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幕間 エミリア
エミリアの憂鬱 4
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「入ります。」
マックとその家族が昨日泊まったホテルの一室。
その豪華な部屋の真ん中にその女性は違和感なく座っていた。にこやかに話す皇太后とキュール。マックはその光景を見て、驚き、焦る。皇太后様の膝の上にアルが………
「!」
思わず息を飲むが、皇太后様の優しい笑顔に、出そうになった悲鳴を飲み込み、案内人の後ろで深呼吸をした。
「エミリア様。マック様をお連れいたしました。」
俺には様付け要らないよ……と内心思いながら、アスターネス式に片膝を付き挨拶をする。幼い頃にマックも騎士養成学校に通った経験は記憶に残っている。
「ああ、アスターネスの生まれだったな。こちらへ。」
手招きされ、近付くと、もっと近くに、と言われて手が触れるほどの距離に片膝をついた。
「アスターネスの遠き山々 虹の架け橋 飛翔する雄々しき鳳に思いを寄せ 豊かな実りに感謝を込め 汝に幸運を祈る」
皇太后は頭を下げるマックの登頂部に手を置き、祈りの言葉をかけて、置いた手のすぐ側に口付けた。
「ありがとうございます。」
マックはそのまま動かずにいたが、キュールが固まってこちらを見ていたのに気付いた。
キュールは隣に座る女性が誰なのか聞かされないまま、談笑していたのだが、急にやってきた夫が膝を付き……その姿に、つい、プロポーズされた時を思い出して固まっていた。目の前のこれは…何…が起こっているの!?
「え?」
「パパ。」
マーシャがマックに飛び付いた。
「驚かせたかな。」
隣に座る女性が微笑み、マックがようやく顔を上げ、キュールを見た。
「キュール、この方はエミリア様。皇太后様だよ。」
「申し訳ありません。大変失礼を………」
あわてて立ち上がろうとしたが、よい、よい、と言われキュールはドキドキしながら、椅子に座り直した。
「私が名乗らなかったからな。気にすることはない。」
しばらく話をしていたが、眠そうな子ども達を見て、キュールは退室する。後に残ったのは皇太后とマックとお付きの者達。
「しばらく。」
あらかじめ打ち合わせをしていたのか、短く指示を彼女がすると、ささっと退室していく。
「?」
マックが不思議に思っていると、手を出す皇太后に……
「あ、そうか、これですね。」
マックはようやく宰相から渡された手紙を取り出した。
「ああ。」
しばらく、内容を確認し、頷くとニッコリ笑って立ち上がり、隣に座ったマックの前に立つ。あわてて立ち上がると、ぎゅっと抱き締められた。
「やはり、我が甥だったか。会えて嬉しい。」
「エミリア様…」
宰相からの文書には、マークス王子つまりエミリアの兄の子どもがマックであることが記されていた。エミリアの持つ諜報部でも、確証はまだ掴めていなかったが、情報はあがって来ていた。
「真実を問い詰めに、何度アスターネスに乗り込んでやろうかと、思ったことか。」
「すみません。」
マックが謝ることはないのだが、何となく……
「顔をよく見せて。ああ、兄様の面影がある。」
「エミリア様…」
困った表情のマックを抱き締めたまま、頬擦りし、喜ぶエミリアに何と言えばいいのか。されるがままのマックであった。
マックとその家族が昨日泊まったホテルの一室。
その豪華な部屋の真ん中にその女性は違和感なく座っていた。にこやかに話す皇太后とキュール。マックはその光景を見て、驚き、焦る。皇太后様の膝の上にアルが………
「!」
思わず息を飲むが、皇太后様の優しい笑顔に、出そうになった悲鳴を飲み込み、案内人の後ろで深呼吸をした。
「エミリア様。マック様をお連れいたしました。」
俺には様付け要らないよ……と内心思いながら、アスターネス式に片膝を付き挨拶をする。幼い頃にマックも騎士養成学校に通った経験は記憶に残っている。
「ああ、アスターネスの生まれだったな。こちらへ。」
手招きされ、近付くと、もっと近くに、と言われて手が触れるほどの距離に片膝をついた。
「アスターネスの遠き山々 虹の架け橋 飛翔する雄々しき鳳に思いを寄せ 豊かな実りに感謝を込め 汝に幸運を祈る」
皇太后は頭を下げるマックの登頂部に手を置き、祈りの言葉をかけて、置いた手のすぐ側に口付けた。
「ありがとうございます。」
マックはそのまま動かずにいたが、キュールが固まってこちらを見ていたのに気付いた。
キュールは隣に座る女性が誰なのか聞かされないまま、談笑していたのだが、急にやってきた夫が膝を付き……その姿に、つい、プロポーズされた時を思い出して固まっていた。目の前のこれは…何…が起こっているの!?
「え?」
「パパ。」
マーシャがマックに飛び付いた。
「驚かせたかな。」
隣に座る女性が微笑み、マックがようやく顔を上げ、キュールを見た。
「キュール、この方はエミリア様。皇太后様だよ。」
「申し訳ありません。大変失礼を………」
あわてて立ち上がろうとしたが、よい、よい、と言われキュールはドキドキしながら、椅子に座り直した。
「私が名乗らなかったからな。気にすることはない。」
しばらく話をしていたが、眠そうな子ども達を見て、キュールは退室する。後に残ったのは皇太后とマックとお付きの者達。
「しばらく。」
あらかじめ打ち合わせをしていたのか、短く指示を彼女がすると、ささっと退室していく。
「?」
マックが不思議に思っていると、手を出す皇太后に……
「あ、そうか、これですね。」
マックはようやく宰相から渡された手紙を取り出した。
「ああ。」
しばらく、内容を確認し、頷くとニッコリ笑って立ち上がり、隣に座ったマックの前に立つ。あわてて立ち上がると、ぎゅっと抱き締められた。
「やはり、我が甥だったか。会えて嬉しい。」
「エミリア様…」
宰相からの文書には、マークス王子つまりエミリアの兄の子どもがマックであることが記されていた。エミリアの持つ諜報部でも、確証はまだ掴めていなかったが、情報はあがって来ていた。
「真実を問い詰めに、何度アスターネスに乗り込んでやろうかと、思ったことか。」
「すみません。」
マックが謝ることはないのだが、何となく……
「顔をよく見せて。ああ、兄様の面影がある。」
「エミリア様…」
困った表情のマックを抱き締めたまま、頬擦りし、喜ぶエミリアに何と言えばいいのか。されるがままのマックであった。
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