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第2章 それぞれの夏 編
第21話 リリライト=リ=アルマイトの場合(裏編)
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第2王女御用達の馬車は、その車内は外界からは完全に隔離されている。窓はあるものの、小さなカーテンが準備されており、それを閉めさえすれば中の様子を窺い知ることは出来ない。
御者が馬を操る場所も、車内とは壁が隔てている。そのため御者も車内の様子を確認できない。
音についても特別防音仕様になっているわけではないが、走行中であれば走行音に遮られて何も聞こえないだろう。
「全く、不快ですわ!」
「ふほおおっ! ほおおっ!」
車内で二人きりになったリリライトとグスタフ。二人は向き合うように座っており、リリライトはハイヒールを脱いだ靴で、グスタフの股間へと足を伸ばしていた。
「それもこれも、全てあなたのせいですよ。分かっているのですか、グスタフ?」
「ぶひっ、ひぃぃ! 申し訳ございません、殿下ぁぁっ!」
リリライトは踵の部分で、グスタフのズボンの上から性器の先端部分をグリグリと刺激すると、グスタフは豚のような喜びの声を上げて身もだえる。
「ルエールも、シンパも……っ! 本当に不愉快です! それに、ラミア姉様っ! 私に嫌がらせばっかりっ! ああ、もうっ!」
怒りに身を任せるがごとく、リリライトは両足を伸ばして、グスタフの性器を足裏で踏みつけるように刺激を与えていく。
「ぶひひひっ! おほっ、ほほおっ! 殿下、そうされるとワシはもう……」
そう言って射精を予告するグスタフ。するとリリライトはその寸前で足を引っ込めて、刺激を与えるのを止めてしまう。
「ぐひっ、ぐひひひっ!」
最高の快感の瞬間を、直前に止められて焦らされるのすら興奮に感じるグスタフ。彼は唾液をだらだらと垂らしながら、濁った眼でリリライトを見つめる。
「その汚いモノを出して下さい、早くっ!」
怒気を込めた口調で言うリリライトは窓枠に肘をつきながらグスタフに指示する。グスタフは勿論逆らうことなく、ズボンのベルトを緩めて、先走りにまみれた肉棒を引きずり出す。
高く屹立した肉棒が外気に触れると、ムンとした雄臭が車内に広がった。車内は狭く、雄臭が充満するにはそう時間はかからず、その匂いはリリライトの鼻孔も刺激する。
「自分で慰めて下さい。猿のように、浅ましく、人間の屑だということを私に晒け出して下さい」
言葉使いこそ丁寧だが、普段の柔和な雰囲気からは想像すら出来ない冷淡な口調と視線で命令するリリライト。今日は怒りが強いせいか、いつもよりも一層強い。
それはグスタフの欲望と興奮をより刺激し、グスタフは指示されるがまま、自らの肉棒を擦り始める。
「ぶ、ぶほぉぉっ! 王女殿下が見ておる……わしが、チンポをシコるのを見ておる。ほおおおっ!」
「――ふふ」
獣のような声で喘ぎながら快感を貪るグスタフの姿を見て、二人きりになってから初めてリリライトが微笑む。それは普段の太陽のような笑顔ではなく、歪んだ嗜虐の悦びに満ちた暗い冷たい笑顔。
最下層の人間失格、クズで最低の存在が目の前にいる。父親程に年齢の離れた男が、自分の意のままに痴態を晒している。
この行為でリリライトは自らの存在を、価値観を、王族という偉大な立場であることを確認する。これは自分とグスタフという、二人きりの小さな小さな世界のことだが、何でも自分の思い通りになる世界に、悦を感じることが出来る。
この確認行為があるからこそ、リリライトは普段は気品溢れながら温和で明るい王女として振舞うことが出来る。姉や騎士達からうける鬱陶しい感情を消し去ることが出来るのだ。
まだまだ性に対して未熟で、未知で、経験もないリリライト。
そんな無垢と言っていい彼女は、目の前で肉の快感に覚えるグスタフを見ながら、ゾクゾクと背筋に快感が這い上るのを感じる。
「ぐひひ……で、殿下」
自慰を続けるグスタフがおもむろに口を開くと、リリライトは嫌悪するように見つめながら
「許可もなく、勝手に人の言葉を喋らないでいただけますか? この豚」
「ぶひひひぃっ! も、申し訳ございませんんっ!」
リリライトの蔑みの言葉に、グスタフが先走りをびゅっと飛ばす。
心底気持ち悪い――この”遊び”を始めた当初はそう思い吐き気を催したものだが、今は興奮を優越感を得られる。
歪んだ笑顔を深くしながら、リリライトは続ける。
「まあ、いいですよ。何かあるのであれば、特別に私と同じ言葉を話すのを許可します」
やはり普段のリリライトなら絶対に口にしない言葉。ある意味では王族らしい横暴な内容にグスタフは笑みを浮かべながら
