174 / 204
第七章 発展
EP174 7.19 邪教
しおりを挟む
「俺の過去を話す前に、まずは邪教と、ゴルガノスについて語ろう」
ガルシオンによると、イルガとライガ、そしてガルシオン達は、
生まれた時期が異なるものの父を同じくするいわば姉弟なのだという。
そしてセルダリア王立研究所セルヴァリスでつくられた。
転移門でイルガに襲われたあの日、
イルガが見せた私に見せた悪夢の場所は、
このセルダリア王立研究所セルヴァリスの跡地だったという。
だけどガルシオンたちが作られた時には、
既にイルガとライガは“成れ果て”と化していた。
セルダリア王立研究所セルヴァリスの関係者は、
ゆっくりと時間をかけ、しかし着実に邪教組織の者と入れ替わっていた。
ということは、ガルシオンとガルキウスをつくったのは――――
私の表情から察したガルシオンが告げる。
「ゴルガノスという男だ。邪竜アルヴィナスと契約を結び、イルガとライガを“成れ果て”と変え、邪教組織アルビオンを指揮しアヴィー教を説き広めた者」
ガルシオンの左目が濃紺と黒に揺らぐ。
「ガルシオン? 左目が……」
さっきまで黒に近い深い紺に変わっていたはずがまた黒くなり始めている。
「……時間がない。続けるぞ」
時間がない? 何のこと?
いつもならすぐに理由を教えてくれるけど……。 今はなぜか急いでいる。
そしてガルシオンの髪と左目の黒が以前よりも少し黒くなっている気がする。
金の目の輝きがすこし失われたような……
ガルシオンの様子が気になるけど、「時間がない」。
しっかり聞かなきゃ、と聞く態勢をとる。
♢♢♢
「ゴルガノスは、元々は研究所に務める学者の一人だった……」
邪教祖ゴルガノスは――――
元々セルダリア王国の某研究所に勤める学者の一人で、
その本名はシャルルス・ロン・ルーグラスという賢者の一人だった。
セルダリア王国でルーグラス家と言えば、王家の傍系の一族だったそうだ。
当時、直系のセルダリア王家に次の王となる子が育たなかった。
王家の血を温存する為近しい間での結婚と出産が重なったことが原因なのだろう。
地球にもそんな歴史があったような気がする。
そしてセルダリアの国王は既に子を成せる年齢ではなく、
初代国王と同じ金の要素を持つルーグラス家の当主、
シャザルド・ロン・ルーグラスを次の王にと考えていた。
しかしルーグラス家と同じ傍系の貴族たちはそれを快く思っていなかった。
彼らはあの手この手でルーグラス家を陥れようと策略したものの、
ルーグラス当主シャザルドとその弟シャルルス・ロン・ルーグラスは、
そうした策略をするりと交わしてきた。
王が信頼するのももっともな話だった。
そんなルーグラス当主シャザルドにメリーナという娘が生まれる。
妻はメリーナを命がけで出産し、息絶えた。
悲劇はここから始まった。
生まれたばかりのメリーナは「闇属性」であった。
シャザルドはすぐに「闇属性帰化術」を行うが、
それでもメリーナは「無属性」へと帰化しなかった。
「闇属性」の赤子は存在が罪。
シャザルドは当主として、一族を護るか娘を守るかの決断に迫られたが
父親としてメリーナを守る事を決意する。
闇属性体はそもそもショルゼアの魔法空間になじめず息絶える。
「死産」として隠蔽し、メリーナが自然死するのを待つ。
それがルーグラス家が出した結論だった。
その一方でシャザルドとシャルルスは、
幼い命を救うための方法を必死で探していた。
そんな矢先、ルーグラス当主シャザルドは王から呼び出しを受ける。
とある、密告がきっかけだ。
“死産となったはずのメリーナは生きており、
「邪属性」であるから「無属性」に帰化することもなく……
またルーグラス一家はそんな子供を
邪竜アルヴィナスの申し子として密かに信仰している”
”邪属性であるから無属性に帰化しない”?
