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最終章 エピローグ編
第125話 たくさん泣いて、たくさん謝ったら
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王都に戻ってから、コウメイは落ち込む暇もなく忙殺されていた。
リリライトからの宣戦布告に対して、また王都からは何も反応も返せていない。国民にも動揺が走り、王家がどう反応するのかを息を飲んで待ち続けているという状況だった。
今は国王たるヴィジオールの判断待ちだが、カリオスもコウメイも、形はどうあれカリオスが筆頭となってリリライトに対処することになるのは、もう間違いないと考えていた。
今度は特別任務などではない。お互いの総力を尽くした戦争になる。
凶悪な「異能」、そして強かな狡猾さを持つグスタフ、天才的な政治・軍略手腕を持つ『女傑』フェスティア、王国最強すらも屠った『新白薔薇騎士団長』リアラ。
紛うことなき強敵達である。聖アルマイト王国が建国されてから、最大の危機だといってもいいだろう。それくらいの覚悟で臨まなければ、負けてしまう程に。
そのために、最初に必要なことは、カリオス統治下における王宮内の安定化――第2王女が叛意をあらわしたことで、動揺が走る王宮内を直ちに安定させなければいけない。
その実務を担ったのはコウメイである。おかげさまで、それまでが騎士団内でも王宮内でも無名に近かったコウメイの名が、一躍有名になったのだった。
「忙しそうだな、団長代理」
龍牙騎士団長の執務室。
今そこの部屋にいるのは団長のルエールではない。
ミュリヌスで瀕死の重傷を負った彼は、今も危篤状態で治療に当たっている。今は副団長であるクルーズがその席に座っていた。
「団長の代わりは副団長がやって下さいよ……」
うんざりしたような顔でコウメイが訴える。そんな疲れ切ったコウメイの表情にクルーズは頬を緩める。おそらくは、カリオスが帰ってきたことで、重責からの解放感で肩が軽くなったのだろう。
「仕方無いだろ。俺は戦闘のこと以外は無能な男だ」
「団長も、カリオス殿下も似たようなことを言って、俺に雑用押し付けてますけどね」
ふう、と一息つきながら、コウメイはその雑用の報告をクルーズへ行う。
「大変な事態になったな」
コウメイの報告をひとしきり聞いたクルーズは、机の上に肘を置いて表情を険しくする。報告の中には、リリライトの宣戦布告演説のことも入っていた。
「信じられん。あれだけ兄君を慕っていたリリライト王女殿下が、よもやカリオス殿下を討つ……などと」
「まあ、あれを見ていなければ信じられないでしょうね」
コウメイだってそうだろう。実際にミュリヌスで、獣のようにグスタフと快楽を貪るまでに壊れてしまったリリライトを見ていなければ、クルーズと同じ感想を持っていたはずだ。
演説の際のリリライトの様子は、話の内容はともかくとして、王族たるに相応しく堂々としていたそうだ。本当はあれだけ狂っているにも関わらず、大衆の前では今まで以上に王者の風格を見せていたというその事実に、コウメイはより一層狂気を感じていた。
「とにかく、あれだけ堂々と宣戦布告をされたんです。こちらも早急に意思表示しないと。ただでさえ、国民や諸侯にも動揺が走っていますから、まずはトップがどういう考えかを示して、安心させることが必要です」
コウメイにしてみれば、やむを得ないこととはいえ、グスタフに先手を打たれたことは手痛く思っていた。出来ればこちらが先にグスタフの叛意を公表して、敵はリリライトではなくグスタフだと知らしめたかった。
そうすれば、リリライトは被害者であることを主張出来るだけ、彼女に対して周りの同情をもらえることが出来る――そういった情だけではなく、敵の首魁がグスタフとなれば、元々評判も人望も低い奴に手を貸そうとする人間は、そうそういなかったはずだ。
しかし結局相手は、「純白の姫」たるリリライトを指導者として持ってくることで、その人気の高さを利用し、グスタフがその立場に収まるよりも数倍の勢力を集めてみせた。元々奴隷制度廃止などの既得権益の撤廃を謳うカリオスに反感を持っていた諸侯からすれば、またとない絶好の機会だ。
とはいえ、ミュリヌスの戦いでの敗退――その動揺が蔓延る中で大臣の叛意を公表することは、どうしても難しかった。だから、後手に回ってしまったのは仕方なかった。