「ぐふっ。せ、せっかくのこの機会――変に気取るよりも、思うがままに感情を剥き出しにした方が、すっきりしましょうぞ」
「……?」
いまいちグスタフの言いたいことが分かりかねるリリライトは眉をひそめる。
「ぐふふふ。王女殿下は箱入りでいらっしゃいますからなぁ……お上品な言葉しか使われないのでしょうが……例えば――」
言いながらグスタフは、リリライトの脳に刻み込むように、今のリリライトの感情を表す低俗な言葉を口にする。
それを聞いている内に、リリライトは驚いたように目を見開いて--
「わ、私にそのような、粗野で乱暴な言葉を言えと――?」
「ぶひぃぃっ! ぶひっ、ぶひっ!」
ひとしきり言いたいことを言うと、グスタフは豚に戻り、肉棒を擦り立てる。リリライトの言葉など、聞こえていないように。
「あ、う……」
グスタフはまるで肉棒をリリライトに向けて、その存在を主張するように音を立てながら肉棒を擦っている。見ている方が痛々しいとすら思えるくらいに激しいその手つきから、熱気すら感じられる。
気づけば車内に充満する雄臭も濃くなってきており、いつの間にかリリライトの頬は上気して身体も火照りを覚えていた。
――別に誰も見ていない。ここには、秘密を外には絶対に漏らさないグスタフしかいない。本能のままに、感情のままに自分を出していいのだ。
「む……ムカつきますっ! ムカつくムカつくムカつくっ! あの髭面のクソ親父も、お節介のクソ婆もムカつきますっ! それにラミア姉様――あのクソ女っ!」
今までにない、感情を剥き出しにして、低俗な言葉を次々に口にするリリライト。不思議なことに、そうすることでリリライトの胸に滞留していた重く苦しい感情が一緒に吐き出るようだった。
「あ、あの男好きのする雌の身体は、間違いなく数多の男を喰っているビッチですぞ。ほれ、王女殿下。ビッチです、男好きの淫乱ビッチですぞぉ!」
「そ、そうですっ! あの女は、男好きの淫乱ビッチですっ! あのクソビッチなんか、姉と認めるものですかっ!」
まるでグスタフに誘導されるように、汚い言葉を次々に吐き出すリリライト。そうして感情を露わにする彼女は、両足を伸ばして肉棒をこするグスタフの両手を蹴り払う。
「ぐふうっ!」
そのままリリライトは両足に肉棒を挟み、激しく上下に擦り上げる。
「ひひっ! ぶひぃぃっ! 殿下、殿下ぁぁぁぁっ!」
「さあ、出しなさい! あさましく、熱くて白いものを吐き出しなさい。ほら、早く! 豚のように射精して下さいっ!」
嗜虐の笑みに顔を歪めて、興奮しながらリリライトは、足でグスタフを射精に導く。
「ぶひっ! ぶひぃぃぃっ! んほおおおおっ!」
「あはっ……あははははははっ!」
リリライトの足に挟まれた肉棒はビクビクと震えると、そのまま爆発するように膨らみ、白濁液を勢いよく発射する。
発射された白濁は、車内に飛び散り、ストッキングに包まれたリリライトの太ももやドレスにも付着する。以前は不快に顔をしかめていたリリライトも、すっかりそれを気にしなくなり、息を荒げていた。
「はぁ、はぁ……ふふ。今までで一番すっきりしました……」
「ぐふ……ふ……ぐひひひ……」
嗜虐の悦びに微笑み、射精の快感に醜悪な笑みを浮かべるグスタフ。
そこで馬車が停車する。どうやらリリライトの邸宅に到着したようだ。
「ぐひっ、ぐひひっ。王女殿下、ヴァルガンダル家の娘も、良い頃合いだと思いますぞ」
「そ、そうですね……様子を見に行きましょうか」
日はほぼ暮れかけて、オレンジ色の世界から、夜の黒い世界が訪れようとしていた。
リリライト達の夜は、ここから始まる。
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ミュリヌス地方に立てられたリリライトの邸宅。
夜もすっかり深まり、外も中も静けさが支配していた。この時間帯――邸内で起きている者は少ない。明日からまた始まる職務に備えて、まどろみの中にいる者がほとんどだ。
その邸宅の地下に設けられた部屋では、水のような粘着質な音が響いていた。
「はむ……くちゅ……んむ……」
3人の男達に囲まれている少女が男性器を突き付けられている。そのうちの1本を、少女は頬張るようにして奉仕をしていた。
栗毛をツインテールにまとめたその少女は、布で目隠しをされており、服は着せられていない。
光景も異様なのだが、そんな中でも最も目を引くのは頭部に装着されている、機械仕掛けの装置――赤や緑、オレンジとった様々な光が激しく明滅している。
その謎の装置――見た事も聞いたこともないような禍々しい物だ――ガラス張りになった隣室から、リリライトはその情景を眺めていた。
