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第三章 ジュリエッタ逃亡編
計画続行
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「さて、まだまだ行きますわよ~。」
完全に楽しんでいらっしゃいますわね、スカーレット様。
「窮地は脱したと考えても大丈夫と思います。
後はあまり人通りのない道を選んで、力の限り突っ走りますので、
少しゆっくりできますわ。」
力の限り突っ走るから少しゆっくりできるって、
何と無く矛盾を感じるんですが…。
するとスカーレット様は、座席の下から大きなバスケットを取り出した。
「大した物は有りませんが、食事を用意しました。
お腹が空かれたでしょう?」
そう言って差し出された中には、
蒸し鶏のサンドイッチに、生ハムの野菜巻き。
チーズのココット、エトセトラ。
デザートにはメロンやイチゴの、果物の盛り合わせまで有る。
こんなに誰が食べるのかしら。
「ところでジュリエッタ様、車酔いは大丈夫ですか?」
「まあ、普通に大丈夫ですが……。」
「良かった。
実はこれは、レース用の馬車を改造し、競技用の馬をお借りしていますの。
借りると言っても、主人の持ち馬ですから、
足が付く事は有りませんよ。」
「レース……。」
「でも長距離用の馬ですし、スタミナは有りますから大丈夫ですわ。
ただ私は故郷と家を、何度も行き来してますので慣れておりますが、
少々揺れが激いので、ジュリエッタ様は大丈夫か心配しておりましたの。」
そう言いながら、スカーレット様は二つ目のサンドイッチに
手を伸ばしていらっしゃる。
「あら、どうぞジュリエッタ様も召し上がって下さいませ。
逃亡には体力も大切、
しっかり食べなければ、後々まで持ちません事よ。」
「い、いただきます。」
そう言って、赤いイチゴに手を伸ばした。
どうして私の周りには、こうも胆の座った方が多いのでしょう。
何故か自分は運命にコロコロと遊ばれているような気がした。
やはり食事は控えめにしておいて大正解でした。
やがて馬車は町を通り過ぎ、村を抜ける頃には道は荒る一方。
スピードは落ちたものの、馬車はガタガタとかなり揺れが激しくなっていた。
それでも馬は何事も無さそうに駆けて行く。
こうも揺られ続けて馬車は壊れないにか心配です。
途中で軽い休憩を取りながら進む馬車の中で、
スカーレットは何でもないように、話したり食べたり。
私は合槌をしながら、何とかこの揺れと戦っていました。
「そう言えば、マリーベル様からのご指示が有りましたね。」
「はひっ?な、何でしたっけぇ。」
揺れと必死に戦っていた私は、いきなりの言葉に戸惑った。
「ほら、私とあなたの続柄を決めておくようにと会ったでしょう?」
そう言えばそんな話が有ったっけ。
「あ、あの、よ、宜しければ、スカーレット様に、お、お任せしても……。」
「え、私が決めてもいいのですか?
任せて!
とても面白い設定を考えますわ。」
スカーレット様はワクワクとした表情で意気込んでいる。
「えっと、実はあなたと私は生き別れた姉妹で~、
それから……、最近引き取られた先の人が亡くなって
残された手紙で身元が分かって……、
それを頼りに街に出て来たあなたが王子様と偶然知り合って、
あなたと王子様は恋に落ちて、
王子様の助けで、親の元に辿り着くことが出来て~~。」
「スカーレット様、それは何という小説ですか…。」
「えー、何で分かったの?
”バラ色の運命”って言うの。とってもロマンチックでステキなお話なのよ~。
それからね、王子様と一緒に我が家に来たあなたは、」
「もういいです。私も一緒に考えます。」
という訳で、私はスカーレット様の義理のお兄さんのお嫁さんの妹、
まあ、赤の他人みたいなものだけど、取り合えず繋がりが有る程度でとどめました。
スカーレット様は、つまらないですわとブーたれていましたが、
そんな事にかまってはいられません。
それから何時間か走り続け、一つの村を通り過ぎ、
森にさしかかる頃、前方にちょっとした建物が見えてきました。
「お疲れになったでしょうジュリエッタ様。」
あぁ、ようやくあそこが目的地……、ではないですよね、多分。
日も傾き、星が瞬き始めています。
「無理は禁物、今日はあそこで休みましょう。」
いえ……十分無理をしたと思います。
あえて、口には出しませんが。
私は座っていただけとはいえ、もうヘロヘロです。
「でもジュリエッタ様が、追っ手の事が心配で早く前へ進みたいのであれば、
馬を変え進む事も出来ますよ。」
「いえ…、ご心配ありがとうございます。
でもこれから先は森が深いような気がします。
此処で無理をして、 森の中で獣にでも襲われでもしたらそれこそです。
残念ですが、今日はお言葉に甘えて此処で休ませていただきます。」
「そうですわね。それが宜しいかと。」
それから馬車は、その家の敷地に入り、
馬車から飛び降りた御者は高い門をしっかり閉める。
すると家の扉が開き、中からエプロンを掛けた、ふくよかな女性が出てきました。
「まあまあスカーレット様、とお友達の方ですわね。
お待ちしておりましたよ。
さあさ、中に入ってお寛ぎ下さい。
美味しいものも、沢山用意しておきましたよ。」
「ありがとう、クララ。」
そう言って、スカーレット様はその女性を軽く抱き締め、頬にキスをしていた。
「スカーレット様、お知り合いの方ですか?」
それならば、しっかり挨拶をしておかなければ。
「彼女は私の乳母だった人です。
今は引退して、此処で暮らしていますが、
私がグレゴリーと家を行き来する時は、必ずここに寄らせてもらっているのです。」
まあ、だからあれほどまでに親しげだったのですね。
