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第一章 神霊の森
第28話 くろすけ
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「5しか減ってないんだけど」
『なんだと?』
まさか一気に実が収穫できるまで成長するとは思っていなかった。しかも1.5倍くらい大きく育っていて、自然になっていた実よりも大きくて甘くておいしい。
「うふふ、やっぱりアイリスちゃんの魔力は幸せになれるのねん」
かえでは頬に手を当てながら、嬉しそうにくるくる回っている。キースはまたもや考え込んでいるみたいだけど、私もちょっと考えてみようか。
そういえばいつからか魔力を動かしやすくなってたんだよね。くろすけに手伝ってもらってからだったっけ? じゃあくろすけに手伝ってもらわずに精霊魔術を使ったらどうなるのかな。
もう一つ木の実を種を取り出すと、同じように地面に埋めて土を掛ける。
「も一回いくよ」
「わかったなのねん」
同じように種が芽を出して成長する過程を想像しながら、同じくらいの魔力をかえでへと渡す。
芽が出て双葉を付けるとぐんぐんと伸びていく。そして私の身長の半分くらいのところまで成長すると、それ以上伸びなくなった。
「さっきよりももらった魔力少なかったのねん」
「え? そうなの?」
ステータスを確認するとやっぱり5しか減っていない。
「同じだけ渡したつもりなんだけど」
『確かにさっきと同じ、5しか減っていないな』
まさかそんな効果があるなんてと思いながら、くろすけを両手で掬うようにして手に取ってみる。不定形に姿かたちをくねくねと変えているけど、なんとなく嬉しそうに見える。
「やっぱりこの子のおかげ?」
『どういうことだ?』
「魔力の循環とか、放出とか、この子に手伝ってもらったの」
『……手伝ってもらう?』
説明してもキースはいまいちわかっていない様子。そもそも他人の魔力に干渉するなんて普通はできないのだ。自分で言っていて私は何を言ってるんだという気持ちになってきた。ただ起こったことを話しただけだけど、誰かに説明することでようやくその異常さに気が付いた。
「あら、珍しいのねん。魔の精霊なのねん」
かえでは知っていたようでさりげなく教えてくれるけど、聞いたことのない精霊が出てきたな。精霊自体が最近知ったものだけど、通常の魔術の属性に関するものは無以外については精霊も存在した。だけどそれ以外にもたくさんの種類の精霊が存在するみたいなのだ。
地魔術であれば地属性でひとまとめにされるけど、精霊になると石の精霊、土の精霊、砂の精霊といった具合に細かく分けられたりする。
「魔の精霊って?」
「どこにでもある魔素がもとになった精霊なのねん。魔素の性質も持っているから、近くで使われた魔術発動で消費されたり、生き物に吸収されて消えちゃうこともあるのねん。とってもレアな精霊なのねん」
「そうなんだ……。なんだか不憫だね……」
なんとなく憐憫の情が湧いてしまい、よしよしと指先でくろすけを撫でてやる。嬉しそうに指にまとわりついてくるくろすけが、なんだか可愛く見えてきた。
「契約すれば事故で消費されることもなくなるのねん」
「ホントに?」
『それなら是非とも契約しておくべきだな。これほど多様な精霊が存在するとは、実に興味深い』
それなら確かに契約しておいたほうがいい気がする。くろすけは可愛いしね。
改めて手の中にいるくろすけと向き直ると話しかけてみる。
「これからきみと契約しようと思うんだけど、いいかな?」
理解しているのかどうかよくわからないけど、特に拒絶反応とかはなさそうだ。契約したくないのであれば、名前を付けても了承されないだけだ。
「じゃあきみは今日から『くろすけ』だ」
今まで心の中だけで呼んでいた名前を初めて声に出すと。
一呼吸置いた後にくろすけが一瞬だけ光ったかと思うと、一回りほどサイズが大きくなった。
「うわっ、大きくなった……?」
『……見えるようになった』
「あ、見えてなかったんだ」
キースの自白で初めて、キースが精霊を認識できていなかったことに気が付く。かえでとは会話している節があったから、見えていたのはかえでだけなのかもしれない。
「うふふ、くろすけちゃん、よろしくなのねん」
「よろしくね、くろすけ」
かえでが契約仲間になったからか、私の手の中にいるくろすけのところまでふわふわと飛んでいくとぎゅっと抱きしめる。
『よし、契約できたならさっそく試してみよう。同じ精霊魔術を使ったら消費魔力はどうなるかだ』
契約できた精霊が増えたとしてもキースはぶれないようだ。自分の興味を満たすべく催促してくる。
「そんなに慌てなくてもいいのに」
『何を悠長なことを言っている。契約した直後というのは今しかないのだぞ』
といっても自分でも気になって入るので、試してみるのはやぶさかではない。
肩をすくめつつも同じように種を取り出すと地面に埋めて、水を掛ける。
「じゃあいくよ」
「どういう魔力がもらえるのねん」
かえでも実は気になっていそうだ。契約したくろすけに手伝ってもらった魔力はどんなものになるのか。
さっきの半分くらいの魔力を意識して、植物成長の精霊魔術を行使する。
「はあああぁぁぁん! なのねん!」
前よりも恍惚とした表情を浮かべてかえでがくるくると踊りだし、種から芽を出した植物はぐんぐんと成長していく。そして二メートル弱の高さになって、四センチくらいの実を付けたところで成長は止まった。
