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第四部
事の真相
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「そして盗賊ギルドへと依頼した例の件についてですが……。王国の犬がどうも我々のことを嗅ぎまわっていたようで、暗殺を下部組織に投げた形になります」
俺たちにギルドを壊滅させられる原因になった発端を話すのは憚られるのか、微妙に眉を顰めるメサリアさん。
「王国って?」
記憶にある王国にはいい思い出はないが、ここはきちんと聞いておかなければならない。確かこの大陸には王国はいくつかあったはずだ。
「アークライト王国でございます」
「「ならぶっ殺してよし」」
「なんでやねん!?」
今まで石像になってたくせに、こういうところにはツッコむんだな。
しかしそれについては理由は明確だ。
「「アークライト王国が嫌いだから」」
「意味わからん!?」
「最近勢いを無くしていたのですが、偶然何かを掴んだのか諜報員の下っ端がこの街までやってきたのです」
俺たちのやりとりをスルーして、自分の役割を続けるメサリアさん。さすができる女は違いますね。
「ふむ……。それにしてもアークライト王国は暗殺者ギルドをどうしたかったんだろうな」
「それは、どうも我々を自分たちの影響下に置きたかったようでして」
「は? ……暗殺者ギルドなんて得体の知れないものを利用しようなんて、国としてどうかしてるな」
「ほんとサイテーな国よね」
「国のそういう裏の部分っていうのはどこにでもあるもんなんじゃねぇの!?」
「イヴァンうるせぇ」
「確かに声は大きいけどそれはあんたらのせいであって!」
「フォニアちゃんが起きるじゃないの」
「あ、はい。ごめんなさい」
莉緒の一言で即座に黙ると、ソファにゆっくりと座りなおす。
「……」
俺たちのやりとりが終わってしばらくして無言が続く。なんとなく発言しづらいと思っていたところに助けがやってきた。
「……ん? 何かあったのか?」
風呂で体を洗っていたエルヴィリノスが帰ってきた。
「いや別に何もないぞ」
「そうそう。ちょっとアークライト王国サイテーねって話をしてただけ」
「そうか。……あの国は相変わらずだな」
何かエルヴィリノスにも思うところがあるのか、言葉を濁してしかめっ面をしている。そのまま大人しくメサリアさんの隣の床へと腰を下ろした。
「そういえば。エルは暗殺者ギルドの所属というわけではありません。協力者と言う立場で、わたくしどもに命令権はございませんのでご承知おきください」
「ん? あー、ギルドのルールね……」
メサリアさんの言葉に納得いった感じのエルヴィリノスが、じっと俺と莉緒を見つめてくる。
ギルドメンバーは俺たちの決定に従うと言っていたが、エルヴィリノスは含まれないということだろう。話の経緯からなんとなくメンバーじゃなさそうだと思ってたけど、間違ってはいなかったようだ。
「いや、あたしもシュウとリオには従うよ」
だというのに、俺をまっすぐ見据えてそう告げてくる。
「……俺に殺されそうになってたくせにあっさりしてるな」
「でもリオに救われた」
今度は莉緒を見据えている。
隷属の首輪してるし、言わされてる感もあっていまいちしっくりこない。
それにマッチポンプ感が半端ないが、本人がそれでいいならいいのか? 普通殺されそうになった相手は恨むんじゃないかと思うんだけど。
「最初はあんな不意を突いてあたしを隷属させてくれて、はらわたが煮えくり返っていたわよ。だけど本気で真正面からやりあっても、シュウには手も足も出なかった」
なるほど脳筋か。
でもある意味魔力攪乱フィールドって卑怯だよな。魔法使いは何もできなくなるし、そっち寄りのステータスを持つエルヴィリノスはどうあがいても相性が悪い。
「リオのことも冷静に考えれば、あたしの隷属耐性を突き抜けられるほど魔力があるってことなんだよ。治癒魔法にしてもそうだし、二人には敵わないね」
肩をすくめてそう零すエルヴィリノス。
「わたくしどもからお話しする内容とすれば以上でしょうか。他に何か聞きたいことやご要望はございますか?」
俺たち三人を順番に見回しているメサリアさんだが、まだもうちょっと聞きたいことはある。
「とりあえず俺たちは今まで通り過ごしたいんだが、それはどうなんだ? 正直面倒なことはしたくない」
「それでしたら今まで通りで問題ございません。先ほども申しました通り、基本的な宿の運営はわたくしどもで行います。宿やギルドの方針などあればその都度おっしゃってくださってかまいませんので」
「なるほど。それを聞いて安心した」
「では、他になければ一旦この場は解散としたいのですがよろしいでしょうか」
「そうね。いいと思うわよ」
あまり触れなかったが、暗殺者ギルドというものも何とかしたいんだけどもう疲れた。あとにしよう。金を積めば人殺しを請け負うギルドとか嫌すぎる。解体して新しくしようぜ。
「はぁ……、終わったか……。もういろいろありすぎて何が何だか……」
イヴァンは頭を抱えて立ち上がると、ふらふらと風呂場へと歩いて行く。
「ちょっと風呂行ってくるわ」
「あ、お客様! そちらはまだ――」
メサリアさんが引き留めようとするも、空間遮断結界での拘束がまだ解けておらず引き留めきれない。そのまま風呂場へと消えて行ったイヴァンだったが、しばらくすると。
