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第一部
日常の訓練風景
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「はあぁぁぁ、緊張したー」
「怪我しなくてよかったわよね」
「まぁねぇ」
師匠の家に帰りついて、ようやく自室で一息つけたところだ。あれから師匠に連れられて、集団戦であるオークの巣を潰し、強敵であるマーダーラプトルという三メートルを超える恐竜のような魔物とやりあったのだ。
師匠より格下の相手とはいえ、大型の魔物を相手にするのはさすがに緊張した。大上段から振り下ろされる打撃攻撃とか怖すぎた。一人でもなんとか倒せたと思うけど、莉緒と二人で相手をしてちょうどいい練習になったと思う。
「逆に言うと、師匠の化け物じみた強さも実感できたともいう」
「確かに……」
しみじみと同意する莉緒に、師匠とマーダーラプトルの姿を思い浮かべてみる。少なくとも見た目だけはマーダーラプトルの方が怖いよね。
「それにしても……、魔族の国には、師匠みたいなのがゴロゴロいるのかな」
「勝てる気がしないわよね」
「だよね……。魔族は人族より寿命が長いみたいだし、数は少ないらしいけど強いヤツは多いって言ってたよな」
魔王を倒すためにクラスメイトは頑張ってるらしいけど、今頃どうなってるんだろうか。まぁ知ったこっちゃないけど。
……とはいえ、クラスメイトや王女とかメイドは、思い出すと腹立つんだよな。ぎゃふんと言わせてやりたい思いはある。
「そういえば召喚されたクラスメイトの中に、莉緒と仲の良かった人っていた?」
「……ううん、いないよ」
「そっか……。ごめん、嫌なこと思い出させちゃったね」
表情を曇らせた莉緒を見て、とっさに謝る。
「大丈夫。今は柊がいてくれるから」
だけど健気にもそう言って、俺の肩へと体を寄せてきた。特に何かあったわけじゃないんだけど、なんとなく彼女には信頼を寄せられている。彼女のことは好きだけど、しばらくはこのままでいいんじゃないかなと思っている。そう、人間の本能に騙されてはいけない。
「はは、そりゃ……ありがとう」
だけどなんて返していいかわからん! ありがとうって何だよ!? 誰かいい返し方を教えて! このままでいいとか言ったけど、ホントはどうしていいかわかんないだけなんだよね!
「そろそろご飯にしようか」
「もうそんな時間か」
「うん。行こっか」
この家で世話になるようになってから、料理は俺たち二人で作るようになっている。さすがに何もしないわけにはいかないからな。おかげでどんどん料理スキルが上がってる気がする。
そんなことを思いながら二人でキッチンへと向かった。
「よし、じゃあ今日からは普段から魔法を使ってみるか」
お昼を食べた後の師匠の言葉がこれだった。ちょくちょくと突発的に思いついたことを口にするから困る。
「毎日訓練として魔法は使うようにしてますけど、それと違うんですか?」
「疑問に思うのもわかるが、まずは手本を見せよう」
言葉と共に師匠の周囲に魔力が集まってくる。と思ったら師匠の周囲で初級の各種魔法が発動する。
風が流れて火が起こり、水が生成されたかと思うと同時に砂も生成されている。四種類の魔法を同時に使うとか、やっぱり師匠の頭はおかしい。
「これを普段生活している中、常に発動しておくんだ。飯食いながら、料理しながら、もちろん接近戦訓練中もだな」
「はぁ!?」
常にってそういうこと!?
「室内じゃ風か光の魔法しか使えないが、まずは一種類の魔法から始めようか」
「わかりました」
「ええっ!?」
素直に頷く莉緒に即行でツッコんでしまった。ちょっと物分かりよすぎない? それとも師匠にはツッコむだけ無駄だってことなんだろうか。いやまぁ確かにそうだけど。
「なんだ、文句でもあるのか?」
「いえ、ありません!」
胡乱げな視線を向けられると、ビシッと気を付けの姿勢で肯定する。
「うむ。いい心がけだ」
満足そうにうなずく師匠だが、決して無茶を言っているわけでもない。いや一般的に聞けば無茶なんだが、成長率マシマシな俺たちに合った要求をしているわけで、失敗したことはないのだ。
「いやでもこれって、杖なしでやらないといけないんですよね」
「あぁ、もちろんそうなるな。息をするように無意識で魔法を使えるようにするのが目的だ。わざわざ杖なんぞ使ってたら意味がない」
「ですよねー」
過去に試そうとして失敗したやつだけど、今ではできるようにはなっている。ただ多少の集中力がいるだけで。
……そう、集中力がいるのだ。
まぁ試してみるしかない。
隣を見てみると、莉緒が真面目な顔をして後頭部を光らせている。なんか歩こうとしてるようで、手足がぴくっと動くんだけど動かせないみたいな。手足をピクピクさせながら後光が差し込んでいる様子に思わず笑いそうになる。
いやだから集中しろって言ってんだろ。無心になれ。わざわざ莉緒を見るからダメなんだ。視線はまっすぐに。
と思って真正面にいる師匠を見れば、口元を押さえて肩をプルプル震わせていた。爆笑寸前じゃねぇか! こっちも見ちゃイカン! よし、空を見上げよう、そうしよう!
