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男は三人もいませんよ
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「なんかもうずっと見られてる気がするんだけど、なんだろうな……」
なんとか六人席を確保したフードコートで、お昼ご飯を食べながら祐平が不平を漏らしている。
「そりゃまぁ、祐平が目立つからじゃねぇの?」
六人席で一人だけ頭一つ分背が高いのだ。もちろんそれが一番目立つ理由じゃないんだが、本人は気づいていないのか。
「そうかぁ? 別にいつも通りで変なとこはないと思うんだが……」
まぁそうだな……。いつも通りじゃないのはむしろ祐平の周りだから。変なところがないか自分自身を見下ろしてるみたいだが、そうじゃないんだよ。
改めてこの六人席を見回してみる。端には俺が座っていて、その隣に祐平、拓也と続く。向かいの席は俺の前に佳織がいて、静、千亜季の順だ。祐平が注目される理由がわかったのか、静は笑いをこらえるように口元を手で覆っている。
「あははは!」
だがとうとう抑えきれなくなったようだ。
「な、なんだよ……」
おなかを押さえながら爆笑する静に、祐平も若干引き気味だ。
「いやだって……、別に祐平くん自身は何もおかしいところなんてないんだよ」
「えぇ……?」
自分のことを確認していた祐平が、まさに自分の行動を指摘されてちょっと恥ずかしそうにしている。
「じゃあなんで俺が……」
「えー、だって祐平くんの周りって、女子しかいないじゃない?」
「……はぁ?」
意味が分からんとばかりに首をかしげる祐平だが、俺は静の意見に同意だ。
「すごくハーレムに見えるよね」
「ぶふっ」
ハーレムという言葉に思わず吹いてしまった。口の中にご飯が入ってなくてよかった……。
「ちょっと待ってよ。……それってオレ、男として数えられてないよね?」
拓也が異議を申し立てるが、それは俺たちに注目する人間に主張して欲しい。少なくとも周囲にいる祐平を睨みつける男どもは、一人ハーレムだと思ってるんだから。
「いやいやいや……」
拓也の言葉でようやく理解したんだろう。なんとか否定の言葉を出そうとするが続きはすぐに出てこない。
「だってほら……、いち、に、さん……」
思いついたように順番に拓也、自分、俺と指さしていく祐平。だが俺に視線を止めたまま固まり、目を見開いていく。いったい何を三人分数えてたんだ。なんとなく想像はつくが、さすがにそこまで祐平はアホじゃないと思うんだ。
いやでも、男が足りないと言って拓也を連れてくる祐平のことだ。こいつが男と判断する基準は、実はけっこう女子寄りなんじゃ――
「三対三じゃなかった!?」
「当たり前だろ!」
思ったよりアホだった。
思考をぶった切って反射でツッコんでしまった。どう見ても男女比三対三じゃねぇだろ。拓也でさえ女子に見えるってのに、俺が男子に見える要素なんてこれっぽっちも存在しねぇよ!
「どういうこと!?」
俺の言葉に拓也の声が続く。三人目がなんで俺なのかという疑問だろうか。
「あー、そういえばそうだったな……。頭ではわかってたはずなんだが……」
「もしかして五十嵐さんが男子に見えてたってこと?」
「えーっと、まぁほら、コイツ自分のこと俺って言うどころか、口調がまんま男だからさ……」
口ごもりながらも言い訳を並べるが、俺がもともとは男だったことを出さないでくれているのはありがたい。自分自身も説明すると面倒というのもあるんだろうが。
それにしても男口調で悪かったな。こればっかりは素の自分なんだ。そうそう変えられると思ってないし、変える気も今のところあんまりない。
「それだけで!? 見た目は全然男に見えないじゃないか……。それにこんなに小さくて可愛いのに……」
「お、おう……」
俺が男子に見えるなんてありえないと言葉を並べる拓也に、祐平もたじたじだ。
可愛いと言ってくれるのは嬉しくないわけじゃないが、小さいは余計だ。いやしかし、男に可愛いと言われるのはなんとなくくすぐったいな……。元男の自分が可愛いと思うコーディネイトをしてるから、何か達成感みたいなものはあるが。
なんとなく直視できなくなって、テーブル向かいの三人へと視線を向ける。千亜季はポカンと口を開けているし、静はまた笑いをこらえているようだ。一度決壊してるし、もう堂々と笑えばいいと思う。佳織はといえば、なんとなく不満そうな憮然とした表情になっている。
「どうした?」
「なんでもない……。早く食べないと冷めちゃうわよ?」
気になって佳織に声をかけてみたが、そっけなく返されてしまった。本人が何でもないと言ってるならそうなんだろう。
「そうだな」
隣で問答をしている二人をスルーして、俺は昼ご飯に注力することにした。俺の話題なんだろうが、お昼ご飯が冷めるのはそれはそれでもったいない。
「ぐぬぬ……、今から呼んだら男増えるかな」
と思ったら隣の祐平からそんな声が聞こえてくる。今から呼んで来るようなヒマな奴が祐平の周りにいるのか……。
「「えー」」
向かいにいる女子三人組の反応も芳しくない。正直俺もこれ以上男子は必要ないと思ってる。
それに、今からだとしても、女子の水着の買い物に付き合えるとでも言えば飛んできそうではある。だがそんな誘い文句で寄ってくるような男はむしろお断りだ。
