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第二部

護衛依頼を受けよう

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「護衛の依頼ですね」

 フルールさんと共に冒険者ギルドへとやってくると、さっそく護衛依頼を出す。

「ええ。護衛依頼はこの二人に受けていただこうと思っているので、よろしくお願いしますね」

「畏まりました。商都までの護衛であれば治安は悪くありませんので、Dランクの依頼となります」

 以前と同じように指名依頼を出すが、どうやら今回は依頼のランク査定はその場で出たようだ。

「この場で依頼を受けていかれますか?」

「はい。お願いします」

 前回と同じようにすぐに依頼を受けるためにギルド証を職員へと預けたのだが。

「……もしかして護衛依頼は初めてでしょうか?」

 職員の疑問に頷きを返すと、少し困った表情になる。

「申し訳ございませんが護衛依頼を初めて受ける場合は、経験者が随行していただく必要がございまして。ランクが足りていてもお二人だけで受けることはできないんです」

「あら、そうなんですね……。どうしましょう」

 職員と同じく困った表情になるフルールさんだけど、俺たちはいい解決方法を持っていない。というか誰か他の人についてもらわないといけないとは思わなかった。
 でもまぁ護衛初心者だけに護衛されるというのも、依頼者側からすればたまったもんじゃないよな。

「ですので、護衛随行員の依頼を出させていただきます。元々が指名依頼とのことで、随行員の依頼もフルール様からしていただく必要がございますが……」

「わかりました。それでお願いします」

「畏まりました」

 俺たちを指名依頼で護衛につけたいのであれば、しょうがないことではあるな。

「出発日は六日後でよろしいでしょうか」

「はい、それでお願いします」

「では依頼票を作成してボードに張り付けておきます」

「わかりました」

 こうして冒険者ギルドへ護衛の依頼を出して、俺たちは解散することとなった。
 そして早くも翌日には、護衛依頼の随行員が決まったと連絡が入った。



 魔法瓶を作っては納品したり、コツを職人たちに教えたり、新しい商品を考えたり、魔法の練習をしたり、ニルと遊んだり、たまに鉱山へ行ったりしている間に六日が経った。ベルドラン工房へも一度様子を見に行ったが、無事店を畳まなくて済むようになったと喜んでいた。

 宿を引き払って北へ向かい、途中にあるラシアーユ商会でフルールさんと合流する。

「おはようございます。本日はよろしくお願いしますね」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

 出品される部位ごとに解体された地竜を回収すると、馬車に乗せてもらい北門へと向かう。御者台に並んで座るスペースがある程度だ。フルールさんはそっちに座っているので、俺たちは後ろの荷台の隙間に足を掛けて乗っているだけだ。荷台にはそこそこ荷物が積まれており、乗るスペースのないニルは後ろからついてくる。

「随行員の依頼を受けた冒険者は北門前で合流いたします」

 以前地竜の血を回収していたランベルさんが、御者台から声を掛けてきた。

「わかりました」

 商会からはフルールさんとランベルさんの二人が商都に向かう。商都までは治安がいいとのことだが、初めての護衛依頼となるとちょっとだけ緊張するな。随行員の人もどんな冒険者が来るんだろうか。
 などと考えている間に北門に着いてしまった。

「あんたたちが依頼人のラシアーユ商会かい?」

「はい。ランベルと申します」

 馬車の前方から聞こえる声から想像するに、声を掛けてきた人物が随行員の冒険者だろうか。野太く自信のある声が、なんとなく経験豊富なベテランを想像させる。

「で、今回は随行員だけど、初めて護衛依頼を受ける冒険者はまだ来てないのか?」

「いえ、商会で合流して一緒に来ております」

 馬車を先に降りると莉緒とフルールさんも続いて降りてくる。
 ランベルさんと話をしていたのは、大剣を腰に提げた体格のいい女性冒険者だった。かなり見上げないと表情を伺うことができない。にしても野太い声がこの人から聞こえてくるので違和感がすごい……んだけど、なんだろう。

「初め……まして? Dランク冒険者の柊です」

 この違和感に心当たりがあって、思わず「初めまして」の言葉が疑問形になってしまった。

「あら?」

 俺へと視線を向けると、女性冒険者の眉間に皺が寄る。

「初めましてじゃないよ」

 と同時に莉緒から小さな声でツッコミがきた。

「アリッサさん……、ですよね。同じくDランクの莉緒です。今日はよろしくお願いしますね」

「あぁ、あのときの。Cランクのアリッサだ。よろしくな!」

「あはは! もしかしてあのときの可愛い坊やじゃないのさ! アタイはメルベリットってんだ。メルって呼んでくれ」

「ウフフ、本当ですね。わたしはフレリスと申します。今日はよろしくお願いしますね?」

 よく見れば後ろにも二人、大きい盾を背負った女性と、自分の身長と同じくらいの杖を持った女性がいた。
 ここまでくると俺も完全に思い出していた。確かフェンリルの村で天狼茸の常時依頼とか木材とか、いろいろアドバイスをもらった冒険者だ。パーティーを組んでいるらしいのは知っていたけど、彼女たちがそうなのか。

「あら、お互い面識があったのですね」

「フェンリル村まで仕事で行ったときに偶然ね」

 フルールさんの言葉に、アリッサさんが俺を見下ろせる位置にまで近づいてきた。こっちも見上げる角度が大きくなって大変だ。

「なんにしても」

 体格に見合った大きな手を掲げてポンと俺の頭の上に乗せると。

「あたしが護衛について手取り足取り教えてあげるよ」

 自信満々に告げるのだが。

「うおぉっ!?」

 ニルの姿を見て素早く後ろへ下がると、腰につるした大剣に手を掛けるのだった。
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