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第一章 異世界転移
EP003 1.3 聖獣フニオ
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ゲームログ的に書かれるとしたら。
「聖獣フニオが、火口優花の仲間になった」
って出るだろう、今まさにそんな状況。
大きさだけを見れば、小型犬のような小型獣フニオが道を先導し、その後を私が続く。
フニオは月明かりが届かない暗い道は避け、比較的歩きやすい道を選んで進んでくれている。
そして私の背後の警戒も怠らない。
小さいけど、ぶっきらぼうでどこか上からだし、可愛らしさは正直ないけど……。
この聖獣様は、とても面倒見がいいらしい。
「腹は減っていないか? 小動物ならそこらへんに居るから、安全な場所に移動したら獲ってくるぞ」
今なんて言った? 小動物を獲ってくる!?
愛らしい小動物を「生」で「そのまま」食べろと!? ないわー。
「もしかして……そのまま食べる系? う……、なんか、その……」
「ふむ。それなら果実や木の実なら問題ないか? 探して持ってくるぞ」
ていうか、仮にも聖獣様に食料調達までさせるわけには。
「足、治してもらったし。それくらいは自分で集めるよ!」
「わかった。まずは移動しなければな。湖の場所まで戻るぞ」
だけど。
「現在地から左45度の方角に何かの果物がある。寄っていくか?」
「右65度、前方二十メートルの地点に何か木の実があるぞ。採れるか?」
私は先程から笑いをこらえるのに必死だ。
フニオのセリフが、どうも車のナビっぽい。しかもAIナビに近いというね。
私のことを気遣ってくれてるのは伝わるし、ありがたく木の実もいただいたし、嬉しいんだけど!
このセリフを凛々しいキリッとした表情で、低音イケボで大真面目に言うのがね。
「なぜ笑う? 笑い茸でも見つけて食ったか? それとも食あたりでも起こしたか?」
そんな気はしてたけど、ジョークは通じなさそうだ。
こんな時もちゃんと心配してくれるのは、嬉しい。
「ごめんごめん。何でもない。食あたりも大丈夫。ありがとう! ところで笑い茸ってなに?」
「食うと一定時間笑い続ける毒茸だ。それにしてもこの果実……十個は食い過ぎだ」
最初に見つけた果物は、リンゴ程度の大きさでパイナップルのような味がした。
完熟していてとても甘い。だけどほのかな酸味もあって、幾つでも食べられる。
だから気が付けば十個目を完食していた。
「……そのくらいにしておけ」
私が十一個目に手を伸ばそうとした時、呆れた様子でフニオが止める。
フニオは食べないのかと聞くと、聖獣は主の魔力を食べるという。
「優花の魔力は底なしなうえに、質が良い。これはなかなかに悪くない環境だ」
私の魔力が底なし? という事は私も、フニオのような魔法が使える?
そもそも魔力に質なんてあるんだろうか。
そんなこんなで湖畔までたどり着く。
湖面は光り輝いていて、とても幻想的。
私とフニオは湖畔の近くに座って暫くその風景を眺めていた。
いつか自分もこんな美しい風景をレジンで表現してみたいと、ふと思う。
とあるレジンアーティストのSNSの投稿を思い出す。
その作品は夜桜の風景を見事にレジンの中に再現した素晴らしい作品だった。
まさに空間をそのまま切り取って封じ込めたような圧倒的な美しさ。
「そろそろ休め。大樹のそばなら体を休ませるのに丁度いいだろう」
私がフニオは寝ないのかと聞くと、フニオは「後でな」と答える。
湖のそばに居るから結界は必要ないらしい。だが一応掛けておくのだそうだ。
そういえば狼に襲われたのも湖の近くだった。
「ねえ、この湖に何かあるの?」
フニオは月を見上げながら話し始めた。
この森は昔、惑星ショルゼアを守る聖竜様のつがいの竜が住んでいた森なんだそうだ。
かつてこの湖はもっと大きく深く、聖なる力に溢れていた。
この水に浸かれば軽度の傷や病は消え失せるというほどに。
「いまもそうなのかはわからんがな」
疑問は尽きない。知りたいことも山ほどだ。
フニオは言った。これから「これから長い付き合いになるんだ」と。
「ここを中心に結界を掛ける。安心して休んでくれ。俺のことは心配ない」
「わかった。ありがとう、フニオ。おやすみなさい」
大樹に体を預けると、体の疲れがどっと出る。
うとうとしながら目を閉じる前に見たもの。
月光に照らされる白装束の男性の後ろ姿。
背の高い男性の髪はその足元まで長く伸びている。
なにか、呟いている……?
