212 / 398
第四部
武器の形成方法
しおりを挟む
なんだかんだと全員で昼食を摂った午後、改めて全員で工房の作業場へと集まって、俺たちの武器作成方法を教えることとなった。
親方は忙しいんじゃないかと思ったけど、こういうときのためにスケジュールはかなり余裕を持たせているから大丈夫とのことだった。
「まずは俺たちの武器の作成方法をざっくりと説明します」
テーブルを囲む鍛冶職人の二人が神妙な顔で頷いている。
ってかイヴァンとフォニアもなんで同じ席に座ってんの。別に話を聞いててもいいけど、武器作成とか興味あるのか……。
「簡単に言うと、私たちはこの金属を、土魔法を使って形成しています」
親方に用意してもらった鉄鉱石をテーブルから手に取り、魔力を流してまずは鉄を抽出する莉緒。
「ええ……、そんな簡単に……」
「……!」
絶句する二人を差し置いて、今度は抽出した鉄を形成して細長い棒状に変化させる。さすがに鉄鉱石一つからだと、小さめのナイフも作れない。
「そこそこ魔力を使うので、お二人では小ぶりのナイフも作れないと思います」
「魔法の適性もありますしね」
改めて二人を鑑定してみるが、MPと魔力ともに三桁前半だ。パウラさんのMPに至っては二桁しかない。
だけど武器を作る上でまったく使えないことはないと思うんだよな。
「なので、この製法のみで武器を作るよりは、普段の鍛冶作業の中に取り入れる方法がいいのではと思ってます」
「…………?」
視線で問いかけてくる親方だが、さすがになんとなく言いたいことはわかる。
「鍛冶作業の様子は直接見たことはありませんが、金属を炉にくべて溶かして、叩いて鍛えるんですよね」
「はい……。溶かした金属を型に流し込む鋳造もありますが、刀は叩いて鍛える鍛造ですね」
なんとなくファンタジー物にあるにわか知識だったけど、間違ってはいなかったようだ。
「なるほど、そのときに魔力を込めて叩いてみるとか、そういうことね」
莉緒の言葉に頷きを返す。腕のいい鍛冶職人という話だし、もしかすると無意識にそういうことをすでにやっている可能性だってある。コツをつかめれば、なんかこう、一気に進化しないだろうか。
「そんな簡単にうまくいくのかな?」
懐疑的な表情のイヴァンだが、それはまぁやってみるしかないんじゃないかと思う。それはルイゲンツさんに期待だ。
「むむむぅ」
莉緒に鉄鉱石を渡されたフォニアが一生懸命集中している。とても可愛いです。
「…………!」
「えっ? なんとなくわかるんですか親方!?」
「…………」
「え、あ、わ、わかりました!」
何事かとやりとりをすると、ガタンと音を立てて立ち上がると親方が部屋を出て行く。まったくもって何が起こっているかわからない。とても不便だ。しかしあんなざっくり説明でわかるとは、やっぱり無意識に使ってたのかな。
「ごめんなさい、すぐ戻るので待っていてください」
パウラさんも慌てて親方の後を追って出て行く。……と、しばらくして帰ってきた。その手には二本の短刀が握られている。
「これ、親方から今できるとりあえずのお礼だそうで。古い作品なので差し上げるわけではないですが、存分に触って確認してもらってかまわないそうです」
「とりあえずって……?」
「えっと、本命としての対価は、教えてもらった技術を使って打った刀、だそうで」
おぉ、マジか。それはそれで楽しみではあるな。鍛冶職人が新技術を取り入れて本気で打った刀となればすごそうだ。
「ほ、ホントに?」
莉緒が目を輝かせている。しかし今はパウラさんの手の中にある武器も気になっているようだ。よく見れば反りが入っているから、これも刀だろうか。短いから脇差タイプのやつかな。しかも――
「アダマンタイト製だ」
テーブルに置かれた脇差をそれぞれ手に取ると、じっくりと観察する。
=====
種類 :武器(刀)
名前 :なし
説明 :アダマンタイトを鍛えて造られた刀。
その切れ味は他の武器の追随を許さず、
刃のついた武器の中で上位に位置する。
品質 :A
付与 :なし
製作者:ルイゲンツ
=====
うおぉ、品質Aだ。すげぇ。付与はついてないけど、アダマンタイト製というだけですごく攻撃力が高そうに感じる。
金属の特性からか、魔力はあんまり通らないけど物理には強そうだ。
でも土属性の魔力なら比較的通るようになる。じっくりと成分分析をおこなうべく、鞘から刀身を引き抜いた。
「あの、すみません、シュウさん」
しばらくアダマンタイト製の刀を分析していたところ、パウラさんの声が掛かった。
「親方が呼んでいまして、ちょっと奥まで来てもらってもいいですか?」
「あ、はい。かまいませんけど」
何かあったんだろうか? 親方と意思疎通できるとは思えないけど、とりあえずパウラさんがいれば大丈夫か?
