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美しき軍神
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本日二度目の投稿です。
ストーリーが繋がらないとお思いの方、前話に戻ってお入りください。
==========
美しい、清い、可憐、可愛らしい、素晴らしい、優しい、その才能。
相変わらず、エレオノーラ様に対する賛辞を力説する殿下。
そんな事もう既に知ってるしー、と反論したいが、あえてぐっと我慢です。
でも、もういいです、もうたくさんです、あなたがエルちゃんに向ける愛情が耳からあふれ出しそうです。
「あ、あの殿下!」
「何だ」
話を遮られ不服そうですが、申し訳ありませんが次に移らせて下さい。
「実は、婚約者様のお母様はあのエクステット侯爵のお嬢様とお聞きしたのですが」
「それをどこで………いや、あなたはシャインブルク殿の婚約者だったな」
あの男なら、どこからか聞きつけてきても不思議はない……と言ってますが、まあその話はそっち経由ではなく、本人から聞きました。
でもあえて私は口を噤む。
「そう、確かに彼女の母親の生家はエクステッド侯爵家だった。君も聞いた事が有るだろう。深淵の貴妃の話を」
「ええ、確か本にもなっていたような気がします」
「それほどの人を母親に持ち、彼女自身もかなりの能力者……そのように素晴らしい女性を私は……。その上私は彼女からも嫌われた、私はバカで、愚かな人間だ。笑えるだろう?それなのに今だって彼女の事が忘れられず、その面影を求めて君の弟にまで会いに来る始末だ………」
はっ……はは…はははははは…………!
突然笑い出した殿下に困惑する。
やばくないか?こいつ今にも壊れちまいそうだぞ。
「殿下、落ち着いて下さい。誰か医者を!」
「そんなもの必要ない!!もし呼ぶなら彼女の下に!!壊れてしまった彼女の体を、誰か直してくれ!!!……………」
そして殿下はテーブルに突っ伏し、わあわあと泣き喚く。
素面のはずなのにこの醜態。
まずい、非常にまずいぞこれは。
一体どうすれば良いんだ。
「そんな事ありません!!」
そう叫ぶエルちゃんが、椅子をけるような勢いで立ち上がり、泣く殿下に食って掛かる。
ちょっと待てエルちゃん。
その流れで行くと、取り返しのつかない進展に成り兼ねないぞ。
私は何も、二人をくっ付けようとした訳ではなく、あんた自身がどれほどの存在かを知ってもらいたいだけなんだ。
「私に医者なんて必要有りません!」
ああぁぁぁぁぁ…………。
「アレクシス様、どうしてそんなにご自分を傷つけるのですか?あなたはとても素晴らしい人なのです。お優しくて、頭も良くとてもお強い。あなたは私にはもったいない方なのです。何よりこの国をまとめ、守っていかなければならない存在なのですよ。そんな方が私の為に動揺するなど有ってはなりません。そんな事でどうするのですか!」
「エ……レオ…ノーラなの…か?」
「あっ!」
驚き顔の殿下、しくじり顔のエレちゃん、私は一体どうすれば良いの?
どうにもならない三つ巴。
その時窓に大きな影が横切った。
見ればリンデン様ではありませんか。
助かった~このまま彼の存在でどさくさに紛れ、話を流してしまおう。
コツコツコツ。
リンデン様が爪先を窓に打ち付け、エレちゃんを呼びます。
トトトト。
「リンデンさん、どうかしたんですか?」
エルちゃんは大きく窓を開け、リンデン様に問いかけます。
よし、これで状況も変わるだろう。
『いや、主となったお主がちっともわしを呼ばんからな。退屈で遊びに来たわ』
「あれ、ごめんなさい。リンデンさんは忙しいとばかり思っていたから、我慢していたの」
『そうか、我慢をしておったのか、可愛い奴じゃの』
「や~ん、可愛いなんて言うの、リンデンさんだけですよ」
こらこらエルちゃん、今までの話を聞いてましたか?