これらも全てグスタフの思惑だろう……この汚らしさに、唾を吐きかけたくなる。
「実際、お前はどうなんだ?」
不意にクルーズが質問を投げかけてくる。
それは、カリオスではなく、コウメイが個人として、今回の宣戦布告にどう対応すべきかという問いだった。
「俺はカリオス殿下の意志に従います。従いますが、個人としてどうかと問われれば……グスタフは倒す。そして奴に与する人間には容赦しない。それが例え操られているだけのお姫様だとしても、です」
いつも飄々として軽い態度のコウメイにしては珍しく、その瞳に苛烈な激情を静かに込めているのが分かる。表情は真剣で、その思いの強さがひしひしと伝わってくる。
コウメイをして、そこまで怒らせるものは何なのか――根拠はないが、ひょっとするとコウメイとグスタフはただならぬ関係なのだろうか。
クルーズは瞳を閉じてうなずく。
「分かった、それでいい。――殿下もお辛い立場だと思う。支えになってやってくれ」
「はい」
クルーズの言葉にうなずいて、コウメイは頭を下げて退室しようとする。次に控えるのはカリオスへの謁見だ。
「コウメイ」
部屋を出ようとするコウメイの後ろからクルーズが声を掛けると、コウメイは足を止めて振り返る。
「言い忘れるところだった。ルエール団長のご令嬢――アンナさんが、今しがた目を覚ましたようだ。時間があれば会ってやってくれ」
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はっきり言ってコウメイは疲労困憊だった。
ルエールが不在の間限定の騎士団長代理だったはずなのに、結局王都に戻ってからもその肩書はそのまま、今や副団長以上の責任を強いられており、様々な物事の判断や処理に当たっていた。
そんなコウメイに課せられた重責はいくつもある。
アンナ=ヴァルガンダルとの面会も、そのうちの1つだった。
『娘に、アンナには何も隠し事をしてやってくれるな。あれは強い娘だ。最初は動揺しても、必ず乗り越えられるはずだ。頼むぞ、コウメイ』
グスタフの「異能」に苦しむアンナが目を覚ましたら、父親ルエールの危篤状態を伝えろと、ルエール直々の命令――いや、頼みだった。
ルエールは王都に付いてから意識を失い、今も重態だ。傷が深いこともあるが、いかんせん血を失い過ぎているということ。
この国の医療技術は大陸でも最先端だが、『輸血』という技術が存在していない。コウメイもその知識はあっても、具体的にどのようにすればいいかが分からない。代わりに存在する「治癒魔法」で、かろうじで命をつなぎとめている状態だという。
治療班の見立てでは、助かる可能性は、もう――
「やっほー、コウメイ君。ひっさしぶりー」
アンナの治療室に辿り着くと、そのドアの前でファヌス魔法大国の第1王子イルギルスが壁に背をもらたせていた。
神秘的なヴェールに、顔の下半分から全身を隠しているのだが、その口調に神秘的な雰囲気は存在しない。大学のサークル仲間、というくらいの気安さだった。
「やあやあ、コウメイ君は無事に戻ってきてくれてよかったよー。ルエール卿は残念だった、けどね」
当然だが、王都に滞在していたこの大陸最高峰の治癒魔術師にもルエールの容態を診てもらった。コウメイが交渉で取り付けたのはアンナの治療、それだけであり、契約外の依頼にも関わらず、イルギルスは嫌がることなく素直に治療に当たってくれたのだが。
その彼が絶望的だと断言した――それは、死刑宣告とほぼ同じ意味だ。
「父娘揃って、こんなピンチになるなんてついてないね。ご愁傷様」
知らない人が聞けば苛立ちを刺激させるような言葉だったが、ファヌスへの遠征においてコウメイはこのイルギルスの人間性をよく理解していた。特に悪気はない彼に、コウメイは特段不快な気持ちは抱かない。むしろ、コウメイ達が不在の間も熱心にアンナの治療にあたってくれていたと聞いている。そのことに
「ありがとう、イルギルス王子。彼女が良くなったのは、貴方のおかげだ」
アンナの意識が戻り、まともな会話が出来るようになった。
それはグスタフの「異能」は解除できる――ほんの僅かな、隙間からたまたま零れ出たような希望だが、その可能性を示唆しているのだ。
「僕は何もしてないよ。観察してただけ。頑張ったのは、彼女自身だよ」
やれやれと首を振るイルギルスに、コウメイは少し口元を緩める。
