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お仕事の時間ですよ 3

+王宮騎士物語 第32話

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「なぁに、ここ、ばしょ、なぁまぁえ?…」
すぐ側の男に声を掛けたが、不思議そうな顔をした後、横を向いた。
  言葉の壁は大きいよな…とハンスは思う。
  シャノアの言葉は騎士養成学校で習ったものの、優秀だったクロードとは大違いでいつも赤点ギリギリだった。王都までの道中、乗り合い馬車を利用している訳だが、地元の見知らぬ人と同乗するため、異国人と一目でわかるハンスは話し掛けられもしない。たまに興味を持たれても、ゆっくり話してもらってもうまく聞き取れないし、ハンスは知ってる単語を並べるくらいで、話すなんて無理だし。言葉という壁を越えるのは難しい……どうせシャノアの言葉なんて使わねぇし、他に覚えることあるしと、不真面目な授業態度だった自分を叱ってやりたい…と思った。
国境近くの村は越えて来る者が多い為か言葉が通じた。そこを出てからは、聞取ろうとしても、早口だったり、方言混じりの言葉だったりで、ほとんど聞き取れない。
「はぁ~」
目的地まで、途中の村で何回か休憩をとる。停車中の馬車の中、ハンスの同行者は用があると座席を降り、まだ戻ってこない。
「××……×子ども×××行く……××」
「×××……××クロー……祝う×××」
旅の途中だろうか、男二人連れの言葉の断片が聞こえてきた。
  ハンスは耳に全神経を集中する。頑張れば何か聞き取れるかもしれない。
 何度か出てくる言葉、人の名前だろうか……クローディリア……女性の名前か?ふと、クロードが思い浮かび、似た名前だなとぼんやり考えると、脳裏に黒髪の女性が現れる。ああ、そうだ、昔一度だけ目撃した『森の魔女』………クローディリアって名前が似合いそうだよな……
「ハンス、待たせた、出発するみたいだぞ。」
  同行者のその声に意識がスッと戻り、『森の魔女』は再び記憶の奥に帰り、ハンスは同行者との会話に集中した。身体が動かないなら、せめて情報収集をと……窓から見えるわずかな景色を見、同乗者達を観察する。いずれ怪我が治れば動けるようになるだろう。その時どう動けば良いか、考える時間はたっぷりありそうだ。

  
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