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第二部 君に乞う
67、もっと食え
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ノアは時々、レーヴェに魔法や勉強を教えてやっていた。
「あなたは見た目よりも馬鹿じゃないようですね」
「それは褒めてんの? 貶してんの?」
書き物は好かないようだが、書けば文字もきちんと書けている。たまに綴りの間違いはあるが、思った以上にまともに文章を書けるのだ。
魔法についてもそうだが、独学で習得したことが多いらしい。物覚えも良い方のようだった。
話によると、どうしてだか傭兵をやって諸国を渡り歩いているらしく、外国語も堪能だった。帝国の北方の言葉から、砂漠の国の言葉まで難なく話してみせる。
勉強態度は不真面目だが、一度教えれば大体覚えた。
大ざっぱに見えてそこそこ手先も器用だし、知れば知るほど妙な男だとノアは思った。
「もう食い終わるのかよ。駄目だ、もっと食え、ノア」
夕食の時間、席を立とうとしたノアにレーヴェが声をかけてきた。
「リーリヤ、こいつ全然食わねえじゃねえか。何でこれっぽっちしか食わせない」
「お食べにならないので」
リーリヤが微笑み、ノアは口を開いた。
「食事の時間を長くとりたくありません。さっさと済ませて、節約した時間を別のことに使いたいのです」
レーヴェは見るからに呆れた顔をして見せる。
「こんな山の中で、よくもまあそんなせっかちに生きれるもんだな、お前も。ほんの一口二口だろ、その量は」
「栄養はきちんと計算しています。活動するための量は足りています」
「いーや足りてない。リーリヤ、お前もそう思うだろ!」
「思います」
「思うなら何で食わせないんだよ」
「ノア様は頑固でいらっしゃいますから、私の言うことはお聞きになりません」
「甘い。椅子に縛りつけて口に突っこめ」
食え食えとなおもしつこいが、ノアは無視して部屋を出て行こうとした。するとレーヴェのため息が追いかけてくる。
「剣の稽古で倒れて、俺に運ばれたのはどこのどいつだ?」
足を止めて、ノアは振り向いた。
「それと食事と、何の関係が?」
「大ありだ。あれは貧血と体力不足。もっと肉を食え。お前の計算は間違ってる、俺の経験の方が正しい。お前は一度俺に迷惑かけてるよな? だから言うことを聞いて飯をもっと食いな」
従うのは癪だったが、前から運動をするとふらついていたのは事実で、また稽古の時にレーヴェに運ばれるなんてことがあってはたまらない。
ノアは椅子を引いて座り直し、リーリヤに食事の追加を要求した。少食であれば何かと節約できるだろうとノアなりに考えてのことだったが、台無しである。
肉を咀嚼しているノアを、レーヴェは満足げに見守っている。
「いい子だ」
頭まで撫でられたが、振り払うのも億劫なので好きにさせておいた。
その後ノアの食事量は増え、運動の最中によろめくことも格段に減ったのだった。
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