「ところで、対価は本当にあんなことで良かったんですか? カリオス殿下は喜んでOK出したけど……」
未知なる異能の力に侵されたアンナの治療――ファヌス魔法大国側がその対価として求めてきたのは、聖アルマイトとファヌス魔法大国との国交開始だった。
大陸でも最高の魔法技術を有するファヌス魔法大国は、これまで徹底して他国との不干渉主義を取ってきており、国交などむしろこちらが喉から出る程に切望していたものだったのだが。
「あははー、大丈夫大丈夫。うちの国の女の子も喜んでいたよ。聖アルマイトにはイケメン男子が多いってさー」
「あ、そう」
聖アルマイトの現状とは対照的な、全く緊張感のないイルギルスの言葉にコウメイは肩をこけさせる。
ファヌス魔法大国の内情――特に王族間の関係については、聖アルマイト以上に複雑だということはコウメイも承知している。が、今のコウメイにそれ以上抱え込む余裕はなく、「色々あるんだろうな」ということで終わらせておく。
「うんうん、コウメイ君が考えていることは分かるよー。実際その通りで、うちの家族関係も複雑だからさー。悪いけど、リリライト第2王女の件については、僕らがカリオス王子の味方になってあげられるかは分からないなー。下手したら、敵に回るかもよ?」
思考を読み取られて、更にその先を言われてハッとするコウメイ。イルギルスの顔を見返すと、ヴェールに隠れえていない目の部分がニヤリと笑っているのが分かる。
この人物もまた、腹にいくつも抱えた策士だと、コウメイは確信する。
「まあまあ。とりあえず今はアンナちゃんの様子を見に来たんでしょう? 今なら少しだけ話出来るし、会っていきなよ。彼女も、君には謝りたいって言ってたからさー」
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コウメイがアンナに持っている印象は、嬉々としながら明確な殺意を持って襲ってくる暗殺者、というのが強い。はっきりいって恐怖が圧倒的に強い。
話では正気に戻ったとは聞いていても、やはり緊張は拭えなかった。
ドクドクと激しく脈打つ心臓を懸命におさえながら、コウメイは治療室のドアを開けた。
「あ」
アンナは真っ白いシーツの中――ベッドの上で上体だけを起こして、窓から外を見つめていた。部屋に差し込んでいる真昼の陽光が、アンナが身に着けている病衣の白さを際立たせていた。
「コウメイ、さま……」
可愛らしくツインテールにまとめていた髪は解かれて、下ろされている。それもまた充分に可愛らしかったが、どこか焦燥としてやつれたように見える顔が不健康そうである。
入ってきたコウメイを見て、アンナは眼を見開いていた。
「や。良くなったって聞いたけど、どう?」
なるべく重い空気にならないように努めてコウメイは軽々しい口調で挨拶をする。
しかしそんなコウメイの努力もむなしく、程なくしてアンナはその両の瞳から、ぽろぽろと涙をこぼす。
「ボク……ボク、なんてことを……シンパ様を、コウメイ様を殺そうとして……ああああああああ」
「だ、大丈夫大丈夫。落ち着いて。ほら、俺生きてるし」
慌ててアンナの側によるコウメイ。
生憎とシンパの安否は不明――コウメイも案じていることだが、それには触れない方がよさそうだ。
「ごめんなさい……ごめんなさいコウメイ様! ボク、本当に取り返しのつかないこと……それに、あの男にあんな……う、ううう……うええええっ……!」
グスタフに凌辱されたことを思い出してしまったのか、口元を抑えてえづくアンナ。
コウメイはアンナの背中を優しくさすりながら、治療室内にいた世話係に声を掛ける。
こう言ってはなんだが、グスタフとの行為にここまで嫌悪感を持つのであれば、正常な状態に戻りつつあると判断していいだろう。あの嬉々として狂ったリアラやリリライトの表情を思い返せば、そう確信できる。
「う……うげぇ……うぅ、ごめんなさい……けほ、けほっ……ごめんなさい……」
世話役が持ってきた洗面器に嘔吐した後、それでもアンナは咳き込みながら何度も謝罪の言葉を吐き続ける。
まだ充分に年端もいかない少女を狂わせ、壊し、ここまで傷つけたグスタフ――すすり泣きながら、弱弱しく、延々と謝り続けるアンナの姿を見て、改めてコウメイの胸に怒りが沸き上がる。
(というか、この状態のこの娘に団長のことを話すのか? 大丈夫なのか?)
