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矢上は吉沢を救う決意をした
第5話 吉沢はパンツ売ってるのを認めた
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***
お色気漫画みたいな展開。“ソシアルオンライン”が電子書籍で、有料販売している作品みたいだ。
「吉沢……」
「何?」
「言いたくなければ言わなくても良いけどさ、他にも売ってるのか?」
「うん!」
照れ隠しなのか、頬に手をあてがう。しかし、平然と言ってのけた。吉沢にこんな暗黒面がったなんて。
「矢上くん、もうそろそろ家に帰る電車の時間なの」
吉沢が腕時計を見ながら、溜息混じりに声を漏らす。痛ましくて俺は目頭を押さえた。
「矢上くん、どうかしたの?」
「花粉症なんだ」
もう俺は花粉症のシーズンは過ぎた。
近所の内科に月一で通い、花粉症の薬を三十日分処方してもらっていた。最後の受診した後、残った花粉症の薬は、来年のため取っておいた。
先生は、薬を一か月分、出しましょうと言ってくれた。だが、一か月は、三十一日の月や二十八日の月もある。来年、三十一日の月で、明日の薬がないのを避けるためだ。
「駅まで送ってくよ」
「ありがとう」
駅の改札口まで吉沢の体温を感じそうな間隔で歩いた。本来なら嬉しいはずだが、俺の心は晴れない。
「じゃあ、また明日」
「ああ」
自動改札を通り、吉沢は零れそうな笑顔で手を振っていた。俺は対照的に力なく手を上げる。
《2番ホームに電車が参ります》
アナウンスがくぐもって聞こえた。吉沢はプラットホームへ走る。名残惜しそうに、何度もこっちを振り返っていた。
「俺が学校にチクるの警戒してるのか」
小さな声は電車が線路を揺らす音で消された。俺は反対側の1番ホームに上がる。1番ホームに、多くの乗降客がいるが吉沢の姿はない。
吉沢の今日の行動を振り返る。わざわざ俺を待っていた。また、送って欲しいと言った。公園に寄り、スマホの電?話番号だけでなく、住所まで教えたのだ。
人生で迷路に迷い、闇の道に進んだのを、誰かに止めて欲しいのかもしれない。
いや、きっとそうだ。
「追いかけるべきだ」
周囲の客は俺の大きな声に、視線を投げるが関係ない。プラットホームから階段を駆け下りる。一度自動改札を出てから、自販機で切符を買った。吉沢の住所は分かっている。
吉沢の最寄り駅は、木原駅だ。お袋が子供の頃は、木原商店街が賑わっていたと、聞いている。
小さなテンポは、今はシャッターが閉まったままの建物が多い。商業ビルや大型店舗に客を取られてしまったのだ。
2番ホームに行き、電車に乗り込む。四角い窓から流れる景色は、家やビルの明かりだ。目まぐるしく入れ替わる。
木原駅で電車を降りる。自動改札を通ったとき、聞きなれた声がした。
「矢上ジャン」
寺倉(てらくら)光紗(ありさ)が手を振っている。学校指定のブラウス型制服のままだ。壁に背中を預けスマホを弄っていた。
「おう」
俺は寺倉の前を自然に通り過ぎようとしたが、足取りがぎこちなくなる。
「おい矢上、駅前商店街で買い物?」
「違うよ」
寺倉は吉沢と友人だ。寺倉にも協力を求めるべきだろうか。
「困った顔してどうかしたの?」
「寺倉、もし時間が空いていたら、手伝って欲しいことがあるんだ」
寺倉は壁にかかった時計を見ていた。
「ごめん、後十五分くらいで、母親が仕事帰りに車で迎えに来るんだ」
「そっか、気をつけてな」
寺倉と別れた俺は、駅舎を出る。夜の木原駅前商店街は、大きなビルが立ち並ぶ。
駅を出る人の流れに紛れ、危ないが歩きスマホをする。住所がスマホに表示された。
