すると十四郎さんも大爆笑だ。
「日本語は勉強してるみたいですけどね。パソコンにも興味があるみたいで」
「ははは、それは熱心なことだね。でも異世界でパソコンを使えるようになったとしても、そこで印刷したものは結局現地の人は読めないだろう?」
「それはそうですけど」
十四郎さんはパソコンを異世界に導入する構想まであるんだろうか。そこまで考えてふと、メサリアさんたちがパソコンを使いこなして組織を運営すればどうなるんだろうかと考える。
……なんか異世界最強の恐ろしい組織が出来上がる気がするな。WiFiが導入できれば写真や動画までリアルタイムで送れるようになるんだろ?
異世界で俺が作ったスマホの意味がなくなるが、そんなことはどうでもいいくらいに恐ろしいことになりそうだ。
「なんならパソコンをローカライズしてみるかい。異世界の言語をパソコンで入力できるようにするだけならそこまで難しくないよ」
「「へ?」」
十四郎さんの言葉に思わず変な声が漏れる。
パソコンで、異世界の言語を、入力できるようにする? そんなことができるんですか? え、じゃあ世界最強組織は実現可能?
「各種アプリを異世界言語に対応するのはちょっと時間がかかるけどね」
「いやいや、さすがにそこまでは」
「そうかい? 柊くんのおかげで異世界ブームが巻き起ころうとしているからね。……うん、案外悪くない案かもしれない。今度手伝ってもらうようになると思うけど、その時はお願いしていいかな」
「えーっと、はい、それはかまいませんけど……」
十四郎さんの中で何かが決まったようだけど詳細はわからない。ってか異世界ブームってなんなんだ。もしかしなくてもフォニアの動画のことのような気はするけど、そこまで盛り上がってるんだろうか。
こっちのダンジョンから繋がってる魔人族の世界はそこまで認識されてなさそうだし、異世界ブームって言われたらやっぱり俺たちがいた世界のほうだよなぁ。
「おっと、どうやら顔合わせ相手が到着したみたいだ。別の部屋に案内してるので、私たちも向かうとしようか」
「はい、わかりました」
こうして俺たちは十四郎さんに連れられて、待ち合わせ場所へと向かった。
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