「ありがとうございます。こちらです」
なんとなく不安に駆られながらも後をついていく。いくつか廊下を進んでいくとだんだんと室温が上がってきた。炉が近いみたいだけど、こんなところまで入っていって大丈夫なんだろうか。
目的の部屋へと連れられると、炉の手前に親方が座っていた。
「シュウさんを連れてきました」
パウラさんの声に片手を上げると、親方が顔だけを横に向けて何やらしゃべっている。
「ちょっと、親方! ちゃんとこっち向いてくれないとわからないですよ」
さすがに今のはパウラさんでもわからなかったらしい。もう一度聞きなおしてくれた。
「えーっと、普段どうやって魔力を通してるのかコツを聞きたいそうで……」
「ええ……」
いきなり本番でコツを聞いてきますかね。雰囲気からして、いつもやっていたことの内容が具体的にわかったって感じがしたんだけど。ってかやっぱり直接やりとりできないの不便だ。
しゃべれないんだったらあれはどうだ。
『親方、聞こえますか』
『え、あ、お? なんじゃこれ?』
念話をつないでみると、親方との会話があっさりとできるようになった。
なんかこれで問題のほとんどが片付いた気がするぞ。
親方は忙しいんじゃないかと思ったけど、こういうときのためにスケジュールはかなり余裕を持たせているから大丈夫とのことだった。
「まずは俺たちの武器の作成方法をざっくりと説明します」
テーブルを囲む鍛冶職人の二人が神妙な顔で頷いている。
ってかイヴァンとフォニアもなんで同じ席に座ってんの。別に話を聞いててもいいけど、武器作成とか興味あるのか……。
「簡単に言うと、私たちはこの金属を、土魔法を使って形成しています」
親方に用意してもらった鉄鉱石をテーブルから手に取り、魔力を流してまずは鉄を抽出する莉緒。
「ええ……、そんな簡単に……」
「……!」
絶句する二人を差し置いて、今度は抽出した鉄を形成して細長い棒状に変化させる。さすがに鉄鉱石一つからだと、小さめのナイフも作れない。
「そこそこ魔力を使うので、お二人では小ぶりのナイフも作れないと思います」
「魔法の適性もありますしね」
改めて二人を鑑定してみるが、MPと魔力ともに三桁前半だ。パウラさんのMPに至っては二桁しかない。
だけど武器を作る上でまったく使えないことはないと思うんだよな。
「なので、この製法のみで武器を作るよりは、普段の鍛冶作業の中に取り入れる方法がいいのではと思ってます」
「…………?」
視線で問いかけてくる親方だが、さすがになんとなく言いたいことはわかる。
「鍛冶作業の様子は直接見たことはありませんが、金属を炉にくべて溶かして、叩いて鍛えるんですよね」
「はい……。溶かした金属を型に流し込む鋳造もありますが、刀は叩いて鍛える鍛造ですね」
なんとなくファンタジー物にあるにわか知識だったけど、間違ってはいなかったようだ。
「なるほど、そのときに魔力を込めて叩いてみるとか、そういうことね」
莉緒の言葉に頷きを返す。腕のいい鍛冶職人という話だし、もしかすると無意識にそういうことをすでにやっている可能性だってある。コツをつかめれば、なんかこう、一気に進化しないだろうか。
「そんな簡単にうまくいくのかな?」
懐疑的な表情のイヴァンだが、それはまぁやってみるしかないんじゃないかと思う。それはルイゲンツさんに期待だ。
「むむむぅ」
莉緒に鉄鉱石を渡されたフォニアが一生懸命集中している。とても可愛いです。
「…………!」
「えっ? なんとなくわかるんですか親方!?」
「…………」
「え、あ、わ、わかりました!」
何事かとやりとりをすると、ガタンと音を立てて立ち上がると親方が部屋を出て行く。まったくもって何が起こっているかわからない。とても不便だ。しかしあんなざっくり説明でわかるとは、やっぱり無意識に使ってたのかな。
「ごめんなさい、すぐ戻るので待っていてください」
パウラさんも慌てて親方の後を追って出て行く。……と、しばらくして帰ってきた。その手には二本の短刀が握られている。
「これ、親方から今できるとりあえずのお礼だそうで。古い作品なので差し上げるわけではないですが、存分に触って確認してもらってかまわないそうです」
「とりあえずって……?」
「えっと、本命としての対価は、教えてもらった技術を使って打った刀、だそうで」
おぉ、マジか。それはそれで楽しみではあるな。鍛冶職人が新技術を取り入れて本気で打った刀となればすごそうだ。
「ほ、ホントに?」
莉緒が目を輝かせている。しかし今はパウラさんの手の中にある武器も気になっているようだ。よく見れば反りが入っているから、これも刀だろうか。短いから脇差タイプのやつかな。しかも――
「アダマンタイト製だ」
テーブルに置かれた脇差をそれぞれ手に取ると、じっくりと観察する。
=====
種類 :武器(刀)
名前 :なし
説明 :アダマンタイトを鍛えて造られた刀。
その切れ味は他の武器の追随を許さず、
刃のついた武器の中で上位に位置する。
品質 :A
付与 :なし
製作者:ルイゲンツ
=====
うおぉ、品質Aだ。すげぇ。付与はついてないけど、アダマンタイト製というだけですごく攻撃力が高そうに感じる。
金属の特性からか、魔力はあんまり通らないけど物理には強そうだ。
でも土属性の魔力なら比較的通るようになる。じっくりと成分分析をおこなうべく、鞘から刀身を引き抜いた。
「あの、すみません、シュウさん」
しばらくアダマンタイト製の刀を分析していたところ、パウラさんの声が掛かった。
「親方が呼んでいまして、ちょっと奥まで来てもらってもいいですか?」
「あ、はい。かまいませんけど」
何かあったんだろうか? 親方と意思疎通できるとは思えないけど、とりあえずパウラさんがいれば大丈夫か?