そして改めて己に課せられた重責に胸が重くなる。
だが――
「ごめんなさい、コウメイ様。ボク、泣いてる場合じゃないって分かってる……何があったのか、ちゃんと話さないといけないって分かってる。でも、少しだけ時間が欲しいです。たくさん泣いて、たくさん謝ったら、ボク……その後は、ちゃんと立ち上がります。だから、それまで時間をください。お願いします」
アンナの弱弱しい口調から紡がれ力強い言葉は、そんなコウメイの不安を一蹴する。
――ああ、この娘は間違いなくルエール=ヴァルガンダルの娘だな。
涙でくしゃくしゃになりながら、嗚咽を漏らすアンナは、それでも己のやるべきことを忘れていない。心が悪夢に押しつぶされそうになっても、それでも心を奮い立たせて、聖アルマイトのために立ち上がろうとしている。
自分なんかよりも、よっぽど騎士らしい。
「アンナ。君に伝えておかないといけない話がある」
コウメイはルエールが言うアンナの強さを信じて、彼女の両肩を掴む。じっとアンナの眼を真っ直ぐ見据えるコウメイを、アンナは涙で濡れた瞳で見返す。
「先に謝っておく……ごめん。こんな状態の君にこんなことを伝えるのは、残酷以外の何物でもないことは分かっている。でも、耐えて欲しい。頑張って欲しい。君の存在は、俺達にとっての希望なんだ」
長い前置きを経てから、コウメイは切り出す。
尊敬する騎士団長に託された重責を果たす。
「君の父親――ルエール=ヴァルガンダルは、グスタフを討とうとして返り討ちにあった。今はとっても危険な状態で、王宮内で治療中だ」
「お父、様が……?」
信じられない、という顔でコウメイを見返すアンナ。しかしコウメイは無慈悲に顔を縦に振った。
「団長は、君を汚された怒りだけじゃない。聖アルマイト王国のために、グスタフを討とうとした。だけど、俺の力が足りなくて……ごめん。俺は何も出来なかった。だけど約束する。俺は必ずグスタフを倒して見せる。だから、それを信じて……君も頑張って欲しい」
「お父様が、死ぬ? 嘘だ……そんなわけ……だって、龍牙騎士の頂点のお父様は……」
コウメイの言葉が聞こえているのかいないのか、アンナはただただ目を見開いた状態で、ぶつぶつとつぶやくだけだった。
――そして、急に胸を抑えながら、苦しむようにもだえ始める。
「っあああああ? やだやだっ! エッチな気分になっちゃう。 せ……セックスしたいぃ! オチンポが欲しくなっちゃうううううう!」
「お、おおおう?」
発狂したように突然叫びだすアンナに、思わずコウメイは引いてしまう。
「はい、そこまでー。さくっとやっちゃって」
いつのまにか部屋に入ってきていたイルギルスが、手をポンポンと叩く。すると部屋内に控えていた世話役が実に手慣れた仕草で、アンナの顔に睡眠香がしみ込んだ布を当てる。
すぐにアンナは意識を失って、コロンとベッドの上に倒れる。すると世話役が優しくアンナの身体を動かしながら、シーツをかける。
これがアンナの治療の日常茶飯事だったのだろうか。
アンナをケアすること以上に、こんなに狂ったアンナを近くで見続けることはひどく辛かったのだろう――彼女は、この残酷な状況に、瞳に涙を滲ませていた。
「こーんな感じなんだよね。良い言い方をすれば、正気で話せる時間は伸びてきているよ。今のコウメイ君との会話は最高記録。でも悪い言い方をするなら不安定極まりないね。治るのかなぁ、これ」
大陸最高峰の治癒魔術師にそう言われると不吉極まりないのだが。
しかし、コウメイは無責任だと自覚しつつも、アンナがほんの少しだけ見せた強さに期待していた。
もしもこのままアンナが正気に立ち戻ることが出来れば、それはコウメイ側にとって大きな希望となる。
ここまで、無敵過ぎてどうしようもないと思われていたグスタフの「異能」だが、それを打ち払う可能性があるということになる。それは小さな一歩ではあるものの、これまでの絶望的過ぎる状況からすると、大きすぎる希望だった。
そして、あのルエール=ヴァルガンダルの娘ならば、きっと――
これがあの凶悪な悪魔を滅する可能性と成り得るのか――まだ運命の針は、どちらに振り切れることもなく、ただただ揺れていた。