「邪属性」!? あり得ないことだった――――。
しかし、そういった秘め事はどんなに隠蔽しても必ずどこからか漏れるもの。
ルーグラス家を敵対視する貴族たちはそれを利用した。
メリーナが「邪属性」か否かなど、こうなった以上すでに関係はない。
そんなわけはないが、本当に「邪属性」だったとしたら、お家断絶。
「闇属性体」であれば「闇属性帰化術」でも帰化しなかった存在として
貴重な実験サンプルとなる。
しかも、それらを隠蔽していたという事実。
ルーグラス家の没落は確定した。
シャザルドは王にすべてを正しく伝え、致し方ない状況を伝えた。
そして自ら王の「救世主創造計画」のために
魂力と魔力を捧げる希心に志願する。
当時セルダリア王国では「希心」となる者は
「王へ捧げる高い忠誠を持つ者」とみなされた。
なかでも「希心」として自ら志願することは「最高の名誉」とされた。
それこそ過去の罪を免罪される恩赦を求め、
シャザルドはメリーナとルーグラス家一族の命を守ろうとした。
親が子を守ろうとするその想いに深く心打たれた王は
シャザルドの想いに応え、当主の”希心”とひきかえに
メリーナとルーグラス一家は赦されたのである。
ガルシオンによると、イルガとライガ、そしてガルシオン達は、
生まれた時期が異なるものの父を同じくするいわば姉弟なのだという。
そしてセルダリア王立研究所セルヴァリスでつくられた。
転移門でイルガに襲われたあの日、
イルガが見せた私に見せた悪夢の場所は、
このセルダリア王立研究所セルヴァリスの跡地だったという。
だけどガルシオンたちが作られた時には、
既にイルガとライガは“成れ果て”と化していた。
セルダリア王立研究所セルヴァリスの関係者は、
ゆっくりと時間をかけ、しかし着実に邪教組織の者と入れ替わっていた。
ということは、ガルシオンとガルキウスをつくったのは――――
私の表情から察したガルシオンが告げる。
「ゴルガノスという男だ。邪竜アルヴィナスと契約を結び、イルガとライガを“成れ果て”と変え、邪教組織アルビオンを指揮しアヴィー教を説き広めた者」
ガルシオンの左目が濃紺と黒に揺らぐ。
「ガルシオン? 左目が……」
さっきまで黒に近い深い紺に変わっていたはずがまた黒くなり始めている。
「……時間がない。続けるぞ」
時間がない? 何のこと?
いつもならすぐに理由を教えてくれるけど……。 今はなぜか急いでいる。
そしてガルシオンの髪と左目の黒が以前よりも少し黒くなっている気がする。
金の目の輝きがすこし失われたような……
ガルシオンの様子が気になるけど、「時間がない」。
しっかり聞かなきゃ、と聞く態勢をとる。
♢♢♢
「ゴルガノスは、元々は研究所に務める学者の一人だった……」
邪教祖ゴルガノスは――――
元々セルダリア王国の某研究所に勤める学者の一人で、
その本名はシャルルス・ロン・ルーグラスという賢者の一人だった。
セルダリア王国でルーグラス家と言えば、王家の傍系の一族だったそうだ。
当時、直系のセルダリア王家に次の王となる子が育たなかった。
王家の血を温存する為近しい間での結婚と出産が重なったことが原因なのだろう。
地球にもそんな歴史があったような気がする。
そしてセルダリアの国王は既に子を成せる年齢ではなく、
初代国王と同じ金の要素を持つルーグラス家の当主、
シャザルド・ロン・ルーグラスを次の王にと考えていた。
しかしルーグラス家と同じ傍系の貴族たちはそれを快く思っていなかった。
彼らはあの手この手でルーグラス家を陥れようと策略したものの、
ルーグラス当主シャザルドとその弟シャルルス・ロン・ルーグラスは、
そうした策略をするりと交わしてきた。
王が信頼するのももっともな話だった。
そんなルーグラス当主シャザルドにメリーナという娘が生まれる。
妻はメリーナを命がけで出産し、息絶えた。
悲劇はここから始まった。
生まれたばかりのメリーナは「闇属性」であった。
シャザルドはすぐに「闇属性帰化術」を行うが、
それでもメリーナは「無属性」へと帰化しなかった。
「闇属性」の赤子は存在が罪。
シャザルドは当主として、一族を護るか娘を守るかの決断に迫られたが
父親としてメリーナを守る事を決意する。
闇属性体はそもそもショルゼアの魔法空間になじめず息絶える。
「死産」として隠蔽し、メリーナが自然死するのを待つ。
それがルーグラス家が出した結論だった。
その一方でシャザルドとシャルルスは、
幼い命を救うための方法を必死で探していた。
そんな矢先、ルーグラス当主シャザルドは王から呼び出しを受ける。
とある、密告がきっかけだ。
“死産となったはずのメリーナは生きており、
「邪属性」であるから「無属性」に帰化することもなく……
またルーグラス一家はそんな子供を
邪竜アルヴィナスの申し子として密かに信仰している”
”邪属性であるから無属性に帰化しない”?
