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第七章 発展

EP174 7.19 邪教

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「俺の過去を話す前に、まずは邪教と、ゴルガノスについて語ろう」

 ガルシオンによると、イルガとライガ、そしてガルシオン達は、
 生まれた時期が異なるものの父を同じくするいわば姉弟なのだという。
 そしてセルダリア王立研究所セルヴァリスでつくられた。

 転移門でイルガに襲われたあの日、
 イルガが見せた私に見せた悪夢の場所は、
 このセルダリア王立研究所セルヴァリスの跡地だったという。

 だけどガルシオンたちが作られた時には、
 既にイルガとライガは“成れ果て”と化していた。

 セルダリア王立研究所セルヴァリスの関係者は、
 ゆっくりと時間をかけ、しかし着実に邪教組織の者と入れ替わっていた。

 ということは、ガルシオンとガルキウスをつくったのは――――

 私の表情から察したガルシオンが告げる。

「ゴルガノスという男だ。邪竜アルヴィナスと契約を結び、イルガとライガを“成れ果て”と変え、邪教組織アルビオンを指揮しアヴィー教を説き広めた者」

 ガルシオンの左目が濃紺と黒に揺らぐ。

「ガルシオン? 左目が……」
 
 さっきまで黒に近い深い紺に変わっていたはずがまた黒くなり始めている。

「……時間がない。続けるぞ」

 時間がない? 何のこと?
 いつもならすぐに理由を教えてくれるけど……。 今はなぜか急いでいる。
  
 そしてガルシオンの髪と左目の黒が以前よりも少し黒くなっている気がする。
 金の目の輝きがすこし失われたような……
 ガルシオンの様子が気になるけど、「時間がない」。
 しっかり聞かなきゃ、と聞く態勢をとる。

♢♢♢

「ゴルガノスは、元々は研究所に務める学者の一人だった……」

 邪教祖ゴルガノスは――――
 元々セルダリア王国の某研究所に勤める学者の一人で、
 その本名はシャルルス・ロン・ルーグラスという賢者の一人だった。

 セルダリア王国でルーグラス家と言えば、王家の傍系の一族だったそうだ。
 当時、直系のセルダリア王家に次の王となる子が育たなかった。
 王家の血を温存する為近しい間での結婚と出産が重なったことが原因なのだろう。

 地球にもそんな歴史があったような気がする。
 
 そしてセルダリアの国王は既に子を成せる年齢ではなく、
 初代国王と同じ金の要素を持つルーグラス家の当主、
 シャザルド・ロン・ルーグラスを次の王にと考えていた。

 しかしルーグラス家と同じ傍系の貴族たちはそれを快く思っていなかった。
 彼らはあの手この手でルーグラス家を陥れようと策略したものの、
 ルーグラス当主シャザルドとその弟シャルルス・ロン・ルーグラスは、
 そうした策略をするりと交わしてきた。

 王が信頼するのももっともな話だった。

 そんなルーグラス当主シャザルドにメリーナという娘が生まれる。
 妻はメリーナを命がけで出産し、息絶えた。

 悲劇はここから始まった。
 
 生まれたばかりのメリーナは「闇属性」であった。
 シャザルドはすぐに「闇属性帰化術」を行うが、
 それでもメリーナは「無属性」へと帰化しなかった。

 「闇属性」の赤子は存在が罪。
 シャザルドは当主として、一族を護るか娘を守るかの決断に迫られたが
 父親としてメリーナを守る事を決意する。
 
 闇属性体はそもそもショルゼアの魔法空間になじめず息絶える。
 「死産」として隠蔽し、メリーナが自然死するのを待つ。 

 それがルーグラス家が出した結論だった。
 その一方でシャザルドとシャルルスは、
 幼い命を救うための方法を必死で探していた。

 そんな矢先、ルーグラス当主シャザルドは王から呼び出しを受ける。

 とある、密告がきっかけだ。

 “死産となったはずのメリーナは生きており、
「邪属性」であるから「無属性」に帰化することもなく……
 またルーグラス一家はそんな子供を
 邪竜アルヴィナスの申し子として密かに信仰している”

 ”邪属性であるから無属性に帰化しない”?
 「邪属性」!? あり得ないことだった――――。

 しかし、そういった秘め事はどんなに隠蔽しても必ずどこからか漏れるもの。
 ルーグラス家を敵対視する貴族たちはそれを利用した。
 
 メリーナが「邪属性」か否かなど、こうなった以上すでに関係はない。

 そんなわけはないが、本当に「邪属性」だったとしたら、お家断絶。
 
 「闇属性体」であれば「闇属性帰化術」でも帰化しなかった存在として
 貴重な実験サンプルとなる。

 しかも、それらを隠蔽していたという事実。
 
 ルーグラス家の没落は確定した。 
 シャザルドは王にすべてを正しく伝え、致し方ない状況を伝えた。
 そして自ら王の「救世主創造計画」のために
 魂力と魔力を捧げる希心キシンに志願する。
 
 当時セルダリア王国では「希心」となる者は
 「王へ捧げる高い忠誠を持つ者」とみなされた。

 なかでも「希心」として自ら志願することは「最高の名誉」とされた。
 それこそ過去の罪を免罪される恩赦を求め、
 シャザルドはメリーナとルーグラス家一族の命を守ろうとした。
 
 親が子を守ろうとするその想いに深く心打たれた王は
 シャザルドの想いに応え、当主の”希心”とひきかえに
 メリーナとルーグラス一家は赦されたのである。
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