「んっ……れろれろ……ちゅ……ちゅちゅ…」
少女は加えている肉棒の先端に舌を絡ませるようにしながら、手を伸ばしてもう1本の肉棒を握り、それを擦り始めている。
「あの男達は、何者ですか?」
汚らわしいものを見るような目で、リリライトは隣にいるグスタフに問う。
「ひょほ。あやつらはヘルベルト連合国の、ワシと懇意の仲の者達ですじゃ。口は堅いのでご心配なされることはありませんぞ、殿下。まあ下半身はあのようにだらしないが……ひょほほほほ」
どんな隙にもセクハラを織り交ぜてくるグスタフはいつものことだが。
話には聞いていたものの、リリライトは目の前の光景が未だに信じられなかった。
ミュリヌス学園1年首席。その立場に奢ることなく、ひたすらストイックに自らを高め、ライバル達と切磋琢磨し、いつも元気明朗だというアンナ=ヴァルガンダルが
「うぐぅ……で、出るぞぉぉぉっ!」
「むぐ……んんんんっ! んぐ……ごくんっ……はぁ、はぁ……れろぉぉぉ」
加えていた肉棒が暴発するように大量の白濁を発射する。少女――アンナはそれを口内で受け止めると、ためらうことなく嚥下する。飲みきれない白濁を口からこぼしながら、今度は手で握っていた肉棒へ舌を伸ばす。そして空いた手は、残りもう1本の肉棒を擦る。
表情は目隠しのせいで伺えないが、この目の前で淫蕩な行為に耽っているのが、あのヴァルガンダル家の令嬢なのだろうか。
「ほ、本当に薬ではないのですか?」
リリライトから見て、アンナは正気を失っているようにも見える。ただひたすら目の前の男性器を貪り続ける――そのように性に狂うというのは、確か危険な薬物の効果にもあったはずだ。
そんなリリライトの緊張した声に、グスタフはぐひひと笑いながら答える。
「申し上げたように、あの頭部に装着している『帽子』がとあるマジックアイテムでしてなぁ。このように乱れているのは、その効果ですじゃ。アンナ嬢は極上の快楽を味わっているはずですぞ。ぐふふふふ」
俄かには信じられないのだが、目の前の光景がグスタフの言葉が真実であることを証明していた。
「副作用はないのですね?」
「もちろんですとも。先日の話通り――あの『帽子』を外してから特殊な香を嗅がせれば、アンナ嬢はこの期間の記憶を失いましょう。ただ身体に刻み込まれた快感は、消えませぬがなぁ」
アンナは、とても向上心が強い真面目な努力家。それが結実して1年首席という座を手にしたのだ。
お気に入りのリアラを押し上げるために、そんなアンナを堕落させることは出来ないだろうか--出来るはずがないと考えていたリリライトに、グスタフが提案してきたのがこれだった。
要するに、性の快感を覚えさせて、淫乱にさせてしまえば、勉学に身が入らずに自ずと堕落していく。そのための術が自分にはあるとグスタフが言った。
そんなことが出来るはずがない。でも正直少し興味はある。半信半疑でグスタフの提案を聞いていると、リリライトはグスタフの話に徐々に引き込まれていった。
そうして今、グスタフに唆されるままアンナを邸宅に呼び出し、監禁するに至った。
彼女の父ルエールを騙してまでアンナを監禁した時点で、すでに悪戯の域を超えている。それなのに、何故かリリライトはまだ「子供の悪戯」という程度の認識しかなかった。
しかし、目の前で繰り広げられている非現実的な光景。これを作り出したのがグスタフだという。それを見ると、ようやく今更になって取り返しのつかないことに手を染めてしまったのではと思う。時間差で、理性と良識が働いてきたような感じだった。
「まあしかし、つまらん道具ですじゃ。所詮、正気を失わせて、強制的に快感を植え付ける装置ですからな。やはり、雌の本能を引きずり出し、自らドスケベの本性を認めさせるようにせんと、本気で興奮しませんなぁ」
「は? ど、どういう意味ですか?」
「ひょほっ。こっちの話ですじゃ。それよりも殿下、よくご覧になって下さい。先日まで処女であったのに……ぐふふ。ここで処女を失ってから、ああやって自分で腰を振るようになりましたぞ」
グスタフに促されて、隣室を見るリリライト。
見るとアンナは男の股に座るようにして、その秘穴に硬く屹立した肉棒を挿入されていた。別の男がアンナの小ぶりな胸に吸い付いており、さらに別の男がアンナの手で自らの肉棒を擦っていた。
「あひっ、あひぃっ! ひぃぃんっ! あむっ……むむううう……!」
男が下からアンナを突き上げる。するとアンナもその動きに合わせるように、男の上で淫らに腰をくねらせていた。
明らかに快感を得ている淫蕩な声を漏らすアンナの口に、肉棒を擦らせていた男が、その男性器を突っ込む。
「んちゅっ……ちゅばっ! ちゅううっ!」