しかし私は睡魔に抗えない。静かに目を閉じ、深い眠りについた。
「聖獣フニオが、火口優花の仲間になった」
って出るだろう、今まさにそんな状況。
大きさだけを見れば、小型犬のような小型獣フニオが道を先導し、その後を私が続く。
フニオは月明かりが届かない暗い道は避け、比較的歩きやすい道を選んで進んでくれている。
そして私の背後の警戒も怠らない。
小さいけど、ぶっきらぼうでどこか上からだし、可愛らしさは正直ないけど……。
この聖獣様は、とても面倒見がいいらしい。
「腹は減っていないか? 小動物ならそこらへんに居るから、安全な場所に移動したら獲ってくるぞ」
今なんて言った? 小動物を獲ってくる!?
愛らしい小動物を「生」で「そのまま」食べろと!? ないわー。
「もしかして……そのまま食べる系? う……、なんか、その……」
「ふむ。それなら果実や木の実なら問題ないか? 探して持ってくるぞ」
ていうか、仮にも聖獣様に食料調達までさせるわけには。
「足、治してもらったし。それくらいは自分で集めるよ!」
「わかった。まずは移動しなければな。湖の場所まで戻るぞ」
だけど。
「現在地から左45度の方角に何かの果物がある。寄っていくか?」
「右65度、前方二十メートルの地点に何か木の実があるぞ。採れるか?」
私は先程から笑いをこらえるのに必死だ。
フニオのセリフが、どうも車のナビっぽい。しかもAIナビに近いというね。
私のことを気遣ってくれてるのは伝わるし、ありがたく木の実もいただいたし、嬉しいんだけど!
このセリフを凛々しいキリッとした表情で、低音イケボで大真面目に言うのがね。
「なぜ笑う? 笑い茸でも見つけて食ったか? それとも食あたりでも起こしたか?」
そんな気はしてたけど、ジョークは通じなさそうだ。
こんな時もちゃんと心配してくれるのは、嬉しい。
「ごめんごめん。何でもない。食あたりも大丈夫。ありがとう! ところで笑い茸ってなに?」
「食うと一定時間笑い続ける毒茸だ。それにしてもこの果実……十個は食い過ぎだ」
最初に見つけた果物は、リンゴ程度の大きさでパイナップルのような味がした。
完熟していてとても甘い。だけどほのかな酸味もあって、幾つでも食べられる。
だから気が付けば十個目を完食していた。
「……そのくらいにしておけ」
私が十一個目に手を伸ばそうとした時、呆れた様子でフニオが止める。
フニオは食べないのかと聞くと、聖獣は主の魔力を食べるという。
「優花の魔力は底なしなうえに、質が良い。これはなかなかに悪くない環境だ」
私の魔力が底なし? という事は私も、フニオのような魔法が使える?
そもそも魔力に質なんてあるんだろうか。
そんなこんなで湖畔までたどり着く。
湖面は光り輝いていて、とても幻想的。
私とフニオは湖畔の近くに座って暫くその風景を眺めていた。
いつか自分もこんな美しい風景をレジンで表現してみたいと、ふと思う。
とあるレジンアーティストのSNSの投稿を思い出す。
その作品は夜桜の風景を見事にレジンの中に再現した素晴らしい作品だった。
まさに空間をそのまま切り取って封じ込めたような圧倒的な美しさ。
「そろそろ休め。大樹のそばなら体を休ませるのに丁度いいだろう」
私がフニオは寝ないのかと聞くと、フニオは「後でな」と答える。
湖のそばに居るから結界は必要ないらしい。だが一応掛けておくのだそうだ。
そういえば狼に襲われたのも湖の近くだった。
「ねえ、この湖に何かあるの?」
フニオは月を見上げながら話し始めた。
この森は昔、惑星ショルゼアを守る聖竜様のつがいの竜が住んでいた森なんだそうだ。
かつてこの湖はもっと大きく深く、聖なる力に溢れていた。
この水に浸かれば軽度の傷や病は消え失せるというほどに。
「いまもそうなのかはわからんがな」
疑問は尽きない。知りたいことも山ほどだ。
フニオは言った。これから「これから長い付き合いになるんだ」と。
「ここを中心に結界を掛ける。安心して休んでくれ。俺のことは心配ない」
「わかった。ありがとう、フニオ。おやすみなさい」
大樹に体を預けると、体の疲れがどっと出る。
うとうとしながら目を閉じる前に見たもの。
月光に照らされる白装束の男性の後ろ姿。
背の高い男性の髪はその足元まで長く伸びている。
なにか、呟いている……?
しかし私は睡魔に抗えない。静かに目を閉じ、深い眠りについた。
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