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第二部
ひとまず安心
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街の入り口でひと悶着あったものの、無事に街の中に入ることができた。門番には狼のことをシルバーウルフと間違われたままだが、特に問題ないだろう。勘違いさせたままの方が混乱は少ないと思うというのは、ワイアットさんの意見でもある。
「ギルドマスターはいるか!」
ギルドへ入ってすぐにワイアットさんが奥へ呼びかける。
いつにもまして視線が集まっている。注目されているのは、Bランク冒険者パーティーと一緒にいることと、あとは従魔になった狼のせいだろう。
「あ、ワイアットさん。ギルドマスターなら別室で、森に出た魔物の話をキルウェルさんから聞いてるところですが……」
「だったらそこに案内してくれ。追加情報がある」
「しょ、少々お待ちください」
出てきた職員が慌てて奥へと引っ込んでいく。
よし、ちょっとだけ時間ができたかな? 俺としてももう我慢の限界なのだ。うずうずして仕方がなかったが、待ってる間だけならいいよな。
というわけで横にぴったり付き添っていた狼の傍に近づくと、頭を撫でる。
「ふおぉぉ」
ふかふかやわらけー。
「あ、柊ずるい」
莉緒も一緒になってもふもふしだす。まったくしょうがないやつだな。俺は首を攻めるぞ。
「わふぅぅ」
狼も撫でられて気持ちがいいのか、目を細めてうっとりしている。
「お前ら……、緊張感がねぇな……」
ワイアットさんから呆れた声が飛んでくるがスルーだ。
このもふもふを今堪能せずにいつするというのだ。
「お待たせしました。奥の部屋へどうぞ」
だがしかし、至福の時間はすぐに終わりを告げてしまう。職員に案内されてしぶしぶ奥の部屋へ向かった。
職員がノックをして『天狼の牙』メンバーを連れてきたことを告げると扉を開ける。中にいたのは耳の尖った小柄な女性と、森の入り口を見張っていたあの時の冒険者だ。
「ご苦労様。追加情報があるって聞いたけど……」
もしかしてこの小柄なエルフがギルドマスターなんだろうか。俺とあんまり身長は変わらないが、蒼い髪と碧の瞳が特徴の少女だ。
「その後ろの二人と狼は……?」
訝し気な視線を向けてくるエルフ少女に、ワイアットさんが「今日の本題だ」と答えている。合わせて俺たちも自己紹介をしておいた。
「ボクはここのギルドマスターをやっているフランセスだ」
「……オレはCランク冒険者のキルウェルだ」
ギルドマスターはまさかのボクっ娘だった。どうなってるんだこのギルドは。見た目で判断するのは間違ってるけど、どうにも威厳というものには欠ける。
全員が座れる数の椅子もないため、キルウェルさんの隣にワイアットさんだけが腰かける。狼に至っては腹を床に着け、前足の上に顎を乗せてまったりしている。しかし狼って呼ぶのもアレだな。名前を考えた方がいいな。
「まず最初に確認したいんだが、フローズヴィトニルが出た話はどこまで伝わってるんだ?」
「まだギルドマスターにしか話していないです」
「そうだね。さっき話を聞いてこれからどうしようか考えていたところだよ」
「表では喋ってないんだな?」
念を押すようにキルウェルさんに確認すると、何度も頷いている。一応最低限混乱しないように配慮はしていたみたいだ。
「だったらよかった」
ホッと一息つくと一同を見回して、ゆっくりと告げる。
「そのフローズヴィトニルだが、ここにいる従魔の狼がそうだ」
「えっ?」
「は?」
ギルドマスターとキルウェルさんの視線が従魔へと向けられる。
「いやいや、オレが見たときは六、七メートルは超えるデカさでしたよ」
半笑いで「冗談はやめてくださいよ」と続けるキルウェルさんだが、ギルドマスターの視線は鋭く従魔に向けられたままだ。
全員の視線を受けているが特に何も感じないようで、従魔は大きく欠伸をする。ギルドマスターがワイアットさんへと視線を向けると、ワイアットさんが何やら神妙に頷いている。
「フローズヴィトニルで間違いないみたいだね……」
ゴクリと大きく喉を鳴らすギルドマスター。
「え、いや、マジですか……」
「あぁ、嘘をついてどうするんだ。鑑定した結果なんだから、種族名は調べればすぐにわかるよ」
「鑑定……、でもサイズが……」
「上位の魔物ともなれば自身のサイズや姿かたちまで変化できるものがいるというからね。さすがSランクの魔物ってところだろう」
「……」
ギルドマスターの説明に何も言えなくなるキルウェルさん。
しかし鑑定スキルを持ってるなら話が早くて助かる。どこまで鑑定でわかるのかちょっと気になるところだけど。
「ああ、俺もこの狼が小さくなるところを実際に見たからな。間違いないぜ」
「それで、このフローズヴィトニルが従魔になったから、いったん目の前の脅威はなくなったってことでいいのかな」
「あぁ、それで問題ない」
「じゅ、従魔……」
「うーん……、『天狼の牙』の誰かがテイムしたっていう話ならまだわかるんだけど、Eランクのシュウとリオの二人がいるってことは」