「ありがとうございます。こちらです」
なんとなく不安に駆られながらも後をついていく。いくつか廊下を進んでいくとだんだんと室温が上がってきた。炉が近いみたいだけど、こんなところまで入っていって大丈夫なんだろうか。
目的の部屋へと連れられると、炉の手前に親方が座っていた。
「シュウさんを連れてきました」
パウラさんの声に片手を上げると、親方が顔だけを横に向けて何やらしゃべっている。
「ちょっと、親方! ちゃんとこっち向いてくれないとわからないですよ」
さすがに今のはパウラさんでもわからなかったらしい。もう一度聞きなおしてくれた。
「えーっと、普段どうやって魔力を通してるのかコツを聞きたいそうで……」
「ええ……」
いきなり本番でコツを聞いてきますかね。雰囲気からして、いつもやっていたことの内容が具体的にわかったって感じがしたんだけど。ってかやっぱり直接やりとりできないの不便だ。
しゃべれないんだったらあれはどうだ。
『親方、聞こえますか』
『え、あ、お? なんじゃこれ?』
念話をつないでみると、親方との会話があっさりとできるようになった。
なんかこれで問題のほとんどが片付いた気がするぞ。
10
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
二人とも好きじゃあダメなのか?
あさきりゆうた
BL
元格闘家であり、がたいの良さだけがとりえの中年体育教師 梶原一輝は、卒業式の日に、自身の教え子であった二人の男子生徒から告白を受けた。
正面から愛の告白をしてきた二人の男子生徒に対し、梶原一輝も自身の気持ちに正直になり、二人に対し、どちらも好きと告白した!?
※ムキムキもじゃもじゃのおっさん受け、年下責めに需要がありそうなら、後々続きを書いてみたいと思います。
21.03.11
つい、興奮して、日にちをわきまえずに、いやらしい新話を書いてしまいました。
21.05.18
第三話投稿しました。ガチムチなおっさんにメイド服を着させて愛してやりたい、抱きたいと思いました。
23.09.09
表紙をヒロインのおっさんにしました。
社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活
楓
BL
異世界トリップした先は、人間の数が異様に少なく絶滅寸前の世界でした。
草臥れた社畜サラリーマンが性奴隷としてご主人様に可愛がられたり嬲られたり虐められたりする日々の記録です。
露骨な性描写あるのでご注意ください。
W職業持ちの異世界スローライフ
Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。
目が覚めるとそこは魂の世界だった。
橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。
転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
転生美女は元おばあちゃん!同じ世界に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!
ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。
私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。
そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。
早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯
私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。
『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』
そのために私は⋯
『地上に降りて冒険者になる!』
これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』のスピンオフとなります。おばあちゃんこと凛さんが主人公!
が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。
また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。
こちらも、よろしくお願いします。
*8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。
サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―
文月 沙織
BL
祖国を出た軍人ダリクは、異国の地サファヴィアで娼館の用心棒として働くことになった。だが、そこにはなんとかつての上官で貴族のサイラスが囚われていた。彼とは因縁があり、ダリクが国を出る理由をつくった相手だ。
性奴隷にされることになったかつての上官が、目のまえでいたぶられる様子を、ダリクは復讐の想いをこめて見つめる。
誇りたかき軍人貴族は、異国の娼館で男娼に堕ちていくーー。
かなり過激な性描写があります。十八歳以下の方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる