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第六章
鏡と動画
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「買ってきた鏡ってどんな効果があるんだ?」
空が薄暗くなり始めたころ、野営用ハウスの外にテーブルとイスを出して夕飯を食べている時にイヴァンが尋ねてきた。
「うん? これか?」
異空間ボックスから取り出すとテーブルに置いてみる。
「そういやどんな効果があるのかは知らん」
「え?」
「知らずに買ったの?」
二人に驚かれるけど、別にこの鏡が欲しくて買ったわけじゃない。
「あの男爵とやらに渡したくなかっただけだしな」
「ははっ」
「わかる」
味噌で味付けされた肉を口に入れるとご飯をかきこむ。最近エルの腕も上がってきていて、そこそこ美味い飯が食えるようになってきた。
「じゃあ鑑定してみるか」
一通り飯を食い終わって一息ついたころに、さっそく鏡を鑑定してみた。
=====
種類 :道具
名前 :魔法の鏡
説明 :解析の効果が付与された鏡
鏡に映したものの魔法効果を
解析することができる
品質 :A
付与 :解析
製作者:-
=====
「魔法の鏡だって」
「へぇ?」
「結局何ができるんだ?」
鑑定結果をみんなに伝えるとそれぞれ反応が返ってくる。
「解析っていうスキルがあるのかしら?」
「どうだろう? 俺たちは誰も持ってないみたいだけど、もしかしたらあるかも?」
といっても魔力感知を鋭くしていくと解析みたいなことはできるけど、それでスキルを獲得できてないってことは違うんだろう。
A4サイズくらいの長方形の鏡である。綺麗な装飾で縁取りされていて高級感が漂っている。
自分を映してみると背後に無数の魔法陣が見える。一応師匠に言われたとおりに、普段から魔法は使い続けているのだ。莉緒を映してみると、鏡の中の莉緒の背後にも同じように無数の魔法陣が見えた。
俺も気づいてない魔法を常時発動してるみたいだけど、魔法関連は莉緒には敵わなくなっている。そんな魔法も検知するとはこの魔法の鏡なかなかやるな。
「ほい」
莉緒に渡すと同じように皆を映したり自分で魔法を発動したり試している。
「へぇ、面白いわね」
「うおっ」
「は?」
回ってきた鏡で俺たちを映したイヴァンとエルが驚いている。
「なに? 二人とも普段からそんなことやってんの?」
「師匠の教えだからな」
「ええ……? ぜんぜん魔力の気配も感じられないんだけど……」
エルが俺たちの背後あたりに視線を彷徨わせている。近づいてきて手を突っ込んだりしているが、何が起こるわけでもない。
「にしてもこの鏡に浮かび上がる魔法陣ってどうやって出してるんだろうな?」
鏡を覗き込みながら魔力感知を強めていく。ついでに目に魔力も集めていき、自身からも魔力を伸ばして鏡を包み込む。なんとなく鏡で魔力が反射してるような気がする。反射するときに目に映るように可視光線に変換しているということか。
ということはやっぱり俺たちが隠蔽しながら常時使っている魔法も、何かしらの魔力を放射しているわけで、それを検知していると。
「むむむっ」
俺の推測を聞いて、莉緒が魔法を手のひらの上に出しながら凝視している。俺も同じように自分で出した魔法を注視していると、じんわりと魔法陣が浮かんできた。
「お、もしかして」
しかも鏡を通して見るよりもどういった魔法なのかがよくわかる。これが解析のスキルか。自分を鑑定すると解析スキルが増えていた。
「あ、柊ずるい」
「えー?」
ずるいって言われてもスキルが生えたものはしょうがない。
いろんな魔法を手元で発動させながら片っ端から解析していく。
「んー、普段使ってる魔法も解析すると、もうちょっと効率化できそうだなぁ」
「そうなの?」
「さらに効率化!?」
