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黒の章
黒の子 5
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ハンスは走った。
ベルタを助けるために、クロードを助けるために。
「ホアンに知らせなくっちゃ!大人を呼んで来なくっちゃ!」
走り続けて、息は苦しいし、胸がドキドキしすぎて、もう無理だ、諦めろ、と声がする。いやだ!いやだ!ベルタが!クロードが!誰か助けて!夢中で叫んでいた。
「!」
茂みをかき分け、来た道を戻る。丈の長い草を分けた時、目の前を大きな生き物が横切った。
「あぶっ!危ないっ!大丈夫か君!」
大きな馬に乗った騎士様だ!初めて見る本物の騎士にハンスは息が止まりそうだった。
「あ……あ……」
感情が膨れ上がって、なにも言えないハンスに微笑み、ホアンの家に送ろう、と言って腕を引っ張られたハンスは、そのまま馬の背に引っ張り上げられた。
「わっ……はっ……あっ……」
そのまま一人は森の奥へ、もう一人はハンスとともに森の外へ走り出した。
「この子を送ったら、追いかけるから、よろしくな。」
「了解、先に行く。」
フォムボトルは ハンスを連れたシーブイレイルと別れて森の奥へと急ぐ。先刻の強烈な遠話に確信を持つ。七歳でこの鮮明な『声』なら、団にいる遠話能力者の誰よりも強くなるだろう。
……間違いない、絶対にうちに欲しい……しかも、治癒能力も期待できるとか………
口角が自然と上がり、気持ちが高ぶってくる。気付かぬ内に笑っていた。
……ダメだ、気を引きしめろ……今は助けを必要としている。急がねば……
声がした。
『班長!』
「なんだ。」
『もう一人いるそうです。ベルタって子が……』
「わかった。その子も見つけたら保護する。」
ホアンの家に着いて、ハンスから事情を聞いたシーブイレイルが連絡してきた。少しだけ遠話に気をとられていたが、目の端にふと動くものを感じて振り向くと一瞬黒いものが見えた気がした。
「何か……」
少しスピードを落としてもう一度みたが何も見えない。気のせいとは思えないが、嫌な感じはなかった。獣…では無さそうだ……
「正体が気になるが、今はクロードだ。」
獣道さえない、沢山の細い木が密集した場所を抜けると、急に視界が開けた。不自然に円形状に木も草もない場所の真ん中に灰色の髪の少年がうつ伏せに倒れて呻いている。少し離れた位置には栗色の髪の少年が仰向けに横になって…眠っているようだ。
「大丈夫か!?」
馬を止め、地面に降り立ったフォムボトルは二人の息を確認する。衣服に血痕があり、怪我はないか二人の身体を調べる。幸いどこにもきずはなく、問題無さそうに見えた。
「クロード?」
灰色の髪の少年に呼び掛けると、頷いて、ベルタを……と小さく聞こえたので、大丈夫だと安心させた。
「だが、不思議だ。この服の破損具合と血痕……なぜ怪我がない……」
馬に積んであった防寒用のマントを取り出し、ベルタを包む。だが、二人を一度に馬に載せ連れ帰るのは難しく、シーブイレイルの到着を待つことにした。
しばらくすると、クロードの意識がハッキリしてきたようなので、身体を起こして、水筒を渡した。
ベルタを助けるために、クロードを助けるために。
「ホアンに知らせなくっちゃ!大人を呼んで来なくっちゃ!」
走り続けて、息は苦しいし、胸がドキドキしすぎて、もう無理だ、諦めろ、と声がする。いやだ!いやだ!ベルタが!クロードが!誰か助けて!夢中で叫んでいた。
「!」
茂みをかき分け、来た道を戻る。丈の長い草を分けた時、目の前を大きな生き物が横切った。
「あぶっ!危ないっ!大丈夫か君!」
大きな馬に乗った騎士様だ!初めて見る本物の騎士にハンスは息が止まりそうだった。
「あ……あ……」
感情が膨れ上がって、なにも言えないハンスに微笑み、ホアンの家に送ろう、と言って腕を引っ張られたハンスは、そのまま馬の背に引っ張り上げられた。
「わっ……はっ……あっ……」
そのまま一人は森の奥へ、もう一人はハンスとともに森の外へ走り出した。
「この子を送ったら、追いかけるから、よろしくな。」
「了解、先に行く。」
フォムボトルは ハンスを連れたシーブイレイルと別れて森の奥へと急ぐ。先刻の強烈な遠話に確信を持つ。七歳でこの鮮明な『声』なら、団にいる遠話能力者の誰よりも強くなるだろう。
……間違いない、絶対にうちに欲しい……しかも、治癒能力も期待できるとか………
口角が自然と上がり、気持ちが高ぶってくる。気付かぬ内に笑っていた。
……ダメだ、気を引きしめろ……今は助けを必要としている。急がねば……
声がした。
『班長!』
「なんだ。」
『もう一人いるそうです。ベルタって子が……』
「わかった。その子も見つけたら保護する。」
ホアンの家に着いて、ハンスから事情を聞いたシーブイレイルが連絡してきた。少しだけ遠話に気をとられていたが、目の端にふと動くものを感じて振り向くと一瞬黒いものが見えた気がした。
「何か……」
少しスピードを落としてもう一度みたが何も見えない。気のせいとは思えないが、嫌な感じはなかった。獣…では無さそうだ……
「正体が気になるが、今はクロードだ。」
獣道さえない、沢山の細い木が密集した場所を抜けると、急に視界が開けた。不自然に円形状に木も草もない場所の真ん中に灰色の髪の少年がうつ伏せに倒れて呻いている。少し離れた位置には栗色の髪の少年が仰向けに横になって…眠っているようだ。
「大丈夫か!?」
馬を止め、地面に降り立ったフォムボトルは二人の息を確認する。衣服に血痕があり、怪我はないか二人の身体を調べる。幸いどこにもきずはなく、問題無さそうに見えた。
「クロード?」
灰色の髪の少年に呼び掛けると、頷いて、ベルタを……と小さく聞こえたので、大丈夫だと安心させた。
「だが、不思議だ。この服の破損具合と血痕……なぜ怪我がない……」
馬に積んであった防寒用のマントを取り出し、ベルタを包む。だが、二人を一度に馬に載せ連れ帰るのは難しく、シーブイレイルの到着を待つことにした。
しばらくすると、クロードの意識がハッキリしてきたようなので、身体を起こして、水筒を渡した。
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