「はい、そうですね。この従魔は俺がテイムした魔物です。なので登録をお願いしたいですね」
「Sランクの……、従魔……」
俺の言葉にキルウェルさんは呆然と呟き、ギルドマスターは大きくため息をついて天を仰ぐのだった。
「ギルドマスターはいるか!」
ギルドへ入ってすぐにワイアットさんが奥へ呼びかける。
いつにもまして視線が集まっている。注目されているのは、Bランク冒険者パーティーと一緒にいることと、あとは従魔になった狼のせいだろう。
「あ、ワイアットさん。ギルドマスターなら別室で、森に出た魔物の話をキルウェルさんから聞いてるところですが……」
「だったらそこに案内してくれ。追加情報がある」
「しょ、少々お待ちください」
出てきた職員が慌てて奥へと引っ込んでいく。
よし、ちょっとだけ時間ができたかな? 俺としてももう我慢の限界なのだ。うずうずして仕方がなかったが、待ってる間だけならいいよな。
というわけで横にぴったり付き添っていた狼の傍に近づくと、頭を撫でる。
「ふおぉぉ」
ふかふかやわらけー。
「あ、柊ずるい」
莉緒も一緒になってもふもふしだす。まったくしょうがないやつだな。俺は首を攻めるぞ。
「わふぅぅ」
狼も撫でられて気持ちがいいのか、目を細めてうっとりしている。
「お前ら……、緊張感がねぇな……」
ワイアットさんから呆れた声が飛んでくるがスルーだ。
このもふもふを今堪能せずにいつするというのだ。
「お待たせしました。奥の部屋へどうぞ」
だがしかし、至福の時間はすぐに終わりを告げてしまう。職員に案内されてしぶしぶ奥の部屋へ向かった。
職員がノックをして『天狼の牙』メンバーを連れてきたことを告げると扉を開ける。中にいたのは耳の尖った小柄な女性と、森の入り口を見張っていたあの時の冒険者だ。
「ご苦労様。追加情報があるって聞いたけど……」
もしかしてこの小柄なエルフがギルドマスターなんだろうか。俺とあんまり身長は変わらないが、蒼い髪と碧の瞳が特徴の少女だ。
「その後ろの二人と狼は……?」
訝し気な視線を向けてくるエルフ少女に、ワイアットさんが「今日の本題だ」と答えている。合わせて俺たちも自己紹介をしておいた。
「ボクはここのギルドマスターをやっているフランセスだ」
「……オレはCランク冒険者のキルウェルだ」
ギルドマスターはまさかのボクっ娘だった。どうなってるんだこのギルドは。見た目で判断するのは間違ってるけど、どうにも威厳というものには欠ける。
全員が座れる数の椅子もないため、キルウェルさんの隣にワイアットさんだけが腰かける。狼に至っては腹を床に着け、前足の上に顎を乗せてまったりしている。しかし狼って呼ぶのもアレだな。名前を考えた方がいいな。
「まず最初に確認したいんだが、フローズヴィトニルが出た話はどこまで伝わってるんだ?」
「まだギルドマスターにしか話していないです」
「そうだね。さっき話を聞いてこれからどうしようか考えていたところだよ」
「表では喋ってないんだな?」
念を押すようにキルウェルさんに確認すると、何度も頷いている。一応最低限混乱しないように配慮はしていたみたいだ。
「だったらよかった」
ホッと一息つくと一同を見回して、ゆっくりと告げる。
「そのフローズヴィトニルだが、ここにいる従魔の狼がそうだ」
「えっ?」
「は?」
ギルドマスターとキルウェルさんの視線が従魔へと向けられる。
「いやいや、オレが見たときは六、七メートルは超えるデカさでしたよ」
半笑いで「冗談はやめてくださいよ」と続けるキルウェルさんだが、ギルドマスターの視線は鋭く従魔に向けられたままだ。
全員の視線を受けているが特に何も感じないようで、従魔は大きく欠伸をする。ギルドマスターがワイアットさんへと視線を向けると、ワイアットさんが何やら神妙に頷いている。
「フローズヴィトニルで間違いないみたいだね……」
ゴクリと大きく喉を鳴らすギルドマスター。
「え、いや、マジですか……」
「あぁ、嘘をついてどうするんだ。鑑定した結果なんだから、種族名は調べればすぐにわかるよ」
「鑑定……、でもサイズが……」
「上位の魔物ともなれば自身のサイズや姿かたちまで変化できるものがいるというからね。さすがSランクの魔物ってところだろう」
「……」
ギルドマスターの説明に何も言えなくなるキルウェルさん。
しかし鑑定スキルを持ってるなら話が早くて助かる。どこまで鑑定でわかるのかちょっと気になるところだけど。
「ああ、俺もこの狼が小さくなるところを実際に見たからな。間違いないぜ」
「それで、このフローズヴィトニルが従魔になったから、いったん目の前の脅威はなくなったってことでいいのかな」
「あぁ、それで問題ない」
「じゅ、従魔……」
「うーん……、『天狼の牙』の誰かがテイムしたっていう話ならまだわかるんだけど、Eランクのシュウとリオの二人がいるってことは」
「はい、そうですね。この従魔は俺がテイムした魔物です。なので登録をお願いしたいですね」
「Sランクの……、従魔……」
俺の言葉にキルウェルさんは呆然と呟き、ギルドマスターは大きくため息をついて天を仰ぐのだった。
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