リリライトからの宣戦布告に対して、また王都からは何も反応も返せていない。国民にも動揺が走り、王家がどう反応するのかを息を飲んで待ち続けているという状況だった。
今は国王たるヴィジオールの判断待ちだが、カリオスもコウメイも、形はどうあれカリオスが筆頭となってリリライトに対処することになるのは、もう間違いないと考えていた。
今度は特別任務などではない。お互いの総力を尽くした戦争になる。
凶悪な「異能」、そして強かな狡猾さを持つグスタフ、天才的な政治・軍略手腕を持つ『女傑』フェスティア、王国最強すらも屠った『新白薔薇騎士団長』リアラ。
紛うことなき強敵達である。聖アルマイト王国が建国されてから、最大の危機だといってもいいだろう。それくらいの覚悟で臨まなければ、負けてしまう程に。
そのために、最初に必要なことは、カリオス統治下における王宮内の安定化――第2王女が叛意をあらわしたことで、動揺が走る王宮内を直ちに安定させなければいけない。
その実務を担ったのはコウメイである。おかげさまで、それまでが騎士団内でも王宮内でも無名に近かったコウメイの名が、一躍有名になったのだった。
「忙しそうだな、団長代理」
龍牙騎士団長の執務室。
今そこの部屋にいるのは団長のルエールではない。
ミュリヌスで瀕死の重傷を負った彼は、今も危篤状態で治療に当たっている。今は副団長であるクルーズがその席に座っていた。
「団長の代わりは副団長がやって下さいよ……」
うんざりしたような顔でコウメイが訴える。そんな疲れ切ったコウメイの表情にクルーズは頬を緩める。おそらくは、カリオスが帰ってきたことで、重責からの解放感で肩が軽くなったのだろう。
「仕方無いだろ。俺は戦闘のこと以外は無能な男だ」
「団長も、カリオス殿下も似たようなことを言って、俺に雑用押し付けてますけどね」
ふう、と一息つきながら、コウメイはその雑用の報告をクルーズへ行う。
「大変な事態になったな」
コウメイの報告をひとしきり聞いたクルーズは、机の上に肘を置いて表情を険しくする。報告の中には、リリライトの宣戦布告演説のことも入っていた。
「信じられん。あれだけ兄君を慕っていたリリライト王女殿下が、よもやカリオス殿下を討つ……などと」
「まあ、あれを見ていなければ信じられないでしょうね」
コウメイだってそうだろう。実際にミュリヌスで、獣のようにグスタフと快楽を貪るまでに壊れてしまったリリライトを見ていなければ、クルーズと同じ感想を持っていたはずだ。
演説の際のリリライトの様子は、話の内容はともかくとして、王族たるに相応しく堂々としていたそうだ。本当はあれだけ狂っているにも関わらず、大衆の前では今まで以上に王者の風格を見せていたというその事実に、コウメイはより一層狂気を感じていた。
「とにかく、あれだけ堂々と宣戦布告をされたんです。こちらも早急に意思表示しないと。ただでさえ、国民や諸侯にも動揺が走っていますから、まずはトップがどういう考えかを示して、安心させることが必要です」
コウメイにしてみれば、やむを得ないこととはいえ、グスタフに先手を打たれたことは手痛く思っていた。出来ればこちらが先にグスタフの叛意を公表して、敵はリリライトではなくグスタフだと知らしめたかった。
そうすれば、リリライトは被害者であることを主張出来るだけ、彼女に対して周りの同情をもらえることが出来る――そういった情だけではなく、敵の首魁がグスタフとなれば、元々評判も人望も低い奴に手を貸そうとする人間は、そうそういなかったはずだ。
しかし結局相手は、「純白の姫」たるリリライトを指導者として持ってくることで、その人気の高さを利用し、グスタフがその立場に収まるよりも数倍の勢力を集めてみせた。元々奴隷制度廃止などの既得権益の撤廃を謳うカリオスに反感を持っていた諸侯からすれば、またとない絶好の機会だ。
とはいえ、ミュリヌスの戦いでの敗退――その動揺が蔓延る中で大臣の叛意を公表することは、どうしても難しかった。だから、後手に回ってしまったのは仕方なかった。
これらも全てグスタフの思惑だろう……この汚らしさに、唾を吐きかけたくなる。
「実際、お前はどうなんだ?」
不意にクルーズが質問を投げかけてくる。
それは、カリオスではなく、コウメイが個人として、今回の宣戦布告にどう対応すべきかという問いだった。
