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第三章 ジュリエッタ逃亡編

思わぬお客様

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新しい情報に憤慨しながらも、
私は私の事を優先しようと心に決めた。
自分で決めた(スカーレットのアイディアでもあるけれど)
私に与えられた使命、仕事。
絶対に投げ出さず続けて行くんだ。
もし連れ戻されようとしたら、何が何でも抵抗してやる。
そう意気込んでも、何も起こっていない今は、徒労だね。

取り合えず明日も他のクラスでテーブルマナーだ。
メニューは貴族社会では一般的なものだったけど、
彼女達にはととても好評だった。

「な、何ですかこれ、物凄く美味しい。」

するとボーイが、すかさず説明に寄る。

「こちらはラパンとトマトの白ワイン蒸しでございます。」

「ラパン?」

「ウサギでございます。その中でも柔らかい子ウサギを使っております。」

それを聞いたチェルシーの顔が引きつった。
あら、ウサギ料理は初めてだった?
そんなエピソードも有ったけど、とにかく好評だった今日の授業。
明日も楽しみだわ。
そんな事を考え、寝る為の用意を整えていると、
突然泡を食ったルイ―ザが部屋に駆けこんできた。

「ジュリエッタ様、大変でございます!」

こんなルイ―ザは初めて見た。
一体何が有ったんだ。つられて私も焦りまくる。

「申し訳ございません。」

息を整えながら話すルイ―ザ、

「お客様がいらっしゃっております。
時間も時間ですのでお断りしたのですが、
あなたに逃げられる訳には行かないと、すごい剣幕で。
一体どうしたらと判断が付きかね。
取り合えずジュリエッタ様にお知らせまでと思いまして………。」

ここに入るには裏の方面の入り口しかないはず、
普通の人は知らないのになぜ…。

「教室の方の入り口からです。
たまたま戸締りを確認しておりましたところ、
凄い勢いで扉を叩かれ、何事かと開けてしまった私のミスです。
本当に申し訳ありません。」

「そうなの、起こってしまった事は仕方が無いわ。
それでお客様って、まさか………。」

スティールだわ。
ここを嗅ぎ付けて、いてもたってもいられず城を出て来たんだわ。
きっとそうだ。

「はい、初老の男性です。
エトワール様と名乗っておいででした。」

な~んだ、スティールじゃ無いんだ。助かった。
じゃない!エトワールって、グレゴリーのおじい様の事よね。
おじい様も私の事を探していたの!?

考えてみれば当然の事だった。
グレゴリーには私の捜索の為、沢山の人が行っているもの。
当然私が訪れる可能性の高いおじい様の所にだって行っている筈だ。
特にお母様なんて面と向かって話しているよね。
”ジュリエッタを返して”ってね。

「そうか~、私が失踪した事で沢山の人、
私の事なんて知らなかった人まで動かして、私の事を探させているのね。
色々な人に迷惑をかけているんだ。」

だんだん気分が落ち込んでくる。

「ジュリエッタ様、探されている方達はあなたに迷惑をかけた人です。
動いている人達は、報酬を受け取ってあなたを探しているんです。
つまりあなたで金儲けをしているんです!
あなたが気に病む必要は有りません!
とにかく今はお客様の事です‼」

あ………。
ルイ―ザって賢い。
一気に立ち直った私は、すぐさま頭を働かせた。

私は実際におじい様に有ったことは無い。
おじい様にしても、私の外見など特徴を聞いたか、
絵姿程度にしか分かっていない筈だ。

「おじい様にはご挨拶に行きたいと思っていたけど、今はまずいわ。
本当は会わずに帰っていただきたいけど、
そうすればおじい様は納得などしないでしょうね。
ルイ―ザ、おじい様には会います。
ただし思いっ切り変装をしてからです。
ただ少し時間が掛かるので、その間何とか理由を付けて待たせる事は出来る?」

「お任せ下さい。命に代えても。」

命は掛けなくてもいいから…。

とにかく私は急いでクローゼットに飛び込んだ。
一番地味な色合い。ほとんど飾り気の無いこのダークブラウンのドレスと、
化粧はファンデーションの濃いめの色を塗りたくり、後はほとんどしない。
かつらはざっと上の方で結い上げ、ほつれた部分はそのままにしておこう。
支度をし、鏡に映した自分の姿は、
かなりのハイミスのおばさんに見える。
これではあなたの孫なんて思えないでしょう?
さていざ出陣ですわ。
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