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50、終わらせなければならない

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「あなたが一級石を背中に埋めていることは、わかっています」

 美しい少年、フィアリスは、ジュードの目を見てそう言った。目映いほどの美貌を持つ、哀れな子供。
 この少年を見る度に、ジュードは責め苛まれた。フィアリスは自分をどう思っているだろう。やっと救ってくれた相手の目的は、その力を利用することだったと知って、どれだけ幻滅しただろう。

 また私は罪を重ねた。どこまでいっても、何をしても、罪を重ねるばかりではないか。
 少年に最大の秘密を知られたことに動揺する気力も残っていないほど、その時のジュードは限界が迫っていた。
 だがさすがに、抱いてくれと乞われた時には耳を疑って我に返った。

「私がたくさんの関係を持ったことはご存知でしょう。中には魔術師もいました。魔術師が私に癒しを求めて訪れたのは事実です。私は魔法を操る者の魔力を調整することが可能でしたから」

 魔術師特有の不調というものがある。
 体内を巡る魔力が滞って、病に伏せったり魔法を上手く使えなくなることがあった。
 フィアリスはそんな相手と繋がることによって、治した経験が多々あったのだそうだ。それが噂の元になった。

「一番良いのは、一級石を取り出すことでしょうけど、それはなさらないのでしょう? それならばせめて、私に調整させて下さい。そうすれば、しばらくは石の影響で死ぬことなどないはずですから」

 それはなんという提案だっただろう。
 拒むべきだった。許されざることだった。
 だが、フィアリスは断れば命を絶つ決意を持って頼んでいる。必要とされたい、そして罰されたいと澄んだ目が訴えていた。

 罰を受けたい、過剰な罰を。
 その気持ちは痛いほどジュードには理解できた。
 死ぬつもりでいたし、罪を重ねるならとことん重ねてしまえばいい、とジュードは諦めた。そしてフィアリスを犯した。

 ジュードの死は先延ばしになり、かといって生活は改めない。フィアリスとの奇妙な愛人関係、情事は続いていった。

「私がこうなることを望んだんです。ごめんなさい」

 困った顔をしてフィアリスは何度も笑った。
 悪いのはお前ではない。私だ。私だ、フィアリス――……。
 フィアリスは一糸まとわぬ姿でジュードに絡まり、よく背中の傷跡を指でなぞった。

「私も自分のことが嫌になるんです。お互い様ですね」

 そうかもしれない。
 けれど、いつかこんな関係は終わるのだ。

 終わらせなければならない。
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