「俺はカリオス殿下の意志に従います。従いますが、個人としてどうかと問われれば……グスタフは倒す。そして奴に与する人間には容赦しない。それが例え操られているだけのお姫様だとしても、です」
いつも飄々として軽い態度のコウメイにしては珍しく、その瞳に苛烈な激情を静かに込めているのが分かる。表情は真剣で、その思いの強さがひしひしと伝わってくる。
コウメイをして、そこまで怒らせるものは何なのか――根拠はないが、ひょっとするとコウメイとグスタフはただならぬ関係なのだろうか。
クルーズは瞳を閉じてうなずく。
「分かった、それでいい。――殿下もお辛い立場だと思う。支えになってやってくれ」
「はい」
クルーズの言葉にうなずいて、コウメイは頭を下げて退室しようとする。次に控えるのはカリオスへの謁見だ。
「コウメイ」
部屋を出ようとするコウメイの後ろからクルーズが声を掛けると、コウメイは足を止めて振り返る。
「言い忘れるところだった。ルエール団長のご令嬢――アンナさんが、今しがた目を覚ましたようだ。時間があれば会ってやってくれ」
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はっきり言ってコウメイは疲労困憊だった。
ルエールが不在の間限定の騎士団長代理だったはずなのに、結局王都に戻ってからもその肩書はそのまま、今や副団長以上の責任を強いられており、様々な物事の判断や処理に当たっていた。
そんなコウメイに課せられた重責はいくつもある。
アンナ=ヴァルガンダルとの面会も、そのうちの1つだった。
『娘に、アンナには何も隠し事をしてやってくれるな。あれは強い娘だ。最初は動揺しても、必ず乗り越えられるはずだ。頼むぞ、コウメイ』
グスタフの「異能」に苦しむアンナが目を覚ましたら、父親ルエールの危篤状態を伝えろと、ルエール直々の命令――いや、頼みだった。
ルエールは王都に付いてから意識を失い、今も重態だ。傷が深いこともあるが、いかんせん血を失い過ぎているということ。
この国の医療技術は大陸でも最先端だが、『輸血』という技術が存在していない。コウメイもその知識はあっても、具体的にどのようにすればいいかが分からない。代わりに存在する「治癒魔法」で、かろうじで命をつなぎとめている状態だという。
治療班の見立てでは、助かる可能性は、もう――
「やっほー、コウメイ君。ひっさしぶりー」
アンナの治療室に辿り着くと、そのドアの前でファヌス魔法大国の第1王子イルギルスが壁に背をもらたせていた。
神秘的なヴェールに、顔の下半分から全身を隠しているのだが、その口調に神秘的な雰囲気は存在しない。大学のサークル仲間、というくらいの気安さだった。
「やあやあ、コウメイ君は無事に戻ってきてくれてよかったよー。ルエール卿は残念だった、けどね」
当然だが、王都に滞在していたこの大陸最高峰の治癒魔術師にもルエールの容態を診てもらった。コウメイが交渉で取り付けたのはアンナの治療、それだけであり、契約外の依頼にも関わらず、イルギルスは嫌がることなく素直に治療に当たってくれたのだが。
その彼が絶望的だと断言した――それは、死刑宣告とほぼ同じ意味だ。
「父娘揃って、こんなピンチになるなんてついてないね。ご愁傷様」
知らない人が聞けば苛立ちを刺激させるような言葉だったが、ファヌスへの遠征においてコウメイはこのイルギルスの人間性をよく理解していた。特に悪気はない彼に、コウメイは特段不快な気持ちは抱かない。むしろ、コウメイ達が不在の間も熱心にアンナの治療にあたってくれていたと聞いている。そのことに
「ありがとう、イルギルス王子。彼女が良くなったのは、貴方のおかげだ」
アンナの意識が戻り、まともな会話が出来るようになった。
それはグスタフの「異能」は解除できる――ほんの僅かな、隙間からたまたま零れ出たような希望だが、その可能性を示唆しているのだ。
「僕は何もしてないよ。観察してただけ。頑張ったのは、彼女自身だよ」
やれやれと首を振るイルギルスに、コウメイは少し口元を緩める。
「ところで、対価は本当にあんなことで良かったんですか? カリオス殿下は喜んでOK出したけど……」