この方なら、きっと信用できる。
そう思った私は、ようやく肩の力を抜くことが出来ました。
完全に楽しんでいらっしゃいますわね、スカーレット様。
「窮地は脱したと考えても大丈夫と思います。
後はあまり人通りのない道を選んで、力の限り突っ走りますので、
少しゆっくりできますわ。」
力の限り突っ走るから少しゆっくりできるって、
何と無く矛盾を感じるんですが…。
するとスカーレット様は、座席の下から大きなバスケットを取り出した。
「大した物は有りませんが、食事を用意しました。
お腹が空かれたでしょう?」
そう言って差し出された中には、
蒸し鶏のサンドイッチに、生ハムの野菜巻き。
チーズのココット、エトセトラ。
デザートにはメロンやイチゴの、果物の盛り合わせまで有る。
こんなに誰が食べるのかしら。
「ところでジュリエッタ様、車酔いは大丈夫ですか?」
「まあ、普通に大丈夫ですが……。」
「良かった。
実はこれは、レース用の馬車を改造し、競技用の馬をお借りしていますの。
借りると言っても、主人の持ち馬ですから、
足が付く事は有りませんよ。」
「レース……。」
「でも長距離用の馬ですし、スタミナは有りますから大丈夫ですわ。
ただ私は故郷と家を、何度も行き来してますので慣れておりますが、
少々揺れが激いので、ジュリエッタ様は大丈夫か心配しておりましたの。」
そう言いながら、スカーレット様は二つ目のサンドイッチに
手を伸ばしていらっしゃる。
「あら、どうぞジュリエッタ様も召し上がって下さいませ。
逃亡には体力も大切、
しっかり食べなければ、後々まで持ちません事よ。」
「い、いただきます。」
そう言って、赤いイチゴに手を伸ばした。
どうして私の周りには、こうも胆の座った方が多いのでしょう。
何故か自分は運命にコロコロと遊ばれているような気がした。
やはり食事は控えめにしておいて大正解でした。
やがて馬車は町を通り過ぎ、村を抜ける頃には道は荒る一方。
スピードは落ちたものの、馬車はガタガタとかなり揺れが激しくなっていた。
それでも馬は何事も無さそうに駆けて行く。
こうも揺られ続けて馬車は壊れないにか心配です。
途中で軽い休憩を取りながら進む馬車の中で、
スカーレットは何でもないように、話したり食べたり。
私は合槌をしながら、何とかこの揺れと戦っていました。
「そう言えば、マリーベル様からのご指示が有りましたね。」
「はひっ?な、何でしたっけぇ。」
揺れと必死に戦っていた私は、いきなりの言葉に戸惑った。
「ほら、私とあなたの続柄を決めておくようにと会ったでしょう?」
そう言えばそんな話が有ったっけ。
「あ、あの、よ、宜しければ、スカーレット様に、お、お任せしても……。」
「え、私が決めてもいいのですか?
任せて!
とても面白い設定を考えますわ。」
スカーレット様はワクワクとした表情で意気込んでいる。
「えっと、実はあなたと私は生き別れた姉妹で~、
それから……、最近引き取られた先の人が亡くなって
残された手紙で身元が分かって……、
それを頼りに街に出て来たあなたが王子様と偶然知り合って、
あなたと王子様は恋に落ちて、
王子様の助けで、親の元に辿り着くことが出来て~~。」
「スカーレット様、それは何という小説ですか…。」
「えー、何で分かったの?
”バラ色の運命”って言うの。とってもロマンチックでステキなお話なのよ~。
それからね、王子様と一緒に我が家に来たあなたは、」
「もういいです。私も一緒に考えます。」
という訳で、私はスカーレット様の義理のお兄さんのお嫁さんの妹、
まあ、赤の他人みたいなものだけど、取り合えず繋がりが有る程度でとどめました。
スカーレット様は、つまらないですわとブーたれていましたが、
そんな事にかまってはいられません。
それから何時間か走り続け、一つの村を通り過ぎ、
森にさしかかる頃、前方にちょっとした建物が見えてきました。
「お疲れになったでしょうジュリエッタ様。」
あぁ、ようやくあそこが目的地……、ではないですよね、多分。
日も傾き、星が瞬き始めています。
「無理は禁物、今日はあそこで休みましょう。」
いえ……十分無理をしたと思います。
あえて、口には出しませんが。
私は座っていただけとはいえ、もうヘロヘロです。
「でもジュリエッタ様が、追っ手の事が心配で早く前へ進みたいのであれば、
馬を変え進む事も出来ますよ。」
「いえ…、ご心配ありがとうございます。
でもこれから先は森が深いような気がします。
此処で無理をして、 森の中で獣にでも襲われでもしたらそれこそです。
残念ですが、今日はお言葉に甘えて此処で休ませていただきます。」
「そうですわね。それが宜しいかと。」
それから馬車は、その家の敷地に入り、
馬車から飛び降りた御者は高い門をしっかり閉める。
すると家の扉が開き、中からエプロンを掛けた、ふくよかな女性が出てきました。
「まあまあスカーレット様、とお友達の方ですわね。
お待ちしておりましたよ。
さあさ、中に入ってお寛ぎ下さい。
美味しいものも、沢山用意しておきましたよ。」
「ありがとう、クララ。」
そう言って、スカーレット様はその女性を軽く抱き締め、頬にキスをしていた。
「スカーレット様、お知り合いの方ですか?」
それならば、しっかり挨拶をしておかなければ。
「彼女は私の乳母だった人です。
今は引退して、此処で暮らしていますが、
私がグレゴリーと家を行き来する時は、必ずここに寄らせてもらっているのです。」
まあ、だからあれほどまでに親しげだったのですね。
この方なら、きっと信用できる。
そう思った私は、ようやく肩の力を抜くことが出来ました。
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