しかしこれを事を見ていた殿下は、ただ茫然としているだけ。
無理もない。
もう会えないと思っていたエレオノーラが目の前にいて、聞いた話と違い元気そうで、その上見た事も無い神獣、ドラゴンとコミュニケーションしている。
もし私でも、どうして良いのか分からんわ。
『おぉそうじゃ、ちと面白い事が有ってな、お前を誘いに来たんだ』
「面白い事って何ですか?」
『この間のスタンピードより大規模な物が起きそうでな。なに、わしが消し去っても良いのじゃが、何やらお主が肉などを大事にせねばいけないと言っていただろう?だから一応知らせに来たんだ』
「スタンピード!」
えっ、エルちゃん今何て言ったの?
「隊長!お肉です!」
「スタンピードよね?」
「はい!」
スタンピードなど、めったに起きないはずなのに、なぜこうも連続して起きるんだ?
まあ仕方が無い、起きるなら阻止せねば。
そこに慌しく足音がし、イカルス殿が飛び込んできた。
「ここかエレオノーラ!今中庭にリンデン殿が降り立ったようだが、何か有ったのか!………あ…アレクシス様?…………」
はい四つ巴、完成です。
でもエレちゃんはリンデン様とお話し中ですから、三つ巴ですかね。
「あっ、兄様、またお肉…スタンピードだそうです。それも前よりでっかいそうですよ。やりましたね!」
エレちゃんとても嬉しそうです。
「前?以前もスタンピードが有ったのか?」
あぁ、アレクシス様、忘れてましたよ。
そう言えばあれ報告しませんでしたものね。
報告すると、エレちゃんの事も言わなくちゃならないから。
「でも、母様は今頃忙しい時間だから、迎えに行けないし、どうしよう……」
もしかしてリン姉様の指示が無いと戦えないと?
そんな事無いですよね。
「何も、前回もお前一人で倒したのだから大丈夫だろう?」
「そうですかね。まあ母様忙しいのに、それを邪魔すると怒られちゃうから」
そう言う軽い問題だろうか……。
でもエレちゃんは、お肉を逃してなるものかとやる気満々。
前回通りリンデン様と行くようで、窓の淵に掛けられたリンデンさんの指を伝い、ウンコラショと、その背中によじ登ろうとしています。
「隊長はどうします?後から隊員さん達と来ますか?」
リンデンさんの背に跨ったエレちゃんがそう言ってくれました。
その姿はとても美しくて凛々しい、まるで戦いの女神の様でした。
ストーリーが繋がらないとお思いの方、前話に戻ってお入りください。
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美しい、清い、可憐、可愛らしい、素晴らしい、優しい、その才能。
相変わらず、エレオノーラ様に対する賛辞を力説する殿下。
そんな事もう既に知ってるしー、と反論したいが、あえてぐっと我慢です。
でも、もういいです、もうたくさんです、あなたがエルちゃんに向ける愛情が耳からあふれ出しそうです。
「あ、あの殿下!」
「何だ」
話を遮られ不服そうですが、申し訳ありませんが次に移らせて下さい。
「実は、婚約者様のお母様はあのエクステット侯爵のお嬢様とお聞きしたのですが」
「それをどこで………いや、あなたはシャインブルク殿の婚約者だったな」
あの男なら、どこからか聞きつけてきても不思議はない……と言ってますが、まあその話はそっち経由ではなく、本人から聞きました。
でもあえて私は口を噤む。
「そう、確かに彼女の母親の生家はエクステッド侯爵家だった。君も聞いた事が有るだろう。深淵の貴妃の話を」
「ええ、確か本にもなっていたような気がします」
「それほどの人を母親に持ち、彼女自身もかなりの能力者……そのように素晴らしい女性を私は……。その上私は彼女からも嫌われた、私はバカで、愚かな人間だ。笑えるだろう?それなのに今だって彼女の事が忘れられず、その面影を求めて君の弟にまで会いに来る始末だ………」
はっ……はは…はははははは…………!