未知なる異能の力に侵されたアンナの治療――ファヌス魔法大国側がその対価として求めてきたのは、聖アルマイトとファヌス魔法大国との国交開始だった。
大陸でも最高の魔法技術を有するファヌス魔法大国は、これまで徹底して他国との不干渉主義を取ってきており、国交などむしろこちらが喉から出る程に切望していたものだったのだが。
「あははー、大丈夫大丈夫。うちの国の女の子も喜んでいたよ。聖アルマイトにはイケメン男子が多いってさー」
「あ、そう」
聖アルマイトの現状とは対照的な、全く緊張感のないイルギルスの言葉にコウメイは肩をこけさせる。
ファヌス魔法大国の内情――特に王族間の関係については、聖アルマイト以上に複雑だということはコウメイも承知している。が、今のコウメイにそれ以上抱え込む余裕はなく、「色々あるんだろうな」ということで終わらせておく。
「うんうん、コウメイ君が考えていることは分かるよー。実際その通りで、うちの家族関係も複雑だからさー。悪いけど、リリライト第2王女の件については、僕らがカリオス王子の味方になってあげられるかは分からないなー。下手したら、敵に回るかもよ?」
思考を読み取られて、更にその先を言われてハッとするコウメイ。イルギルスの顔を見返すと、ヴェールに隠れえていない目の部分がニヤリと笑っているのが分かる。
この人物もまた、腹にいくつも抱えた策士だと、コウメイは確信する。
「まあまあ。とりあえず今はアンナちゃんの様子を見に来たんでしょう? 今なら少しだけ話出来るし、会っていきなよ。彼女も、君には謝りたいって言ってたからさー」
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コウメイがアンナに持っている印象は、嬉々としながら明確な殺意を持って襲ってくる暗殺者、というのが強い。はっきりいって恐怖が圧倒的に強い。
話では正気に戻ったとは聞いていても、やはり緊張は拭えなかった。
ドクドクと激しく脈打つ心臓を懸命におさえながら、コウメイは治療室のドアを開けた。
「あ」
アンナは真っ白いシーツの中――ベッドの上で上体だけを起こして、窓から外を見つめていた。部屋に差し込んでいる真昼の陽光が、アンナが身に着けている病衣の白さを際立たせていた。
「コウメイ、さま……」
可愛らしくツインテールにまとめていた髪は解かれて、下ろされている。それもまた充分に可愛らしかったが、どこか焦燥としてやつれたように見える顔が不健康そうである。
入ってきたコウメイを見て、アンナは眼を見開いていた。
「や。良くなったって聞いたけど、どう?」
なるべく重い空気にならないように努めてコウメイは軽々しい口調で挨拶をする。
しかしそんなコウメイの努力もむなしく、程なくしてアンナはその両の瞳から、ぽろぽろと涙をこぼす。
「ボク……ボク、なんてことを……シンパ様を、コウメイ様を殺そうとして……ああああああああ」
「だ、大丈夫大丈夫。落ち着いて。ほら、俺生きてるし」
慌ててアンナの側によるコウメイ。
生憎とシンパの安否は不明――コウメイも案じていることだが、それには触れない方がよさそうだ。
「ごめんなさい……ごめんなさいコウメイ様! ボク、本当に取り返しのつかないこと……それに、あの男にあんな……う、ううう……うええええっ……!」
グスタフに凌辱されたことを思い出してしまったのか、口元を抑えてえづくアンナ。
コウメイはアンナの背中を優しくさすりながら、治療室内にいた世話係に声を掛ける。
こう言ってはなんだが、グスタフとの行為にここまで嫌悪感を持つのであれば、正常な状態に戻りつつあると判断していいだろう。あの嬉々として狂ったリアラやリリライトの表情を思い返せば、そう確信できる。
「う……うげぇ……うぅ、ごめんなさい……けほ、けほっ……ごめんなさい……」
世話役が持ってきた洗面器に嘔吐した後、それでもアンナは咳き込みながら何度も謝罪の言葉を吐き続ける。
まだ充分に年端もいかない少女を狂わせ、壊し、ここまで傷つけたグスタフ――すすり泣きながら、弱弱しく、延々と謝り続けるアンナの姿を見て、改めてコウメイの胸に怒りが沸き上がる。
(というか、この状態のこの娘に団長のことを話すのか? 大丈夫なのか?)
