上 下
49 / 67
第三章 ジュリエッタ逃亡編

レディー養成講座

しおりを挟む
「私はスカーレットの遠縁で、この町でレディー養成所を開く事にしたの。
よろしくね。
ただ事情が有って、いつもはさっきみたいに変装をしているけど気にしないでね。」

今私はルイ―ザの前で、素をさらけ出していた。
ルイ―ザは常に私の傍に居てくれるらしいので、
それなら変装前の私も知ってもらわなくちゃと思っての事だ。

「はい、承知しました。
では先ほどの姿を普通とし、
今のあなた様の姿は秘密と言う事で宜しいでしょうか。」

「そ…うね。それでお願い。」

スカーレットの言う通り、
彼女はかなりの切れ者で有り、良く出来たメイドのようだ。

「それで私は、通常のメイドの業務の他、
何かお手伝いすることはございますか?」

「あぁ、そうね。
追々状況を見ながらなのだけど、
もしかしたら、マナー講座の方で協力をお願いするかもしれないわ。」

実技でお茶などをサーブしてもらうのもいいかもしれない。

「はい、その時は遠慮なくお申し付け下さい。」

「そう言えば、ルイ―ザはダンスは出来て?」

「そうですね、ワルツ、タンゴ、
スローフォックス・トロットぐらいでしたらある程度は…。」

「そう…、ねえもしよろしかったら、
私の手が回らない時にダンス講座の助手をお願いできないかしら。」

「まあ…、初心者の方を対象にするのでしたら可能かと思います。」

それで十分。よろしくお願いします。
ただ、男性パートナーがダールさんのみと言うのは痛いわね。

「ならば、男性の生徒さんも募集してみたらいかがでしょう。」

ルイ―ザのその言葉は目から鱗だった。
そうか、そうすれば女の子も授業に熱が入るかもしれない。
男性側はダールさんに講師をお願いすればいいしね。
さっそくスカーレットに相談してみよう。

工事をしている間に、私達は何をどう教えるかと計画を練る。

「対象は初心者。
色々なレベルの人を、最初からあなた一人に任せるのは
負担が大きくなってしまうでしょ。」

ありがとうございます。

「手始めにマナーとダンス。
その二つから始めようかと思うの。」

後は女の子の話を聞きながら、決めた方がいい。

「そのうちに、上流社会に必要な教養とか知識、
男性のあしらい方と、え~と。」

「ちょっと、それって全部私が教える訳じゃ無いわよね……。」

「………必要であれば、助手を雇ってもいいわ。
それらの知識が有り、適役の人がいればだけど。」

結局私がやるんかい!


教室の工事も着々と進み、大きな鏡をホールに取り付け、完成となった。
でも考えてみたら、最初はスカーレットの手助けを何かしたいと思っただけなのに。
ここ迄お金をかけて、大々的に工事をして………。
つまり私の負債は膨れ上がり、生徒を抱えると言う責任も大きくなる。
一体私はいつまでこれを続ければいいのでしょうか。

「大丈夫よ、本場仕込みのあなたが基盤さえ築いてくれれば、
後はそれなりの講師を何人か雇えばすんじゃうわ。」

ジュリエッタがいなくなったらね。
とスカーレットは笑いながら言うけれど、
今、私がいなくなったら・何人もの人を・雇うって言ったよね。
つまりその何人もの人がやる事を、
それまで私一人がやらなければならないのだろうか。

「さて、準備は整ったわね。
では早速明日から開講としましょうか。」

「え、完成祝いとか、開校祝いとか、けじめを付けなくていいの?
広告とか出して、生徒さんを集めなきゃならないだろうし、
明日からいきなり始めるって出来ないでしょう。」

私がそう言うと、スカーレットは実にいい顔で笑いながら、

「生徒さんはもう集めて有るわ。」

と爆弾発言。一体いつの間に…。

「明日の午前9時には集合するように伝えるから、よろしく!」

「よろしくって、一体いきなり何をすればいいのよ!」

「何って……任せるわ。」

酷い!

初めはそんなに大勢じゃ無いわよ。
そうスカーレットに聞かされ、少しはほっとした。

ならば初日はお茶会でもして、情報収集をしよう。
あと残りの1時間ぐらい、教室っぽくダンスのレッスンでもしましょうか。



そして次の日、現れたのは3人の女の子。
女の子と言っても14歳が二人と、16歳が一人、夢見る年頃の女の子ね。
取り合えず声を掛けたのはこの3人だけよ。
そう言ってスカーレットがまたニンマリと笑った。
3人なら集中して教える事が出来るし、立派なレディに仕上げる事は可能でしょう。

私はそう思い、早速ルイ―ザにお茶の支度を頼んだ。
品よく整えられた教室の様子に、歓喜する女の子達。

「今日から淑女となるべく学んで下さい。
では最初に。」

私はテーブルに着く前に、最初の講義、
この子達の前で、優雅にカーテシーを披露した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。 はずだった。 目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う? あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる? でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの? 私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。

私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。

田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。 結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。 だからもう離婚を考えてもいいと思う。 夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

処理中です...