「今から誘っても無理だろ」
そう思った俺は、即座に祐平へと制止の言葉を投げかけておいた。
なんとか六人席を確保したフードコートで、お昼ご飯を食べながら祐平が不平を漏らしている。
「そりゃまぁ、祐平が目立つからじゃねぇの?」
六人席で一人だけ頭一つ分背が高いのだ。もちろんそれが一番目立つ理由じゃないんだが、本人は気づいていないのか。
「そうかぁ? 別にいつも通りで変なとこはないと思うんだが……」
まぁそうだな……。いつも通りじゃないのはむしろ祐平の周りだから。変なところがないか自分自身を見下ろしてるみたいだが、そうじゃないんだよ。
改めてこの六人席を見回してみる。端には俺が座っていて、その隣に祐平、拓也と続く。向かいの席は俺の前に佳織がいて、静、千亜季の順だ。祐平が注目される理由がわかったのか、静は笑いをこらえるように口元を手で覆っている。
「あははは!」
だがとうとう抑えきれなくなったようだ。
「な、なんだよ……」
おなかを押さえながら爆笑する静に、祐平も若干引き気味だ。
「いやだって……、別に祐平くん自身は何もおかしいところなんてないんだよ」
「えぇ……?」
自分のことを確認していた祐平が、まさに自分の行動を指摘されてちょっと恥ずかしそうにしている。
「じゃあなんで俺が……」
「えー、だって祐平くんの周りって、女子しかいないじゃない?」
「……はぁ?」
意味が分からんとばかりに首をかしげる祐平だが、俺は静の意見に同意だ。
「すごくハーレムに見えるよね」
「ぶふっ」
ハーレムという言葉に思わず吹いてしまった。口の中にご飯が入ってなくてよかった……。
「ちょっと待ってよ。……それってオレ、男として数えられてないよね?」
拓也が異議を申し立てるが、それは俺たちに注目する人間に主張して欲しい。少なくとも周囲にいる祐平を睨みつける男どもは、一人ハーレムだと思ってるんだから。
「いやいやいや……」
拓也の言葉でようやく理解したんだろう。なんとか否定の言葉を出そうとするが続きはすぐに出てこない。
「だってほら……、いち、に、さん……」
思いついたように順番に拓也、自分、俺と指さしていく祐平。だが俺に視線を止めたまま固まり、目を見開いていく。いったい何を三人分数えてたんだ。なんとなく想像はつくが、さすがにそこまで祐平はアホじゃないと思うんだ。
いやでも、男が足りないと言って拓也を連れてくる祐平のことだ。こいつが男と判断する基準は、実はけっこう女子寄りなんじゃ――
「三対三じゃなかった!?」
「当たり前だろ!」
思ったよりアホだった。
思考をぶった切って反射でツッコんでしまった。どう見ても男女比三対三じゃねぇだろ。拓也でさえ女子に見えるってのに、俺が男子に見える要素なんてこれっぽっちも存在しねぇよ!
「どういうこと!?」
俺の言葉に拓也の声が続く。三人目がなんで俺なのかという疑問だろうか。
「あー、そういえばそうだったな……。頭ではわかってたはずなんだが……」
「もしかして五十嵐さんが男子に見えてたってこと?」
「えーっと、まぁほら、コイツ自分のこと俺って言うどころか、口調がまんま男だからさ……」
口ごもりながらも言い訳を並べるが、俺がもともとは男だったことを出さないでくれているのはありがたい。自分自身も説明すると面倒というのもあるんだろうが。
それにしても男口調で悪かったな。こればっかりは素の自分なんだ。そうそう変えられると思ってないし、変える気も今のところあんまりない。
「それだけで!? 見た目は全然男に見えないじゃないか……。それにこんなに小さくて可愛いのに……」
「お、おう……」
俺が男子に見えるなんてありえないと言葉を並べる拓也に、祐平もたじたじだ。
可愛いと言ってくれるのは嬉しくないわけじゃないが、小さいは余計だ。いやしかし、男に可愛いと言われるのはなんとなくくすぐったいな……。元男の自分が可愛いと思うコーディネイトをしてるから、何か達成感みたいなものはあるが。
なんとなく直視できなくなって、テーブル向かいの三人へと視線を向ける。千亜季はポカンと口を開けているし、静はまた笑いをこらえているようだ。一度決壊してるし、もう堂々と笑えばいいと思う。佳織はといえば、なんとなく不満そうな憮然とした表情になっている。
「どうした?」
「なんでもない……。早く食べないと冷めちゃうわよ?」
気になって佳織に声をかけてみたが、そっけなく返されてしまった。本人が何でもないと言ってるならそうなんだろう。
「そうだな」
隣で問答をしている二人をスルーして、俺は昼ご飯に注力することにした。俺の話題なんだろうが、お昼ご飯が冷めるのはそれはそれでもったいない。
「ぐぬぬ……、今から呼んだら男増えるかな」
と思ったら隣の祐平からそんな声が聞こえてくる。今から呼んで来るようなヒマな奴が祐平の周りにいるのか……。
「「えー」」
向かいにいる女子三人組の反応も芳しくない。正直俺もこれ以上男子は必要ないと思ってる。
それに、今からだとしても、女子の水着の買い物に付き合えるとでも言えば飛んできそうではある。だがそんな誘い文句で寄ってくるような男はむしろお断りだ。
「今から誘っても無理だろ」
そう思った俺は、即座に祐平へと制止の言葉を投げかけておいた。
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