「邪属性」!? あり得ないことだった――――。
しかし、そういった秘め事はどんなに隠蔽しても必ずどこからか漏れるもの。
ルーグラス家を敵対視する貴族たちはそれを利用した。
メリーナが「邪属性」か否かなど、こうなった以上すでに関係はない。
そんなわけはないが、本当に「邪属性」だったとしたら、お家断絶。
「闇属性体」であれば「闇属性帰化術」でも帰化しなかった存在として
貴重な実験サンプルとなる。
しかも、それらを隠蔽していたという事実。
ルーグラス家の没落は確定した。
シャザルドは王にすべてを正しく伝え、致し方ない状況を伝えた。
そして自ら王の「救世主創造計画」のために
魂力と魔力を捧げる希心に志願する。
当時セルダリア王国では「希心」となる者は
「王へ捧げる高い忠誠を持つ者」とみなされた。
なかでも「希心」として自ら志願することは「最高の名誉」とされた。
それこそ過去の罪を免罪される恩赦を求め、
シャザルドはメリーナとルーグラス家一族の命を守ろうとした。
親が子を守ろうとするその想いに深く心打たれた王は
シャザルドの想いに応え、当主の”希心”とひきかえに
メリーナとルーグラス一家は赦されたのである。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
チートな親から生まれたのは「規格外」でした
真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て…
これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります
【完結】婚約者様の仰られる通りの素晴らしい女性になるため、日々、精進しております!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のバーバラは幼くして、名門侯爵家の若君と婚約をする。
両家の顔合わせで、バーバラは婚約者に罵倒されてしまう。
どうやら婚約者はバーバラのふくよかな体形(デブ)がお気に召さなかったようだ。
父親である侯爵による「愛の鞭」にも屈しないほどに。
文句をいう婚約者は大変な美少年だ。バーバラも相手の美貌をみて頷けるものがあった。
両親は、この婚約(クソガキ)に難色を示すも、婚約は続行されることに。
帰りの馬車のなかで婚約者を罵りまくる両親。
それでも婚約を辞めることは出来ない。
なにやら複雑な理由がある模様。
幼過ぎる娘に、婚約の何たるかを話すことはないものの、バーバラは察するところがあった。
回避できないのならば、とバーバラは一大決心する。
食べることが大好きな少女は過酷なダイエットで僅か一年でスリム体形を手に入れた。
婚約者は、更なる試練ともいえることを言い放つも、未来の旦那様のため、引いては伯爵家のためにと、バーバラの奮闘が始まった。
連載開始しました。
自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
無限の時空間の中、いきなり意識が覚醒した。
女神の話によれば、異世界に転生できるという。
ディルメス侯爵家の次男、シオン・ディルメスに転生してから九年が経ったある日、邸の執務室へ行くと、対立国の情報が飛び込んできた。
父であるディルメス侯爵は敵軍を迎撃するため、国境にあるロンメル砦へと出発していく。
その間に執務長が領地の資金繰りに困っていたため、シオンは女神様から授かったスキル『創造魔法陣』を用いて、骨から作った『ボーン食器』を発明する。
食器は大ヒットとなり、侯爵領全域へと広がっていった。
そして噂は王国内の貴族達から王宮にまで届き、シオンは父と一緒に王城へ向かうことに……『ボーン食器』は、シオンの予想を遥かに超えて、大事へと発展していくのだった……
勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!
蒼衣翼
ファンタジー
書籍化にあたりタイトル変更しました(旧タイトル:勇者パーティから追い出された!と、思ったら、土下座で泣きながら謝って来た……何がなんだかわからねぇ)
第11回ファンタジー小説大賞優秀賞受賞
2019年4月に書籍発売予定です。
俺は十五の頃から長年冒険者をやってきて今年で三十になる。
そんな俺に、勇者パーティのサポートの仕事が回ってきた。
貴族の坊っちゃん嬢ちゃんのお守りかぁ、と、思いながらも仕方なしにやっていたが、戦闘に参加しない俺に、とうとう勇者がキレて追い出されてしまった。
まぁ仕方ないよね。
しかし、話はそれで終わらなかった。
冒険者に戻った俺の元へ、ボロボロになった勇者パーティがやって来て、泣きながら戻るようにと言い出した。
どうしたんだよ、お前ら……。
そんな中年に差し掛かった冒険者と、国の英雄として活躍する勇者パーティのお話。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
【完結】わたしの好きな人。〜次は愛してくれますか?
たろ
恋愛
夫である国王陛下を愛した。だけど彼から愛されることはなかった。
心が壊れたわたくしは彼の愛する女性の息子へ執着して、わたくしは犯罪を犯し、自ら死を迎えた。
そして生まれ変わって、前世の記憶のないわたしは『今』を生きている。
何も覚えていないわたしは、両親から相手にされず田舎の領地で祖父母の愛だけを受けて育った。だけどいつも楽しくて幸せだった。
なのに両親に王都に呼ばれて新しい生活が始まった。
そこで知り合った人達。
初めて好きになった人は……わたしを愛していなかった陛下の生まれ変わりだったことに気がついた。
今の恋心を大切にしたい。だけど、前世の記憶が邪魔をする。
今を生きる元『王妃』のお話です。
こちらは
【記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです】の王妃の死後、生まれ変わり前世の記憶を思い出す話ですが、一つの話としても読めるように書いています。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる