黒頭巾は異世界で…

雪城 いぶき

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14話 名の契約

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フェンリルはシルフィが何処に行ったのかという疑問と、メイジーとオルトの遣り取りを見ながら首を傾げたが、何もなかったかの様にメイジーの前に顔を合わせ座り目を瞑る。

「では、我に名を。」



がメイジーが契約する。汝フェンリルの名を【 フェンダー 】とする。』

われ、メイジーを主と認め【フェンダー】の名を承る』

体に暖かい光に包まれキラキラを纒う。
フェンリルのフェンダーは目を開けるとメイジーが意識を失って崩れる所を目の当たりにし驚いた。

「主!?」

メイジーが意識を失った瞬間、オルトがすかさず抱きかかえる。

「オルト…だったか?主は大丈夫なのか!?」

フェンダーはオルトにお姫様抱っこされたメイジーの周りをオロオロとしながら問いかける。

「ええ。大丈夫です。明日には目を覚まします。メイジーを寝かせるから、フェンダー。」

「なんだ?」

オルトが土魔法で地面を平地に整えてフェンダーに伝える。

其処そこに寝転んで下さい。」

「あ、ああ。分かった。」

オルトの対応に戸惑うが従うことにした。
フェンダーは寝転がり、オルトがメイジーをフェンダーのお腹の上に寝かせ、体を冷やさない様、尻尾でメイジーを覆う。

「主の顔色が悪い…。名を与えただけで意識を失うほどの魔力消費は無いはずだが。どういう事だ?」

「主様は名の契約をする際に、魔力を大幅に消費し、意識を失う。原因は、魔力を乗せ名を与える契約方法を取っているからです。メイジーを主に定め名の契約を行う。魔力を乗せて名を付けられた者はスキルを与えられる。」

「それは、人にも出来るのか?」

「いいえ。これは従魔、テイムの時だけ出来る契約なんです。もう一言付け加えると、メイジーを主に定めた時のみですね。」

「そうか。わかった。では主を守らなければな。」

「ええ、そうですね。人間は欲深いですから。気を付けなければ。」

フェンダーは頷く。

「あとは、スキルですね。1つ目は、私達がいる異空間と言うスキル。主様の見ているもの、話している事、感情。は我らに伝わる。ずっとではないが。
2つ目は、飛躍的にレベルが高くなる。
3つ目は、念話と言語とサイズ変更の付与。元々持っているスキルであればそのまま何もない。
4つ目は名を呼ばれずとも、先ほどの我らのように、異空間から出る事が出来る。主様と離れていても異空間に戻れる。ま、そんな所です。」

「普通の契約ではないのだな。主は本当に人族か?」

「ええ。一応人族です。」

「…そうか。」

「風の精霊王シルフィから伝言です。明日、三人の冒険者が此方こちらに来た場合、メイジーがまだ目を覚ましていないかもしれないが、その人達に託していいと判断したので、"街まで連れて行ってやって欲しい"と伝えること。あとは、その三人の冒険者は何かを調べに来ているらしいので、フェンダーが対応して下さい。それが終わったら異空間へ来て下さい。私はそろそろ、異空間に戻ます。主様を頼みます。」

「任された。」
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