気を引き締めると斜め上を見上げ、おでこを光らせるイメージを膨らませて魔力を練る。そして心の中で『ライト』と唱えて光を発すると。
「くくくく、ぶははははは!!」
我慢しきれなかった師匠の笑い声が響き渡った。
「怪我しなくてよかったわよね」
「まぁねぇ」
師匠の家に帰りついて、ようやく自室で一息つけたところだ。あれから師匠に連れられて、集団戦であるオークの巣を潰し、強敵であるマーダーラプトルという三メートルを超える恐竜のような魔物とやりあったのだ。
師匠より格下の相手とはいえ、大型の魔物を相手にするのはさすがに緊張した。大上段から振り下ろされる打撃攻撃とか怖すぎた。一人でもなんとか倒せたと思うけど、莉緒と二人で相手をしてちょうどいい練習になったと思う。
「逆に言うと、師匠の化け物じみた強さも実感できたともいう」
「確かに……」
しみじみと同意する莉緒に、師匠とマーダーラプトルの姿を思い浮かべてみる。少なくとも見た目だけはマーダーラプトルの方が怖いよね。
「それにしても……、魔族の国には、師匠みたいなのがゴロゴロいるのかな」
「勝てる気がしないわよね」
「だよね……。魔族は人族より寿命が長いみたいだし、数は少ないらしいけど強いヤツは多いって言ってたよな」
魔王を倒すためにクラスメイトは頑張ってるらしいけど、今頃どうなってるんだろうか。まぁ知ったこっちゃないけど。
……とはいえ、クラスメイトや王女とかメイドは、思い出すと腹立つんだよな。ぎゃふんと言わせてやりたい思いはある。
「そういえば召喚されたクラスメイトの中に、莉緒と仲の良かった人っていた?」
「……ううん、いないよ」
「そっか……。ごめん、嫌なこと思い出させちゃったね」
表情を曇らせた莉緒を見て、とっさに謝る。
「大丈夫。今は柊がいてくれるから」
だけど健気にもそう言って、俺の肩へと体を寄せてきた。特に何かあったわけじゃないんだけど、なんとなく彼女には信頼を寄せられている。彼女のことは好きだけど、しばらくはこのままでいいんじゃないかなと思っている。そう、人間の本能に騙されてはいけない。
「はは、そりゃ……ありがとう」
だけどなんて返していいかわからん! ありがとうって何だよ!? 誰かいい返し方を教えて! このままでいいとか言ったけど、ホントはどうしていいかわかんないだけなんだよね!
「そろそろご飯にしようか」
「もうそんな時間か」
「うん。行こっか」
この家で世話になるようになってから、料理は俺たち二人で作るようになっている。さすがに何もしないわけにはいかないからな。おかげでどんどん料理スキルが上がってる気がする。
そんなことを思いながら二人でキッチンへと向かった。
「よし、じゃあ今日からは普段から魔法を使ってみるか」
お昼を食べた後の師匠の言葉がこれだった。ちょくちょくと突発的に思いついたことを口にするから困る。
「毎日訓練として魔法は使うようにしてますけど、それと違うんですか?」
「疑問に思うのもわかるが、まずは手本を見せよう」
言葉と共に師匠の周囲に魔力が集まってくる。と思ったら師匠の周囲で初級の各種魔法が発動する。
風が流れて火が起こり、水が生成されたかと思うと同時に砂も生成されている。四種類の魔法を同時に使うとか、やっぱり師匠の頭はおかしい。
「これを普段生活している中、常に発動しておくんだ。飯食いながら、料理しながら、もちろん接近戦訓練中もだな」
「はぁ!?」
常にってそういうこと!?
「室内じゃ風か光の魔法しか使えないが、まずは一種類の魔法から始めようか」
「わかりました」
「ええっ!?」
素直に頷く莉緒に即行でツッコんでしまった。ちょっと物分かりよすぎない? それとも師匠にはツッコむだけ無駄だってことなんだろうか。いやまぁ確かにそうだけど。
「なんだ、文句でもあるのか?」
「いえ、ありません!」
胡乱げな視線を向けられると、ビシッと気を付けの姿勢で肯定する。
「うむ。いい心がけだ」
満足そうにうなずく師匠だが、決して無茶を言っているわけでもない。いや一般的に聞けば無茶なんだが、成長率マシマシな俺たちに合った要求をしているわけで、失敗したことはないのだ。
「いやでもこれって、杖なしでやらないといけないんですよね」
「あぁ、もちろんそうなるな。息をするように無意識で魔法を使えるようにするのが目的だ。わざわざ杖なんぞ使ってたら意味がない」
「ですよねー」
過去に試そうとして失敗したやつだけど、今ではできるようにはなっている。ただ多少の集中力がいるだけで。
……そう、集中力がいるのだ。
まぁ試してみるしかない。
隣を見てみると、莉緒が真面目な顔をして後頭部を光らせている。なんか歩こうとしてるようで、手足がぴくっと動くんだけど動かせないみたいな。手足をピクピクさせながら後光が差し込んでいる様子に思わず笑いそうになる。
いやだから集中しろって言ってんだろ。無心になれ。わざわざ莉緒を見るからダメなんだ。視線はまっすぐに。
と思って真正面にいる師匠を見れば、口元を押さえて肩をプルプル震わせていた。爆笑寸前じゃねぇか! こっちも見ちゃイカン! よし、空を見上げよう、そうしよう!
気を引き締めると斜め上を見上げ、おでこを光らせるイメージを膨らませて魔力を練る。そして心の中で『ライト』と唱えて光を発すると。
「くくくく、ぶははははは!!」
我慢しきれなかった師匠の笑い声が響き渡った。
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