肉棒をくわえる口から、唾液と先走りを零しながら、アンナは下から突き上げられる。
その光景は、信じられないくらいに卑猥でいやらしく、非現実的。未だ性の快感をよく知らないリリライトから見ても、アンナが明らかに快感に溺れているのが分かる。
「すごい……あんなに乱れて……」
最初は驚愕と嫌悪感だけだったリリライトが、徐々に見惚れるようになっていた。雄3人に蹂躙されるように犯されながら悦ぶ少女の姿を見て、リリライトの頬は赤く上気していく。
何かおかしい……そんなリリライトの小さな違和感は、目の前の圧倒的な淫靡な光景の前に吹き飛んでいく。
気づけばリリライトはドレスのスカートの中で太ももをすり合わせるようにしながら、激しく脈打つ鼓動を抑えるように、胸に手を当てていた。
そんなリリライトの様子を、グスタフは横目でギラついた目で見ていた。
「あぁんっ! あぁぁぁーっ! あんっ! あぁぁんっ!」
今度はアンナが四つん這いになって後ろから肉棒を突かれている。更に別の2人の男が、強引にそれぞれの肉棒をアンナの小さい口にねじ込もうとしており
「はぁ、はぁ……わ、私なんだか……」
パンパンという肉がぶつかりあう音。アンナが肉棒をすする水音。それらがリリライトの理性を、正常な思考をドロドロに溶かしていく。
そんな中――不意にグスタフがリリライトの背後に回り、彼女の手を取る。
「な、何を?」
「ぐひひ。どうやら、殿下もお勉強の必要があるようで」
「は、離しなさいっ……っああ?」
そこはさすがに男性のグスタフであった。華奢なリリライトの力など意にも介さず、取ったリリライトの手を使って、彼女の乳房を……そしてスカートの上から敏感な部分を刺激し始める。
「っくぅ? な、なんですかこれ……はううっ!」
初めての性の快感に身もだえるリリライト。それでも懸命にグスタフの手を振り払おうと抵抗しようとするが、グスタフの気持ち悪い吐息が耳に吹きかけられる。
「ほれぇ……アンナ嬢の乱れた姿をご覧になって下さい。気持ちよさそうでしょう? 殿下も同じ女性――望めば、あんなものではない極上の快楽を教えて差し上げますぞぉ?」
「あう……あうぅぅぅ……」
グスタフの声に背筋をゾクゾクとさせてしまうリリライト。
アンナの声が、交尾の音が、リリライトを狂わせていく。
「んっ……ふ……ど、どうして……」
やがてリリライトは、自ら手を動かして乳房を揉むようにする。もう片方の手は、スカートの上から敏感な部分を指でグリグリと押し付けるように刺激を与える。
「そうですぞ。お上手ですぞ、王女殿下。ちなみにお胸の方は、先っぽの方をこう重点的に刺激すると」
「ふ、ふあぁぁぁぁっ!」
まるで手ほどきをされるように、リリライトは自らの指で乳房の先端部をもてあそばされる。びくびくと小刻みに身体を揺らしながら、その快感を覚えてしまうと、もはやグスタフが手を離した後も、自らの意志で自分の身体を慰め始める。
「あっ……あぁぁっ! こ、これ……手が止まりませんっ……あああぁっ!」
乳房と下半身を弄りながら、リリライトはうっとりと隣室の光景を見やる。
そこでの行為はもう間もなくクライマックスのようだった。男の腰つきも、アンナの腰の動きも、切羽詰まったような速さになり、肉のぶつかり合う音が大きく激しくなっていく。
「あっ…あああ……あんなに激しく……わ、私……っんんん!」
隣室の行為が激しくなればなるほど、リリライトはドレスの上から乳房の先端部を摘まむように刺激していき、快感を貪る。
「ひょほほほ。全く淫らですなぁ……気持ちいいですか、リリライト殿下?」
「き、気持ちいいっ……ですっ!」
グスタフに問われれば、思わず本音を吐き出してしまうリリライト。
そうして隣室では、甲高い声を上げながらアンナが絶頂に達し、男が遠慮なくアンナの中に欲望の塊を吐き出していた。
「ひょほ、ほほほほ。あちらは終わったようですな」
「あ……はぁ、はぁ……」
隣室での行為が終わると、リリライトも手を止めて、一度冷静に戻った。
しかし火照った身体は熱く疼き、リリライトは上気した顔で息を荒げている。
「ーー後始末は奴らに任せておいて、そろそろ我々は休みましょうか殿下。明日もあることですし」
「え、あ……。そ、そうです……ね」
意外にも、素っ気ない態度のグスタフ。
てっきり、この後に”遊び”を申し出てくるかと思ったのに。そうすれば、この熱くてもどかしい、イラ立ちにも似たこの感情を吐き出してやろうと思っていたのに。
しかし、よもやリリライトから懇願することなど出来ない。
「では、上がりましょう」
努めて澄ました顔で言うリリライト。乱れたドレスを整えながらグスタフを従えて地下室を出て行く。
(私、何と言うことを……!)