横断歩道が赤信号で立ち止まっていた。近くでクラクションを鳴らす音がして耳障りだ。
「おーい、矢上」
「矢上君?」
お色気漫画みたいな展開。“ソシアルオンライン”が電子書籍で、有料販売している作品みたいだ。
「吉沢……」
「何?」
「言いたくなければ言わなくても良いけどさ、他にも売ってるのか?」
「うん!」
照れ隠しなのか、頬に手をあてがう。しかし、平然と言ってのけた。吉沢にこんな暗黒面がったなんて。
「矢上くん、もうそろそろ家に帰る電車の時間なの」
吉沢が腕時計を見ながら、溜息混じりに声を漏らす。痛ましくて俺は目頭を押さえた。
「矢上くん、どうかしたの?」
「花粉症なんだ」
もう俺は花粉症のシーズンは過ぎた。
近所の内科に月一で通い、花粉症の薬を三十日分処方してもらっていた。最後の受診した後、残った花粉症の薬は、来年のため取っておいた。
先生は、薬を一か月分、出しましょうと言ってくれた。だが、一か月は、三十一日の月や二十八日の月もある。来年、三十一日の月で、明日の薬がないのを避けるためだ。
「駅まで送ってくよ」
「ありがとう」
駅の改札口まで吉沢の体温を感じそうな間隔で歩いた。本来なら嬉しいはずだが、俺の心は晴れない。
「じゃあ、また明日」
「ああ」
自動改札を通り、吉沢は零れそうな笑顔で手を振っていた。俺は対照的に力なく手を上げる。
《2番ホームに電車が参ります》
アナウンスがくぐもって聞こえた。吉沢はプラットホームへ走る。名残惜しそうに、何度もこっちを振り返っていた。
「俺が学校にチクるの警戒してるのか」
小さな声は電車が線路を揺らす音で消された。俺は反対側の1番ホームに上がる。1番ホームに、多くの乗降客がいるが吉沢の姿はない。
吉沢の今日の行動を振り返る。わざわざ俺を待っていた。また、送って欲しいと言った。公園に寄り、スマホの電?話番号だけでなく、住所まで教えたのだ。
人生で迷路に迷い、闇の道に進んだのを、誰かに止めて欲しいのかもしれない。
いや、きっとそうだ。
「追いかけるべきだ」
周囲の客は俺の大きな声に、視線を投げるが関係ない。プラットホームから階段を駆け下りる。一度自動改札を出てから、自販機で切符を買った。吉沢の住所は分かっている。
吉沢の最寄り駅は、木原駅だ。お袋が子供の頃は、木原商店街が賑わっていたと、聞いている。
小さなテンポは、今はシャッターが閉まったままの建物が多い。商業ビルや大型店舗に客を取られてしまったのだ。
2番ホームに行き、電車に乗り込む。四角い窓から流れる景色は、家やビルの明かりだ。目まぐるしく入れ替わる。
木原駅で電車を降りる。自動改札を通ったとき、聞きなれた声がした。
「矢上ジャン」
寺倉(てらくら)光紗(ありさ)が手を振っている。学校指定のブラウス型制服のままだ。壁に背中を預けスマホを弄っていた。
「おう」
俺は寺倉の前を自然に通り過ぎようとしたが、足取りがぎこちなくなる。
「おい矢上、駅前商店街で買い物?」
「違うよ」
寺倉は吉沢と友人だ。寺倉にも協力を求めるべきだろうか。
「困った顔してどうかしたの?」
「寺倉、もし時間が空いていたら、手伝って欲しいことがあるんだ」
寺倉は壁にかかった時計を見ていた。
「ごめん、後十五分くらいで、母親が仕事帰りに車で迎えに来るんだ」
「そっか、気をつけてな」
寺倉と別れた俺は、駅舎を出る。夜の木原駅前商店街は、大きなビルが立ち並ぶ。
駅を出る人の流れに紛れ、危ないが歩きスマホをする。住所がスマホに表示された。
横断歩道が赤信号で立ち止まっていた。近くでクラクションを鳴らす音がして耳障りだ。
「おーい、矢上」
「矢上君?」
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