突然笑い出した殿下に困惑する。
やばくないか?こいつ今にも壊れちまいそうだぞ。
「殿下、落ち着いて下さい。誰か医者を!」
「そんなもの必要ない!!もし呼ぶなら彼女の下に!!壊れてしまった彼女の体を、誰か直してくれ!!!……………」
そして殿下はテーブルに突っ伏し、わあわあと泣き喚く。
素面のはずなのにこの醜態。
まずい、非常にまずいぞこれは。
一体どうすれば良いんだ。
「そんな事ありません!!」
そう叫ぶエルちゃんが、椅子をけるような勢いで立ち上がり、泣く殿下に食って掛かる。
ちょっと待てエルちゃん。
その流れで行くと、取り返しのつかない進展に成り兼ねないぞ。
私は何も、二人をくっ付けようとした訳ではなく、あんた自身がどれほどの存在かを知ってもらいたいだけなんだ。
「私に医者なんて必要有りません!」
ああぁぁぁぁぁ…………。
「アレクシス様、どうしてそんなにご自分を傷つけるのですか?あなたはとても素晴らしい人なのです。お優しくて、頭も良くとてもお強い。あなたは私にはもったいない方なのです。何よりこの国をまとめ、守っていかなければならない存在なのですよ。そんな方が私の為に動揺するなど有ってはなりません。そんな事でどうするのですか!」
「エ……レオ…ノーラなの…か?」
「あっ!」
驚き顔の殿下、しくじり顔のエレちゃん、私は一体どうすれば良いの?
どうにもならない三つ巴。
その時窓に大きな影が横切った。
見ればリンデン様ではありませんか。
助かった~このまま彼の存在でどさくさに紛れ、話を流してしまおう。
コツコツコツ。
リンデン様が爪先を窓に打ち付け、エレちゃんを呼びます。
トトトト。
「リンデンさん、どうかしたんですか?」
エルちゃんは大きく窓を開け、リンデン様に問いかけます。
よし、これで状況も変わるだろう。
『いや、主となったお主がちっともわしを呼ばんからな。退屈で遊びに来たわ』
「あれ、ごめんなさい。リンデンさんは忙しいとばかり思っていたから、我慢していたの」
『そうか、我慢をしておったのか、可愛い奴じゃの』
「や~ん、可愛いなんて言うの、リンデンさんだけですよ」
こらこらエルちゃん、今までの話を聞いてましたか?
しかしこれを事を見ていた殿下は、ただ茫然としているだけ。
無理もない。
もう会えないと思っていたエレオノーラが目の前にいて、聞いた話と違い元気そうで、その上見た事も無い神獣、ドラゴンとコミュニケーションしている。
もし私でも、どうして良いのか分からんわ。
『おぉそうじゃ、ちと面白い事が有ってな、お前を誘いに来たんだ』
「面白い事って何ですか?」
『この間のスタンピードより大規模な物が起きそうでな。なに、わしが消し去っても良いのじゃが、何やらお主が肉などを大事にせねばいけないと言っていただろう?だから一応知らせに来たんだ』
「スタンピード!」
えっ、エルちゃん今何て言ったの?
「隊長!お肉です!」
「スタンピードよね?」
「はい!」
スタンピードなど、めったに起きないはずなのに、なぜこうも連続して起きるんだ?
まあ仕方が無い、起きるなら阻止せねば。
そこに慌しく足音がし、イカルス殿が飛び込んできた。
「ここかエレオノーラ!今中庭にリンデン殿が降り立ったようだが、何か有ったのか!………あ…アレクシス様?…………」
はい四つ巴、完成です。
でもエレちゃんはリンデン様とお話し中ですから、三つ巴ですかね。
「あっ、兄様、またお肉…スタンピードだそうです。それも前よりでっかいそうですよ。やりましたね!」
エレちゃんとても嬉しそうです。
「前?以前もスタンピードが有ったのか?」
あぁ、アレクシス様、忘れてましたよ。
そう言えばあれ報告しませんでしたものね。
報告すると、エレちゃんの事も言わなくちゃならないから。
「でも、母様は今頃忙しい時間だから、迎えに行けないし、どうしよう……」
もしかしてリン姉様の指示が無いと戦えないと?
そんな事無いですよね。
「何も、前回もお前一人で倒したのだから大丈夫だろう?」
「そうですかね。まあ母様忙しいのに、それを邪魔すると怒られちゃうから」
そう言う軽い問題だろうか……。
でもエレちゃんは、お肉を逃してなるものかとやる気満々。
前回通りリンデン様と行くようで、窓の淵に掛けられたリンデンさんの指を伝い、ウンコラショと、その背中によじ登ろうとしています。
「隊長はどうします?後から隊員さん達と来ますか?」
リンデンさんの背に跨ったエレちゃんがそう言ってくれました。
その姿はとても美しくて凛々しい、まるで戦いの女神の様でした。
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