地上への階段を行く間、背後のグスタフに気づかれないように、羞恥で顔を真っ赤に染める。一体何が起きたのか、自分でも分からなかった。どうして、あのような真似を。
そうして心が羞恥と後悔に染まるリリライト--実は、自身のもう1つの小さな変化には気付いていなかった。
”遊び”の主導権はリリライトにあるはず――彼女がやりたいなら、グスタフの意思など関係ないのに。リリライトが懇願する必要など、全くない。ただ命令すればいい。今までもそうしてきたはずなのに。
夏――リリライトは、本人も、周りも、何かに向けて確実に変わりつつあった。
御者が馬を操る場所も、車内とは壁が隔てている。そのため御者も車内の様子を確認できない。
音についても特別防音仕様になっているわけではないが、走行中であれば走行音に遮られて何も聞こえないだろう。
「全く、不快ですわ!」
「ふほおおっ! ほおおっ!」
車内で二人きりになったリリライトとグスタフ。二人は向き合うように座っており、リリライトはハイヒールを脱いだ靴で、グスタフの股間へと足を伸ばしていた。
「それもこれも、全てあなたのせいですよ。分かっているのですか、グスタフ?」
「ぶひっ、ひぃぃ! 申し訳ございません、殿下ぁぁっ!」
リリライトは踵の部分で、グスタフのズボンの上から性器の先端部分をグリグリと刺激すると、グスタフは豚のような喜びの声を上げて身もだえる。
「ルエールも、シンパも……っ! 本当に不愉快です! それに、ラミア姉様っ! 私に嫌がらせばっかりっ! ああ、もうっ!」
怒りに身を任せるがごとく、リリライトは両足を伸ばして、グスタフの性器を足裏で踏みつけるように刺激を与えていく。
「ぶひひひっ! おほっ、ほほおっ! 殿下、そうされるとワシはもう……」
そう言って射精を予告するグスタフ。するとリリライトはその寸前で足を引っ込めて、刺激を与えるのを止めてしまう。
「ぐひっ、ぐひひひっ!」
最高の快感の瞬間を、直前に止められて焦らされるのすら興奮に感じるグスタフ。彼は唾液をだらだらと垂らしながら、濁った眼でリリライトを見つめる。
「その汚いモノを出して下さい、早くっ!」
怒気を込めた口調で言うリリライトは窓枠に肘をつきながらグスタフに指示する。グスタフは勿論逆らうことなく、ズボンのベルトを緩めて、先走りにまみれた肉棒を引きずり出す。
高く屹立した肉棒が外気に触れると、ムンとした雄臭が車内に広がった。車内は狭く、雄臭が充満するにはそう時間はかからず、その匂いはリリライトの鼻孔も刺激する。
「自分で慰めて下さい。猿のように、浅ましく、人間の屑だということを私に晒け出して下さい」
言葉使いこそ丁寧だが、普段の柔和な雰囲気からは想像すら出来ない冷淡な口調と視線で命令するリリライト。今日は怒りが強いせいか、いつもよりも一層強い。
それはグスタフの欲望と興奮をより刺激し、グスタフは指示されるがまま、自らの肉棒を擦り始める。
「ぶ、ぶほぉぉっ! 王女殿下が見ておる……わしが、チンポをシコるのを見ておる。ほおおおっ!」
「――ふふ」
獣のような声で喘ぎながら快感を貪るグスタフの姿を見て、二人きりになってから初めてリリライトが微笑む。それは普段の太陽のような笑顔ではなく、歪んだ嗜虐の悦びに満ちた暗い冷たい笑顔。
最下層の人間失格、クズで最低の存在が目の前にいる。父親程に年齢の離れた男が、自分の意のままに痴態を晒している。
この行為でリリライトは自らの存在を、価値観を、王族という偉大な立場であることを確認する。これは自分とグスタフという、二人きりの小さな小さな世界のことだが、何でも自分の思い通りになる世界に、悦を感じることが出来る。
この確認行為があるからこそ、リリライトは普段は気品溢れながら温和で明るい王女として振舞うことが出来る。姉や騎士達からうける鬱陶しい感情を消し去ることが出来るのだ。
まだまだ性に対して未熟で、未知で、経験もないリリライト。
そんな無垢と言っていい彼女は、目の前で肉の快感に覚えるグスタフを見ながら、ゾクゾクと背筋に快感が這い上るのを感じる。
「ぐひひ……で、殿下」
自慰を続けるグスタフがおもむろに口を開くと、リリライトは嫌悪するように見つめながら
「許可もなく、勝手に人の言葉を喋らないでいただけますか? この豚」
「ぶひひひぃっ! も、申し訳ございませんんっ!」
リリライトの蔑みの言葉に、グスタフが先走りをびゅっと飛ばす。
心底気持ち悪い――この”遊び”を始めた当初はそう思い吐き気を催したものだが、今は興奮を優越感を得られる。
歪んだ笑顔を深くしながら、リリライトは続ける。
「まあ、いいですよ。何かあるのであれば、特別に私と同じ言葉を話すのを許可します」
やはり普段のリリライトなら絶対に口にしない言葉。ある意味では王族らしい横暴な内容にグスタフは笑みを浮かべながら
「ぐふっ。せ、せっかくのこの機会――変に気取るよりも、思うがままに感情を剥き出しにした方が、すっきりしましょうぞ」