そして改めて己に課せられた重責に胸が重くなる。
だが――
「ごめんなさい、コウメイ様。ボク、泣いてる場合じゃないって分かってる……何があったのか、ちゃんと話さないといけないって分かってる。でも、少しだけ時間が欲しいです。たくさん泣いて、たくさん謝ったら、ボク……その後は、ちゃんと立ち上がります。だから、それまで時間をください。お願いします」
アンナの弱弱しい口調から紡がれ力強い言葉は、そんなコウメイの不安を一蹴する。
――ああ、この娘は間違いなくルエール=ヴァルガンダルの娘だな。
涙でくしゃくしゃになりながら、嗚咽を漏らすアンナは、それでも己のやるべきことを忘れていない。心が悪夢に押しつぶされそうになっても、それでも心を奮い立たせて、聖アルマイトのために立ち上がろうとしている。
自分なんかよりも、よっぽど騎士らしい。
「アンナ。君に伝えておかないといけない話がある」
コウメイはルエールが言うアンナの強さを信じて、彼女の両肩を掴む。じっとアンナの眼を真っ直ぐ見据えるコウメイを、アンナは涙で濡れた瞳で見返す。
「先に謝っておく……ごめん。こんな状態の君にこんなことを伝えるのは、残酷以外の何物でもないことは分かっている。でも、耐えて欲しい。頑張って欲しい。君の存在は、俺達にとっての希望なんだ」
長い前置きを経てから、コウメイは切り出す。
尊敬する騎士団長に託された重責を果たす。
「君の父親――ルエール=ヴァルガンダルは、グスタフを討とうとして返り討ちにあった。今はとっても危険な状態で、王宮内で治療中だ」
「お父、様が……?」
信じられない、という顔でコウメイを見返すアンナ。しかしコウメイは無慈悲に顔を縦に振った。
「団長は、君を汚された怒りだけじゃない。聖アルマイト王国のために、グスタフを討とうとした。だけど、俺の力が足りなくて……ごめん。俺は何も出来なかった。だけど約束する。俺は必ずグスタフを倒して見せる。だから、それを信じて……君も頑張って欲しい」
「お父様が、死ぬ? 嘘だ……そんなわけ……だって、龍牙騎士の頂点のお父様は……」
コウメイの言葉が聞こえているのかいないのか、アンナはただただ目を見開いた状態で、ぶつぶつとつぶやくだけだった。
――そして、急に胸を抑えながら、苦しむようにもだえ始める。
「っあああああ? やだやだっ! エッチな気分になっちゃう。 せ……セックスしたいぃ! オチンポが欲しくなっちゃうううううう!」
「お、おおおう?」
発狂したように突然叫びだすアンナに、思わずコウメイは引いてしまう。
「はい、そこまでー。さくっとやっちゃって」
いつのまにか部屋に入ってきていたイルギルスが、手をポンポンと叩く。すると部屋内に控えていた世話役が実に手慣れた仕草で、アンナの顔に睡眠香がしみ込んだ布を当てる。
すぐにアンナは意識を失って、コロンとベッドの上に倒れる。すると世話役が優しくアンナの身体を動かしながら、シーツをかける。
これがアンナの治療の日常茶飯事だったのだろうか。
アンナをケアすること以上に、こんなに狂ったアンナを近くで見続けることはひどく辛かったのだろう――彼女は、この残酷な状況に、瞳に涙を滲ませていた。
「こーんな感じなんだよね。良い言い方をすれば、正気で話せる時間は伸びてきているよ。今のコウメイ君との会話は最高記録。でも悪い言い方をするなら不安定極まりないね。治るのかなぁ、これ」
大陸最高峰の治癒魔術師にそう言われると不吉極まりないのだが。
しかし、コウメイは無責任だと自覚しつつも、アンナがほんの少しだけ見せた強さに期待していた。
もしもこのままアンナが正気に立ち戻ることが出来れば、それはコウメイ側にとって大きな希望となる。
ここまで、無敵過ぎてどうしようもないと思われていたグスタフの「異能」だが、それを打ち払う可能性があるということになる。それは小さな一歩ではあるものの、これまでの絶望的過ぎる状況からすると、大きすぎる希望だった。
そして、あのルエール=ヴァルガンダルの娘ならば、きっと――
これがあの凶悪な悪魔を滅する可能性と成り得るのか――まだ運命の針は、どちらに振り切れることもなく、ただただ揺れていた。
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