「なんじゃこりゃーーーーー!!」
と叫び声が響いてきた。
俺たちにギルドを壊滅させられる原因になった発端を話すのは憚られるのか、微妙に眉を顰めるメサリアさん。
「王国って?」
記憶にある王国にはいい思い出はないが、ここはきちんと聞いておかなければならない。確かこの大陸には王国はいくつかあったはずだ。
「アークライト王国でございます」
「「ならぶっ殺してよし」」
「なんでやねん!?」
今まで石像になってたくせに、こういうところにはツッコむんだな。
しかしそれについては理由は明確だ。
「「アークライト王国が嫌いだから」」
「意味わからん!?」
「最近勢いを無くしていたのですが、偶然何かを掴んだのか諜報員の下っ端がこの街までやってきたのです」
俺たちのやりとりをスルーして、自分の役割を続けるメサリアさん。さすができる女は違いますね。
「ふむ……。それにしてもアークライト王国は暗殺者ギルドをどうしたかったんだろうな」
「それは、どうも我々を自分たちの影響下に置きたかったようでして」
「は? ……暗殺者ギルドなんて得体の知れないものを利用しようなんて、国としてどうかしてるな」
「ほんとサイテーな国よね」
「国のそういう裏の部分っていうのはどこにでもあるもんなんじゃねぇの!?」
「イヴァンうるせぇ」
「確かに声は大きいけどそれはあんたらのせいであって!」
「フォニアちゃんが起きるじゃないの」
「あ、はい。ごめんなさい」
莉緒の一言で即座に黙ると、ソファにゆっくりと座りなおす。
「……」
俺たちのやりとりが終わってしばらくして無言が続く。なんとなく発言しづらいと思っていたところに助けがやってきた。
「……ん? 何かあったのか?」
風呂で体を洗っていたエルヴィリノスが帰ってきた。
「いや別に何もないぞ」
「そうそう。ちょっとアークライト王国サイテーねって話をしてただけ」
「そうか。……あの国は相変わらずだな」
何かエルヴィリノスにも思うところがあるのか、言葉を濁してしかめっ面をしている。そのまま大人しくメサリアさんの隣の床へと腰を下ろした。
「そういえば。エルは暗殺者ギルドの所属というわけではありません。協力者と言う立場で、わたくしどもに命令権はございませんのでご承知おきください」
「ん? あー、ギルドのルールね……」
メサリアさんの言葉に納得いった感じのエルヴィリノスが、じっと俺と莉緒を見つめてくる。
ギルドメンバーは俺たちの決定に従うと言っていたが、エルヴィリノスは含まれないということだろう。話の経緯からなんとなくメンバーじゃなさそうだと思ってたけど、間違ってはいなかったようだ。
「いや、あたしもシュウとリオには従うよ」
だというのに、俺をまっすぐ見据えてそう告げてくる。
「……俺に殺されそうになってたくせにあっさりしてるな」
「でもリオに救われた」
今度は莉緒を見据えている。
隷属の首輪してるし、言わされてる感もあっていまいちしっくりこない。
それにマッチポンプ感が半端ないが、本人がそれでいいならいいのか? 普通殺されそうになった相手は恨むんじゃないかと思うんだけど。
「最初はあんな不意を突いてあたしを隷属させてくれて、はらわたが煮えくり返っていたわよ。だけど本気で真正面からやりあっても、シュウには手も足も出なかった」
なるほど脳筋か。
でもある意味魔力攪乱フィールドって卑怯だよな。魔法使いは何もできなくなるし、そっち寄りのステータスを持つエルヴィリノスはどうあがいても相性が悪い。
「リオのことも冷静に考えれば、あたしの隷属耐性を突き抜けられるほど魔力があるってことなんだよ。治癒魔法にしてもそうだし、二人には敵わないね」
肩をすくめてそう零すエルヴィリノス。
「わたくしどもからお話しする内容とすれば以上でしょうか。他に何か聞きたいことやご要望はございますか?」
俺たち三人を順番に見回しているメサリアさんだが、まだもうちょっと聞きたいことはある。
「とりあえず俺たちは今まで通り過ごしたいんだが、それはどうなんだ? 正直面倒なことはしたくない」
「それでしたら今まで通りで問題ございません。先ほども申しました通り、基本的な宿の運営はわたくしどもで行います。宿やギルドの方針などあればその都度おっしゃってくださってかまいませんので」
「なるほど。それを聞いて安心した」
「では、他になければ一旦この場は解散としたいのですがよろしいでしょうか」
「そうね。いいと思うわよ」
あまり触れなかったが、暗殺者ギルドというものも何とかしたいんだけどもう疲れた。あとにしよう。金を積めば人殺しを請け負うギルドとか嫌すぎる。解体して新しくしようぜ。
「はぁ……、終わったか……。もういろいろありすぎて何が何だか……」
イヴァンは頭を抱えて立ち上がると、ふらふらと風呂場へと歩いて行く。
「ちょっと風呂行ってくるわ」
「あ、お客様! そちらはまだ――」
メサリアさんが引き留めようとするも、空間遮断結界での拘束がまだ解けておらず引き留めきれない。そのまま風呂場へと消えて行ったイヴァンだったが、しばらくすると。
「なんじゃこりゃーーーーー!!」
と叫び声が響いてきた。
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