「……?」
いまいちグスタフの言いたいことが分かりかねるリリライトは眉をひそめる。
「ぐふふふ。王女殿下は箱入りでいらっしゃいますからなぁ……お上品な言葉しか使われないのでしょうが……例えば――」
言いながらグスタフは、リリライトの脳に刻み込むように、今のリリライトの感情を表す低俗な言葉を口にする。
それを聞いている内に、リリライトは驚いたように目を見開いて--
「わ、私にそのような、粗野で乱暴な言葉を言えと――?」
「ぶひぃぃっ! ぶひっ、ぶひっ!」
ひとしきり言いたいことを言うと、グスタフは豚に戻り、肉棒を擦り立てる。リリライトの言葉など、聞こえていないように。
「あ、う……」
グスタフはまるで肉棒をリリライトに向けて、その存在を主張するように音を立てながら肉棒を擦っている。見ている方が痛々しいとすら思えるくらいに激しいその手つきから、熱気すら感じられる。
気づけば車内に充満する雄臭も濃くなってきており、いつの間にかリリライトの頬は上気して身体も火照りを覚えていた。
――別に誰も見ていない。ここには、秘密を外には絶対に漏らさないグスタフしかいない。本能のままに、感情のままに自分を出していいのだ。
「む……ムカつきますっ! ムカつくムカつくムカつくっ! あの髭面のクソ親父も、お節介のクソ婆もムカつきますっ! それにラミア姉様――あのクソ女っ!」
今までにない、感情を剥き出しにして、低俗な言葉を次々に口にするリリライト。不思議なことに、そうすることでリリライトの胸に滞留していた重く苦しい感情が一緒に吐き出るようだった。
「あ、あの男好きのする雌の身体は、間違いなく数多の男を喰っているビッチですぞ。ほれ、王女殿下。ビッチです、男好きの淫乱ビッチですぞぉ!」
「そ、そうですっ! あの女は、男好きの淫乱ビッチですっ! あのクソビッチなんか、姉と認めるものですかっ!」
まるでグスタフに誘導されるように、汚い言葉を次々に吐き出すリリライト。そうして感情を露わにする彼女は、両足を伸ばして肉棒をこするグスタフの両手を蹴り払う。
「ぐふうっ!」
そのままリリライトは両足に肉棒を挟み、激しく上下に擦り上げる。
「ひひっ! ぶひぃぃっ! 殿下、殿下ぁぁぁぁっ!」
「さあ、出しなさい! あさましく、熱くて白いものを吐き出しなさい。ほら、早く! 豚のように射精して下さいっ!」
嗜虐の笑みに顔を歪めて、興奮しながらリリライトは、足でグスタフを射精に導く。
「ぶひっ! ぶひぃぃぃっ! んほおおおおっ!」
「あはっ……あははははははっ!」
リリライトの足に挟まれた肉棒はビクビクと震えると、そのまま爆発するように膨らみ、白濁液を勢いよく発射する。
発射された白濁は、車内に飛び散り、ストッキングに包まれたリリライトの太ももやドレスにも付着する。以前は不快に顔をしかめていたリリライトも、すっかりそれを気にしなくなり、息を荒げていた。
「はぁ、はぁ……ふふ。今までで一番すっきりしました……」
「ぐふ……ふ……ぐひひひ……」
嗜虐の悦びに微笑み、射精の快感に醜悪な笑みを浮かべるグスタフ。
そこで馬車が停車する。どうやらリリライトの邸宅に到着したようだ。
「ぐひっ、ぐひひっ。王女殿下、ヴァルガンダル家の娘も、良い頃合いだと思いますぞ」
「そ、そうですね……様子を見に行きましょうか」
日はほぼ暮れかけて、オレンジ色の世界から、夜の黒い世界が訪れようとしていた。
リリライト達の夜は、ここから始まる。
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ミュリヌス地方に立てられたリリライトの邸宅。
夜もすっかり深まり、外も中も静けさが支配していた。この時間帯――邸内で起きている者は少ない。明日からまた始まる職務に備えて、まどろみの中にいる者がほとんどだ。
その邸宅の地下に設けられた部屋では、水のような粘着質な音が響いていた。
「はむ……くちゅ……んむ……」
3人の男達に囲まれている少女が男性器を突き付けられている。そのうちの1本を、少女は頬張るようにして奉仕をしていた。
栗毛をツインテールにまとめたその少女は、布で目隠しをされており、服は着せられていない。
光景も異様なのだが、そんな中でも最も目を引くのは頭部に装着されている、機械仕掛けの装置――赤や緑、オレンジとった様々な光が激しく明滅している。
その謎の装置――見た事も聞いたこともないような禍々しい物だ――ガラス張りになった隣室から、リリライトはその情景を眺めていた。
「んっ……れろれろ……ちゅ……ちゅちゅ…」
少女は加えている肉棒の先端に舌を絡ませるようにしながら、手を伸ばしてもう1本の肉棒を握り、それを擦り始めている。
「あの男達は、何者ですか?」
汚らわしいものを見るような目で、リリライトは隣にいるグスタフに問う。