ちなみに減ったMPは2だった。
『なんだと?』
まさか一気に実が収穫できるまで成長するとは思っていなかった。しかも1.5倍くらい大きく育っていて、自然になっていた実よりも大きくて甘くておいしい。
「うふふ、やっぱりアイリスちゃんの魔力は幸せになれるのねん」
かえでは頬に手を当てながら、嬉しそうにくるくる回っている。キースはまたもや考え込んでいるみたいだけど、私もちょっと考えてみようか。
そういえばいつからか魔力を動かしやすくなってたんだよね。くろすけに手伝ってもらってからだったっけ? じゃあくろすけに手伝ってもらわずに精霊魔術を使ったらどうなるのかな。
もう一つ木の実を種を取り出すと、同じように地面に埋めて土を掛ける。
「も一回いくよ」
「わかったなのねん」
同じように種が芽を出して成長する過程を想像しながら、同じくらいの魔力をかえでへと渡す。
芽が出て双葉を付けるとぐんぐんと伸びていく。そして私の身長の半分くらいのところまで成長すると、それ以上伸びなくなった。
「さっきよりももらった魔力少なかったのねん」
「え? そうなの?」
ステータスを確認するとやっぱり5しか減っていない。
「同じだけ渡したつもりなんだけど」
『確かにさっきと同じ、5しか減っていないな』
まさかそんな効果があるなんてと思いながら、くろすけを両手で掬うようにして手に取ってみる。不定形に姿かたちをくねくねと変えているけど、なんとなく嬉しそうに見える。
「やっぱりこの子のおかげ?」
『どういうことだ?』
「魔力の循環とか、放出とか、この子に手伝ってもらったの」
『……手伝ってもらう?』
説明してもキースはいまいちわかっていない様子。そもそも他人の魔力に干渉するなんて普通はできないのだ。自分で言っていて私は何を言ってるんだという気持ちになってきた。ただ起こったことを話しただけだけど、誰かに説明することでようやくその異常さに気が付いた。
「あら、珍しいのねん。魔の精霊なのねん」
かえでは知っていたようでさりげなく教えてくれるけど、聞いたことのない精霊が出てきたな。精霊自体が最近知ったものだけど、通常の魔術の属性に関するものは無以外については精霊も存在した。だけどそれ以外にもたくさんの種類の精霊が存在するみたいなのだ。
地魔術であれば地属性でひとまとめにされるけど、精霊になると石の精霊、土の精霊、砂の精霊といった具合に細かく分けられたりする。
「魔の精霊って?」
「どこにでもある魔素がもとになった精霊なのねん。魔素の性質も持っているから、近くで使われた魔術発動で消費されたり、生き物に吸収されて消えちゃうこともあるのねん。とってもレアな精霊なのねん」
「そうなんだ……。なんだか不憫だね……」
なんとなく憐憫の情が湧いてしまい、よしよしと指先でくろすけを撫でてやる。嬉しそうに指にまとわりついてくるくろすけが、なんだか可愛く見えてきた。
「契約すれば事故で消費されることもなくなるのねん」
「ホントに?」
『それなら是非とも契約しておくべきだな。これほど多様な精霊が存在するとは、実に興味深い』
それなら確かに契約しておいたほうがいい気がする。くろすけは可愛いしね。
改めて手の中にいるくろすけと向き直ると話しかけてみる。
「これからきみと契約しようと思うんだけど、いいかな?」
理解しているのかどうかよくわからないけど、特に拒絶反応とかはなさそうだ。契約したくないのであれば、名前を付けても了承されないだけだ。
「じゃあきみは今日から『くろすけ』だ」
今まで心の中だけで呼んでいた名前を初めて声に出すと。
一呼吸置いた後にくろすけが一瞬だけ光ったかと思うと、一回りほどサイズが大きくなった。
「うわっ、大きくなった……?」
『……見えるようになった』
「あ、見えてなかったんだ」
キースの自白で初めて、キースが精霊を認識できていなかったことに気が付く。かえでとは会話している節があったから、見えていたのはかえでだけなのかもしれない。
「うふふ、くろすけちゃん、よろしくなのねん」
「よろしくね、くろすけ」
かえでが契約仲間になったからか、私の手の中にいるくろすけのところまでふわふわと飛んでいくとぎゅっと抱きしめる。
『よし、契約できたならさっそく試してみよう。同じ精霊魔術を使ったら消費魔力はどうなるかだ』
契約できた精霊が増えたとしてもキースはぶれないようだ。自分の興味を満たすべく催促してくる。
「そんなに慌てなくてもいいのに」
『何を悠長なことを言っている。契約した直後というのは今しかないのだぞ』
といっても自分でも気になって入るので、試してみるのはやぶさかではない。
肩をすくめつつも同じように種を取り出すと地面に埋めて、水を掛ける。
「じゃあいくよ」
「どういう魔力がもらえるのねん」
かえでも実は気になっていそうだ。契約したくろすけに手伝ってもらった魔力はどんなものになるのか。
さっきの半分くらいの魔力を意識して、植物成長の精霊魔術を行使する。
「はあああぁぁぁん! なのねん!」
前よりも恍惚とした表情を浮かべてかえでがくるくると踊りだし、種から芽を出した植物はぐんぐんと成長していく。そして二メートル弱の高さになって、四センチくらいの実を付けたところで成長は止まった。
ちなみに減ったMPは2だった。
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