「うん。これをこうやって――」
興味深そうな莉緒と驚くエルに、解析でわかったことを伝えていく。
「さてと、じゃあ俺はバッテリー交換に行ってくる」
一通り伝え終わったあとは先にやることをやってしまおう。
「うん。いってらっしゃい」
魔法の効率化に注力していて話半分で見送られる。
次元魔法で穴を開けると日本の拠点にしているマンションのベランダへと出現する。部屋に入るとコンセントに接続していたポータブル電源を回収して、残量の切れたポータブル電源を接続する。
「おっと、ついでにさっき撮ったフォニアをアップしておこうか」
スマホを取り出して動画サイトを開くと、さっき撮ったフォニアの動画をアップする。知っている動画より画質が高いからファイルサイズも大きいんだろうけど、アップロード速度も速いのですぐに終わる。
「へぇ、思ったより再生回数いってるな」
最初に投稿した動画を確認すれば、すでに再生回数は十万回を超えている。もうすぐ二十万回に届く勢いだ。ついているコメントを流し読みしていると、スマホにメッセージの着信が入っていることに気が付いた。相手は仁平さんだ。
「なんだろう」
内容を確認すれば、ちょうど投稿している動画についてだった。どうやら一部界隈でフォニアが話題になっているらしい。
「だろうねぇ」
とはいえそれ自体はフォニア自身が望んだことなので問題ない。買い物で歩いているときでも声をかけられることもあるし、フォニア自身は嬉しそうにしている。
「……なんだって?」
しかし続きのメッセージは楽観できるものではなかった。
『向こうの言葉で話をしている動画が発端で、フォニアちゃんがこっちの世界のダンジョンの向こう側の住人ではないかと疑惑が上がっているので、その対策について話がしたい』
「了解しました……っと」
あの魔人族どもと一緒にされるのは不愉快なので、何とかする必要がありそうだ。しばらく待ってみても返事はない。もう夜も遅いし、話し合いはいつにしましょうかと追加でメッセージを送って今日はそのまま異世界へと戻った。
空が薄暗くなり始めたころ、野営用ハウスの外にテーブルとイスを出して夕飯を食べている時にイヴァンが尋ねてきた。
「うん? これか?」
異空間ボックスから取り出すとテーブルに置いてみる。
「そういやどんな効果があるのかは知らん」
「え?」
「知らずに買ったの?」
二人に驚かれるけど、別にこの鏡が欲しくて買ったわけじゃない。
「あの男爵とやらに渡したくなかっただけだしな」
「ははっ」
「わかる」
味噌で味付けされた肉を口に入れるとご飯をかきこむ。最近エルの腕も上がってきていて、そこそこ美味い飯が食えるようになってきた。
「じゃあ鑑定してみるか」
一通り飯を食い終わって一息ついたころに、さっそく鏡を鑑定してみた。
=====
種類 :道具
名前 :魔法の鏡
説明 :解析の効果が付与された鏡
鏡に映したものの魔法効果を
解析することができる
品質 :A
付与 :解析
製作者:-
=====
「魔法の鏡だって」
「へぇ?」
「結局何ができるんだ?」
鑑定結果をみんなに伝えるとそれぞれ反応が返ってくる。
「解析っていうスキルがあるのかしら?」
「どうだろう? 俺たちは誰も持ってないみたいだけど、もしかしたらあるかも?」
といっても魔力感知を鋭くしていくと解析みたいなことはできるけど、それでスキルを獲得できてないってことは違うんだろう。
A4サイズくらいの長方形の鏡である。綺麗な装飾で縁取りされていて高級感が漂っている。
自分を映してみると背後に無数の魔法陣が見える。一応師匠に言われたとおりに、普段から魔法は使い続けているのだ。莉緒を映してみると、鏡の中の莉緒の背後にも同じように無数の魔法陣が見えた。
俺も気づいてない魔法を常時発動してるみたいだけど、魔法関連は莉緒には敵わなくなっている。そんな魔法も検知するとはこの魔法の鏡なかなかやるな。