「ひょほ。あやつらはヘルベルト連合国の、ワシと懇意の仲の者達ですじゃ。口は堅いのでご心配なされることはありませんぞ、殿下。まあ下半身はあのようにだらしないが……ひょほほほほ」
どんな隙にもセクハラを織り交ぜてくるグスタフはいつものことだが。
話には聞いていたものの、リリライトは目の前の光景が未だに信じられなかった。
ミュリヌス学園1年首席。その立場に奢ることなく、ひたすらストイックに自らを高め、ライバル達と切磋琢磨し、いつも元気明朗だというアンナ=ヴァルガンダルが
「うぐぅ……で、出るぞぉぉぉっ!」
「むぐ……んんんんっ! んぐ……ごくんっ……はぁ、はぁ……れろぉぉぉ」
加えていた肉棒が暴発するように大量の白濁を発射する。少女――アンナはそれを口内で受け止めると、ためらうことなく嚥下する。飲みきれない白濁を口からこぼしながら、今度は手で握っていた肉棒へ舌を伸ばす。そして空いた手は、残りもう1本の肉棒を擦る。
表情は目隠しのせいで伺えないが、この目の前で淫蕩な行為に耽っているのが、あのヴァルガンダル家の令嬢なのだろうか。
「ほ、本当に薬ではないのですか?」
リリライトから見て、アンナは正気を失っているようにも見える。ただひたすら目の前の男性器を貪り続ける――そのように性に狂うというのは、確か危険な薬物の効果にもあったはずだ。
そんなリリライトの緊張した声に、グスタフはぐひひと笑いながら答える。
「申し上げたように、あの頭部に装着している『帽子』がとあるマジックアイテムでしてなぁ。このように乱れているのは、その効果ですじゃ。アンナ嬢は極上の快楽を味わっているはずですぞ。ぐふふふふ」
俄かには信じられないのだが、目の前の光景がグスタフの言葉が真実であることを証明していた。
「副作用はないのですね?」
「もちろんですとも。先日の話通り――あの『帽子』を外してから特殊な香を嗅がせれば、アンナ嬢はこの期間の記憶を失いましょう。ただ身体に刻み込まれた快感は、消えませぬがなぁ」
アンナは、とても向上心が強い真面目な努力家。それが結実して1年首席という座を手にしたのだ。
お気に入りのリアラを押し上げるために、そんなアンナを堕落させることは出来ないだろうか--出来るはずがないと考えていたリリライトに、グスタフが提案してきたのがこれだった。
要するに、性の快感を覚えさせて、淫乱にさせてしまえば、勉学に身が入らずに自ずと堕落していく。そのための術が自分にはあるとグスタフが言った。
そんなことが出来るはずがない。でも正直少し興味はある。半信半疑でグスタフの提案を聞いていると、リリライトはグスタフの話に徐々に引き込まれていった。
そうして今、グスタフに唆されるままアンナを邸宅に呼び出し、監禁するに至った。
彼女の父ルエールを騙してまでアンナを監禁した時点で、すでに悪戯の域を超えている。それなのに、何故かリリライトはまだ「子供の悪戯」という程度の認識しかなかった。
しかし、目の前で繰り広げられている非現実的な光景。これを作り出したのがグスタフだという。それを見ると、ようやく今更になって取り返しのつかないことに手を染めてしまったのではと思う。時間差で、理性と良識が働いてきたような感じだった。
「まあしかし、つまらん道具ですじゃ。所詮、正気を失わせて、強制的に快感を植え付ける装置ですからな。やはり、雌の本能を引きずり出し、自らドスケベの本性を認めさせるようにせんと、本気で興奮しませんなぁ」
「は? ど、どういう意味ですか?」
「ひょほっ。こっちの話ですじゃ。それよりも殿下、よくご覧になって下さい。先日まで処女であったのに……ぐふふ。ここで処女を失ってから、ああやって自分で腰を振るようになりましたぞ」
グスタフに促されて、隣室を見るリリライト。
見るとアンナは男の股に座るようにして、その秘穴に硬く屹立した肉棒を挿入されていた。別の男がアンナの小ぶりな胸に吸い付いており、さらに別の男がアンナの手で自らの肉棒を擦っていた。
「あひっ、あひぃっ! ひぃぃんっ! あむっ……むむううう……!」
男が下からアンナを突き上げる。するとアンナもその動きに合わせるように、男の上で淫らに腰をくねらせていた。
明らかに快感を得ている淫蕩な声を漏らすアンナの口に、肉棒を擦らせていた男が、その男性器を突っ込む。
「んちゅっ……ちゅばっ! ちゅううっ!」
肉棒をくわえる口から、唾液と先走りを零しながら、アンナは下から突き上げられる。
その光景は、信じられないくらいに卑猥でいやらしく、非現実的。未だ性の快感をよく知らないリリライトから見ても、アンナが明らかに快感に溺れているのが分かる。
「すごい……あんなに乱れて……」
最初は驚愕と嫌悪感だけだったリリライトが、徐々に見惚れるようになっていた。雄3人に蹂躙されるように犯されながら悦ぶ少女の姿を見て、リリライトの頬は赤く上気していく。
