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ちゃんと見て確認しないとね

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 茶髪の女子生徒は、ブロック練習後と同じく俺を睨みつけているんだが、黒髪の女子生徒は……、すげー無表情だ。
 むしろそれが冷たい視線にも見えて、特定の層には受けがいいのかもしれない。
 俺にそんな趣味はないけどね……。

「……何か用?」

 とりあえず名前を呼ばれたので俺に用事があるんだろう。
 まさか道に迷うはずもなく、誰もいないところで俺に接触をしてくるというのは、なんとなく嫌な予感しかしない。
 今の俺は上下の下着に上はキャミソールを着ているだけの格好だ。
 こんな姿をスマホのカメラで撮られるのは勘弁願いたいが、幸いにも相手も体操服姿である。おそらくスマホは更衣室だろう。

「……ちょっと確認したいことがあって」

「ふーん」

 確認したいことね……。俺に聞きたいことじゃないんだな。
 何の目的か思案していると、茶髪の女子生徒がゆっくりと近づいてくる。黒髪の女子生徒も追従するようについてきてくるが、一歩後ろをキープしているみたいだ。
 目の前一メートルほどの位置で立ち止まると、俺を観察するようにじっくりと視線を上から下まで動かしている。
 今の自分の姿を思うと、ちょっとそれは恥ずかしいんだが……。

「何を確認したいのさ」

 恥ずかしさに耐えられずにさらに突っ込んだことを聞いてみる。
 ……が、すぐには答えてくれないようだ。
 若干視線を逸らすように逡巡しているようだったが、後ろにいる生徒に小突かれて意を決したのか。

「……あなたが本当に女の子かどうか確認しにきたのよ」

 ――はい?
 俺が女の子かどうか?
 いや見てわからんもんなのか。
 思わず自分を見下ろしてみるが、キャミソール越しとは言えふっくらと膨らんだCカップの胸に、下はそもそも下着姿だ。ついてないんだから見ればわかるだろう。

 ……っていうか見てわからないとでも言うのか。
 俺は男だったからこそ、ついている状態で女物の下着を穿けば、大惨事にしかならないことはわかるが……。

「いや……、えーっと……」

 すぐ目の前にいる女の子がちょっと怖くなって後ずさる。
 しかし女の子に迫られるという貴重な体験に、どこか興奮している自分がいることも否定できない。

「胸だって何か入れてるかもしれないでしょう」

 後ろにいた黒髪の女子生徒が、無表情だった顔をニヤリと歪ませている。
 いや待て。後ろの子は茶髪の子と、ちょっと目的が違うような気がひしひしとするんだが……。

「そうよ! あなた見た目は変わったけど、本当はまだ男なんじゃないの!」

 黒髪の子に追従するようにヒステリックに叫ぶ茶髪。
 外見は完全に女になったが、確かに中身は変わってないと自分でも思う。
 だからと言って心まで男のままかと言われると、自分でもよくわかっていない。自分は自分だとしか答えられない。

「見た目は完全に女なんだが……」

 やっぱり自分より背の高い人物に迫られると圧迫感がある。
 これ以上後ろに下がれなくなり、ひんやりとしたロッカーの冷たさが背中に伝わってくる。
 90度向きを変えてさらに後ずさる。

「じゃあ脱ぎなさい!」

「いやいやいや、ちょい待て」

「待たないわよ!」

「俺のこの姿を見てわからんのか」

「わからないから言ってるんじゃない!」

 押し問答を続けながら後ずさっていたが、後ろを見ていなかった俺は壁際に設置されていた長椅子に横からぶつかって、そのまま仰向けに倒れてしまう。

「うわっ」

 そして起き上がる前に素早く行動を起こした黒髪の女子生徒に、両腕を押さえつけられてしまった。
 必死に抵抗するが、押さえつけられたあとではどうにもならない。
 というか、やっぱり俺のこの体って力ねぇな!

「ちょっ、何すん――」

「今よ!」

 俺の抗議の声にかぶせるように黒髪が号令を下すと、茶髪が我が意を得たりとばかりに、もともと近かった俺との距離をゼロまで詰めて来る。
 両腕は押さえつけられているが足は自由だ。蹴り飛ばしてしまえば回避できるんだろうがさすがに抵抗がある。
 男が女をいじめているみたいで体裁が悪い。
 などと躊躇っているうちに両足も押さえつけられてしまった。

「いやいや、ちょっとストップ!」

 自分は自分と言ったばっかりだが、こういうところだけ自分なのが何か悔しい。
 同性だったら遠慮なく蹴り飛ばしているところだったが、今の自分の『同性』は男のようだ。なので声を上げて抗議するしかない。
 それにいろいろと力を入れるが、どこもまったくびくともしない。

「――ひゃあ!?」

 気が付けば茶髪の両手が、キャミソールの中へと入ってきている。

「だからちょっと待って!」

 そして俺の言葉もむなしく、下着越しにおっぱいが揉まれる。

「ぎゃーーー!!」

「……あれ?」

 可愛くない悲鳴を上げる俺に、茶髪が疑問の声を上げるが、何がおかしいんだ。
 俺の胸は何も詰めてないぞ。自前なんだぞ。
 と思っていると一気に下着ごとキャミソールが上へとまくりあげられ、俺のおっぱいが晒された。

「なんで……」

 困惑の表情の茶髪だったが、すぐに表情を引き締めると、今度は俺のパンツへと手をかける。

「いやいやいや、それはマジでやめろ!」

 背筋をゾクゾクとした感覚が這い上がってくる。
 恐怖と羞恥と興奮の入り混じった感情のままに訴えるが、もちろん聞いてくれるはずもなく、俺のパンツが剥ぎ取られた。

「あああ……、もうお嫁に行けない」

「な……、ない」

 茶髪が愕然とした表情で呟くのが聞こえる。そんなもの脱がさなくてもわかると思うんだが。
 むしろあったほうが大問題のような気がする。

 いつの間にか押さえつけられていた手足が解放されていたが、そのことを疑問に思う事もなく俺は両手で顔を覆う。
 太ももまで下ろされたパンツと、ポロリしているおっぱいもそのままに、俺は涙を流すのだった。
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