「ほい」
莉緒に渡すと同じように皆を映したり自分で魔法を発動したり試している。
「へぇ、面白いわね」
「うおっ」
「は?」
回ってきた鏡で俺たちを映したイヴァンとエルが驚いている。
「なに? 二人とも普段からそんなことやってんの?」
「師匠の教えだからな」
「ええ……? ぜんぜん魔力の気配も感じられないんだけど……」
エルが俺たちの背後あたりに視線を彷徨わせている。近づいてきて手を突っ込んだりしているが、何が起こるわけでもない。
「にしてもこの鏡に浮かび上がる魔法陣ってどうやって出してるんだろうな?」
鏡を覗き込みながら魔力感知を強めていく。ついでに目に魔力も集めていき、自身からも魔力を伸ばして鏡を包み込む。なんとなく鏡で魔力が反射してるような気がする。反射するときに目に映るように可視光線に変換しているということか。
ということはやっぱり俺たちが隠蔽しながら常時使っている魔法も、何かしらの魔力を放射しているわけで、それを検知していると。
「むむむっ」
俺の推測を聞いて、莉緒が魔法を手のひらの上に出しながら凝視している。俺も同じように自分で出した魔法を注視していると、じんわりと魔法陣が浮かんできた。
「お、もしかして」
しかも鏡を通して見るよりもどういった魔法なのかがよくわかる。これが解析のスキルか。自分を鑑定すると解析スキルが増えていた。
「あ、柊ずるい」
「えー?」
ずるいって言われてもスキルが生えたものはしょうがない。
いろんな魔法を手元で発動させながら片っ端から解析していく。
「んー、普段使ってる魔法も解析すると、もうちょっと効率化できそうだなぁ」
「そうなの?」
「さらに効率化!?」
「うん。これをこうやって――」
興味深そうな莉緒と驚くエルに、解析でわかったことを伝えていく。
「さてと、じゃあ俺はバッテリー交換に行ってくる」
一通り伝え終わったあとは先にやることをやってしまおう。
「うん。いってらっしゃい」
魔法の効率化に注力していて話半分で見送られる。
次元魔法で穴を開けると日本の拠点にしているマンションのベランダへと出現する。部屋に入るとコンセントに接続していたポータブル電源を回収して、残量の切れたポータブル電源を接続する。
「おっと、ついでにさっき撮ったフォニアをアップしておこうか」
スマホを取り出して動画サイトを開くと、さっき撮ったフォニアの動画をアップする。知っている動画より画質が高いからファイルサイズも大きいんだろうけど、アップロード速度も速いのですぐに終わる。
「へぇ、思ったより再生回数いってるな」
最初に投稿した動画を確認すれば、すでに再生回数は十万回を超えている。もうすぐ二十万回に届く勢いだ。ついているコメントを流し読みしていると、スマホにメッセージの着信が入っていることに気が付いた。相手は仁平さんだ。
「なんだろう」
内容を確認すれば、ちょうど投稿している動画についてだった。どうやら一部界隈でフォニアが話題になっているらしい。
「だろうねぇ」
とはいえそれ自体はフォニア自身が望んだことなので問題ない。買い物で歩いているときでも声をかけられることもあるし、フォニア自身は嬉しそうにしている。
「……なんだって?」
しかし続きのメッセージは楽観できるものではなかった。
『向こうの言葉で話をしている動画が発端で、フォニアちゃんがこっちの世界のダンジョンの向こう側の住人ではないかと疑惑が上がっているので、その対策について話がしたい』
「了解しました……っと」
あの魔人族どもと一緒にされるのは不愉快なので、何とかする必要がありそうだ。しばらく待ってみても返事はない。もう夜も遅いし、話し合いはいつにしましょうかと追加でメッセージを送って今日はそのまま異世界へと戻った。
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