何かおかしい……そんなリリライトの小さな違和感は、目の前の圧倒的な淫靡な光景の前に吹き飛んでいく。
気づけばリリライトはドレスのスカートの中で太ももをすり合わせるようにしながら、激しく脈打つ鼓動を抑えるように、胸に手を当てていた。
そんなリリライトの様子を、グスタフは横目でギラついた目で見ていた。
「あぁんっ! あぁぁぁーっ! あんっ! あぁぁんっ!」
今度はアンナが四つん這いになって後ろから肉棒を突かれている。更に別の2人の男が、強引にそれぞれの肉棒をアンナの小さい口にねじ込もうとしており
「はぁ、はぁ……わ、私なんだか……」
パンパンという肉がぶつかりあう音。アンナが肉棒をすする水音。それらがリリライトの理性を、正常な思考をドロドロに溶かしていく。
そんな中――不意にグスタフがリリライトの背後に回り、彼女の手を取る。
「な、何を?」
「ぐひひ。どうやら、殿下もお勉強の必要があるようで」
「は、離しなさいっ……っああ?」
そこはさすがに男性のグスタフであった。華奢なリリライトの力など意にも介さず、取ったリリライトの手を使って、彼女の乳房を……そしてスカートの上から敏感な部分を刺激し始める。
「っくぅ? な、なんですかこれ……はううっ!」
初めての性の快感に身もだえるリリライト。それでも懸命にグスタフの手を振り払おうと抵抗しようとするが、グスタフの気持ち悪い吐息が耳に吹きかけられる。
「ほれぇ……アンナ嬢の乱れた姿をご覧になって下さい。気持ちよさそうでしょう? 殿下も同じ女性――望めば、あんなものではない極上の快楽を教えて差し上げますぞぉ?」
「あう……あうぅぅぅ……」
グスタフの声に背筋をゾクゾクとさせてしまうリリライト。
アンナの声が、交尾の音が、リリライトを狂わせていく。
「んっ……ふ……ど、どうして……」
やがてリリライトは、自ら手を動かして乳房を揉むようにする。もう片方の手は、スカートの上から敏感な部分を指でグリグリと押し付けるように刺激を与える。
「そうですぞ。お上手ですぞ、王女殿下。ちなみにお胸の方は、先っぽの方をこう重点的に刺激すると」
「ふ、ふあぁぁぁぁっ!」
まるで手ほどきをされるように、リリライトは自らの指で乳房の先端部をもてあそばされる。びくびくと小刻みに身体を揺らしながら、その快感を覚えてしまうと、もはやグスタフが手を離した後も、自らの意志で自分の身体を慰め始める。
「あっ……あぁぁっ! こ、これ……手が止まりませんっ……あああぁっ!」
乳房と下半身を弄りながら、リリライトはうっとりと隣室の光景を見やる。
そこでの行為はもう間もなくクライマックスのようだった。男の腰つきも、アンナの腰の動きも、切羽詰まったような速さになり、肉のぶつかり合う音が大きく激しくなっていく。
「あっ…あああ……あんなに激しく……わ、私……っんんん!」
隣室の行為が激しくなればなるほど、リリライトはドレスの上から乳房の先端部を摘まむように刺激していき、快感を貪る。
「ひょほほほ。全く淫らですなぁ……気持ちいいですか、リリライト殿下?」
「き、気持ちいいっ……ですっ!」
グスタフに問われれば、思わず本音を吐き出してしまうリリライト。
そうして隣室では、甲高い声を上げながらアンナが絶頂に達し、男が遠慮なくアンナの中に欲望の塊を吐き出していた。
「ひょほ、ほほほほ。あちらは終わったようですな」
「あ……はぁ、はぁ……」
隣室での行為が終わると、リリライトも手を止めて、一度冷静に戻った。
しかし火照った身体は熱く疼き、リリライトは上気した顔で息を荒げている。
「ーー後始末は奴らに任せておいて、そろそろ我々は休みましょうか殿下。明日もあることですし」
「え、あ……。そ、そうです……ね」
意外にも、素っ気ない態度のグスタフ。
てっきり、この後に”遊び”を申し出てくるかと思ったのに。そうすれば、この熱くてもどかしい、イラ立ちにも似たこの感情を吐き出してやろうと思っていたのに。
しかし、よもやリリライトから懇願することなど出来ない。
「では、上がりましょう」
努めて澄ました顔で言うリリライト。乱れたドレスを整えながらグスタフを従えて地下室を出て行く。
(私、何と言うことを……!)
地上への階段を行く間、背後のグスタフに気づかれないように、羞恥で顔を真っ赤に染める。一体何が起きたのか、自分でも分からなかった。どうして、あのような真似を。
そうして心が羞恥と後悔に染まるリリライト--実は、自身のもう1つの小さな変化には気付いていなかった。
”遊び”の主導権はリリライトにあるはず――彼女がやりたいなら、グスタフの意思など関係ないのに。リリライトが懇願する必要など、全くない。ただ命令すればいい。今までもそうしてきたはずなのに。
夏――リリライトは、本人も、周りも、何かに向けて確実に変わりつつあった。
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